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48回目の恐怖祭

 今年に入ってはっきりと刊行ペースが鈍っていた井上雅彦監修の「異形コレクション」の新刊が出るようだ。今作で通算四十八巻目(番外編除く)にもなるシリーズだが、複数作家のホラーアンソロジーということで、掲載されている作品はまさに玉石混淆といった様子だ。廣済堂文庫時代の一巻から読んでいる身としては、これがなければ読むことのなかっただろう作家も多数おり、自分好みの作家を発見するためのポータルサイト的なありがたみがある。
 しかし、不満がないわけではない。問題は毎回掲載されている井上雅彦自身の作品である。他の作家にも半ばレギュラーとして参加している者がいるが(菊池秀行、朝松健など)、大抵はそれなり以上の出来を示している。個人的には毎回のように主人公に据えられる朝松健の一休宗純シリーズが好みである。
 それに引き替え、編者本人の作品である故に、没を出される可能性無しに掲載される井上の作品が本当に詰まらないのだ。異形コレクション掲載作だけで四十七編、番外編のものも合わせれば五〇編余りの短編を私は読んで来たことになるのだが、面白いと感じたものがただの一つもない。及第点をつけられそうなものですら一つ二つあったかどうかといった有り様である。
 それでも、アンソロジストとしての手腕は認められた。詰まらない作家が掲載されていることも当然あったが、全体を見れば買って後悔した巻は一冊もなかった。底の浅い衒学趣味に満ちた井上自身の毎回の前書きの鬱陶しさ加減にも目を瞑ろう。
 しかし、今回の井上はいったいどうしたことだ。怪しげな募金サイトで異形コレクションを利用して震災復興の寄付を募っているのだ。
 何も私は寄付自体を批判しているわけではない。偽善だろうが本心からの善意であろうが、寄付を受け取る側にとっては関係のないことだ。それで助かるのならばそれはそれで良い。
 だが、エサにされた異形コレクションが不憫でならない。アンソロジーという体裁上、参加している作家たちは嫌が応にも大なり小なりの寄付はしなくてはならないだろうし、何よりも本作はホラーアンソロジーシリーズである。復興だのなんだのといった明の色合いはおよそ似つかわしくないし、今さら感も拭えない。猫も杓子も復興とのたまう世相に後ろめたさを感じながらもうんざりしているのだが、こんなところにまでそれが浸食してきていることに失望を禁じ得ない。
 そして危惧しているのが、掲載されている作品たちがそんな良識に染まっているかも知れないということだ。繰り替えしになるが、ホラーアンソロジーである。震災から立ち直ってハッピーエンドというような、まさかそのものではないにしろ、ホラーとは程遠い無理矢理感と歪んだ正義感に満ち満ちた作品が立て続けにでも掲載されていたとしたら――。
 それをホラーと呼ぶような、そんなメタフィクションは勘弁願いたい。

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