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2018年08月21日
何をどこまでオープンするか
オープンしすぎで失敗したIBM
家庭用VTRでVHS規格が
デファクト・スタンダードになったのは、
もう一つ大きな理由があります。
実は、日本ビクターはソニーと比べて市場地位が
低かったので、VHS規格をオープンにしたのです。
具体的にいえば、
他企業に規格の情報を無償で公開し、
普通なら門外不出の試作機まで、
他社に無償で貸し出しました。
他社はこのこのことがあったので、
VHS規格のVTRを作るのが容易になりました。
しかし規格はオープンにすればいい
というものではありません。
例えばウィンドウズパソコンは
IBM-PCの系列に属しますが、
これはパソコン参入に出遅れたIBMが、
パソコン市場に参入する際、
1981年に発表した規格です。
IBMはこの規格情報を積極的に
オープンしただけではなく、
部品の調達までオープンにしてしまいました。
そのおかげで、部品を買い集めてくるだけで
容易にIBM-PC互換機が作れるようになり、
多くのIBM-PC互換機メーカーが
パソコン市場に参入してきました。
その結果、IBM-PCはデファクト・スタンダードになり、
部品調達のオープン化で、
プロセッサを作るインテルや
OSを作るマイクロソフトは急成長しました。
しかし、IBM自体は2004年にPC部門を
レノボに売却してPC市場から撤退しました。
タグ:オープン デファクト・スタンダード
業界内の競争でうまれた「事実上の標準」
普及すればするほど便利になっていく
例えば電池や電球は、
どこのメーカーのもでも
規格さえ合っていれば使用できます。
この場合はJIS(日本工場規格)という
標準が定められているのです。
このような公的な標準化機関が定めた標準を
デジュール・スタンダードと呼びます。
その一方で、かつての家庭用VTRのVHS規格のように
業界内で規格間の競争があり、
ソニーのベータマックス規格と
日本ヴィクターのVHS規格が
他の企業を巻き込みながら競争を展開し、
1980年代にVHS規格が事実上の基準、
ディファクト・スタンダードになった例もあります。
業界標準が出現するのは、
その標準を使うユーザー数が増えれば増えるほど、
個々のユーザーが得られる便益が高まっていく
ネットワーク外部性が働いているからです。
実際VHS規格が普及してくると、
レンタルビデオ屋に並ぶビデオは
VHS規格のものばかりになり
録画したビデオの交換も
VHS規格でないと不便でした。
ネットワーク部外性も働くので日本の場合には、
100万台売れたら一気に普及すると
経験則のように言われますが、
これをクリティカル・マスと言います。
世帯普及率で2〜3%といったところです。