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2021年05月11日

県庁での獣医さんの仕事。

食品・生活衛生や動物関係を主幹する課の獣医さんは、獣医師だけでなく、薬剤師、栄養士さんや一般行政職の方たちと一緒に仕事をします。

仕事の中身は、まあ一言で言ってしまえば、保健所の食品・生活衛生部門と動物部門、そして食肉衛生検査所の管理運営です。
メインは予算編成と県条例や規則、国の指示の変更に伴う県の関連通知の改正。そして庁内調整、マスコミや議会対応。
さてそんな主幹課で担当、課長補佐、課長という役職に着いた獣医さんって、どんな仕事をしているのか。
今回はこれをお話しします。

担当の仕事と向き合う人達


担当は、自分の担当する法令に関係する統計報告や調査物への回答立案、県条例や県規則改正案の立案、国の指示を受けて行う県の要領改正や指示の発出、予算積算と要求書の作成、そして県内各所で発生した有事案件への対処が大きな仕事です。
これらの仕事を進めるため、県内の保健所や食肉衛生検査所、衛生研究所の担当者と情報交換することはもちろん、必要があれば国の担当者や他県や県内市町村の担当者に問い合わせたり、庁内の法令担当や予算編成担当と議論しながら作業することになります。

一般行政職として採用された法令・予算担当者と議論を重ねるということは、一体どういうことか。

一般行政職として県に採用された人達は、高い競争率をかいくぐって入ってきています。物事の急所を捉える能力、論理的思考の展開や文章表現力、ディベート力は抜群です。
それに対してこちらは論理的思考の展開や文章表現、ディベートのトレーニングなんかしたことのない、彼らにすれば、ただの技術屋さん。
その2者が議論をする。

言うならば、大人と子供が議論をするようなものです。

まずは県の条例や規則の改正。
獣医系大学出身者はコチコチの理系。
学術文献というのはある種のフォーマットで文章が構成されているし、大学時代にさんざん読まされているので、専門用語が理解できればなんとか読めるし、書くこともまあできる。
けれど法律を読み解くトレーニングを学生のうちからやってた獣医さんなんか、一人もいません。
複雑に絡み合う法律を読み解いて系統的に理解して臨まないと、法律の改正文の立案なんて絶対できないのです。
拙くも見よう見まねで書き上げた改正文と絡み合う法令一式を持って庁内の法令担当に一から説明して理解してもらい、改正文の添削をしてもらう。

県庁の法令担当は、大学で法学を専門に勉強してきた専門家。
核心を突く質問を次々と浴びせられては回答できずに持ち帰ること数回で、ようやく形になってきます。改正には議会の議決が必要なので、作業もただダラダラやってるわけにはいかず、議会開催の時期をにらんで作業を進めなければなりません。

そして予算編成。
次年度当初予算の編成やその年度の過不足を補うための補正予算の編成は、年間スケジュールが決まっており、それに合わせて全庁的に作業が進んでいきます。
維持経費的な予算は前年度見合いで積み上げればある程度形になるのでまだましですが、新規案件はもう大変。積算をきちんとやらないと、予算担当から鼻で笑われて突き返されて終わりです。全庁的に決められている積算ルールも自ら勉強し、それを織り込んで作る必要があります。
国庫補助が必要な案件ならば国の担当者との連携も必要ですし、スケジュール管理もきちんとしておかないといけません。今年度分は予算枠がなくなったから終了です、なんて言われた日には、これまで積み上げてきたものがいっぺんに崩壊してしまいます。

そんな法改正や予算に加え、国や他県からの調査物への回答作成、定期統計事務の締め切りに日々追いまくられる中、容赦なく有事案件が発生します。

食中毒を疑う事案や流通食品の不良、宿泊施設や公衆浴場でのレジオネラ感染を疑う事案、人に危害が発生した、あるいは社会問題化した重大な動物案件。
そんな案件が県内のどこかで発生すれば、今目の前でやってるすべての事務を放り出して、その情報収集と報道発表準備に取りかかって情報を整理し、課長補佐や課長に迅速に上げてやる。
各案件の初動、つまり「報道発表案件になるかもしれない」という情報を得た時点から対応しているので、実際に世間の皆さんがニュースで知り得る案件の数倍の数は、有事対応で作業しています。

県庁主幹課で県内各所の有事案件を一手に引き受けるので、重なるときは、まあ、重なる。あちらの保健所から一報が入ったと思ったら、今度は別の保健所からの電話…。
弱り目に祟り目、ってやつですね。
複数の有事案件に平行で対処している時なんか、もう自分が今何やってるかすら、危うくなってきます。

課長補佐の仕事と向き合う人達


課長補佐の仕事は庁内調整と外部関係者の窓口です。

担当部署と連絡を取り合いながら自分の課の予算、法改正スケジュールを全庁的なスケジュールに乗せてやり、進行管理します。
また、食品・生活衛生、動物に関係する様々な団体との情報交換窓口にもなります。

そして課長と共に行う、何よりも大きな仕事があります。
庁内の上司、つまり所属する部の部長や知事、そして県議会議員への仕事の説明。「レクチャー」といわれる作業ですね。
このレクチャーを経て、部長や知事、そして県議会議員が、議会などの公式の場で答弁をするのです。だから部長や知事、議員も真剣勝負でこちらに向かってきます。

考えてもみてください。
部長級はもともと高い競争をくぐり抜けて県に入ってきた一般行政職の人達の中から、若い頃から2〜3年ごとにあらゆる部署へ異動しながらそれぞれの分野の法令を読み解いて難題を解決し続け、同期や同僚を押しのけて部長職を勝ち取った県庁の生え抜き。知事だって議員だってあらゆる強敵をふるい落として勝ち上がってきた人達です。もう論理的思考と判断力の権化のような人達ばかりです。
軽々しい発言なんてできるはずありません。言葉のひとこと、活字の1行ごとに根拠を持って、必死に説明していきます。

レクチャーは予算編成や議会開催前にピークを迎えます。
相手はこちらの仕事に関しては全くの門外漢。しかも恐ろしく頭が切れる。
あらゆる案件を、専門用語を思いきり噛み砕いて、こちらの意図を理解してもらえるように極めて分かりやすく、言葉を選んで丁寧に、しかも短時間で伝える。
相手の質問には必ず応じ、求められた資料は必ず提出。その場で返せない部分は持ち帰って整理し直し、後日改めて説明に行く。

レクチャーは予算や議会案件だけではありません。
有事案件が発生した場合は所属の部長に進捗状況を逐次報告。そしてマスコミ発表が決定した案件は、知事まで情報を入れます。
有事案件をマスコミ発表した後は、課内にマスコミ各社からの質問の電話が一斉に鳴り響きます。大抵は、課長補佐がこの電話を一手に引き受けています。

