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2017年09月17日

O肥満と代謝疾患【ポイント】

今日は、「肥満と代謝疾患」についてお話します。

【肥満】
脂肪組織に脂肪が蓄積した状態で、BMIが25s/u以上のものを肥満と言います。
肥満には、遺伝的要因に食生活や運動不足などの生活習慣が原因で起きる単純性肥満と、
内分泌疾患や遺伝性疾患、視床下部疾患、薬物の長期服用などが原因で起きる
症候性肥満(二次性肥満)があります。
・定義:日本糖尿病学会では、肥満症を「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、
    その合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態をいい、疾病単位として取り扱う」
    と定義しています。
・治療:肥満症の治療の目的は、減量により病態を改善することです。
    治療法には、基本となる食事療法や運動療法、
    加えて意識を高めつつ減量を維持させるのに大切な行動療法、及び薬物療法、外科療法があります。

【メタボリックシンドローム】
・定義:内臓脂肪の蓄積とそれを基盤にしたインスリン抵抗性及び糖代謝異常、脂質代謝異常、
    高血圧を複数合併するマルチプルリスクファクター症候群で、
    心血管疾患や脳血管疾患などの動脈硬化性疾患を起こしやすい病態を言います。
・治療:食事療法と運動療法と薬物療法がメイン。
    食事療法は、エネルギー制限と行う、バランス良く摂取。
    運動療法は、週2〜3回、30分以上のまとまった運動を推奨。
    薬物療法は、併発する病的異常が著明な場合には、薬物療法。

【糖尿病とその合併症】
糖尿病は、インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群です。
近年では、過食、運動不足、肥満、ストレスなど生活習慣が原因となる
「生活習慣病としての糖尿病」の増加が問題になっています。

特徴.gif

診断.gif

血糖コントロール.jpg

薬物療法.gif

DKA HHS.jpg

腎症 食事.gif

妊娠糖尿病.jpg

【低血糖】
血糖値が50〜60r/dL以下になり、種々の症状を起こした状態を低血糖といいます。
糖尿病治療中にみられる頻度の高い緊急事態です。
低血糖と感じたら、ブドウ糖10gまたはブドウ糖を含む飲料水をすぐに摂取します。
ブドウ糖以外の糖類では効果発現は遅延します。
α-グルコシダーゼ阻害薬服用中の患者では必ずブドウ糖を選択します。

【脂質異常症】
脂質異常症とは、血中のLDL-コレステロール、トリグリセリドが増加している状態、
またはHDLコレステロールが減少している状態です。
診断基準は、LDL-コレステロールが140mg/dL以上、HDL-コレステロールが40mg/dL未満、
TGが150r/dL以上です。

【高尿酸血症】
尿酸は血清中で7.0r/dL程度の濃度で飽和状態に達し、
これ以上の濃度になると過剰な尿酸か血症を形成し体内に蓄積します。
このように尿酸が過剰になった状態を高尿酸血症、
尿酸の結晶が急性の関節炎を起こしたものを痛風と言います。

【先天性代謝異常】
遺伝子障害により先天的に特定の酵素が欠損していることによっておこる代謝異常。
(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース尿症、糖原病)

次回、問題を出題します。

2017年09月16日

N栄養障害【解説】

それでは、「栄養障害」の問題の解説します。

Q1.マラスムス型栄養障害に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)体重変化による評価は利用できない。
(2)体脂肪量は増加する。
(3)エネルギー摂取量は、必要量を満たしていない。
(4)浮腫がみられる。
(5)治療開始時には、投与エネルギー量を50kcal/kg標準体重/日とする。


【解説】…正答(3)
(1)誤り。著明な体重減少がみられるので、体重変化は評価の重要な手掛かりとなる。
(2)誤り。エネルギー不足のために体脂肪が消費されて減少する。
(3)正しい。マラスムスは、エネルギーとたんぱく質の両方が極度に欠乏した栄養障害である。
(4)誤り。浮腫はみられない。
   なお、血清アルブミン値の低下するクワシオルコル型栄養障害で、浮腫がみられる。
(5)誤り。50kcal/kg標準体重/日は多すぎる。
   治療開始時から高エネルギー投与を行うと、
   代謝性合併症であるリフィーディング症候群を起こす危険性があるので、
   治療開始時のエネルギー設定は低く抑え、
   血液検査値などをモニタリングしながら徐々にエネルギー量を増加させていく。


