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2018年07月13日
製品開発段階に応じた多国籍化
1970年代前後のアメリカのみ通用した仮説
アメリカ企業の多国籍化については、
アメリカの経済学者バーノン氏が20年程度の経済的事実から
帰納的に導いて1966年論文で発表した
プロダクト・サイクル仮説が有名でした。
この仮説では、製品開発段階を3段階に分けて考えます。
【新製品】
アメリカは平均所得も労働所得も高いので
労働節約ニーズに応える新商品は、
まずはアメリカで生産されて国内市場に登場します。
【成熟製品】
製品需要が拡大するにつれ、製品デザインも標準化され
他の先進国市場でも売れるようになると現地生産するようになります。
【標準化製品】
製品デザインが標準化し、
陳腐化の恐れもなく在庫を生産できるようになると、
市場から離れていても労働コストの低い
第三国、発展途上国で生産し、そこから輸送するようになります。
これらの仮説はアメリカ以外の他国でもあてはまるのか
議論になりましたが、バーノン自身は1979年の論文で、
この仮説強い予測力を持っていたのは第二次世界大戦後の
20〜30年後までのアメリカ企業に関してだけであったと明言しています。
プロダクト・サイクル仮説を今の時代や国に適応するのは無理があるようです。
タグ:バーノン プロダクト・サイクル説
なぜ海外に工場を作るのか
国境を越えたグループ企業ができた
かつて高度経済成長期の日本企業は、
国内で加工製造したものを輸出していました。
その頃は、商社を使ったり
各国に代理店を置いたりしていたので、
世界中で商品が売れ世界的にブランドが有名になっても
国際化はしていませんでした。
何しろ当時は1ドル=360円でしたから
日本国内で作れば海外では割安になったのです。
ところが、1971年のドル・ショック後、円はドンドン値上がりしてきます。
こうなると輸出品は割高になっていきます。
日本という国の国家特殊的優位が低下したのです。
日本企業も現地生産に切り替えるために、
海外に工場を作る海外直接投資をするようになります。
しかし、配当、利子、売買差益などの資本収益を目的とした
間接投資とは別次元の経営の難しさが加わりました。
もちろん、現地企業にライセンス生産させるという方法もありますが、
ライセンス契約だけでは知的財産を守れないというのも事実です。
内部化理論ではその取引コストを重視し、
だから海外直接投資をしたのだと説明しています。
いずれにせよ、企業特殊的優位のある日本企業は、
海外直接投資で現地法人を設立して
海外子会社を持つようになります。
こうしてできた本国親会社と海外子会社からなる
国境を越えた1つの企業グループのことを多国籍企業といいます。