そんなこんなで脂汗と冷や汗をかきながら、レクチャー資料と分厚いファイルを大きなカバンに詰め込んで県庁内の部長室や広報室、時には知事室まで日々駆け回る。座れば電話、机には決済書類の山。そしてパソコンを開ければうんざりするようなメールの山。これが県庁の課長補佐です。

担当も大変な業務量を背負っていますが、課長補佐は、担当とは別次元の仕事を担っているのです。

課長の仕事と向き合う人達


そして課長。
課長は表看板。
レクチャーの際、資料作りや数字出しは担当や課長補佐がやってくれますが、県議会議員、部長や知事に直接発言するのは課長です。
また、県議会の各種委員会の席上で公式見解を発言させられることもあります。

まさに毎日が針のムシロ状態…。

そして課長の先決事項でトップシークレット。
そうです。所管する課や出先機関に所属する獣医師の人事編成です。ここで課長は、直接の上司である部長達の本当の素顔、人事担当課の考え方の実態を、目の当たりにしているはず。

人事を編成している課長が見ている景色。
申し訳ありませんが、こればっかりは体験したことがないので分かりません。
ただ、次年度の採用試験が一段落した毎年の秋頃にはもう、次年度体制の青写真が出来上がっているはずです。なのでおそらく、夏にはもう人事編成作業を開始しているのでしょうね。

県庁の獣医は「翻訳者」


やってみてつくづく思いました。
県庁の獣医は担当、補佐、課長、どの役職であれ「翻訳者」なのだと。

ここまでお話ししてきたように、それぞれの役職で、これまで会うことはまずなかった人達と仕事で向き合うことになります。
彼らに分かってもらえないと、仕事が前に進まない。前に進まなければ、現場に投入しなければならないお金も人も、手に入らない。

獣医さんがいる職場でやっていること。現場で大きな障壁となっていること。そうしたことを、全く予備知識のない人達に分かる言葉に翻訳し、理解してもらう。

結局はお金や人をもらおうとする話です。きれいごとだけで進めるはずもありません。時には現場の獣医さんに総スカンを食うような話も持ち出さないといけません。裏事情を知らない同僚や先輩からひどい言葉を投げかけられることも多々あります。
それでも県庁主幹課にいる獣医さんは、現場のあるべき形を見据えながら、日々各所を走り回っています。

彼らがいなければ、公衆衛生獣医師の現場は県の組織の中にまともに存在することすらできないのです。

公務員として働く獣医さん全員が必ず県庁に行く訳ではないので、県庁勤めの獣医さんの実態を知る人は、同じ公務員獣医さんでもそう多くはありません。
これから公務員獣医になろうとしている人だけでなく、知らずにいる現職の公務員獣医さんにも、どうか彼らの悪戦苦闘している姿を知っていて欲しいと思います。

獣医さんなら知っておきたい、保健所の食品衛生監視員はこんな仕事

食品衛生監視員ってなんだ?


よくテレビや新聞で食中毒事件が出て保健所が調査中、あるいは営業停止、とか出てますよね。
これは都道府県や保健所を設置する政令指定都市、中核市、特別区が、「食品衛生法に基づいて」立入検査をしている、あるいは営業停止処分を行った、という意味です。

そもそも私達の暮らしや商売の自由は、憲法で保障されています。
しかし、なんでも自由にやっていいよ、という訳じゃない。
周囲の方々に何らかの悪い影響が出てしまうようなことを起こしてしまった会社や人の活動は、その活動を詳しく調べ、何らかの制限をして影響がないように改善させてから再出発してもらわなければいけない。

食品の衛生に関することは食品衛生法で決められていますが、この法律では、立入調査などは、国や都道府県、あるいは保健所を設置する市及び特別区の職員のうち、食品衛生法に定める食品衛生監視員を任命した職員にやらせろ、と決められています。

任命できる職員の資格要件が、法律で決まっている


そして任命できる職員の資格要件もこの法律で決められており、その資格要件の中に、獣医師が含まれています。
また、獣医師免許を持っていなくても、獣医大学を卒業して獣医学を修めている人なら、食品衛生監視員に任命することができます。
上記のほか、資格要件としては、医師、歯科医師、薬剤師、食品衛生行政経験2年以上の栄養士さんの他、農芸化学など特定の課程を修了した人も食品衛生監視員になることができます。

自治体が募集する「衛生監視」とは?


所管する動物園の獣医師や保健所の狂犬病予防員になってくれる獣医師は十分確保できているけど、保健所の食品衛生監視員が不足しそうだ。
そんな時、自治体は獣医師や獣医大学卒業者だけでなく、いろんな経歴の方に間口を広げて「衛生監視」や「衛生(食品)」という職種で募集します。

身分と給与は?


「衛生監視」や「衛生(食品)」などの職種で採用された人は、技術系の大卒一般行政職の身分となり、給与もそれらの方と同等になります。
給与月額は一般的に、獣医師として採用されるより3万〜5万円くらい安いレベルでスタートします。

私が体験した食品衛生監視員の仕事


さて、食品衛生監視員になるとどんな仕事をやることになるのか。

私が食品の係で体験した主な業務は、こんな感じです。
@食品関係営業施設の許可事務と監視指導
食品の営業のほとんどが、保健所の許可や届出が必要です。なので年中、たくさんの方が食品営業の相談に来ます。
カウンターに押し寄せるこの人の波を、まず捌く。

食品の営業許可は、営業のやり方や提供する食品の種類により許可を取ってもらう業種が変わります。
なので、まずどのような営業行為がどの許可業種あるいは届出業種に該当するか、そしてその業種に求められる施設と設備の要件は何か、管理運営の際に留意しなければいけない要件は何か、ということを頭に入れておかないと、全く仕事になりません。

加えて、食品の多くが国の法律で規格規準と保存規準が決まっている上に、法律で決めた規準ではなくガイドラインとして国から指示されていることもたくさんあります。
これもきちんと説明しないといけない…。

もう、最初の頃は必死に覚えながらの即、実戦。
主な業種を経験するだけで2年かかりました。

そして新規の施設と許可を更新する施設の立入検査に並行して、各業種の店舗や製造所に定期的に伺って衛生状態を確認したり、その時々のお知らせを配布したりする、いわゆる監視指導もやります。
なので年中、管内を走り回っていましたね。

公用車で飛び回って一旦職場に戻ると、今度は許可申請書の審査用書類の作成と決裁事務をこなしつつ、カウンターに相談者が来ればその応対。そして相談や苦情の電話への対応…。

いやいや、毎日てんやわんやでした。

ただ、何故かわかりませんが、誰も来ないし電話も鳴らない時間がぽっかりとあったりして、この時に係のみんなでほんの束の間、和やかなお茶を楽しんだりしてましたね。
忙しい仕事を切り盛りしている者同士の、このひとときがとても楽しかったのを覚えています。

