2020年11月24日
形容詞の作り方3(十一月廿一日)
C末尾の「t」を「cí」に変える
これまでの三つとは違って、軟変化の形容詞を作ることになる。この方法で作られた形容詞は、「〜するために使う」ことを意味する。この形容詞化も使える動詞は限定的なので、外国人としては、一般的に使われているものを覚えて使うのがせいぜいである。覚えておいたほうがいいのは、原則として不完了態の動詞から作られるということだろうか。これもまず比較的よく使われる例を挙げておく。
・šít → šicí 縫うための
・psát → psací 書くための
・prát → prací 洗うための
・přijímat → přijímací 受入れるための
一つ目の「šicí」は、機械を意味する言葉と組み合わせて、「šicí stroj」で、縫い物をする機械、つまりはミシンという意味になる。二つ目も同様に「psací stroj」でタイプライターを意味することになる。残念ながらこちらではワープロは一般的ではなかったので、「psací program」でワープロソフトということにはならないようだ。
三つ目は洗剤を表す言葉に使われる。「prací prostředek」というのだが、「prostředek」は、「真ん中」という意味以外に、手段や方法を意味することがあるのである。ちなみに別の動詞から作った「čisticí prostředek」も洗剤を意味するが、「prací prostředek」が洗濯に使う洗剤なのに対して、こちらは掃除に使う洗剤のことである。
最後は、「přijímací zkouška」という組み合わせでよく使われる。いや複数で「přijímací zkoušky」にするかもしれないけれども、受入のための試験、つまりは入試のことである。面接だと「přijímací pohovor」なんて言うこともある。入試は「přijímačky」と一語化した形が使われることも多いけれども、ほんらいは動詞から作られた形容詞が基になっているのである。
他にも「hrací automat(スロットマシーンのようなゲーム機)」、「odbavovací hala(空港の出発手続きをするフロアなど)」なんかに、この方法で作られた形容詞が使われている。
D三人称複数の変化形に「cí」をつける
この形容詞も軟変化で、不完了態の動詞からしか作れない。前の形容詞化と違うのは、府完了態の動詞からであれば、ほぼ間違いなく作れることである。「se」のつく動詞の場合には、「se」も一緒に形容詞化するというのも覚えておいたほうがいい。意味は「〜している」。
・jít → jdou(過去) → jdoucí(形容詞)
・vracet se → vracejí se(過去) → vracející se(形容詞)
一つめの「jdoucí」は、副詞的な「kolem」とともに、「kolem jdoucí člověk」という形で、「そばを歩いている人」という意味で使われる。「člověk」が省略されて、「jdoucí」が名詞として使われているように見える例も多い。このように、追加される副詞的なものが一つの場合には、前から名詞にかけることも可能だが、数が増えると後からかけることが多い。関係代名詞を使わない分、日本人には楽である。ただ「,」で区切る必要があるのかどうか不安になるので、普通は動詞から使った形容詞だけで前からかけることにしている。昔「Je poměrně hodně Japonců umějících alespoň trochu česky」なんて文を作ったことはあるけどさ。
二つ目は、サッカーなどのスポーツの中継で、自陣に戻ろうと走っている選手を形容するのに使われる。ディフェンスの選手につけて「vracející se obránce」とすることが多いかな。ハンドボールの場合には、退場から復帰しようとする選手とか、キーパー抜きで攻撃をしたあと、ゴールに戻ろうとするキーパーなんかにも使うし、怪我や病気などから仕事に復帰しようとしている場合にも使えるかな。
この手の形容詞、もしくは名詞が使われているものとしては、ツィムルマンの映画の題名が真っ先に思い浮かぶ。「Jára Cimrman, ležící, spící」。「ležet(横になる)」と「spát(眠る)」という二つの不完了態動詞から作られた形容詞が後ろからかけられているのである。名詞的に使っていると考えたほうがいいかもしれないけど。
ここに上げた形以外にも、動詞が基になって作られたと思しき形容詞はいくつもある。「zajímat se(興味を持つ) → zajímavý(興味深い)」なんかがその例なのだけど、規則性があるのかどうか判然としないのと、同じ形の場合に同じような意味が加わることになるのかよくわからないのとで、取り上げないことにした。いや、師匠に教わったのが、ここに挙げた5つの形容詞の作り方だといったほうが正しいか。
2020年11月22日21時30分。
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