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2021年05月11日

自分の診た肉を食う、ということ。

「出かけよう、外へ。」の続きです。)

いただきまーす!第3話で豚の頭検査覚えたての一平が、近所の居酒屋で豚の頭のハズシ肉をほうばるシーン。
私の好きな場面のひとつです。

あのですね、こればっかりは体験してもらわないとわかんないと思います。

ふらりと立ち寄ったスーパーで「今日はすき焼きにしよ。」とか「豚しゃぶがいいかな」とか言いながら、自分が検査したはずの肉をみんなが楽しそうに買っていくのを目の当たりにする。
そして自分が検査した肉を、自分で食べる。
こんなこと、獣医じゃなきゃ、そして自治体に入ってと畜検査員や食鳥検査員になってなけりゃできない体験です。
ああ、俺は間違いなく獣医だったんだなあという瞬間です。

日本全国、ご当地ブランドの牛や馬、豚、鶏、羊がありますよね。
それらはほぼ、地元のと畜場や食鳥処理場で解体されたものです。地元スーパーやお肉屋さんで扱ってくれていますよね。
検査所勤めを始めたら、ぜーったい、食べないとダメですよ!
きっと見え方も、味の感じ方も変わります。
また、よく分かんないなりに、他のブランドの肉と比べるようにもなります。

こうやって食肉にぐいっと興味が出てくると、ふらりと立ち寄った食品売り場のお肉コーナーも、なんとなく素通りできなくなっちゃったりします。(笑)

私は家畜保健衛生所と保健所も経験しました。
なので、そのブランド肉を生産している畜産農家さんからお肉屋さんまで、仕事で出入りさせていただいてたりします。
そうなっちゃうともう、お肉コーナーで地元ブランドのパック肉を手に取っただけで、農家さんの顔から自分の検査シーン、と畜場から出荷していく食肉業者の若い運転手さんの顔からパック肉を小売りしているお肉屋さんの若社長の顔まで、ぜーんぶ繋がって見えてきちゃうんです。

こんな体験は、と畜検査員と家畜保健衛生所の家畜防疫員、保健所の食品衛生監視員を渡り歩いた人間だけにしかできません。大学とかでも「from farm to table」なあんてカッコいい言い方で紹介されますが、それを現場で実地に体験し、実態も課題もぜーんぶ目の当たりにする。
そして体験を踏まえ、食肉の作り手と売り手がどう結び付いていけば、地域で暮らすみんながおいしいと言いながら幸せに楽しく暮らしていけるかを一生懸命考える。

大方の獣医学生さんは動物の診療をしたいと考えて大学に入ったのだから、なかなかイメージが湧かないかもしれません。
けれど今ご紹介した仕事が、昔々から獣医さんが地方公務員という身分でやってきていた、おっきな仕事なんです。
前の時代を大きく引きずりながら今に至りますが、今の時代だって、やんなきゃいけない仕事なんていくらでもあります。

あまり考え込まないで、まずは自分で食肉の生産と流通の現場を見てみて、食べてみる。
その上で、いろんなことを感じていただけたらいいなあと思います。

出かけよう、外へ。

「断言します。日本には素敵な街がたくさんある!」の続きです。)

いただきまーす!」第2話で、一平は車を買うことにしました。
別記事でも書いてますが、地方での暮らしには車が必須。
今回のテーマは「出掛けよう」です。

この先の仕事を考えていると、心のバランスにあまり考えが回らなくなってしまうことがあります。
仕事は大事。お金も大事。
けれど、心のバランスを保つことも大事です。

私が見かけた若手の獣医さんに、少し気になった方がいました。

仕事にまっすぐで、いつも仕事のことが頭から離れない。あるいは仕事のことしか考えることが思いつかない。自分の仕事はこれでいいのか、このままでいいのか、と自分に問いかけ続ける。職場以外の時間をずっとそんな風に過ごしているように思えました。
そしていつの間にか考えが極端になりすぎたり、感情の起伏が大きくなったりしてしまっていることに気が付かなくなってしまうようです。
特に、知り合いもいない小さな街で、職場とアパートの往復ぐらいしか行動範囲がなくなってしまった方に、その傾向をよく見かけました。
小さな街ですから、刺激も少なくて余計に出不精になりがちだったのでしょうね。

学生の時もいろいろ思い悩むものですが、周りに家族や友人、知人、研究室のメンバーなんかがいて、一人きりになることは、まあ、ありません。
時には煩わしいと思う彼らが、実はあなたをリフレッシュしてくれてたんです。
独り暮らしで仕事をやり始めると、自分から動かない限り、誰もアパートに訪ねてきてくれないし、面白そうな話も舞い込んできません。
そこが学生の時のアパート暮らしとの一番大きな違いです。

