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2020年07月02日

スメル男 原田宗典 講談社文庫

1989年刊行だから、もう30年前の作品。単行本が出た時に気になっていたものをやっと読んだ。

あるきっかけで、主人公の体から東京全都を嘔吐させる異臭がし始めるという、前代未聞の状況で物語は進む。中盤までは、ジリジリとしか展開していかない。まるで「家畜人ヤプー」のような、悪趣味のために悪趣味を語るだけなのかと、何度もページを閉じかけた。

ところが、中盤から物語は突如シフトアップしてトップギアに入る。そこからはもう一気読み。「コインロッカー・ベイビーズ」を彷彿とさせるスピード感。

自分には何かが欠落しているということに恐れおののき、やがてそれを克服していく青春物語とも読めるし、奇妙な状況に陥った主人公のサスペンスホラーとも読める。また、大規模災害を予言したかのような箇所にドキリとしたりする。多角的な味わいのある小説だ。

安部公房や大江健三郎、江戸川乱歩がお好きなら、楽しめることうけあい。

スメル男 (講談社文庫) [ 原田宗典 ]

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感想(2件)


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