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2024年10月07日
【流浪の月 (2022)】
映画『流浪の月』は、2022年に公開された李相日監督の作品です。原作は凪良ゆうの同名小説で、2020年に本屋大賞を受賞しています。静かでありながら深く心に響く物語で、見終わった後も考えさせられるテーマが多い作品です。今回はそのあらすじと感想を、ちょっと砕けたブログ風でお届けします!
あらすじ
主人公は、久我凌介(松坂桃李)と、更紗(広瀬すず)。物語の発端は、更紗がまだ10歳の頃に遡ります。ある日、母親の事情で心に傷を負っていた幼い更紗は、雨の中で久我凌介に出会います。当時、彼は19歳の大学生で、穏やかな性格の青年。そんな凌介は行く当てもなくさまよっていた更紗を自分の家に招き入れ、しばらくの間一緒に生活することに。しかし、この「誘拐事件」とされる出来事が、二人の運命を大きく変えることになります。
警察に発見された後、凌介は「誘拐犯」として捕まり、更紗は親元に戻されます。世間は凌介を「悪」とし、更紗を「被害者」と見なしますが、実際のところ、二人の間には特別な絆が生まれていました。それから15年後、偶然にも二人は再会します。更紗は新しい生活を送りながらも、どこか心にぽっかりと穴が空いたまま。凌介もまた、過去の事件によって人生を狂わされていました。
再会後、二人は再び心を通わせますが、彼らの周囲の環境や過去の傷跡が、彼らの未来を簡単に許してはくれません。愛情や優しさ、そして自由を求めながらも、それらがなかなか手に入らないという、苦しくも切ない状況に陥るのです。
感想
この映画、個人的には「静かな衝撃」って感じでした。派手なアクションやサスペンスがあるわけじゃないんですが、登場人物の心の動きや、その裏にある社会的なテーマがずっしりと響いてきます。まず最初に思ったのは、松坂桃李演じる久我凌介が、まさに「無垢」であるということ。彼は決して悪い人間ではないし、更紗に対しても何らかの下心があったわけじゃない。ただ、彼の優しさや純粋さが、世間には「異常」と映ってしまうんですね。
現代社会では、特に「子ども」に対する大人の関わり方ってすごくセンシティブじゃないですか。凌介と更紗の関係も、周囲の目には決して「普通」には見えない。だけど、映画を通して描かれる二人の関係は、実は誰よりも「純粋」で「無垢」なものなんですよね。それがすごく切ないし、同時に胸が苦しくなるような感情を呼び起こします。
そして、広瀬すず演じる更紗もまた、複雑なキャラクター。彼女は一見すると、事件の「被害者」なんだけど、実際には彼女自身もまた凌介に救われている。15年後に再会した二人は、もう大人になっているんだけど、それでも当時の感情や傷が色濃く残っていて、その影響が二人の未来に重くのしかかっているんですよね。
物語全体を通して、「愛とは何か?」というテーマが大きく浮かび上がってきます。愛というのは、決して一つの形だけではない。凌介と更紗の間にあるのは、恋愛感情とも違うし、家族愛ともまた違う。でも、確かに「愛」と呼べるものがそこにある。そう考えると、私たちが普段当たり前のように使っている「愛」という言葉の奥深さに改めて気づかされます。
また、この映画の魅力は、映像の美しさにもあると思います。李相日監督は、自然の風景や静かな日常の中に、登場人物たちの心情を反映させるのが本当に上手。雨のシーンや光の使い方が特に印象的で、登場人物の孤独や切なさが一層際立っていました。
音楽も素晴らしい!劇中の音楽は、感情を煽るようなものではなく、むしろ静かに背景に溶け込むようなものが多いんですが、それが逆に物語の深みを増している感じがしました。特に、クライマックスにかけてのシーンでは、音楽がなくても十分に感情が伝わってくるほどの迫力がありました。
キャラクターの成長と葛藤
更紗と凌介の15年間の成長や、それぞれが抱える葛藤が非常に丁寧に描かれているのも、この映画の大きな魅力の一つです。更紗は、幼い頃の経験から自分自身を守るために、心を閉ざしがちになっている。しかし、再会した凌介との時間を通じて、彼女は少しずつ自分自身と向き合う勇気を持ち始めるんです。そのプロセスがすごく自然でリアルに描かれているので、見ている側も感情移入しやすい。
一方、凌介もまた、過去の出来事によって社会から孤立してしまい、自分が「普通」でないことに苦しんでいます。でも、彼はどこかその「異質さ」を受け入れ、自分なりの幸せを見つけようとしている。そんな彼の姿勢は、どこか応援したくなるし、同時に彼の孤独感が強く伝わってくるんですよね。
結末に向けて
この映画のラストについては、意見が分かれるかもしれません。ハッピーエンドとは言えないし、でもアンハッピーエンドでもない。二人の未来が完全に明るいものとは思えないけれど、それでも彼らなりの「自由」を見つける瞬間が描かれています。
個人的には、この「曖昧さ」が良かった。人間関係や愛の形って、そもそも白黒はっきりつけられるものじゃないし、ましてや二人のように複雑な過去を持つ者同士ならなおさら。それでも、二人が再び心を通わせ合い、共に歩む決意をした姿には、希望を感じることができました。
まとめ
『流浪の月』は、決して軽い気持ちで観られる映画ではないかもしれません。でも、観終わった後にじっくりと考えさせられる、そんな作品です。松坂桃李と広瀬すずの繊細な演技が光り、物語全体が深く心に染み渡ります。愛とは何か、自由とは何か、そして「普通」とは何か――そんな普段は考えないようなテーマに向き合いたい人には、ぜひ観て欲しい映画です。
また、原作を読んだ方も、映画ならではの映像美や音楽の使い方を楽しめると思いますし、逆に映画を観てから原作に手を伸ばしても、新たな発見があるかもしれません。深い感情の波に飲み込まれる体験をしたいなら、ぜひこの映画を観てみてください!