2020年09月08日
中国大変、台湾大喜び(九月五日)
ビストルチル上院議長の率いる台湾訪問団が無事に帰国した。この台湾訪問は、世界的にも大きなニュースになるなど、大成功を収めたといっていい。恐らくは、ビストルチル上院議長を初めとする参加者の中にも、ここまで大きな成功を予想していた人はいまい。成功の最大の原因は、中国の横暴に対する反感が世界的に高まっていたことなのだから、中国に対しては自業自得とか、身から出た錆という感想しか思い浮かばない。
近年の中国の外交とも呼びたくないやり口は、表面上は言葉を飾ってはいるものの、中国からの膨大な投資と中国市場の開放を約束することで味方につけ、いわゆる「ひとつの中国」政策や昌す民俗対策に文句を言わせないというものである。ただ、チェコの例を見てもわかるとおり、中国側の約束が完全に達成されることはなく、約束を反故にしておきながら、相手側には守ることを強要する。
そして、台湾問題だけでなく、チベット問題などについて批判されると、投資や、中国に進出した企業を人質か使いにして脅迫する。やくざまがいの悪徳金融機関も顔負けのやり口なのだが、中国からの巨額の投資というのはそれほど魅力的なのか、詐欺に引っかかる国は後を絶たない。詐欺だと気づかないまま中国の温情にすがろうとして傷を大きくしているチェコみたいな国もあるはずだ。
さて、話は変わるが、チェコも日本と同じで、同じ三権の長の一つとは言っても、立法権の長である国会の議長の存在感は、行政の長である首相、大統領と比べるとはるかに小さい。上院など繰り返し不要論が出され、選挙の投票率も低く、大げさに言えば忘れられた存在で、議長であっても知名度はそれほど高くない。例外と言えるのが、かつて大統領選挙にも出馬したピットハルト氏と、在任中になくなったクベラ氏だった。
外遊に関しても、上院、下院の議長が独自に行うことはあるが、大きな話題になるのは、何か問題があったときぐらいで、大統領、首相の外遊とは注目度がまったく違う。それが今回、チェコ国内でも大きな注目を集めたのは、単に行き先が台湾だったからだけではない。中国が手下に逆らわれたガキ大将のような過剰な反応をして、一部を除くチェコ人の独立心に火をつけたからである。
台湾側の歓迎も、中国の反応に負けずに、非常に大きなもので、ビストルチル上院議長にとっては一世一代の大舞台になった。それでちょっと舞い上がったのか、初日の演説は、聞いている台湾の人も反応に困るようなことを言っていた。
確か、「チェコと台湾が手を組めば世界で一番になれます。その実例が、女子テニスの台湾選手と組んでダブルスの世界ランキング1位になったバーラ・ストリーツォバー選手です」とかなんとか。当然選手の名前も挙げていたけど、覚えておらず読み方もよくわからないので省略。テニスが盛んで人気もあるチェコでは、ストリーツォバーは有名で、ダブルスのランキング1位になったことも知られているが、台湾で、野球選手ならともかく女子テニス選手が誰でも知っているような存在になっていたかどうかは、いささか心もとない。台湾の国会での演説では、最後に「私は台湾人だ」とまずチェコ語で、その後、中国語で繰り返すことで万雷の拍手を浴びた。
今回の台湾訪問で、もっとも感動的だったのは、台湾訪問を計画し実現する前に亡くなったクベラ氏にも台湾から勲章が授けられたことである。夫人もチェコからビデオ通話で登場して謝礼を述べていた。その後、夫人はチェコの大統領府から最高勲章を授けるという話を断ったことを明かして、反ゼマンの人々を喜ばせていた。台湾訪問を阻止するために圧力を掛けた大統領から勲章なんて話にもならないということなのだろう。
台湾では、プラハ市長が、動物園で取材に答えて、中国と台湾のどちらが信頼に値するパートナーかが明らかになったと語っていた。直前に台北の動物園がプラハの動物園に、希少な動物を送るk東低が結ばれたという話をしていたから、プラハ市も中国が世界中でやらかしているパンダ詐欺に遭ったのかも知れない。
最後に、この訪問の恐らく一番の目的であった経済的な面でも大成功を収めたようだ。参加した企業の代表達が声をそろえて語っていたのが、ここまでうまくいくとは予想どころか期待もしていなかったということで、過去の企業関係者を引き連れての政治家の外国訪問でここまで成功したものはないとまで言う人もいた。
これは、ゼマン大統領が大成功だったと自慢してやまない何度かの中国訪問に同行した企業関係者が、首を振りながら、成果はあったけれども期待したほどではなかったと語っていたのと比べると対照的である。その得られた成果もどこまで約束どおりに実現したのかと考えると、今回の台湾訪問での成果との差はさらに大きくなる。
今後中国がどんな嫌がらせ、恫喝をしてくるのか注目である。
2020年8月6日12時。
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