A食品が原因と疑われる有症事案の調査
食品衛生監視員の重要な任務のひとつが、食中毒事件への対応です。
それはある日突然、一本の電話で始まります。

誰かがこの電話を取ると、居合わせたみんながすぐ感づき、ピタリと仕事の手を止めます。そして課長や係長がすっと応対者に近づき、聞き耳を立てる。
あとは応対者のメモを覗き込みながら概要を把握し、課長や係長が課内を見渡してアイコンタクト。

電話が終わるや否や、カウンター業務中の職員を除いて課内のほぼ全員が静かにミーティングテーブルに集合し、情報共有した後、初動班が静かに出動。
決して、「課長!出ましたあ!」なあんてフロア中に聞こえるような大声なんか出さないのです。
カウンターにお客さんがいますからね。

あとは現場からの初動班の情報をもとに、食中毒を疑われる施設の衛生確保や拭き取り検査、その施設を利用した人への聞き取り調査や検便検査の手配などを、手の空いてる人みんなで手分けし、一斉に取りかかります。
課長は医師である保健所長や県庁との情報共有と方針の模索。係長は現場の指揮。
刻々と変わる状況に対応しながら2の手、3の手を繰り出していきます。

食中毒事件の円滑かつ迅速な指揮。
そして保健所長や県庁との情報共有と組織方針の決断。
これは場数を踏んでない人には、絶対できません。食品衛生監視員としてのキャリアが一番問われる局面ですね。

B成分や表示の不備、不衛生な食品の調査
こいつも難題です。
食品の多くは成分の規格規準が決まっています。食品の表示もきちんとルール通りに表示しておかなくてはなりません。
カビが生えていたりした不衛生な食品は、購入した人が健康被害を受けるおそれがあります。

これらの不備が発覚した食品は、直ちに回収してもらい、消費者の手に渡らないようにしなくてはなりません。
当然のことながら、探知したら即、製造所へ出動です。(苦笑)

そしてまず、問題の発生した食品の流通量を把握するのですが、どこまでの製造ロットを回収範囲とするかの判断が難しいケースが多く、伝票や製造記録の写しを持ち帰ってみんなで議論することもしばしばありました。
回収ロットが決まればその全量を回収してもらい、改善策を取った上で製造を再開してもらう。
発覚から製造再開までたどり着くのに、何日もかかります。

近年は物流のノウハウが発達し、そのスピードも速いので、探知時点で既にほとんどが広域に流通してしまっていることが多々あります。
ひとたび回収となってしまうと、このことも大きな足かせになりました。

食品衛生監視員としての仕事以外も盛りだくさん!


保健所の食品衛生監視員は、獣医師免許を持っていれば狂犬病予防員を兼務することが多いです。また、動物愛護法関係の仕事も担当します。
スタッフ事情によっては、旅館・ホテル、理容師・美容師などの担当になることもあります。これらもなかなか大変です。
放浪犬の捕獲や収容・返還に出動したり、咬傷犬の対応や犬猫の譲渡などは日常的です。
旅館・ホテル、公衆浴場でレジオネラ感染患者が発覚したら、即調査と対策に走ります。
理容師・美容師の世界も人の出入りが激しく、開業相談はひっきりなしでしたね。

踏んだ場数と知識が武器


やってみてつくづく思ったこと。

まず食品関係の法令や通知、飲食を介して人に健康被害を起こす物質についての勉強をしないと土俵に上がれない。食中毒調査に至っては、細菌やウイルスはもちろん、山菜やキノコ、フグの魚種からアニサキスのような寄生虫、サバのヒスタミン等々…。覚えることは山ほどあります。
そして、この仕事は経験値が何よりも必要だということです。一回でも現物とそれを食べて七転八倒している患者さんを目の当たりにすれば、もうその残像が頭から離れることはありません。残像がある監視員は、初動で状況を聞き取った瞬間に、原因と考えられる複数の要因が頭にひらめきます。
その意味で、保健所の食品衛生監視員を長く勤めている方には絶対敵わない、と痛感する日々でした。

また、保健所の食品の係という組織は、若手には若手の、中堅には中堅の、そして総括者には総括者の役割が明確にあり、各々がきちんと役割を果たすことで、みんなが有機的に噛み合って仕事が前に進んでいく。
そんな組織です。

私は圧倒的に食肉衛生検査所が長かったので、保健所の食品衛生監視員としてのキャリアが全然足りませんでした。
若手、中堅、そして総括者。それぞれの年代でしなければならない勉強と経験があります。自分も、これをきちんと各年代で体験しておきたかった…。
それが私の悔いですね。
まあ、ご縁がなかった、とも言えるのでしょうか…。

保健所勤めをお考えの獣医さんへ。


食品衛生監視員という仕事は、膨大な知識と踏んだ場数を武器にした、誇りをもって続けていける専門職です。

獣医師になったのに、食品衛生監視員ってどうなんだ?と思うかも知れません。

でも、獣医学を修めたあなたに来てほしい、と言ってくれる職場がここにあります。
ともに暮らしている地域のみんなが不安なく買い物して、おいしいと言って食べてくれる。そんなありきたりの日常を、見えないところで大汗をかきながら支えているのが、食品衛生監視員です。

自分が大学に入るときには思っても見なかった仕事かもしれないけど、そういう仕事に巡り会うのも、ご縁ですよね。

この際、中途半端にと畜検査や食鳥検査に浮気なんかせず、保健所にどっぷりと漬かって食品衛生監視員の高みを極め、
「食い物の営業とリスク管理は俺に任せろ!」
なあんて啖呵を切ってみる。

そんな生き方、とても素敵だなあ、と私は思いますよ。

地方公務員獣医師への転職をお考えの方からよくあるご質問

地方公務員獣医師職場への転職を検討している方からよく寄せられるご質問をご紹介します。
適宜、追加していきますね。

自治体の職員募集に「衛生監視」とか「衛生(食品)」って見かけるけど、これって獣医師の募集とどう違うの?


