癌と共に生きる　手術→放射線治療→化学治療

母が使用していたベッド
使われなくなって四年目を迎えた。

当初考えていた以上に
長い間自宅で眠っている。
誰にも使われることもなく
誰も使わない部屋の片隅に
ポツンと置かれたまま
年をまたぐこと四回

気付いたら、そのベッドは
物置になっていた。

母の使用していたベッドは折り畳み式で
折り畳むと、ベンチソファーになる。

部屋の片隅に置かれたままの
ベンチソファーは誰に座ってもらえる訳でもなく、荷物置場となり
荷物を退かすと、痕がくっきりと残っていた。
数日経った今でも消えない痕が
妙に胸を締め付ける。

一年経ったら処分しよう…が
三年経ったら…に変わったのは
言うまでもなく、それが今では
ちょっと使ってみようかと
考え始めた。

ここ数日
そのベンチソファー(ベッド)に座っている。
部屋に日が射してポカポカしてくると
何気に座り、母を想う。

窓越しに見える庭に
二〜三羽のすずめを確認すると
気持ちはすずめに引き込まれていた。

母のベッドを手放す日が
近づいているのか、遠退いているのか
すっかり心が迷子になってしまった。


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