2010年01月30日
真央逆転V、3回転半2度成功/四大陸選手権
吹っ切れた。混じりっけのない真央スマイル。もう、感情をおさえられない。表彰式前に行われた場内インタビュー。「今できることを全部出せたと思います」と胸を張る。マイクを奪い取るようにつかむと、観客に手を振って叫んだ。「カムサハムニダー!(韓国語でありがとう)」。国際大会では今季初優勝。希望のオーラが漂った。
スピードをつけて踏み切った最初のトリプルアクセルを着氷させると、さらに難しい連続ジャンプの3回転半へ。決まった! 真央がフリーでトリプルアクセルを2度決めるのは、国際大会の女子で初の快挙となった08年12月のGPファイナル以来。412日ぶりに“伝家の宝刀”に輝きが戻った。
世界女王でバンクーバー五輪で金メダルを争うライバル金妍児(キム・ヨナ、19)=韓国=の母国での大会。今回は金妍児をはじめ、安藤美姫(22)=トヨタ自動車=らは出場していない。五輪直前に開かれるこの大会、五輪代表選手は調整を重視し、出場を敬遠。前回トリノ五輪前も代表選手は男女ともに出場していない。だが、真央にとっては今季GPファイナル進出を逃し、国際大会出場の間隔を埋める必要があった。そして五輪前最後の実戦。不安要素を消したかった。
3位と出遅れたSP後、「フリーでもダメだったら、どうなっちゃうかな」と沈んだが、「こけても、パンク(回転が抜けること)でも変わらない。思い切って跳ぼうと思った」。強豪がいなくても、緊張感を保つ。大会前には韓国のネット掲示板に悪質な書き込みがあり、ホテル内で撮影された映像が動画サイトに流出する“盗撮騒動”もあったが、集中力を切らなかった。日本オリンピック委員会(JOC)・小林れい子専任コーチも「回転不足の確率は減った。昨年9月のロシア杯(5位)のころより、すごくよくなった」。
大会前に体調を崩し、合流する予定が急きょキャンセルされたタチアナ・タラソワコーチ(61)からもメールが届いた。「心を強く持って、勇気を出しなさい」−。このロシア人コーチと交わした約束がある。「五輪には絶対にハイヒールをはいて行けるように頑張るから」。心臓に持病を抱え、高血圧症のタラソワコーチは1年以上、大好きな甘い食べ物を絶っている。100キロを超えていた体重を2年間で約20キロも減量。真央との二人三脚を完遂しようとする病床の「ビッグママ」へ、朗報を届けた。
「この演技が五輪につながればいい」。“敵地”に乗り込んで得た自信は、無限に膨らむ。
【15秒バージョン】
【このカテゴリーの最新記事】