Q2.ビタミンの栄養に関する記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)エネルギー代謝が亢進している時には、ビタミンB1の必要量が増加する。
(2)日照を受ける機会が少ない時には、ビタミンDの必要量が増加する。
(3)抗生物質の長期投与時には、ビタミンKの必要量が増加する。
(4)多価不飽和脂肪酸の摂取量が多い時には、葉酸の必要量が増加する。
(5)たんぱく質の摂取量が多い時には、ビタミンB6の必要量が増加する。


【解説】…正答(4)
(1)正しい。他に、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸の必要量も増加する。
(2)正しい。紫外線照射により、
   皮膚に含まれる7-デヒドロコレステロールからビタミンD3が生成するためである。
(3)正しい。抗生物質の長期投与には、腸内細菌によるビタミンKの産生量が減少するためである。
(4)誤り。多価不飽和脂肪酸の摂取量が多い時には、強い抗酸化作用をもつビタミンEの必要量が増加する。
   葉酸に抗酸化作用はない。
(5)正しい。ビタミンB6は、補酵素としてアミノ酸代謝に関与する。


Q3.脂溶性ビタミンに関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)ビタミンAが不足すると、エネルギー代謝が亢進する。
(2)β-カロテンの大量摂取は、ビタミンAの過剰症を引き起こす。
(3)ビタミンDの大量摂取は、腎障害を引き起こす。
(4)ビタミンEが不足すると、巨赤芽球性貧血が引き起こされる。
(5)ビタミンKが不足すると、血液凝固が促進される。


【解説】…正答(3)
(1)誤り。ビタミンAの生理作用にエネルギー代謝に関わるものは認められていない。
   ビタミンAが不足すると、夜盲症皮膚や粘膜の角質化、発育障害、細菌感染抵抗力の低下などが起こる。
(2)誤り。β-カロテンのプロビタミンAとしての過剰症は報告されていない。
(3)正しい。ビタミンDにはカルシウムの吸収を促進させる作用があるので、
   ビタミンDの大量摂取は高カルシウム血症を招き、腎障害や軟組織の石灰化を引き起こす。
(4)誤り。巨赤芽球性貧血は、ビタミンB12 や葉酸の不足により引き起こされる。
   ビタミンEが不足すると、位置感覚障害の他、
   未熟児において溶血性貧血や神経障害などが引き起こされる。
(5)誤り。ビタミンK不足すると、血液凝固因子のプロトロンビンなどの生成に支障をきたすので、
   血液凝固が遅延する。


Q4.無機質の吸収と代謝に関する記述である。
正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)マグネシウムは、尿中に排泄されない。
(2)小腸でのリンの吸収は、ビタミンDで減少する。
(3)ヘモグロビンの分解で遊離した鉄は、再利用される。
(4)ヨウ素は、甲状腺に多く含まれている。
(5)亜鉛は、トランスフェリンと結合して血中に存在する。


【解説】…正答(3)、(4)
(1)誤り。マグネシウムは尿中に排泄される。
(2)誤り。小腸でのリン吸収は、ビタミンDにより促進される。
(3)正しい。ヘモグロビンの分解で遊離した鉄は骨髄に運ばれ、
   ヘモグロビン合成に再利用される。
(4)正しい。ヨウ素は、甲状腺ホルモンの構成成分である。
(5)誤り。トランスフェリンと結合して血中に存在するのは鉄である。
   血清中の亜鉛のうち、20〜40%はα2-マクログロブリンと強く結合し、
   約70%はアルブミンと弱く結合して各組織へ輸送される。


