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2024年09月22日

【ナラタージュ (2017)】

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映画『ナラタージュ』(2017年)は、島本理生の同名小説を原作にした、切ないラブストーリー。主演は松本潤と有村架純で、静かに燃え上がる大人の恋愛が描かれています。監督は行定勲で、繊細な感情描写や、美しい映像が印象的な作品です。この映画は、大学生の泉と、高校時代の演劇部の先生だった葉山との再会を通して、心の奥に潜む未練や葛藤を描いています。

まず、あらすじをざっくりと説明しますね。主人公の工藤泉(有村架純)は、大学生になり、平凡な学生生活を送っている女の子。ある日、高校時代の演劇部の顧問だった葉山貴司(松本潤)から連絡が来ます。葉山は、以前泉が所属していた演劇部の手伝いをしてほしいと頼んできて、泉はこれを受けるんですね。

泉は、高校時代から葉山に想いを寄せていたけど、葉山は当時既婚者だったため、泉はその気持ちをずっと抑えていました。でも、再び再会したことで、その抑えていた感情が少しずつ解き放たれていくんです。葉山も、妻との関係に悩んでいて、泉との再会が彼の心に変化をもたらしていきます。こうして、泉と葉山はお互いに惹かれ合いながらも、過去の傷や現実の問題に苦しみながら、不器用な関係を築いていくという物語です。

この映画の一番の魅力は、なんと言っても感情の描写がとても繊細でリアルなところ。恋愛映画って、時に大袈裟に感じたり、感情がわざとらしかったりすることがありますよね。でも『ナラタージュ』は、静かでありながら、登場人物たちの心の揺れ動きが丁寧に描かれているので、その感情がすごく自然に感じられるんです。泉と葉山の関係は決して派手じゃなく、むしろ淡々と進んでいくんだけど、だからこそリアルに感じられる。観ている側も、彼らの気持ちに共感してしまいます。

有村架純演じる泉は、すごくピュアで、繊細なキャラクター。彼女の純粋さや、少し頼りないところが、観ていて「分かる、分かる」と共感できる部分がたくさんあります。特に、泉が葉山に対して抱く複雑な感情―好きだけど、どうしても手に入らないし、近づきたいけど怖い―っていうのが、すごくリアルに伝わってきて、胸が締め付けられるようなシーンがたくさんありました。

一方で、松本潤が演じる葉山も、なかなか複雑なキャラです。彼は高校時代、泉のことを生徒としてしか見ていなかったけれど、再会したことで彼女の純粋さに惹かれ始めます。しかし、彼には過去の傷があって、簡単に泉の気持ちに応えることができない。葉山の悩みや、彼の弱さも描かれていて、松本潤がその内面の苦悩をしっかりと表現していました。彼の静かな演技は、感情を表に出すタイプではないキャラクターにぴったりで、逆にその抑制された感情が余計に響きます。

この映画では、恋愛における「距離感」が重要なテーマになっています。泉と葉山はお互いに強く惹かれ合っているけれど、社会的な立場や過去の傷のせいで、素直にその気持ちを表現することができない。恋愛には時に「好きだけど、一緒にいるのが正解じゃない」という状況がありますよね。『ナラタージュ』はまさに、そういった「どうしようもない切なさ」を描いていて、観ている側としてはもどかしい気持ちになることも多いです。

映画全体のトーンはとても静かで、派手な展開は少ないんですが、その分、細かな表情やセリフに注目することで、登場人物の心情が深く伝わってきます。行定勲監督らしい繊細な映像美も見どころで、特に雨や風景など、自然の要素を使ったシーンが多く、登場人物たちの感情とリンクしているように感じられます。雨が降るシーンでは、二人の心の中の不安や悲しみが重なるようで、その映像表現にはハッとさせられる場面がいくつもありました。

ただ、少し気になる点もあります。映画のテンポがゆっくりすぎると感じる人もいるかもしれません。特に、恋愛映画にスピード感やドラマチックな展開を求めている人には、この淡々とした進行が物足りなく感じるかもしれません。でも、そのスローさが逆に、この映画の魅力でもあります。恋愛の「揺れる気持ち」をじっくり味わいたい人には、この静かな流れが心地よく感じられるはずです。

まとめると、『ナラタージュ』は、一筋縄ではいかない大人の恋愛を描いた映画です。感情の交錯や、過去の傷を抱えたまま前に進もうとする二人の不器用な恋模様が、観る者の心を静かに打ちます。有村架純と松本潤の繊細な演技が作品全体を引き締めていて、観ている間中、彼らの心の動きに引き込まれてしまうはず。

特に、切ない恋愛ストーリーが好きな人や、淡々と進む感情の揺れ動きに共感できる人には、ぜひおすすめの映画です。静かに心に響くラブストーリーを求めているなら、『ナラタージュ』はその期待に応えてくれる作品だと思います。
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