自分への問いかけはとても大切なプロセスですが、そればかりになってしまうと自分で自分を疲れさせてしまいます。
こんな時に自分をきちんとリフレッシュできる術を身に付けた人。
そんな人が社会人生活に適応していってるみたいだな、と感じています。

思い当たる所がある方。
ふらりとあなたの住む街へ出掛けてみませんか?
できる限り、一人じゃない方がいい。
誰も知り合いがいないなら、思い切って、職場の同僚や新採研修で知り合った同期を誘いましょう。

お風呂が好きなら近くの温泉施設。
音楽好きなら野外イベントやライブハウス。
食べるのが好きなら食べ物屋さん巡り。
料理が好きなら地元スーパーや産直。
アウトドアなら海や山。スポーツもいいし、自然探索もいい。
滝とか巨木巡りなんてのも。
どんなに小さい街だって、あなたの行動半径に必ずどれかはあります。

どこだって、なんだっていいんです。
誰かと一緒に歩いてみると、
「なんだこれ?」っていう発見、必ずありますよ!

「自分の診た肉を食う、ということ。」に続きます。)

断言します。日本には素敵な街がたくさんある!

と畜場や食鳥処理場はごく一部を除いて、ほとんどがあまり人目に触れることのない郊外に建っています。また、日本全体でみれば消費地である大都市圏ではなく、家畜生産が盛んな地方都市またはその周辺市町に数多く設置されています。
食肉衛生検査所は、と畜場や食鳥処理場内で解体される家畜や家禽を検査する機関。なので大半の食肉衛生検査所は、と畜場に隣接して整備されます。

という訳で、日本全国、大半の食肉衛生検査所は、人里を離れた郊外にあるんです。そして最寄りの市街地の規模だって、小さな市や町がせいぜいです。

「いただきまーす!」の主人公、田中一平の勤務先も田んぼの一本道を進んだずっと奥。
住むことになった街は、ごくありふれた小さな街。
都会で生まれ育った一平は、「本当になんにもないところに来ちまった」と思ったに違いありません。

と畜検査をしているたくさんの公務員獣医さんが、日本のいろんな場所で毎日、と畜場に向かって車を走らせています。
燃えるような夕焼け。突き抜けるような青空。海かと錯覚してしまうぐらい広い田んぼや牧草地。かなたに雄々しくそびえ立つ秀峰。
たとえ通勤途中では見えなかったとしても、暮らしの中で四季折々、とある瞬間に、圧倒的スケールの鮮烈な風景を目にしているはずです。

そして暮らしている小さな街。
さてして、そこにはホントに「なんにもない」のでしょうか?

実はいろんなものがあって、いろんな人がいる場所なのかもしれません。
実はとても素敵なものを見つけることができたり、魅力的な人に出会える場所なのかもしれません。
けれど運悪く何も見つけられず、結局去ることになってしまう場所なのかもしれない…。
それは実際にそこに行ってみて、住んでみなきゃあ分かんないのです。

私は小さな田舎街で生まれ育ち、自然豊かな土地で獣医学生生活を送った後、首都圏や地方都市生活を経て再び生まれた土地に舞い戻って暮らし始め、今もここにいます。
そんな私が生まれ育った小さな街で再び暮らし始めた当初、つくづく思ったこと。それは、

「ここってこんな所だったんだ。俺は何も見えてなかった。」
ということです。

自分の地元の魅力にもっと早く気付いていれば、首都圏や地方都市に行くこともなかったかもしれない。いや逆に、他所を見てきたからこそ、生まれ育った街のいい部分を見つけることができるようになったのかもしれません。
そしてそんな魅力に溢れた街が、私が生まれ育った街だけ、なんてことは、絶対あるはずがないのです。

声を大にして言います。

「日本という国には、小さくたって素敵な街が、たっくさんあるんだぞお!」

田舎の食検に入ったばかりの一平は、妙な上司や同僚に振り回されつつ、小さな街を少しずつ歩き始めているようです。

一平が今後何を見つけていくのか。
どうか見守ってあげて下さいね。

「出かけよう、外へ。」に続きます。)
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プロフィール
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拓一人
拓一人(たく かずと、ペンネーム) 某県で20数年公衆衛生獣医師として勤務し、退職しました。 食肉衛生検査所、家畜保健衛生所、保健所、県庁での勤務経験があります。 獣医師としての進路に迷っている方、これから公務員獣医師になろうと考えている方や、今現在公衆衛生獣医師として勤務している方々に、何かの形でお役に立てればいいかなと思ってます。 今は家族と共に、地元の豊かな自然の姿と旬の食材を楽しむ日々を送っています。
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