Q5.鉄に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)潜在性鉄欠乏の状態では、血清フェリチン濃度の変化はみられない。
(2)貯蔵鉄が低下すると、ヘム鉄と非ヘム鉄の両方の吸収率が上昇する。
(3)日常食からの鉄の吸収率は、ヘム鉄と非ヘム鉄の間で差はない。
(4)ヘム鉄の吸収率は、ビタミンCの共存により低下する。
(5)非ヘム鉄の吸収率は、動物性たんぱく質の摂取により低下する。


【解説】…正答(2)
(1)誤り。潜在性鉄欠乏の状態では、血中フェリチン濃度は低下する。
(2)正しい。
(3)誤り。ヘム鉄の方が非ヘム鉄よりも吸収率が高い。
(4)誤り。ヘム鉄の吸収率は共存する物質の影響を受けにくい。
   非ヘム鉄の吸収率は、ビタミンCの共存により上昇する。
(5)誤り。非ヘム鉄の吸収率は、動物性たんぱく質の摂取により上昇する。

2017年09月15日

N栄養障害【問題】

それでは、「栄養障害」から五問出題します。

Q1.マラスムス型栄養障害に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)体重変化による評価は利用できない。
(2)体脂肪量は増加する。
(3)エネルギー摂取量は、必要量を満たしていない。
(4)浮腫がみられる。
(5)治療開始時には、投与エネルギー量を50kcal/kg標準体重/日とする。



Q2.ビタミンの栄養に関する記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)エネルギー代謝が亢進している時には、ビタミンB1の必要量が増加する。
(2)日照を受ける機会が少ない時には、ビタミンDの必要量が増加する。
(3)抗生物質の長期投与時には、ビタミンKの必要量が増加する。
(4)多価不飽和脂肪酸の摂取量が多い時には、葉酸の必要量が増加する。
(5)たんぱく質の摂取量が多い時には、ビタミンB6の必要量が増加する。



Q3.脂溶性ビタミンに関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)ビタミンAが不足すると、エネルギー代謝が亢進する。
(2)β-カロテンの大量摂取は、ビタミンAの過剰症を引き起こす。
(3)ビタミンDの大量摂取は、腎障害を引き起こす。
(4)ビタミンEが不足すると、巨赤芽球性貧血が引き起こされる。
(5)ビタミンKが不足すると、血液凝固が促進される。



Q4.無機質の吸収と代謝に関する記述である。
正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)マグネシウムは、尿中に排泄されない。
(2)小腸でのリンの吸収は、ビタミンDで減少する。
(3)ヘモグロビンの分解で遊離した鉄は、再利用される。
(4)ヨウ素は、甲状腺に多く含まれている。
(5)亜鉛は、トランスフェリンと結合して血中に存在する。



Q5.鉄に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)潜在性鉄欠乏の状態では、血清フェリチン濃度の変化はみられない。
(2)貯蔵鉄が低下すると、ヘム鉄と非ヘム鉄の両方の吸収率が上昇する。
(3)日常食からの鉄の吸収率は、ヘム鉄と非ヘム鉄の間で差はない。
(4)ヘム鉄の吸収率は、ビタミンCの共存により低下する。
(5)非ヘム鉄の吸収率は、動物性たんぱく質の摂取により低下する。



次回、解説します。

2017年09月14日

N栄養障害【ポイント】

本日は。「栄養障害」についてお話します。

【たんぱく・エネルギー栄養障害(PEM)】
たんぱく質とエネルギーが欠乏している病態をたんぱく・エネルギー栄養障害(PEM)といい、
クワシオルコルとマラスムスの2つに代表されます。
・クワシオルコル
 たんぱく質の欠乏が主体となって起こる栄養障害で、エネルギー摂取量は比較的保たれています。
 アフリカの乳幼児、たんぱく漏出性胃腸症や肝硬変の患者にみられます。
・マラスムス
 エネルギーの欠乏が主体だが、摂取たんぱく質も不足して起こる栄養障害で、
 発展途上国の旧幼児、神経食欲不振症の患者にみられます。

