要因.4−1)生物学的原因、遺伝的特異性
人は生物が進化したものであるが、生物である以上原始的な機構はまだ残されており、
しばしば心理学のモデルに用いられる。例えば、生物が天敵に襲われた場合、
逃げるか、闘争かのどちらかを選ばないと弱者は死ぬことになる。その際、肉体を
活性化させ能動を確保する上で苦痛を和らげる必要がある。
そのために、肉体活性物質と苦痛中和のための脳内快感物質が必要となる。
例えるなら、妊婦が出産する際多大な苦痛が伴うが、そうした際にもし快感物質で苦痛を
中和できなかったらどうなるだろう。妊婦は苦痛に耐えかね、中枢神経全体の機能に異常をきた
すことが考えられ、生体全体に悪影響が出る可能性もある。
また、原始時代では寒さや暑さ、体調不良などの状況下でも食物を得るため狩猟や木の実などを
探すなど、外界の厳しい環境下で食物を得るため、苦痛に立ち向かう必要があった。
その際、苦痛に立ち向かうために脳内で分泌する苦痛を中和する物質や肉体を活性化させる体内物質が必要になる。
苦痛を中和する脳内快感物質には数種類あり、ストレス時や環境変化時それがある割合で分泌される。
これらは快感と性欲に関係する物質でもあるドーパミンや、ストレスホルモン、覚醒剤の数百倍の威力
がある体内生成快感物質エンドルフィン、エンケファリン系も多く分泌されると推測される。
性を意識した中でのストレス状態の際、苦痛中和のための快感物質が多量に分泌されればどうなるだろう。苦痛をとおり越して強い快感を感じることになる。
したがって、マゾヒストは通常ならストレスや苦痛時に中和のために微量に分泌されるものが少し多めに分泌されてしまう体質と考えられる。
それを体験し体で学習してしまうことが原因のひとつとも考えられる。
また、それらの物質の分泌特性もある程度遺伝するとの研究結果の報告がある。
マウスの実験では1次世代の攻撃的なマウスを交配し、2次世代を生み、更に3次世代のなると攻撃性が増大したマウスが誕生する率が高まるという研究結果が報告されている。)
このような生物学的素質が性異常の欲求に関係すると考えられる。
例えばサドイストやマゾヒストは、通常人ならストレスとなることに快感が生じる。つまり、
苦痛状態、ストレスが引き金となり、苦痛中和のための快感物質発動機構が惹起され、
変態行為や観念に快感が生じることとなる。また、先天的にストレスにさらされると
快感や高揚感を生じる神経伝達物質やホルモンが過剰に分泌されやすい体質にあることも考えられる。
このときマゾヒストもサディストも脳内快感物質と覚醒物質として、ドーパミンやノルアドレナリンが
異常に分泌されていることが推測され、サドとマゾの違いは上記物質の混合分泌割合の違いと
マゾヒストに関しては、苦痛中和作用を有する脳内麻薬であるエンドルフィン系等のオピエード物質が通常より多く分泌されている
ことが考えられる。また、満足感という感覚には快感と同時に多少の苦しさも同時に内在する可能性があるため
ノルアドレナリンやアドレナリンも同時に分泌されている可能性が考えられる。
快感の中に多少の苦痛が内在することが大きな快感になるということの事例として、精神的な例として困難な仕事などで
苦痛困難を乗り越えたときの達成感や満足感は快感に類する。丁度、山登りやスポーツなどでも苦痛を乗り越えた時の
満足感は苦痛があってのことである。さらにスポーツ等ではマラソンで知れたこと肉体運動を30分程度以上続けると、
エンドルフィン系の脳内快感物質が分泌されてランナーズハイの状態になることで快感が生じることが挙げられる。
また、別な例では、空腹時にお腹いっぱい食べ物を食べるとおいしいという快感が発生するが、それと同時に
胃腸などの消化器系が膨らみ苦痛にもなる。それが満足感という快感が生む。
よって、満足感という快感の達成には快感と同時に多少の苦痛も内在していることが考えられる。
サディストに関してはドーパミンという快感物質は脳の興奮性の快感部位で多く分泌されると、快感と同時に攻撃性を生むことが
報告されており、事実、覚せい剤中毒者や、過度のアルコール摂取によって、多幸感や快感と同時に攻撃性や衝動性
が発現される事例があることから、脳内の興奮性の快感と攻撃性を発現する部位の神経の過剰興奮とそれを抑制する
また、生物学的に動物の場合、自分が優位になり他より優っていると認識した際に、線条体のドーパミンD3受容体が興奮し
それによって、興奮性の性的な快感が生じていることが考えられ、それがサディストの心理と考えられる。
これらの興奮性の神経を制御抑制しているのがセロトニン神経であり、セロトニン作動性神経の抑制不能という異常が原因と考えられる。
いづれにせよ脳内の神経伝達物質のうちドーパミンやノルアドレナリン等の覚醒系の神経伝達物質や神経系が興奮しており、
それらの脳内物質が過剰に分泌され快感神経が興奮しだすと人間の衝動は刺激や快感を「もっと、もっと」「早く、早く」という 心理的な欲求として現れ、そのような衝動が生じることと、肉体的には心臓の鼓動が早まり、高揚感が発現することが挙げられる。
オーガズム直後男性の場合、射精直後は一挙に性欲が減退してしまうのが普通であるが、女性の場合、性行為による
余韻が残りそれを楽しむという欲求があるようだ。その際を考えると、肉体と神経の過剰な興奮によって分泌されていた
覚醒興奮神経の働きが一挙に減少した結果、覚醒興奮神経の作用を抑制しようとしている脳内のギャバ神経が優位に働きだし
ガンマアミノ酪酸によるギャバ神経によって、解放感、安らぎの快感が伴うことも考えられる。
要因.4−2)生物学的原因、遺伝的特異性
生物学的要素、個人の遺伝的素因として、心理学的なモデルとして新奇探求欲求の大小があるといわれており、
近年の脳科学の研究ではその欲求は、どうやら脳内の興奮性の快感物質の分泌が少ない素因によっておきるといわれている。
つまり、先天的にドーパミンの分泌が少ない遺伝体質の人間は、常に何か強い刺激のある変化がないと、ドーパミンが分泌されないために、
常に刺激のある新奇性のあることがらに興味を示し、その衝動に掻き立てられるといわれている。
人は誰しもそのような欲求があり、それが社会の発展などの社会に役立つ、新規学習など発展系に寄与する方面に興味が向けば
社会に役立つことがらを次々と追及研究し良いのだが、性的な方面に興味が向くベクトルに働くと
変態行為でもより刺激のある変態的な新奇性のある行動や欲求を遂げることで、ドーパミンなどの興奮系快感物質の 分泌を求めて、より変態的な行為へと変質してゆくことが考えられる。
変態性癖の原因を科学する4へ つづく
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