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2020年05月05日

城用語 大手門・追手門(おおてもん )

今回は城好きでなくても知っている大手門についてです。簡単に言うと、お城の表門ですね。

<笠間城の大手門跡>
shirononagori368 (3).JPG
[茨城県笠間市]

大手とは正面のこと。家に例えると玄関のような場所を大手口といい、そこに設けられる門を大手門と言います。城の顔ともなる門ですから、あまり貧そな造りという訳にはいきませんよね。
<掛川城の大手門>
shirononagori374 (7).JPG
[静岡県掛川市]
こちらは復元された掛川城の大手門。威風堂々!立派です。 庶民が暮らす城下町に通じる城の正面玄関ということですね。

威厳も大切ですが、やはり防衛施設の一部です。上の掛川城の大手門の奥には、番所が設けられていました。門そのものの防衛機能を極めた形といえば、やはり枡形門(ますがたもん)ということになりますかね。

<江戸城の大手門>
shirononagoriO.jpg
江戸城の玄関ですから流石に重厚で立派です。そして、江戸城の他の主要な門がそうであるように、ここ大手門も桝形門となっています。枡形門は比較的規模が大きな近世城郭で良く見かける門の構造で、簡単に言うと、手前の門・その奥の四角いスペース・さらにもう一つの門の3つがセットになっています。詳細については別途投稿していますので、良かったら参考にして下さい。
→『城用語 枡形・枡形虎口・枡形門

ところで
大手の代わりに追手と表記されているものもありますよね。これは同じ意味です。正確に言うと、「追手」がもともとの字です。追手には追撃するという意味が込められており、追手門は正面から攻めてくる敵を食い止め、更には城の外へ出て追い撃ちをかけるという戦術的な意味があったことが語源とされています(諸説あり)。

ということで
大手門(追手門)についてでした。東京に限らす、かつて城があった街では『大手町』という地名を見かることがありますよね。それはすなわち、城の正面玄関である大手門に由来しています。まぁ例外もあるのかもしれませんが、そう思ってほぼ間違いないですね。


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2020年05月04日

城用語 搦手門 (からめてもん)

今回は城好きの方でないとなかなか馴染みにくい搦手門 (からめてもん)について。すごくおおざっぱに言うと、お城の裏門のことです。逆は大手門です。

<高天神城の搦手門跡>
shirononagori428 (1).JPG
[静岡県掛川市]

大きな城郭の場合はたくさんの門がありますね。このうち正面、つまり家の玄関のような重要な位置にある門を大手門と言います。大手(又は追手)は正面を指す言葉。これに対し、搦手(からめて)とは後方を指す言葉で、城の場合は正面とは逆側を指し、その位置に設けられた門を搦手門と呼んだりします。

裏門と聞くと地味なイメージですよね。実際に、門の造りそのものは大手門と比べれば簡素な造りの場合が多いです。ただ、この門を侮ってはいけません。城の縄張りを決める際に、結構戦略的な意味が込められていたりします。

例えば、劣勢の場合に城主らが逃げ出し易いよう配置するとか、あるいは城の正面である大手門側に攻め手を誘導しておいて、裏門から城外へ飛び出た兵が攻撃をしかけるなどなど。城の構造によって異なりますが、重要な役割を担っていたりします

<鮭延城の搦手門跡>
shirononagori428 (2).jpg
[山形県最上郡真室川町]

ということで
搦手門についてのお話でした。ちょっと補足すると、必ずしも大手門と真逆に位置しているとは限りません。また、搦手門と呼ばれる門が複数ある場合もあるので、大手門のような主たる門ではないくらいに受け取ってもらえれば幸いです。

最後に
もっとも有名な搦手門の画像を貼っておきます

<半蔵門>
sn225hanzomon (11).JPG
江戸城の西側。江戸城の搦手門です。


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2020年03月30日

城用語 矢穴(やあな)

今回はお城の石垣関連の話でときどき耳にする矢穴(やあな)についてです。簡単に言えば石を割る際に石の表面に刻んでおく穴のことです。クサビのこと。開けた穴にクサビを打込んで石を割ります。

■実物■
実物を見た方が分かり易いですね
<実物>
shirononagori420 (1).jpg
虎ノ門駅の『江戸城外堀跡地下展示室』から撮影した石垣です。矢穴、どこだかお分かりになりますでしょうか?

