癌と共に生きる　手術→放射線治療→化学治療

母の好きな花の一つ・・・それが桜。
入院中の母がこぼしたわがままは、
今思えば、わがままでもなんでもない、
母の素直な希望であり、願いだった。

菜の花と、桜の花と、富士山が一度に見たい・・・
そんな願いさえ叶えてあげることが出来なかった。

退院数日前、
当時の担当医師に呼び出されて言われた言葉・・・
「好きなことをやらせてあげてください」
だった。

私がこの医師の言葉を
本当の意味で理解できたのは
母が他界した後だった。
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情けない話であるが・・・事実だ。
後にならなければわからない事、
気付けないことがあった。
そして、その殆どはとても容易いことだった。

それらの事が出来なかったのではない。
してあげる気が無かったわけでもない。

一つの命が目の前で消えていく様が
想像できなかったことが大きい。
常に、また明日がある・・・の繰り返しだった。
私はこの時の自分の精神状態を
「現実逃避」に近いものだったと思っている。

目の前で呼吸をして、決して多い量ではないが、
ご飯を食べて、調子が良い時は散歩して、
毎日お風呂に入って、入院する前と何ら変わらない
生活を送っていた退院当初。

担当医師から頂いたアドバイスが
俄かには信じられなかったのだ。

母のお墓から、富士山を見ることが出来る。
桜の花が満開になれば、まあまあの景色だ。
昨年はバタバタして味わう機会が少なかったが、

今年は改めて桜と富士を、母と共に味わいたい。

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