2018年07月21日
スイス・アーミー・マン(2016)
![]() | スイス・アーミー・マン【Blu-ray】 [ ダニエル・ラドクリフ ] 価格:4,217円 |

死体のオナラでジェットスキー。
あのハリーポッターシリーズで一世を風靡したダニエル・ラドクリフがまさかの死体を演じることで話題となったこの映画。
監督を務めたダニエル・シャイナート&ダニエル・クワンはインタビューで「ある意味で僕たちのセラピー的な作品。自分たちの最もバカなアイデアを何年もかけて理解しようとした結果」だと言っている。
そう、流し見してしまえばただの「変なもの」と言える映画だが、細部まで目を通すと、深いメッセージ性があることに気付くのだ。
無人島で助けを求める孤独な青年ハンク。待てども待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体が流れ着く。ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。ハンクは意を決してその死体にまたがるとジェットスキーのように発進。無人島を脱出しようと試みるのだが…。果たして2人は無事に家へとたどり着くことができるのか―!?
タイトルのスイス・アーミー・マンは、マルチ機能満載の万能ナイフ、スイス・アーミー・ナイフをもじったもの。
死体が会話をするのは定番中の定番。それだけではなく、ジェット噴射、コンパス、斧、ハンマー、水筒、カッター、髭剃り、ピストル、火打石、さらにはバーナーと、まさにスイス・アーミー・ナイフになぞらえた優れもの死体のメニ―。このアイデアたるやひょうきんである。
これはメニ―の妄想、所謂イマジナリーフレンドというものなのだろう。
素晴らしいのは、万能メニーの機能でパーティーをするシーンの不思議で独特な映像。変にテンションが上がったり。
さて、ただのコメディ、ヘンテコ映画かと思いきや、人間の「汚い」「臭い」などの要素を逆に生きること、生と死といったテーマの表現として利用している天才的な映画でもある。この映画を鑑賞後なおも汚い、気持ち悪いという感想であれば、この映画で言うところの「世間」側の人間なのかもしれない。
ハンクは「人前での放屁」「勃起」「自慰行為」などを世間から臭いものに蓋をするように表に出せずに捨てていた。その時出会ったのが捨ててきたものそのものともいえるメニ―であり、その万能機能で生き抜くことができた。世間的には恥辱を受ける要素は、つまるところ「人間の生きている証拠」であるにも拘わらず、我々は目を逸らしている。猿はおならを恥じらうだろうか。
笑撃のラスト10分、放屁ジェット噴射で進むメニ―を見送るハンク以外の野次馬の目は、冒頭のハンクと同じ目をしている。しかしハンクは笑顔で見送っているのだ。
これはイマジナリーフレンドであるメニ―との交流を通し、世間的に目を背けているものをハンクが受け入れたことを示唆しているのではないのではないか。
賛否両論らしいが筆者からすれば、ヘンテコでもいい、生きることの真の意味を教えてくれる良作であった。
ハンクを演じたのはポール・ダノ。なぜか拳を引き寄せる顔とかナヨナヨした魅力とか言われているが、実のところカメレオン俳優である。この作品では髭もじゃもじゃだが丸顔である。
因みに死体役ダニエル・ラドクリフは、貯金の100億円をほとんど手付かずにしているという。
仕事を賢く選ぶ上で、とても大きな自由が手に入る」からだろう。「お金を稼ぐためにこの先、くだらない映画に出るよりも、これまで僕のキャリアを応援してくれた人に、面白いものを見せたい」らしい。
ほんでもって死体役を演じたダニエル・ラドクリフに是非とも拍手を送りたい。
さてと、無人島に1つだけ持っていくとしたら?

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