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2018年05月03日
仲のいい集団ならば生産性も上がる?
実はカラクリがあったホーソン実験
アメリカ電話通信会社AT&Tの子会社
ウェスタン・エレクトリック社は、
シカゴ市にあるホーソン工場で、
1924〜32年にかけて後にホーソン実験と
称されることになる一連の実験を行いました。
実験は、科学的管理法的に最適な照明度を探る、、、
といったうたい文句で始められます。
ところが照明度と生産性は無関係で、
しまいには月明かり程度の明るさにしても
生産性は下がりませんでした。
今度は5人の女性従業員を隔離して
作業条件を色々変えて実験しましたが
同じ条件下で期間を比較すると
生産性は向上し続けました。
そこで実験内容を彼女たちに相談したり
監督者も置かなかったりしたことが、
協力的態度や、生産性につながったのではないかと考えました。
人間関係論の誕生です。
こうした研究結果はハーバード大学の研究者によって公表され、
従業員の欲求の満足化による生産性増大運動として
戦後は日本などにも影響を与えました。
ただし今はこの研究結果は疑問視されています。
実は、実験の途中で5人中2人の反抗的な従業員が解雇され、
代わりに生産的経験のある2人に交代していたのです。
しかも交代した2人の女性は経済的理由から
仕事を必要としていました。
職務満足が高い生産性もたらす人間関係論的仮説は、
現在では科学的に否定されています。
2018年06月03日
見返りが大きいほどやる気は出る?
効果的な「見返り」は人それぞれ
金銭的報酬のような外的報酬による
モチベーションの理論の代表は期待理論です。
これは打算的で合理的な人間を仮定しており、
わかりやすく言えば、馬の鼻先にニンジンをぶら下げて
食べたら買ったら走ってみろという理論です。
期待理論を現代のようにな比較的完成させた形にまとめたのが
ブルーム氏の『仕事とモチベーション』です。
言っていることの途中までは
ミクロ経済学の期待効用理論と同じです。
単純化すると「行為⇒1次の結果⇒2次の結果」
つまり「仕事⇒成果⇒報酬」
という関係を考え、期待効用が大きいほど行為(仕事)の
モチベーションが高まると考えたのです。
ブルーム氏は、500以上の選考実験・調査の結果を整合的に
説明する枠組みを考えましたが
自分自身では検証できていません。
検証しようとすると、効用の個人間比較のような
問題にぶち当たり検証を強行した他の研究者の実験でも
低い相関しか見られませんでした。
ブルーム氏の期待理論をモデルをベースに
さらに複雑なモデルを作ることも行われてきましたが、
実質的には、期待値には、期待理論が検証不能な
代物であることをカムフラージュしているだけです。
「達成感」が基本
「お金」はインパクトが強すぎる
ブルーム氏はその著書の中で、ある画期的な予想していました。
それは、人は外的報酬とは無関係に、
高いパフォーマンスからは高い満足度を
引き出しているというのです。
確かに、子供のころテストで100点を取れば、
誰だって嬉しかったはずです。
それは100点を取ったら親から「報酬金」がもらえる、
なんてことがなくても、うれしいのです。
実は単純なストーリーを邪魔していたのが
金銭的報酬だったことがわかります。
ブルーム氏の指導を受けたデシ氏は『内発的動機付け』で、
面白い実験をしています。
大学生を使ってパズルを解かせる実験をするのですが、
学生は、途中で金銭的報酬をもらうと、
自由時間を休憩にあてるようになってしまうのです。
これは、お金がモチベーションに効果がないと
いっているのではありません。
逆に、インパクトが強すぎるのです。
もともと仕事自体が報酬だったのに、
金銭的報酬は仕事と満足の間に割り込んで、
「仕事⇒金⇒満足」と分離してしまうのです。
こうして一度お金のために仕事をするようになると
もうおしまいです。
あとはお金をもらえなくなると満足も得られなくなり、
仕事をする気もまた、無くなってしまうのです。
人間はもともと「怠け者」なのか
人間の本質に挑む数々の実験
科学的管理法を唱えたテイラー氏は、
怠業の理由としてもう一つ自然的怠業を挙げていました。
人間は本能として楽をしたがるので怠業するというのです。
ところが、そんなテイラー的人間観を
否定する研究が次々出てきます。
マクレガー氏は『企業の人間的側面』の中で、
テイラー的な考え方をX理論とし、
それに対して、当時新しく出てきた研究蓄積は
生来人間は仕事が嫌いなわけではなく
条件次第で自発的に働くという事を
明らかにしているとして
それらをY理論と呼びました。
またバーズバーグ氏は面接調査の結果から、
達成や仕事そのものや
責任は満足をもたらす動機付け要因だが、
給料などはもっぱら不満足を予防するための
衛生要因だとする動機づけ衛生理論を提唱します。
後に『仕事と人間』では、多くの追試を紹介し、
予想と違う結果になったものは
3%にも満たないと結論付けます。
人間の欲求は最低限の生理的欲求から始まって
最高次の自己実現欲求まで5段階に分かれていて、
各段階の欲求が満たされるとより高次段階の欲求を
するようになるというマズロー氏の欲求段階説は、
いまだに人気ですが、
1970年代には科学的に否定されています。