<矢穴と刻印の説明>
shirononagori306 (8).JPG
こちらは展示室内のパネルです。説明文には『石垣表面には石を割った矢穴や大名を示す刻印が見られます』となっています。石の中央の印は刻印。上部の四角い窪みが矢穴です。


<他の例>
shirononagori420 (2).jpg
こちらは石垣山城の駐車場に展示されていた石垣用の石です。矢穴、どこだかわかりますね。

<実際の石垣>
shirononagori420 (4).jpg
こちらは二本松城の石垣です。矢穴の場所、わかりますでしょうか?

shirononagori420 (3).jpg
で加筆させて頂きました。クサビを打込んだ跡がくっきり残っていますね。


石の割り方もいろいろですが、矢穴を使ったこの方法は主に江戸時代に用いられた技法だそうです。つまりお城の石垣に矢穴をみつけたら、江戸時代に積み上げられた可能性が高いということですね。確率が高いということであって、絶対とは言い切れませんので、その辺りはご了承下さい。


■石垣石の割り方■
さて
具体的な方法ですが、矢穴は石目(いしめ)と割りたい石のサイズを想定して彫り、そこに矢(クサビ)を打込みます。石目とは割れやすい状態になっている方向のことですね。
下の画像は仙台城で撮影しました。ちょっと引用させて頂きます。

<石垣石の割り方>
shirononagori420 (5).jpg
[撮影:仙台城]

ノミで矢穴をあける
   ↓
矢穴に矢をさしこむ
   ↓
矢と矢穴に水をかける
   ↓
矢の頭をかけやでたたく
   ↓
石、割れる

分かり易いですね。水をかけるというのは、木製の矢の膨張を促す効果があるのでしょう。

ということで
石垣に関連する城用語として矢穴を紹介させて頂きました。お役に立てれば幸いです。


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2019年11月24日

城用語 本陣

今回は『本陣』について。厳密には城用語とは言えませんが、古戦場などを訪ねると◯◯本陣跡なんていう石碑があったりしますよね。かと思えば、宿場の本陣などという言葉を耳にしたりもします。まぁあまりこだわらず聞き流す方も多いと思いますが、敢えて説明させて頂きます。

■総大将がいる場所■
戦場において総大将がいる場所。これが一般的な本陣です。
<菅沢山本陣>説明板のみ
shirononagori385a.jpg
こちらは直江兼続が長谷堂城攻めの時に本陣を置いた所とされる菅沢山にて撮影しました。

<菅沢山から見た長谷堂城>
sirononagori20sakenobe2028729.jpg
この時の兼続は約2万の大軍を率いる総大将。独立峰に築かれた長谷堂城を包囲し、自らは戦況を見守れる菅沢山の中腹に陣を敷きました。総大将の陣。つまり本陣です。


■大名などの宿泊場所■
江戸時代における宿場で、大名や公家といった身分の人たちが宿泊した旅宿も『本陣』と呼ばれます。まぁ旗本やある程度の身分の役人なども含みます。武士たちの移動を行軍と考えれば、宿泊場所は陣営であり、一番偉い人のいる宿が本陣と名付けられるのは分かる気がしますね。

宿といっても、一般人がお世話になる旅籠屋とは全く異なります。地元の名主の家をイメージした方がいいかもしれません(大筋の話として)。かつての宿場町を訪ねて、本陣跡などと標記されていたら、それなりの身分の人たちが宿泊、あるいは休息するための公認の家と思って間違いありません。

公認と敢えていわせてもらったのは、これは参勤交代が始まった時にしっかりと制度化されたものだからです。『本陣役』に指定される。これは名誉なことです。ただし、それなりの代金は受け取れるものの、現実的にはそれ以上の『おもてなし』が必要なため、ある程度の経済力が伴っていないと務まらない役割でした。

<蕨宿本陣跡>観光用
shirononagori385 (2).JPG
shirononagori385 (1).JPG
蕨宿は中山道の宿場として栄えました。説明板によれば『公家大名などが宿泊』とのこと。蕨宿では加兵衛家と五郎兵衛家の2家が代々『本陣役』の大役を勤めました。加兵衛本陣には、あの老中水野忠邦なども宿泊したそうです。