食品衛生監視員として募集している、という意味です。
食品衛生監視員についてはこちらの記事を参考にしてください。
「獣医さんなら知っておきたい、食品衛生監視員はこんな仕事」

都市部の動物病院に勤めてたので今、都市部暮らし。引っ越し大変なんで都市部の自治体受けようと思ってるけど…。


転職で大きなハードルになるのは、引っ越しですよね。
お金も手間もいっぱいかかるから、できれば引っ越ししないで転職したい。

ただ、地方公務員の場合はちょっと事情が違いますよ。

まずお金。
多くの自治体で赴任旅費制度があります。
採用後6月あたりに支給されます。
後払いにはなりますが、引っ越し代を補う程度の金額が支給されることが多いようです。
そして新居。
どの自治体も勤務先に程近い職員アパートがありますし、なくても家賃補助制度があります。
だからどんだけ遠くの自治体に決めたって、引っ越しのお金と転居先に限っては、そう心配する必要はないのです。
各種制度の中身は自治体によって大きく違います。なので、詳しい内容は受験先の自治体に是非確かめてみてください。

引っ越しが面倒なんで都市部にした。
そういう決め方、ダメじゃないです。けど、転職ついでに心機一転、地方のうまいものや自然を満喫しながら、家畜生産が盛んな地方で家畜衛生やと畜衛生でもやってみっか、なあんて切り口もあっていいような気がしますね。

特にいろんな地方の食べ物やアウトドアが好きな人には、そんな転職もお勧めしますよ。

家畜衛生やと畜衛生。今まで頭になかったけど、ぶっちゃけどうなの?


家畜衛生、と畜衛生。
断言します。
楽しいです。(笑)
(記事「私が体験した家保、食検、保健所はこんなところ」もご一読下さい。)

小動物臨床やってた人なら、相手が家畜に変わるだけのことで、獣医の本業である動物の診断を引き続き修得し発揮できる場所ですから、獣医師としての楽しみを感じることができますよ。

保健所って、どうですか?


保健所に行くと、確かに動物関係の仕事もあります。
ですが、主には食品衛生に関する仕事で、時に旅館・ホテル、理容師、美容師の営業許可やこれら業種の苦情関係の仕事を担当することになりますね。
動物の診断みたいな仕事とは全く無縁なので、これには抵抗感があるでしょうね。

でもしょうがないんですよ。

保健所はこういった生活に密着した営業がきちんと行われるように監視し、指導する、紛れもないお役所なのです。
そしてその保健所が獣医さんを雇っているのは、国の法律で定める食品衛生監視員と狂犬病予防員を任命して、食品衛生法と狂犬病予防法に基づく仕事をしっかりとやってもらうためなんです。

一方、狂犬病予防法を除く動物関係や、旅館・ホテルや理容・美容といった生活衛生関係の立入検査や指導は、獣医さんにやらせなさい、とは国の法律には書いてない。
けど、獣医さんに保健所の職員になってもらったんだから、保健所の一員として一緒に、動物関係はもちろん、ホテル・旅館や理容師・美容師なんかの生活に密着した営業衛生仕事もやってもらう。
ただでさえ人手不足な保健所職場。
国家資格を持って同じような境遇で保健所で働いている薬剤師さんだって頑張ってやってるのに、それは獣医の仕事ではありません!なんて言える訳ありません。

食品衛生監視員と狂犬病予防員。
任命職種のうんちくは、まあ、後にして。

動物案件と生活衛生関係業種の許可事務と衛生指導、そして苦情処理。
あまたの法令や事例集をどっさり両手に抱えて組織の上司や営業者さん、一般住民の皆さんへの対応に日々大汗と冷や汗をかきまくっているのが、保健所の獣医師です。

やだなあ、と思うあなたには、家畜衛生業務として獣医師を募集している市を選ぶという選択肢があります。
あるいは一か八か、畜産部局に行きたいです!と言って見るか、ですねえ…。
ひょっとしたら、かなうかも、です。

ただ分かってて欲しいことがひとつ。

食品衛生監視員だって、他の生活衛生業種の監視指導だって、勉強すればするほど、そして場数を踏めば踏むほど、いろんな出来事に遭遇して困り果てている営業者や住民の方が再び充実した生活を取り戻すお手伝いをどんどんできるようになります。
「ありがとう。あんたに相談してよかったよ。またなんかあったら頼むね。」
なあんて一言、一回でももらってみてください。
なんやかんやあるけど、この仕事も悪くないな、って思ってもらえること、受け合いますよ。(笑)

公務員になればブラックな仕事環境から抜け出せる?


サービス残業は、まずないでしょう。やった分は基本、代休振り替えか残業代が出ると考えていただいて問題ないと思います。
ただし注意点がひとつ。
役所なんだから一年通じて定時で帰れるんでしょ、なんてことは思わないで下さい。

家保は突然の病性鑑定や立入調査、保健所は食中毒や公衆浴場のレジオネラ症発生、放浪犬や咬傷犬の通報対応など、緊急事案に対応するため突然残業になることがよくあります。
また、緊急呼び出し用のケータイを輪番制で持たされ、ケータイが鳴れば即出動できるよう、所管する管内でケータイ待機することもよくあります。

極めつけは県庁です。
各エリアの事案に対処したり総合調整を行っているので、慢性的な残業労働になるものだと思っていただいて、まあ、間違いないでしょう。

食肉衛生検査所は残業があまり発生しません。
しかし、ゴールデンウィークや年末年始、お盆など、長い連休の前後には、臨時的にと畜場を開場することが多いです。この点もご注意を。

農林分野と衛生分野。配属先の希望は通らないの?


基本、採用時は、配属分野の個人希望は尊重してくれません。

しかし、人手不足を背景にしているのでしょう。
配属されて何年か経った若手職員については、辞められるぐらいなら言うこと聞いてやろう、という雰囲気も、だいぶ出てきたのかなという印象を受けています。

言うだけはタダですよ。
ひょっとしたら、希望がかなうかもしれませんね。(苦笑)

自治体はどこに行っても仕事は同じ?


所管する法律はどこも一緒。家畜伝染病予防法だったり、食品衛生法、と畜場法、動愛法だったり。

けれど決定的に違うのが、地域ニーズです。
各自治体では、この地域ニーズを満足させるように獣医師を配属します。

畜産が盛んな自治体なら家保や食肉衛生検査所の運営のために、たくさんの獣医師が必要になります。
都市部であれば、動物問題の解決や食品の提供・製造・流通施設の監視や旅館・ホテル・公衆浴場、理美容業の監視に多くのマンパワーが要求されます。

また地域ニーズの他に、公設の動物園、水族館等がある自治体であれば、これらの職域での仕事も求められますね。

よく「どこでも一緒なんだから、一番給料高いとこ行こっかな」なんて話を耳にしますね。

けれど腰掛け程度に仕事して脱サラするならともかく、その自治体に長く勤める気が少しでもあるのであれば、行った先で何させられるかぐらいは、ある程度下調べしておくことをお勧めします。

動物病院の狭い人間関係が嫌になったから公務員に転職したい


公務員職場は転勤が必ずあります。なので、たとえどんなに合わない人がいても、相手か自分のどちらかが、必ずいなくなります。
この意味では職場の人間関係が必ずリセットされる公務員の方が気楽かもしれませんね。

