2019年05月11日
夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)
★★★★☆
本の概要
サン・テグジュペリの代表作。
夜間郵便飛行の黎明期、パイロットと管制が向き合う大義と生死、そして夜の光と闇が織り成す飛行の物語。
感想など
タイトルの通り、読んでいると夜間飛行の情景がありありと浮かんできた。
それは、時に美しい光を伴う夜空と夜景であり、時に恐怖に満ちた真っ暗闇である。
詩的な雰囲気を漂わせる文章が、読む者の想像力を掻き立ててくれた。翻訳もとても素晴らしいんだと思う。
空のパイロットと地上の支配人との対比が、彼らそれぞれの立場と、そこに映る情景の違いと共通点を、浮き彫りにしてくれたように思う。
そして支配人リヴィエールの生真面目で大義を重んじる性格が、ストレスフルな立場をより一層際立たせていた。
時代や場所、そして状況が変われば、考え方も変わっていくだろう。この本を読むと、現在の日本とこの本の舞台との考え方やポリシー、価値観の違いが、航空業界とは程遠い私にでもなんとなく理解できる。
しかし、その根底に流れる人間や社会の心たる部分には、やはり普遍的なものがあるのだろうなと、同時に思わされた。
サン・テグジュペリ自身の経験あってこその、この作品の深みなんだろう。
また読んだことで、この時代の飛行機や世界情勢について、少し興味が湧いてきた。
訳者による解説もとても分かりやすく、それ自体も楽しめた。
だいぶ前に星の王子さまミュージアムに行ってからというものの、気になってはいた。それをやっと手にとって読むというタイミングに恵まれた。
とにかく、読む時間そのものを楽しませてくれる本だった。さらに、読んだ後の余韻も素晴らしい
別の翻訳
タグ:夜間飛行
posted by myreading at 01:06| 文学・小説 --- 海外文学