【リフィーディング症候群】
リフィーディング症候群とは、低栄養状態に陥った患者に対して急速に高度な栄養補給を行った際に起こる、
うっ血性心不全、不整脈、昏睡、心停止などの重篤な代謝合併症のことをいいます。
急速な栄養補給により細胞内ATP酸性回路が活性化し、
血中の糖、リン、マグネシウム、カリウムなどが細胞内に移行して、
これらの血中濃度が急速に低下することが原因です。
結果として、低リン血症、低マグネシウム血症、低カリウム血症をきたします。

【悪液質(カへキシ―)】
悪液質は、がんや種々の慢性消耗性疾患のために栄養不良により衰弱し、
食欲不振、骨格筋や脂肪組織の顕著な現象、エネルギー消費量の増加を主徴とする病態です。
悪液質は、炎症性サイトカイン、腫瘍から放出されるたんぱく質分解誘導因子、
神経内分泌系の異常などが関与すると考えられています。

【ビタミンの栄養と欠乏症・過剰症】
ビタミンとは、微量の物質代謝や生理機能の維持などの生理作用を発揮する不可欠な有機化合物であり、
体内ではほとんど合成されないか、合成されても必要量に満たない為、
食物として体外から摂取しなければならない栄養素です。
ビタミン.jpg

【無機質(ミネラル)の栄養と欠乏症・過剰症】
人体を構成する元素のうち、酸素、炭素、水素、窒素以外の元素を創傷して無機質(ミネラル)といいます。
このうち、カルシウム、リン、カリウム、硫黄、ナトリウム、塩素、マグネシウムの7つは、
比較的多く含まれることから、多量元素といわれています。
一方、鉄以下の元素は、人体にごく少量しか存在しないことから、微量元素といわれています。
ミネラル.jpg


次回、問題を出題します。

2017年09月13日

M疾患治療の概要【解説】

それでは、「疾患治療の概要」の問題の解説をします。


Q1.治療の方法に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)経腸栄養法は、イレウスに行う。
(2)生体肝移植は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に行う。
(3)血液透析は、糖尿病腎症第3期に行う。
(4)LDLアフェレーシスは、家族性高コレステロール血症に行う。
(5)白血球(顆粒球)除去療法は、過敏性腸症候群に行う。


【解説】…正答(4)
(1)誤り。イレウスでは経腸栄養法は禁忌であり、静脈栄養法とする。
(2)誤り。NASHの治療には生体肝移植は用いられない。
   NASHの治療法は、薬物療法と日常生活の指導である。
   生体間移植は、肝細胞がん、胆道閉塞症、原発製胆汁性肝硬変、先天性代償性肝疾患、
   非代償性肝疾患などに適応となる。
(3)誤り。血液透析は、糖尿病腎症第5期に行う。
(4)正しい。LDLアフェレーシスは、血液を一旦体外に取り出し、
   血漿成分に含まれるLDLコレステロールを吸着により取り除いた後、再び体内に戻す血液浄化法である。
(5)誤り。白血球除去療法は、血液を一旦体外に取り出し、
   炎症を引き起こす活性化した白血球を取り除いた後、
   再び体内に戻すことで炎症の鎮静化をはかる血液浄化法である。
   炎症性腸疾患や関節リウマチの治療に用いられる。


Q2.疾患の治療に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)臓器移植時にみられる拒絶反応対策には、免疫賦活剤が有効である。
(2)腹膜透析は、人工膜を用いた血液浄化法である。
(3)早期胃がんの完全切除は、対症療法である。
(4)ホスピスでは、終末期医療を専門的に行っている。
(5)緩和ケアは、精神面のケアを含まない。


【解説】…正答(4)
(1)誤り。拒絶反応を抑えるために、免疫抑制薬を投与する。
(2)誤り。腹膜透析は、本人の腹膜を用いた血液浄化法である。
   人工透析膜を用いるのは血液透析である。
(3)誤り。早期胃がんの完全除去は原因療法である。
(4)正しい。
(5)誤り。緩和ケアは精神面のケアを含む。