ということで
戦での本陣と宿場での本陣の説明でした。


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城用語 陣屋

今回は陣屋についてです。

<永田陣屋跡>
shirononagori289 (4).JPG
shirononagori289 (7).JPG
こちらはさいたま市西区土屋の陣屋跡。江戸後期創建の長屋門が立派です。徳川家康の古くからの家臣で、関東代官頭をつとめた伊奈忠次が築いたことに始まります。伊奈陣屋、又は地名から土屋陣屋とも呼ばれています。

よく耳にするこの『陣屋』という言葉。当ブログでは『代官などの館あるいは役所、又は城を持てない大名や旗本の屋敷』といった表現で説明してきました。間違いではないのですが、ちょっと整理してみたいと思います。恒例のようにウィキペディアさんから情報を頂きます。

『一般的に3万石以下の城を持たない大名が陣屋を持った、また上級旗本も知行地に陣屋を構えた。さらに大藩の家老の所領地である知行所の政庁が置かれた屋敷も含まれる。飛地を所領に持つ大名が、現地の出張所として陣屋を設置することもあった。また、箱館奉行所や長崎奉行所なども陣屋として扱われることがある。さらには幕府直轄領地である支配所に置かれた代官所を含む場合もある。領主の領地の居地をあらわす用語は、城主の居城に対して、陣屋を居地とする場合は在所という。』
(出典:Wikipedia 2019/11/24)

とのこと。小大名というイメージでしたが、3万石くらいが目安のようですね。あとはだいたいイメージ通りですが、そう『飛び地』の出張所も陣屋でしたね。

<松山陣屋跡>
shirononagori318 (1).JPG
こちらは石碑しかありませんが、埼玉県東松山市にある『前橋藩』の陣屋跡です。埼玉で群馬の前橋?諸事情により、前橋藩には現在の埼玉県内に領地がありました。これにより、藩の出先機関を設ける必要がありました。これも『陣屋』ということですね。

ということで、やはり大筋では
『城を持たない小大名や上級旗本の屋敷』『それなりの役人の詰め所』といった理解で良いかと思います。ただ、これらは概ね江戸時代の呼び方なので、もうちょっと幅のある使い方がされていることや、戦においける陣所のような使われ方もしていることだけ追加しておきます。

以上
私と同じく、かなり漠然と受け入れてきた方と共有できれば嬉しいです。あと念のためですが、城好き素人のブログに過ぎませんので、その点はご理解下さい。


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2019年08月04日

城用語 三日月堀・丸馬出

今回は堀の形状でよく耳にする三日月堀のご紹介です。

<三日月堀>
shirononagori359 (1).JPG
諏訪原城跡で撮影した三日月堀です。その名の通り、三日月のような形をした堀です!構造そのものは絵図の方が説明しやすいので、下の画像をご覧ください。

<絵図>
shirononagori359 (2).JPG
[撮影:諏訪原城ビジターセンター]
こんな感じです。複数の三日月堀が配置されていますね。

■半円状の区画とセット■
三日月型の堀は、全て半円状の区画とセットになっています。この半円の区画と外部を隔てるため、堀は結果として三日月状になります。更に注目すべきは、これらが城のどこに配置されているかです。絵図を良く見て下さい。城の出入り口に配置されていますね。

出入り口のことを、城用語では虎口(こぐち)といいます。この虎口のすぐ外側に設ける区画のことを城用語では馬出しといいます。まぁ名の通り、馬を待機させておく場としても機能しますが、それだけではなく、戦闘用の曲輪の一つと捉えた方がいいかもしれません。実際に、馬出曲輪と呼ばれることもあります。大きな意味では城の出入り口の防御のためですが、攻め手を迎撃する時に効果を発揮するので、極めて攻撃的な施設といえます。

この馬出しが半円になっている。これを「丸馬出」といい、武田氏がよく用いたとされています。そして丸馬出しとセットなのが三日月堀。この構造が全て武田氏によるものとは限りませんが、まぁ私個人のイメージでも、丸馬出し・三日月堀と聞けば武田流の築城術です。