しかし、地方公務員獣医師が仕事で対峙しているのは、そこに住む一般住民の方や、その土地でずっと畜産や食品関係で仕事している事業者です。
彼らには転勤なんかありません。

あなたがどんなに転勤しようが、回り回って、いつか必ず再会します。
あなたもその地域に住む一員なのです。
彼らとの繋がりを健全に保ち続けることこそ、地方公務員獣医師として仕事を続けていくための必須要件です。

結局、地方公務員獣医師職場であろうとも、人間関係から逃げては仕事を続けていけないのだと言うことを、どうか肝に命じておいていて下さい。

獣医師免許取るのに2千万近くかかった。地方公務員の安月給では元がとれない


もらえる金額のことを言えば、50代中盤まで勤めても年収800万少々。
求める生活水準は人により様々なので、少ないのかどうかは何とも言えません。
それに地方と首都圏では物価も大きく違うので、いよいよお金の評価は難しいですね。

その学費を自分で奨学金を得て支払った、あるいは親に返さなければいけない、という方は、最初からマイナスの出発を強いられています。
なので、リスクをとってでも開業の道を模索するか、民間企業の門を叩くなど、地方公務員獣医師よりももっと実入りのいい職域に就かれることをお勧めします。

さて、親が払ってくれた、返す必要はない、という方へ。

親御さんはあなたの未来への投資として、払ってくれたはず。
親御さんはあなたからお金を返して欲しくて、あるいはあなたから投資分以上のお金をもらうことを期待して払ってくれたのではないのです。

ただ、あなたが充実した人生を送ってくれることを願っているのです。

私は思います。

お金は必要。けれど、お金だけを物差しにして人生を決めるな、と。

適当に働いて元手貯ったらさっさと辞めて、脱サラしちゃおうかな


大いにあり、ですね。(笑)
踏み台にされてしまう組織の方がダメなんですから。
起業や財テクの才覚のある方は、是非踏み台にしてあげて下さい。
その方が、組織も「良質な人材にとどまってもらえるよう、変わらないといけない」と本気で思うようになってくれるはずです。
私は、それを期待します。

勤務公所決定は3月第3週末以降。引っ越しは短期決戦!

新たに地方公務員獣医師になることが決まっているあなた。
行く自治体は決まっているけれど、勤務先はまだわかりませんよね。

勤務する公所がどこになるか、いつあなたに連絡が入るかきちんと教えてもらってますか?

人事異動内示が出ないと、あなたの配属先は連絡されません。
内示は、都道府県議会終了後1日から2日経過後に行われます。なので多くの都道府県自治体は、人事異動内示が3月の第3週の後半か第4週の前半。いやらしいことに諸般の事情から「この日に内示します」なんて事前連絡は、在職者にもありません。
大抵の方がわざわざ遠くから来てくれるんだから、在職者はともかく新人君へはもっと早く教えてあげればいいのにと毎年思っているのですが、なかなかそうはいかないみたいで。まあ、申し訳ありませんが腹をくくってもらうしかないですね。

当然この時期、引っ越し関係業者さんはまさにピークを迎えています。

アパート探しから始まって、引っ越し業者選び、ネット回線などなど。
4月1日の辞令交付式まで10日ほどしか時間がなく、短時間で一気に手配しなければなりません。
特に地方は物流もアパート情報も不足がち。
私も、首都圏のようにうまく決められず四苦八苦している新人君をよくお手伝いしたものです。

県職員アパートへの入居希望の方にはさらにご忠告。
内示後に行われる抽選会が終わるまでアパートが決まらないので、もっと時間がなくなってしまいます。
ヘタすると5日ぐらいで全部やらされるハメになっちゃいますね。
家族がいる人なんか、これに保育園や小学校の手続きが加わりますからもう大変です。

そんなこんなでドタバタの引っ越しになるのは避けられません。
行き当たりばったりで決めちゃうと時間もお金も大きくロスしてしまいます。
今から細々下調べをしておいて、連絡が来たらすぐ動けるようにしておくことが大切です。

地方では通勤に自家用車が必要な公所がほとんどです。勤務先が決まったらすかさず車が必要かどうかを教えてもらい、今のうちに調達して持っていくか、現地調達しなければなりません。
初期投資として痛い出費ですが、ないと生活できませんよ。(苦笑)
どうかくれぐれもお忘れなく。

食肉衛生検査所、家畜保健衛生所、畜産試験場なら、おそらく郊外です。車での通勤ですね。
こういった公所となれば、アパートは職場の直近で探すのではなく、鉄道やバス、買い物の便がいい近隣の市街地で探しましょう。
週末の過ごし方に選択肢が増え、楽しく暮らせます。

お役に立てそうなリンク、貼っておきます。
新生活、頑張ってください!

<引越見積>









<アパート探し>



<車>



<ネット>





仕事は「運」と「縁」

小動物の獣医師になりたいと思って獣医師を目指して一生懸命勉強し、なんとか獣医大学に入ることができた。
そしてあとは国家試験を突破して就職口を見つけてその道の獣医師の修行を辛抱しさえすれば、自分の思った通りの暮らしができるんだ、と思っている方、いませんか?

残念ですが、それは大きな勘違いです。

あなたが獣医大学に入れたのは、たまたま受験勉強に耐える資質を持ち合わせていたからです。
そしてそんなあなたはその資質を最大限に発揮して、今度は国家試験を突破するでしょう。
その資質を両親からいただくことができたのは、あなたの「運」です。

資質を持ち合わせていなければ、学問であれスポーツであれ、起業であれ、どんなに努力しても結果を伴うことはありません。
むしろ努力する過程で自らを疲弊させ、傷付けていきます。

人生は長い。
長い時間を生きていくために皆、何か仕事をしてお金をもらわないといけないのですが、資質のない仕事では、たとえ努力の結果就くことができたとしてもつらい日々が待ち受けているだけです。

「自らの資質に気付き、それを受け入れ、向き合う」
仕事を見つけるためには、そして生きていくためには、これが一番大切です。

いろんな職場や人物と実際にぶつかり合うことでしか、自らの資質に気付くことはできません。
ぶつかり合いの中で傷付くことは避けられませんが、どうか傷付くことを恐れないでください。
必ずあなたの中の何かを見つけることができます。

そして仕事を続けていけること。

これには資質を備えていた「運」に加え、人や職場との「縁」が必要です。

就いた仕事にどんなに資質を兼ね備えていたとしても、あなたを理解し、支えてくれる人があなたの職場に全くいなければ、やがてあなたの気力が底を尽き、その仕事を続けていくことができなくなります。

そして「縁」は職場の外にだってあります。

そうです。
長い人生をあなたと共に生きてくれる素敵な人が現れる。そして家族ができる。
家族を大切にしたいという新たな原動力を得て、やりがいを実感できていなくても今の仕事を続けていける。
あるいはより大切にするために、転職を決意する。

こうした「縁」に支えられて、人は仕事をし続けているのです。

自分の意識とは全く別の、どうにもならないもの。
それが「運」と「縁」です。

来春、新たな職場に向かうみなさんへ。

怖がらないで自らの「運」を試してください。
そしてあなたの周りにいてくれる方々との「ご縁」を大切に。

自治体を選ばず公務員獣医師へ転職するなら11月と12月が狙い目!