2017年09月12日

M疾患治療の概要【問題】

それでは、「疾患治療の概要」から二問出題します。

Q1.治療の方法に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)経腸栄養法は、イレウスに行う。
(2)生体肝移植は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に行う。
(3)血液透析は、糖尿病腎症第3期に行う。
(4)LDLアフェレーシスは、家族性高コレステロール血症に行う。
(5)白血球(顆粒球)除去療法は、過敏性腸症候群に行う。



Q2.疾患の治療に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)臓器移植時にみられる拒絶反応対策には、免疫賦活剤が有効である。
(2)腹膜透析は、人工膜を用いた血液浄化法である。
(3)早期胃がんの完全切除は、対症療法である。
(4)ホスピスでは、終末期医療を専門的に行っている。
(5)緩和ケアは、精神面のケアを含まない。



次回、解説します。

2017年09月11日

M疾患治療の概要【ポイント】

本日は、「疾患治療の概要」についてお話します。

【種類と特徴】
〇原因療法と対症療法
・原因療法:疾病の原因除去により疾患を治癒させる治療法
・対症療法:疾病の原因除去はできないが、表面的な病状の消失や緩和によって
      間接的に患者の回復力を増強したり、病状の進行を抑制したりする治療法
〇根治療法と保存療法
・根治療法:疾病の原因を完全に取り除き、完全な治癒に導く治療法
・保存療法:疾病の原因や病変部を完全に取り除くことができなくても、
      病状を軽減し、日常生活が可能な状態にまで回復させることを目的とする治療法

【治療計画・実施・評価】
治療計画を立てるには、薬物療法や手術療法など基本方針の他、安静度や食事の計画も必要です。
治療計画については、医療チームが立案するが、その際、インフォームド・コンセントを心掛けます。
患者の症状や身体所見、検査所見でモニタリングを行い、治療効果を評価します。

【治療の方法】
〇食事・栄養療法
 適切なエネルギーや栄養成分を投与することにより疾患の治療効果を高める治療法

〇薬物療法
 薬物には、経口薬、注射薬、外用薬があります。
 薬物療法を受けている時には、適切な食事療法が重要になります。

〇輸液、輸血、血液浄化
・輸液
 点滴静脈注射によって、水・電解質・薬物・栄養素を補給する治療法
・輸血
 出血による血液の喪失、白血病などの血液疾患などに対して行われる治療法
・血液浄化
 透析、濾過、吸着などの方法を用いて、血液の異常を是正する治療法

〇手術、周術期患者の管理
 疾病に侵された臓器を摘出したり、再建したりする治療法が手術療法であり、
 術前術後には十分な管理が必要です。
 また、術前、術中、術後の患者の管理を周術期管理といいます。

〇臓器・組織移植
 臓器移植:生きている細胞や阻止異、臓器を他の個体あるいは別の部位へ移し替えること
 ・自家移植:自分自身の組織を自分の身体の別の部位に移植
 ・同系移植:一卵性双生児など遺伝子型の同じ個体間で移植
 ・同種移植:ヒトからヒトなど同種の他の個体から移植
 ・異種移植:動物からヒトなどの異種の個体から移植

〇放射線治療
 電離放射線を使って病巣細胞や組織を破壊して治療するもので、
 主として放射線感受性の高い悪性腫瘍の治療に用いられます。

〇救急救命治療(クリティカルケア)
 救急・救命診療が必要なのは、
 即座に診断して早急に適切な処置を施さないと生命に危険がある場合です。
 医療機器を使用しない心肺蘇生は一次救命処置、医療機器を使用するのは二次救命処置といいます。

〇緩和ケア
 世界保健機関は、2002年に「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者と
 家族の痛み、その他の身体的、心理社会的、スピリチュアルな問題を早期に同定し、
 適切に評価と対応することを通して、苦痛を予防したり、緩和したりすることにより、
 患者と家族のQOLを改善する取り組みである」と定義しています。
 <緩和ケアの要件>
 @痛みやその他の苦痛な症状を緩和する。
 A生を肯定し、死の過程を正常なものを尊重する。
 B死を早めることも、遅らせることもしない。
 C患者ケアにおいて心理社会的側面とスピリチュアルな側面を一体化させる。
 D患者が可能な限り前向きに生活ができるように支援体制を提供する。
 E患者の療養中から死別後まで家族が対処できるように支援体制を提供する。
 F患者・家族の必要性に対してチームで応対する。
 GQOLの向上を心掛け、疾病経過に好ましい影響を与えることを目指す。
 H治療期間を含め早期から実践する。