■馬出しの効果■うまだし
まず馬出しと堀があることで、攻め手は虎口に直進することができません。更に、馬出しそのものに土塁が設けられているので、中の様子をうかがい知ることもできません。敵は堀を迂回しようとして分散された上に、土塁の内側に潜む城兵の力量も見積もれないまま戦うことになります。また、城内からもよく見える場所でありながら、虎口を目指す攻め手の行動範囲が限定されるため、狙い撃ちしやすくなります。つまり、馬出しと城内の双方から攻撃することができます。また、左右にある馬出しの出入り口のうち、どちらか片方に敵が押し寄せてた場合は、逆側から馬出しの外へ飛び出して背後を狙うことも可能です。

繰り返しになりますが、馬出しは防御施設でありながら、極めて攻撃的なのです。


<諏訪原城の三日月堀>
shirononagori359 (3).JPG
駿河・遠江はもともと今川氏が拠点とした場所ですが、甲斐の武田氏が侵攻した結果、多くの城跡に武田流の築城術が取り入れられています。ここ諏訪原城の三日月堀も武田氏によるもの?と思いきや、最近の調査で、武田滅亡後に徳川家康が改修した時のものと結論づけられたそうです。ただ、優れた技術は継承されていくもの。当時として最高レベルの武田流築城術を、家康も真似たのでしょう。そう考えると、やはり武田流と言っても良いのかもしれませんね。

以上、三日月堀と丸馬出のご紹介でした。

■訪問:諏訪原城
[静岡県島田市金谷]

■絵図の引用:
諏訪原城ビジターセンター
[静岡県島田市菊川]1174

shirononagori359ad.JPG
説明に使用した絵図はこちらの施設で撮影しました。入場無料でトイレも完備。諏訪原城の説明は勿論、城の楽しみ方などがパネルで分かりやすく紹介されています。



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2019年03月03日

城用語 曲輪・郭(くるわ)

お城関係の話でよく耳にする「くるわ」という言葉。漢字だと曲輪、またはと書きます。堀や土塁と並んで最も基本的な城用語の一つですが、今回あえて説明させて頂きます。

■曲輪■ くるわ
まず簡単に言ってしまうと「平らに造成された区画」と思って下さい。
<曲輪>
shirononagori Zen (19).JPG
[膳城跡]ぜんじょう
こちらは膳城の曲輪。なにこれ?と感じられると思いますので、こくの平らな区画の隅の方を見てみましょう。

<曲輪の隅>
shirononagori Zen (15).JPG
右手が曲輪の上。曲輪の外側は堀になっています。平らに造成した場所は、建物を設置したり兵が詰めたりする区画。いわば自分の家の中。ここへの侵入を防ぐために堀が設けられているわけですね。

<堀>
shirononagori Zen (17).JPG
曲輪への侵入を拒む堀

<曲輪の入口>
shirononagori Zen (14).JPG
曲輪を外側から撮影。周辺より高くなっていますね。もともとの地形を巧みに利用し、ここぞという場所を平らに造成し、曲輪とします。ちなみに、曲輪への入り口のことを、城用語では虎口(こぐち)といいます。

<堀の底の案内板>
shirononagori Zen (18).JPG
先程の曲輪は、実はここ膳城にとっては一番大切な曲輪。よく知られる言葉で表現すると本丸ということになります。主郭(しゅかく)ともいいますね。この一番大事な曲輪の周りには、これを補う曲輪がたくさん設けられるのが普通です。勿論、防衛上の理由を意識して。それらの曲輪はその重要度から、二の丸・三の丸というふうに呼ばれます。つまり「丸」は曲輪のことです。上の堀は、二の丸と本丸を隔てるための堀ということになります。


ちょっと別な城も見てみますかね

<山城>
shirononagori311ad.JPG
[茅ヶ崎城跡]ちがさきじょう
山に築かれた城。自然の山の中に、真っ平な場所なんてありえませんよね

<曲輪>
shirononagori313 (9).JPG
でも平らな場所があります。人が城として造成した区画です。

<土塁で補強>
shirononagori313 (16).JPG
膳城を例に曲輪の内側と外側を堀で隔てる例をご紹介しましたが、こちらは曲輪の周囲を土塁で囲んでいる画像です。堀を設ける時に出た土を、曲輪に盛るケースが多いですね。堀の深さと土塁の高さが、すなわち高低差ということになります。攻める側はこれを克服しながら戦わなくてはなりません。

