西安から成都に向けて古い電車が出発した。内陸に入れば入るほど走っている電車が古くなるのに気付いた。これは海岸都市を訪れる外人に見せないようにしているのか、内陸部は貧困層が多いので列車も古いのしか載せられないのか分からないが、とにかくボロい。トイレも座って下を除くと、走っている線路が見える。恐ろしく怖い。
ただ、そこに生きる人達のパワーは沿岸部よりも強かった。自分は、3段ベッドの1番上だった。西安で人間不信になっていたせいか、そこから降りようとしなかった。1番下のベッドの人が話しかけてきたが何を言っているのか分からないので、チンプンカンプンと返答した。これは中国語らしく、分からないと教えてもらった。そしたら、その中国人は鉛筆で書き出した。おそらく、気分が悪いのか?と書いているのだろうと思ったので、大丈夫とジェスチャーで見せた。どうやら、外国人に慣れていないのだろう。やたら興味を示してるので下に降りて、日本人と書いた。そしたら、日本人か!と驚いた表情で周りの人と話し出した。反日の中国で、日本人と言った自分を悔やんだ。それは逆だった。そこのコンパートメントの人達は親戚らしく、8人ほど集まってきた。どうやら、日本人に会うのが初めてみたいで珍しそうに話し掛けてきた。筆談には、戦争、政治、南京の文字が出てこない。それなりに自分は中国が好きだ!と示して書いてみた。その人達は、好意的に見たのか、駅に止まる度に色々と買っては食べさせてくれる。親日と言うよりは、日本人への憎しみの教育を受けてきた人達には、今会っている日本人が教育とは違うのにビックリしている感じであった。自分が日本から持ってきた、クレジットカードほどの薄いラジオを見せるとビックリしていた。
暇な時に聞こうと思ったが他国の言語が理解出来ないのでは自分には不要であった。日本で千円ほどのSONY製のラジオをあげると、男のポケットに入れた。その男はイヤフォンをしてラジオを聞いたら、さらにビックリ!音質が良かったのか分からないが、本当にもらっていいのか?と聞いてきた。
どうぞ!とジェスチャーで返したら、みんなに聞かせていた。そんなに珍しい物でもないのに、みんなビックリしている。こんな薄いラジオがあるのか?それとも、音質がいいのか?と分からないが評判が良かった。自分の乗った列車は各駅みたいで、色んな駅に着く。自分はどこにいるのか分からないので、成都のチケットを見せたら分かってもらえて近くになったら教えてあげるみたいな事を言われた。自分と同じ年の男に、上海の友達からもらったエロ本を出したら見せてくれ!と言うので、周りに見られたら恥ずかしいのであげた。さらに盛り上がってきて、酒を飲もうとドンチャン騒ぎが始まった。中国人と酒を交わすのは友達と言う以上の意味を持っているので、断る事も出来ない。電車の片隅で飲み会が始まった。日本の事を色々聞きたいみたいだが、言葉の壁があるので相手も自分が分からないと返すと、気にするな!飲もう!と言う感じになった。駅に着くたびに、お腹空いてないか?果物食べるか?と聞いてくる。
酒でお腹いっぱいとジェスチャーすると、じゃあ飲もう!と酒がどんどん出てくる。中国人は基本的に酒に強いので、限界を教えないと吐いてしまう。
ただ、西安から出れた喜びもあったので飲めてします。ほとんど意識がなくなったが楽しい酒になった。
夜中まで飲んでいたせいか、起きたら二日酔いになっていた。自分は二日酔いになると炭酸が欲しくなる体質なので、コーラはあるか?と聞いてみた。
そうしたら、駅で止まった際に冷たいコーラを数本買ってくれたので、お金を払おうとすると要らないと言われた。きっと、ラジオと本のお返しだったのだろう。コーラ一本を一気飲みして気分をよくする。すぐに二日酔いは取れなかったが、筆談が始まり地図を書き出した。それは中国の地図で、今はココにいるよ。と教えてくれた。
とてもありがたい情報だ。昨夜は飲みすぎて腹に食べ物を入れてないせいか、お腹が鳴った。それを見逃さない人達でもあり、カップラーメンを食べるか?と聞いてきた。二日酔いにはスープと麺は欲しくなる。カップラーメンをもらい美味しくいただいた。