今は別の仕事してるけど、公務員獣医師に転職しようと決心した。
公務員獣医師として仕事できるんだったら、どこの自治体でもまあいいかな。

そんなあなたに知っててほしい!

11月〜12月、毎年どこかの自治体で獣医師の追加募集があります。
この追加募集に応募すれば、一番効率よく公務員獣医師に転職できるんですよ!

そのわけをこれからお話しします。

<参考記事>
「地方公務員獣医師を検討している人がまず考えたい6つのポイント」
「私が体験した家保、食検、保健所はこんなところ」

「どうか来てくれ」という採用者の心理を利用できる


春の採用試験でうまく予定人数の内定者を確保できたのに、辞退者が出てしまった。
年度途中で新たに退職を申し出る者が出た。

秋以降、こんな理由で突然の欠員が発生します。

突然の欠員。
その次の採用試験を待っていては、丸々1年欠員になってしまいます。
ならば、公務員になってもいいかな、と考えてる免許持ってる獣医さんや、まだ行き先の決まっていない来春卒業見込みの学生さんに来てもらおう!と募集するのが追加募集です。
特に免許持ちの獣医さんなら、本人の事情が許せば年度途中でもすぐ仕事してもらえますから、大助かりなんです。

欠員を出してしまうと自治体の部局を総括している部長や課長は、自治体の職員組合から大叩きを食らいます。
組合とうまくやっていけないとあいつは組合対策もできない奴だと言われて自分のキャリアに傷がついてしまうので、部長も課長も必死です。
欠員の1年間を臨時職員で穴埋めできればいいのですが、免許持ってる獣医さんがそんな都合よく体空いてて、1年だけ来てくれる人なんて、まあいません。
なのでなんとかして欠員を解消しようとします。特に主管課の課長は採用試験で面接官を担当することが多く、再募集に応募してくれたのなら、人物に問題さえなければ極力合格させたい、と考えています。

春の採用試験では課長の態度も「来た奴の中から選んでやる」という上から目線でしたが、追加募集では「どうか来てくれ」という低姿勢に一変します。

この心理に乗じない手はないのです。

新卒者と競争しなくて済む


多くの自治体が春に採用試験を行いますが、当然、この時は新卒者と共に受験することになります。
仕事をしながらの試験準備は、学生さんに比べ、当然圧倒的に不利です。

また面接時に必ず問われる志望動機は、学生さんなら通り一遍のもので大丈夫でしょうが、仕事をしている人間に対しては「どうして転職したいの?なんで前の職場を辞めることにしたの?」など、学生さんには繰り出さない突っ込みが入るのが常です。この面接で学生さんに比べネガティブな印象を植え付けてしまうかもしれないリスクがあります。

その点、12月の追加募集に応じるのは、圧倒的に転職者が多いです。しかも時期的に応募する人数も少ないです。
同じ境遇同士の受験者。しかも少人数。
面接で先の質問が出されるでしょうが、それは居合せた受験者みんなが聞かれます。ならば言い方もあるってもんです。
むしろポジティブな考えの持ち主だとの印象を植え付けるチャンスにもなりますよね。

追加募集という時期を選べば、面接も切り抜けやすくなります。

また近年、追加募集時の試験は、論文と適性検査、面接で済む自治体が多くなりました。
教養試験の準備を省けるので、転職者にとってはとてもありがたい取り組みですよね。

無職でいる時間が最短


お金のない時間は短いに越したことはありません。
特に家庭がある方にとっては、とても大事なことです。

12月に応募して内定が2月。
内定を取り付けてから今いる職場に退職願を出して、3月末に退職。
4月からは公務員として勤務。

これが最短パターンです。
ほぼ切れ目なく転職できますよね。

私が体験した家保、食検、保健所はこんなところ

私が実際に体験した家畜保健衛生所、食肉衛生検査所、保健所はこんな職場でした。
それぞれに獣医としてのやりがいを感じれる場面がありました。

あなたの個性に合う職場かどうか検討するお手伝いになれれば幸いです。

家畜保健衛生所(家保)


正に家畜生産の現場が仕事場です。

仕事は大きく言えば二つ。
ひとつめは、平時から病気が侵入したり広がらないようにするための「防疫」。
そしてもうひとつは、死亡や流産などの問題が発生した時に、その原因を特定して対策を指導する「衛生指導」です。

私も実際にあらゆる家畜生産の現場に行きました。
牛以外の現場はそれまで全く入る機会がなかったので、とても新鮮でした。
牛、豚、馬、羊、鶏、蜂といった、あらゆる家畜を相手にします。

私の地域では牛、豚、鶏がメインでした。
家保に入ったばかりの頃は、目の前の作業を訳も分からないまま必死にこなす日々。大学の教科書を机の下に持ち込んで、事あるごとにこっそり開いては、そうか、そうだっけ、と確認してました。
国家試験が終わった途端に頭から抜けちゃってました、なんて口が裂けても言えませんでしたからね。(笑)

大動物がメインの大学だったので、大学の講義と仕事が直結した体感。

私は家保という職場の予備知識が全くなかったので、ああ、大学で頭に詰め込まれた事がこういう職場で生きてくるんだな、と、変に納得してしまった記憶があります。
大動物をメインにしている大学を出た獣医さんなら、大動物臨床に続いて最も志向しやすい職場だと思います。

農家の目の前で大事に育てている家畜から採血やサンプリングをします。
保定や採血がうまくなると一気に株が上がり、農家のおじさん達や農協担当者ともぐっと仲良くなりました。
それに大動物臨床の獣医さんとは頻繁に仕事で一緒になります。
こんな臨床の獣医さんチックな体験もできるのが家保のいいところでした。

国や県でやりなさい、という衛生事業がとても多く、春から秋にかけては毎日なんやかんやで牛や豚、鶏の血液を抜きまくっていました。
やはり採血は保定が命。保定がうまいと農家の方から誉められたりなんかすると、もう嬉しくなっちゃったものです。

採血が終わると、今度は持ち帰った検体を処理し、検査。
次から次から検体が来るので、さっさとやらないとあっという間に検査室が大渋滞。
そんな時に限って、解剖が入ります。
体が空いてる人がどんどん手伝っていかないといつまでも終わらないのが、解剖。でかい牛だと捌くだけでもほんとに大仕事でした。

