習慣は本人が意識しなくても自動的にできるようになった行動のことであり、それとは気づかないうちに習慣を形成していることもある。
また、すべての習慣が良いとは限らず、時には有害な習慣が根付いてしまうこともあるだろう。
悪い習慣が身についてしまう理由には、習慣形成が脳の合理的な意思決定を担う前頭前野で起こるのではなく、感情やパターン認識、学習などを担う大脳基底核で起こるからという説があるようだが、2006年に学術誌のNature Reviews Neuroscienceに掲載された論文では、習慣を発達させて維持する能力が大脳基底核に関連する可能性が示唆された。
イギリス・サンダーランド大学で客員教授を務めるモーリス・ダーフィー氏は、「習慣とは、あなたが毎日下す小さな決定と行動です。現在のあなたの人生は、本質的にこれらの習慣の集合なのです」と説明している。
習慣を身につけるには、特定の行動を繰り返すことが必要不可欠で、ミネソタ大学で摂食障害について研究しているアリッサ・ロバーツ氏は、「習慣は『慣れ』のプロセスを通じて形成されます。慣れは行動が十分に繰り返された時に発生し、脳は応答を自動化することによってルーチンに適応します」と述べた。
行動を自動化して習慣化するには「合図→行動→報酬」の3段階が必要とされるようで、たとえば、ストレスの多い状況(合図)に反応し、過食(行動)によって一時的な快楽(報酬)を得るといったものが習慣のループとなる。
これが繰り返されると、脳が特定の合図を「報酬を得る機会」だと判断し、報酬を得るために同じ行動を実行するようになるという。
習慣を確立するために必要な時間は、合図と行動が何であるか、その人がどういう人なのかによって異なり、2009年の研究では、習慣形成にかかる時間は18日〜254日とかなり個人差があることや、「朝食後に水を飲む」といった比較的簡単な習慣と「毎日50回腹筋をする」という比較的難しい習慣では、身につけるために必要な努力が異なることが示された。
習慣を長期間維持するには、個人的な動機・自分を律する能力・環境や社会的要因といったものが影響し、さらに、「特定の状況で自分がうまく行動できる」という信念である自己効力感の強さも、習慣を定着させるための重要な要因であるとする複数の研究結果も報告されている。
習慣を身につける上で、目標(報酬)をできるだけ魅力的なものにして、行動を可能な限り簡単なものにするべきであるほか、「自分へのご褒美」も有効だという。