〇終末期医療(ターミナルケア)
 終末期患者(余命3〜6ヵ月以内)に対する終末期医療のこと

〇尊厳死
 人としての尊厳を保ちながら死を迎えること

次回、問題を出題します。

 

2017年09月10日

L疾患診断の概要【解説】

それでは、「疾患診断の概要」の問題の解説をします。

Q1.症候に関する記述である。
正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)チアノーゼは、貧血で出現しやすい。
(2)黄疸では、血中ビリルビンが増加している。
(3)喀血は、上部消化管からの出血である。
(4)片麻痺は、身体一側の上下肢にみられる運動麻痺をいう。
(5)タール便は、直腸がんでみられる。


【解説】…正答(2)、(4)
(1)誤り。チアノーゼは、ヘモグロビン濃度が高知を示す多血症で出現し易く、
   ヘモグロビン濃度が低値を示す貧血では出現しにくい。
   チアノーゼとは、酸素と結合していない還元ヘモグロビンが血中に増加し、
   皮膚や粘膜が青紫色を呈した状態をいう。
(2)正しい。黄疸とは、血中ビリルビン濃度が上昇し、皮膚や眼球結膜などが黄染した状態をいう。
(3)誤り、喀血は呼吸器からの出血である。
   上部消化管からの出血は吐血という。
(4)正しい。
(5)誤り。タール便は、上部消化管(食道、胃、十二指腸、小腸)からの出血でみられるもので、
   下部消化管(結腸、直腸)からの出血では赤色いわゆる血便となる。
   したがって、直腸がんでは鮮血便がみられる。
   上部消化管からの出血は、腸内細菌によるヘモグロビンの酸化によって変色し、
   悪臭のあるコールタール様の黒色便となり、タール便とよばれる。


Q2.症候と疾患に関する組合せである。
誤っているのはどれか。1つ選べ。

(1)頻脈ー鉄欠乏性貧血
(2)肥満ークッシング症候群
(3)浮腫ーネフローゼ症候群
(4)黄疸ー非代償性肝硬変
(5)るいそうー甲状腺機能低下症


【解説】…正答(5)
(1)正しい。貧血では組織への酸素運搬能力が低下するので、
   それを補うために心拍数・脈拍が多くなる。
(2)正しい。クッシング症候群は、糖質コルチコイドが過剰に分泌されることで起こるものであり、
   糖質コルチコイドが脂肪細胞の分化と中性脂肪蓄積を促進するため、脂肪組織が増加する。
(3)正しい。ネフローゼ症候群では低アルブミン血症を呈するので、
   血漿膠質浸透圧が低下して浮腫が生じる。
(4)正しい。肝機能低下によってビリルビン代謝障害が起こり、
   血中ビリルビン濃度が上昇して黄疸が生じる。
(5)誤り。甲状腺機能が低下すると、基礎代謝が低下し、体重増加の傾向がみられる。
   るいそうは、代謝が亢進する甲状腺機能亢進症でみられる。

Q3.臨床検査項目と健常者の値の組み合せである。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)血中赤血球ー260×10⁴/μL
(2)血中クレアチニン値ー2.0r/dL
(3)血清アルブミン値ー4.0g/dL
(4)血清ナトリウム値ー120mEq/L
(5)血中重炭酸イオン濃度ー18mEq/L


【解説】…正答(3)
(1)誤り。基準値は男性:450〜550×10⁴/μL、女性:350〜450×10⁴/μLであるので、低値である。
(2)誤り。基準値は男性:0.6〜1.2r/dL、女性:0.4〜0.9r/dLであるので、高値である。
(3)正しい。基準値は3.7〜4.9g/dLである。
(4)誤り。基準値は145〜149mEq/Lであり、低値である。
(5)誤り。基準値は22〜26mEq/Lであり、低値である。