■曲輪の配置■
もともとの地形や外部環境を意識して、この曲輪をどのように配置するのか。そして堀や土塁でどう補うのか。これは築城者の腕の見せ所です。軍事的な意志をもって、なるべく守る側が有利になるようにそれらの配置を決め「城の形」を決める。この設計のことを「縄張り」と呼びます。
※曲輪が軍事的な意味とは無関係の配置となるケースもありますが、今回は省略します。


ということで「くるわ」のご紹介でした。ただ平らな区画にも築城者の思惑がある。それを共有できれば幸いです。

最後に、蒲原城跡で撮影した絵図を貼っておきます。独立峰に築かれた典型的な山城です。山頂の本丸を中心に、外側へ向かって、高低差を意識した城の仕掛けが散りばめられています。平らな区画は全て、今回のテーマ『曲輪』です。

<蒲原城址鳥観図>
shirononagori317B.jpg

拙い説明にお付き合い頂き、ありがとうございました。


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2019年01月01日

城用語 空堀(からぼり)

今回は最も基本的な城用語のご紹介です。

<空堀の説明板>
shirononagori294 (14).JPG

先日小机城跡を訪問した際に、城用語が丁寧に説明されていることに感心しました。当ブログにも「お城初心者」の方が来てくれることを期待して投稿させて頂きます。

■水の無い堀■
お城の堀というと、まず水のある堀を想像するのが一般的ですね。そもそも城と聞いてまず頭に浮かぶのが、江戸期に造られた近世城郭である場合が多いので、これは自然なことかもしれませんね。ただ、水の無い堀は特別なものではなく、むしろ普通なのです。

■空堀が基本■
土を掘って造るから堀。字の如くです。これが基本なので、土を掘っただけの溝、つまり「空堀」が堀のもともとの意味です。のちに水を引き入れた水堀も登場しますが、中世の城の多くは山城で、水を引き込んだり溜めておくことが困難。よって堀は水のない空堀が中心でした。空堀は古い城の堀?というわけでもなく、近世の城でも使用されています。

<空堀>
shirononagori294 (13).JPG
[小机城]

<空堀の底>
shirononagori294 (21).JPG
[小机城]

■堀切ってなに■
丘陵地帯や山に築かれる城で見かけるのが「堀切」です。これも大きな意味では空堀とお考え下さい。

山で比較的移動しやすいのは?山の尾根ですね。これを削るのが代表的な堀切です。まるでナタで切ったかのように、鋭角に土を削り取ります。堀切を設ける場所は、曲輪の手前とか、曲輪と曲輪の間が多いですが、必要とあらば山のどこでも削るので、決まった形はありません。

<堀切>
shirononsgori249D (6).JPG
[山上城]
この例は曲輪と曲輪を分断するための堀切です。城が現役の時には、もっとシャープな角度だったと思われます。


■空堀の効果は?■
<大空堀>
shirononagori278 (19).JPG
[興国寺城]
この例は巨大な空堀(大空堀)です。実際、凄い迫力でした。

ただこういうのはレアケース。なんでもかんでも「敵の侵入を防ぐ」と思わないで、敵の進攻を遅らせるとか、体力を奪うとか嫌な思いをさせるとか、広い意味で空堀を見てやって下さい。要するに、守る側が有利になるなら、効果の大小に関わらず意味があるのです。そこに込められた思いを感じると、どれも感心させられます。


■水堀■
山城の麓や平城については、中世末期から近世にかけて水堀が用いられるようになります。城の防衛施設であると同時に、水運にも利用するケースもありますね。

<水掘>
sn284ad.JPG
[新庄城]
お城の堀として普通に連想される姿ですね。


■最後に漢字の話■
。どちらもホリ又はゴウと読みますね。ただもうお気づきの通り、土を掘るという意味なら壕、水をはる場合は濠になります。壕の字は空堀に限らず、防空壕とか「土を掘る」ことに幅広く使用されてますね。

<道灌濠>
sn225hanzomon (10).JPG
[江戸城:半蔵門付近]


以上、堀の基本は空堀というお話でした。見てくれた人の参考になれば幸いです。

shirononagori294 (33).JPG
[小机城]
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