2022年08月03日
懐かCDを買うL ディック・リー「When I Play」
When I Play
Dick Lee
懐かしのワールドミュージックもの。
シンガポールのミュージシャン、ディック・リー(Dick Lee)のアルバムを購入。
今や韓流が主流のアジアンポップスだが、ひところはアジアンポップスといえば、イコール香港、東南アジアの音楽というイメージだった。90年代前半頃のことだ。当時、巷ではちょっとしたアジアンポップスブームが巻き起こっていて、その火付け役的存在だったのがディック・リーだった。京劇メイクのジャケット写真が印象的な「マッド・チャイナマン(The Mad Chinaman)」というアルバムがおそらく一番有名なアルバムだったと思うが、東西入り混じりのかっこいいんだかダサいんだかよくわからない個性的な音楽は、当時かえって斬新に聴こえたのをおぼえています。
さて、今回購入した「When I Play」は、ディック・リーが「マッド・チャイナマン」以前に発表した曲を集めて作られた、ディック・リーの初期のベスト盤と位置づけられているアルバム。1991年リリース。日本デビューは1990年のディック・リーだが、本国シンガポールでは1974年、17歳のときからすでに歌手として活動していたらしい(ディック・リーは1956年生)。ディスコグラフィーを覗いてみるとたしかに「マッド・チャイナマン」以前にもけっこうな数のアルバムがリリースされている。しかしCDの解説によると、ディック・リーの楽曲のマスターテープは、当時の所属レコード会社の管理がアバウトすぎてほとんど残っていないのらしい。つまり、過去に発売した作品を再イシューするということはまず無理らしいのだ。
「When I Play」は、「マッド・チャイナマン」の大ヒット後、ディック・リーの過去の曲も聴いてみたいというファンが急増したことで急きょ制作されることになったらしいのだが、前述のような状況があってなにしろ音源が十分でない。そこで辛うじて残っていたマスターテープや、保存状態の良い商品アルバムなどから使えそうな音源をかき集めるだけかき集めて作ったのがこのアルバムなのだそうだ。なので、厳密には「ベスト盤」とはいえないのかもしれない。実際、解説にも「決して最良の選曲とはいえないが、これしかないのだから仕方がない」とか、けっこう辛口なことが書かれてある。でも、実際聴いてみるとそんなに悪くはない印象。たしかにサウンド的にはまだまだ性能の低かった時代の音響機材で作ったんだろうなあというチープ感はあるけれど、耳なじみの良いシンプルな曲が多く、BGM的に聞き流すのにちょうどいい。収録曲は欧米の正統派ポップス調のものが大半で「マッド・チャイナマン」以降のようなアジアンテイストのものは少なめ。たしかディック・リーはシンガポールの裕福な華僑の家に生まれ、アフタヌーンティーを日々の習慣にするようなおばあ様がいる非常に英国ナイズされた家庭環境で、幼い頃からクラシックや欧米のポップスに親しみながら育ったと、昔インタビュー記事か何かで読んだ記憶がある。収録曲には10代の頃に作ったという曲も含まれているが、彼の作るとても王道的で洗練されたメロディーからは、幼少の頃から培われてきた音楽センスだけでなく、そういう彼のバックグラウンド的なものというか、生来の育ちの良さのようなものも伝わってくるように感じられる。
個人的に好きなのは「Flower Drum Song」「Fried Rice Paradise」あたり。日本では田中星児でおなじみの「ビューティーフル・サンデー」のカバーもリゾートミュージック風に仕上がっていてなかなかいいです。
いつの頃からか日本のメディアではその姿をほとんど見かけなくなってしまったディック・リーだが、本国シンガポールでは現在も変わらぬ精力的な活動を続けているもよう。Instagramのページもあったのでのぞいてみたら、すっかりロマンスグレーの素敵なおじさまになっていた。けど、相変わらずファッションはド派手&奇抜だった。音楽もそうだったけれど、この昔からカッコいいんだかダサいんだか今ひとつよくわからない感じがいいんだよなあ・・・。
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