また、日々のお金の使い方に関しても、いろいろと考えておくことは重要だと思われます。
ゲーテの『ファウスト』(2)には、お金の使い方に関する記述があります。
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皇帝 では宮廷に出仕しておる者、一人ひとりに札を遣わそうか。
その代り、その札をいかように使うかを余にいわねばならぬぞ。
小姓(札を受けつつ) わたくしは愉快に、朗かに、上機嫌に暮すつもりでございます。
他の小姓(同じく) わたくしはすぐにも恋人に金の鎖と指輪、腕輪を調えてやろうかと存じます。
侍従(札を受けて) 私はこれまでのより倍も上等の葡萄酒を嗜むことに致しましょう。
他の侍従(同じく) 隠しの中で骰子(さいころ)がむずむずしておりまする。
侍大将(沈重に) 拙者めが城と田畑を担保に借用仕った金を返すつもりでございます。
他の侍大将(同じく) 蓄えに繰入れまする。
皇帝 余は新しい事業を始める意欲と勇気を期待しておったのだが、
お前たちのこと故、大方そんなことであろうと思った。
成程なあ、どんなに宝の花が咲こうとも、
お前たちは、やはりお前たちだけのことしかない。
高橋義孝・訳 新潮文庫 第二部第一幕(6143〜6154)
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皇帝は、宮廷に出仕している者たちのお金の使い方にがっかりしています。
簡単にまとめますと、
@ 浪費
A 色(異性)
B 酒
C ギャンブル
D 借金返済
E 貯金
となりましょうか。
浪費、色、酒、ギャンブルであれば、好ましいお金の使い方とはいえませんね。
また、借金返済も芸がないといったところです。
ただ、最後の他の侍大将の「貯金します」は、笑えます。
ゲーテはおもしろい人なんですね。
絶妙なところで洒落がきいています。
ここでいう貯金は、貯金のための貯金であり、そんな貯金ではつまらないよ、ということでしょうね。
この『ファウスト』の一節で、あまり価値のないお金の使い方が網羅されているといえるでしょう。
ゲーテは短い文章の中で見事に要約してくれています。
ゲーテが指摘するように、価値のないお金の使い方はしないことですね。
いずれに致しましても、価値のあるお金の使い方をしたいですね。
また、新しい事業を始めるような価値のある投資をしていきたいものです。