防疫と衛生に担当が別れてはいるものの、人手が足りないので結局みんなやることになります。
外回りや検査の傍ら、統計事務や文書事務。
公務員なんて暇な職場なんでしょ?なんて言う人がいますが、そんなら家保の仕事やってみろ、と私は言いたいです。

上司から若手まで、よく働く職場でした。
いや、後から後から湧いて出てくる仕事に獣医さんみんなが追いまくられてあたふたしている、というのが正解でしたね。

地味で忙しいけど、家畜生産をしている農家の方々の下支えをしている、という事を、日々実感できました。

「農業(畜産)」をキーワードにして獣医さんの仕事を考えているなら、家保は絶対おすすめです。

保健所


この職場のキーワードは「人」です。

飲食業、食品製造業、食品販売業、ホテル・旅館業、理容・美容業、動物取扱業などの許認可事務と衛生指導が平時の業務です。
そして食中毒や不衛生な食品の回収、レジオネラ症患者の発生、犬猫のトラブルなどの問題が発生した場合には、これらに速やかに対処します。

毎日、色んな業種の様々な人達、住民の方々と会います。
冷静な人ばかりではありません。各種苦情やトラブルの渦中にある人からは思わぬ言葉を浴びせられることも珍しくありません。

また、職場では薬剤師さんや保健師さん、栄養士さん、一般事務職の人と一緒に仕事します。所長はお医者さんですしね。
まさに人とのコミュニケーションの日々です。

獣医さんとしての存在が発揮される場面は大きく二つ。
ひとつは、食中毒やレジオネラ調査の際、感染症に関する情報集積と分析をする局面。
もうひとつは動物関係のトラブルへの対処です。

それぞれ、経験と知識が絶対必要です。
また、最新の知識を絶えず仕入れて自分のものにしておき、いざというときにすぐ使えるようにしておかなければなりません。
食品苦情や犬猫トラブル事案は何の前触れもなく一本の電話で突然職場に舞い込んできます。
いつ来てもいいように、私も毎日、暇を見つけてはいろんな雑誌やネット情報に目を通し、心の準備をしてました。

毎日がスリリング。けど、肩透かしを食うぐらいなんにもなくすんなり仕事が終わることもあります。
そんな日々を一緒に過ごしているので、職場の人達とのつながりは深かったです。

保健所の人達は、私は好きでした。

いろんな人達とのつながりの中で仕事をしていくのは嫌じゃない、と思える人は、保健所に向いてます。

また、現在連載中の「いただきまーす!」では、第50話より保健所編に突入しています。
保健所に勤める獣医さんの職場の雰囲気や思いを、少しでも感じていただけたら幸いです。
ぜひそちらもご覧くださいね。

<参考記事>
「獣医さんなら知っておきたい、保健所の食品衛生監視員はこんな仕事」

食肉衛生検査所


「大きな工場みたいなとこで解体ラインから流れてくる肉とかを延々と見ながら切った張ったする単調な毎日なんだろなあ。」
私もこの職場に入る前は、そう思ってました。(笑)

でもやってみると農場によって病変の出方が凄く違う。季節やロットの変わり目でも変わる。
それを毎日俯瞰できていることに気付きました。
何かの会合で大動物臨床の獣医さんにその事を話したのをきっかけに思わぬコラボレーションができ、とても有意義な体験をさせてもらいました。

と畜場は情報の一大集積基地です。

やりようを工夫すれば大動物臨床獣医や農家、企業や大学といくらでもコラボレーションできます。
こんな立ち位置で仕事してる獣医は、食肉衛生検査所の獣医だけですよ。
学生さんや、これから転職しようとしてる若い獣医さんにはこの事を一番伝えたいです。

食肉衛生検査所がただの単調な職場になるかどうかは、実はあなたの考え方次第なのです。

私は食肉衛生検査所勤務が一番長かったので、その職場のいいところ、悪いところをいっぱい見てきました。

私の実体験を、獣医師を目指す学生さんや転職を考えている獣医さんに伝えたい。
その思いから書いたのが「衛生獣医、木崎勇介(食肉衛生検査所編)」です。
名前や組織名、人物構成を変えてありますが、ほぼ実際にあったエピソードと受け止めていただいて結構です。

また、「衛生獣医、木崎勇介(食肉衛生検査所編)」で舞台となった食肉衛生検査所での新たな物語として、「いただきまーす!」を連載中です。
こちらは架空のお話ですが、公衆衛生分野の獣医さんの職場の雰囲気ってどんな感じなのか。そしてそこで日々どんなことを感じ、どんな思いで過ごしているのか。それを、たまたまその食肉衛生検査所に勤務することになった大学出たての獣医さんの目線で書いています。
前作のキャラクターが縦軸となって絡んでいきますので、その辺もお楽しみいただけたら幸いです。(笑)

興味がある方はそちらもご覧ください。

地方公務員獣医師を検討している人がまず考えたい6つのポイント

こちらもチェック!
「地方公務員獣医師への転職をお考えの方からよくあるご質問」
転職をお考えの方からよくあるご質問です。適宜追加していきます。

地方公務員への就職は、やってみたい分野にチャレンジし尽くした後で、十分間に合う。<新卒の人へ>


地方公務員獣医師は年中どこかで募集してます。
住む場所にこだわりさえしなければ、いつでもなれます。

また、自治体を選ばず公務員獣医師へ転職するなら11月と12月が狙い目だったりします。

学校出たての今、ひとつでも気になってる分野があるなら、まずはそこへトライすべきです!
小動物や大動物臨床だけでなく、動物園、水族館、研究者などなど。
まだ具体的な進路が決まらない方には、いろんな獣医さんの本をご紹介しますね。

せっかく獣医さんになるんですよ。
狭き門なんでどうせ無理だとか、どうやったらなれるか分からない、とかモジモジしてないで、まずはチャレンジしてみることです。
チャレンジした経験は必ずその後の公務員生活に生きてきます。

十分な時間をかけて自分に納得してからで、全く構いません。
そして公務員になってから、あなたがこれから取り組む仕事と職場に誠実に向き合ってくれさえすれば、それでよいのです。

仕事は「運」と「縁」があって、初めて続けていけるものです。

「目一杯頑張ったけどダメでした。すみませんがメシを食うために公務員やらしてください。」と言って入って来た人を貶すような人と出くわしたとしても、そんな了見の狭い奴なんか、こっちから蹴飛ばしてやりましょう。

分野を選べないつらさは、後からやって来る。<新卒の人へ><転職希望の人へ>


公務員職場で避けられない、転勤。

勤務したての時は周囲も優しい言葉をかけてくれるものですが、あなたが組織のひとつのコマに組み入れられたことを確認するや否や、思いがけない職場へと転勤させられます。
自分のやりたい仕事に就けるとは限らないし、たとえ就けたとしても、ずっとやり続けていける保証は全くありません。