Q4.悪性腫瘍の診断に用いる検査である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)スパイロメトリ
(2)磁気共鳴イメージング(MRI)
(3)パルスオキシメトリ
(4)運動負荷心筋シンチグラフィ
(5)ポリソムノグラフィ


【解説】…正答(2)
(1)誤り。スパイロ目と理はスパイロメーターを用いた肺の換気機能検査であり、
   肺疾患の診断や重症度の判定に用いられます。
(2)正しい。MRIで、悪性腫瘍の大きさ、位置、形状などをみることができる。
(3)誤り。パルスオキシメトリは動脈血酸素飽和度(SpO2)を計測する検査で、
   呼吸不全のモニターとして用いられる。
(4)誤り。運動負荷心筋シンチグラフィは、心筋への血液供給状況を調べる検査である。
   虚血性心疾患などにおいて、心電図より正確な診断が必要な場合に用いられる。
(5)誤り。ポリソムノグラフィは、睡眠障害の診断に用いられる検査である。

2017年09月09日

L疾患診断の概要【問題】

それでは、「疾患診断の概要」から四問出題します。

Q1.症候に関する記述である。
正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)チアノーゼは、貧血で出現しやすい。
(2)黄疸では、血中ビリルビンが増加している。
(3)喀血は、上部消化管からの出血である。
(4)片麻痺は、身体一側の上下肢にみられる運動麻痺をいう。
(5)タール便は、直腸がんでみられる。



Q2.症候と疾患に関する組合せである。
誤っているのはどれか。1つ選べ。

(1)頻脈ー鉄欠乏性貧血
(2)肥満ークッシング症候群
(3)浮腫ーネフローゼ症候群
(4)黄疸ー非代償性肝硬変
(5)るいそうー甲状腺機能低下症



Q3.臨床検査項目と健常者の値の組み合せである。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)血中赤血球ー260×10⁴/μL
(2)血中クレアチニン値ー2.0r/dL
(3)血清アルブミン値ー4.0g/dL
(4)血清ナトリウム値ー120mEq/L
(5)血中重炭酸イオン濃度ー18mEq/L



Q4.悪性腫瘍の診断に用いる検査である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)スパイロメトリ
(2)磁気共鳴イメージング(MRI)
(3)パルスオキシメトリ
(4)運動負荷心筋シンチグラフィ
(5)ポリソムノグラフィ




次回、解説します。

2017年09月08日

L疾患診断の概要【ポイント】

本日は、「疾患診断の概要」についてお話します。

【問診、診察】
・問診:患者と問答をして診断に参考となる材料を得ること
    (主訴、現病歴、既往歴、家族歴など)
・身体診察:視診、触診、打診、聴診、神経学的診察
      特に生命の維持に直接関係する「呼吸」と「循環」の状態を表すバイタルサインは重要です。

【主な症候】
〇バイタルサイン:意識、体温、脈拍、血圧、呼吸
 意識障害を判定する方法としては、
 JCSV-3-9度方式やGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)が使用されます。
JCS.png
GCS.png


【全身症候】
発熱、全神経体感、体重減少・像か、ショック、意識障害、不穏、けいれん、めまい、脱水、浮腫
などがあります。

【臨床検査】
健常者の検査結果の分布曲線方、その測定値分布の中央95%を含む範囲を基準値とし、
異常の有無を判定する目安としています。
・検体検査
 生体から採取した試料の成分を物理化学的手段を用いて調べる検査で、尿検査、血液検査、
免疫・血液検査、微生物検査、遺伝子検査などがあります。
・生体検査
 生体を対象として直接体内情報を得る検査で、機能検査と画像検査があります。

次回、問題を出題します。
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食品会社で勤務しながら、半年間の独学を経て管理栄養士の国家試験に合格。その後、管理栄養士として勤務するために病院へ転職。6年間で3つの病院を経験。現在は、管理栄養士国家試験の参考書の校正や答案添削を行っています。 <取得資格>管理栄養士、栄養教諭、糖尿病療養指導士、病態栄養認定管理栄養士、NST専門療養士
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