どの分野で自分の専門性を積み上げさせてもらえるのか全く分からないし、その後、今度は全く違う分野に放り込まれる。
医者にたとえれば、昨日まで内科医だったのに、いきなり整形外科に回されてオペやれ、と言われるようなものです。
俺は獣医なんだって言ってるのに、法令の基礎知識ゼロだろうがやれ条例作って持ってこいだの、予算編成のノウハウや財政当局の思考回路、役所内部の力関係も知らないまま、予算書作って役所の事務方とやりあって金をぶん捕ってってこい、なんてことも言われます。

獣医師は専門職。
たとえ県庁勤務であろうとも、公務員獣医さんの仕事場は全て、それぞれの分野で専門性が求められます。
専門性は現場で知識と経験を積み上げなければ、絶対身に付きません。
けれど公務員職場では経験を積み上げる時間を用意してはくれません。

「何でもやるぞ」という覚悟。
あるいは「何をやらされてもまあいいや」という諦めの境地。
そんな局面に、いつかぶち当たります。
そういう局面と向き合いながら、多くの公務員獣医さんが大汗や冷や汗をかきつつ日々を過ごしているのです。

特に気を付けないといけないのは、他県出身の独身者です。
私の経験では、配偶者や子供といった家庭事情も考えなくていいので、一番使い回しのいいコマとしてあちこち回されがちでした。

どの分野でも器用にこなす人も、確かにいます。

あなたはいかがですか?

ご自身の資質や性格を、改めて見つめ直してみて下さい。

いろんな仕事をソツなくこなすなんてちょっと無理かな、という人には、保健所を設置する市をお勧めします。
転勤範囲が保健所と食肉衛生検査所、動物愛護センターといった衛生分野にほぼ限定されますし、転勤範囲も市内に限られますからね。

分野が限定されているという点では、最近家畜衛生業務で募集している市もありますので、こちらも検討してみて下さい。

私が体験した家保、食検、保健所はこんなところでした。

また、食肉衛生検査所での私の体験談も参考にしてくださいね。

<参考記事>
「獣医さんなら知っておきたい、保健所の食品衛生監視員はこんな仕事」
「県庁での獣医さんの仕事。」 NEW!

暮らしに必要なお金と住むところはご安心を。<転職希望の人へ>


全国どこに行っても職員用アパートがあります。
また、民間のアパートを借りる場合は家賃の一定額を補助してくれる制度があります。


何よりもありがたいのは、赴任旅費ですね。
入庁してからの後払いにはなりますが、今の居住地から赴任先までの引越代を一定額払ってくれます。
特に共に引っ越す家族がいる人には、その家族分まで出してくれます。

扶養しなければいけない奥さんや子供のいる方には扶養手当も毎月の給料に上乗せされます。

こうした職員の福利厚生の制度は自治体により大きく違いますので、家族がいる方は、受験を検討している自治体にぜひ聞いてみて下さい。私もこれがあったおかげで妻子と共に大過なく過ごすことができました。

さらに先々、お金を貯めて家も買えたらいいなあ、なんて考えている方へ。
公務員は抜群の信用力。
銀行もすぐお金を貸してくれますね。(笑)
地方だと土地の値段もびっくりするぐらい安いですよ!

ぶっちゃけどんぐらい給料もらえるの、という方へ。

こちらのサイトで詳しく紹介してくれています。とても参考になりますね。

<参考記事>
「勤務公所決定は3月第3週末以降。引っ越しは短期決戦!」

充実した休暇制度。けれど勘違いしないで!<新卒の人へ><転職希望の人へ>


もうひとつの職員の福利厚生制度と言えば、休暇制度ですね。

年間決められた日数の有給休暇を取ることができる上に、冠婚葬祭や子供の病気の看護などに使える休暇制度もあります。
その他、夏休みだけでなくリフレッシュをするための休暇制度ができている自治体もあります。

けれど、「休暇は当然の権利。いつでも好きなようにとれるんだ。それに公務員職場なんだから誰かがカバーしてくれるようになってるんでしょ?」なんてことは、くれぐれも思わないでください。

民間に比べ、休みますと声を出しやすい環境になってくれているのは確かです。
でも、その日あなたが休む分の仕事を、間違いなく誰かが負担してくれているのです。
カバーしてくれる同じ職場の人たちへの感謝の気持ちや、仕事に穴を開けた後始末は自分がやる、他の人が休むときは当然自分がカバーする、という姿勢を示し続けるのは、公務員だろうが民間だろうが、社会人としての最低限のマナーです。

都市部以外は自家用車が必要<新卒の人へ><転職希望の人へ>


意外と忘れがちなのが、車です。

特に都市部の大学出身の方は、電車やバスが少ない地方の生活に戸惑うことが多いようです。
実際、食肉衛生検査所や家畜保健衛生所、畜産試験場は自家用車がないと行けないところがほとんど。
通勤の足としての車は必須です。
また地方での生活には、買い物や用足しのためにもまず間違いなく車が必要です。

都市部以外の自治体を検討している方で、今現在車を維持していない人は、車を持って維持することを予定しておいてください。

<参考記事>
「出かけよう、外へ」

コミュニケーション能力は必須です!<新卒の人へ><転職希望の人へ>


家畜保健衛生所、保健所、動物愛護センター、県庁主幹課は、正に一般の人を相手にする仕事です。
どんな人が来ても冷静かつ丁寧に対応し、仕事を進めていかなくてはなりません。
ちょっと気に障ることを言われただけで簡単に切れたり、暴言癖のある人では、とても危なくてカウンター業務や電話応対すら任せることができません。


検査業務を生業とする衛生研究所や食肉衛生検査所は他の職場に比べ、確かに仕事で接触する関係者の範囲は限られます。
なのでコミュニケーションが苦手でも何年かは勤まる可能性がありますね。
けど、これらにずーっと勤務できると保証してくれる上司なんて、私は知りません。

また、結果的にコミュニケーション能力を求められる業務を同じ職場の同僚や後輩、上司に押し付けてしまうので、どんどん居づらい雰囲気になってしまうことは覚悟しておいてください。
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プロフィール
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拓一人
拓一人(たく かずと、ペンネーム) 某県で20数年公衆衛生獣医師として勤務し、退職しました。 食肉衛生検査所、家畜保健衛生所、保健所、県庁での勤務経験があります。 獣医師としての進路に迷っている方、これから公務員獣医師になろうと考えている方や、今現在公衆衛生獣医師として勤務している方々に、何かの形でお役に立てればいいかなと思ってます。 今は家族と共に、地元の豊かな自然の姿と旬の食材を楽しむ日々を送っています。
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