2016年10月04日
夫婦喧嘩や浮気があっても人生は続くよ。どこまでも「フレンチなしあわせのみつけ方」2004年制作
国や人種が違っても人間のやることは皆同じ。人間というのは同じ姿勢を長く続けられない宿命を帯びていると言ってもいいかもしれない。
早い話が一晩中、棺おけに入っている寝姿で朝を迎える人はそう多くないだろう。寝返りを打って、うつぶせになったり横になったりしている筈。
我が家のネコを見ていると、同じ姿勢で1時間でも2時間でも平気な顔をしている。人間は新しい服を何回か着るうちに、別の服が欲しくなるように飽きるのも早い。
結婚生活も同様、数年経てばなにか満たされないものが汚泥のごとく沈殿する。お互いに飽きてはいないが、自己主張が前面に出てくる。
例えば、夕食後の食器を片付けたり洗うのを妻は文句を言う。要するに「あんたも少し手伝え」と言うわけ。ここに三人の男がいる。ヴァンサン(イヴァン・アタル)とジョルジュ(アラン・シャバ)とフレッド(アラン・コーエン)の親友三人組。
ヴァンサンとフレッドは、同じ自動車販売会社の社員。ジョルジュは、ホテル勤務。ランチはこの三人が共にする。妻のことや目についた女性の品定めが主な話題。「いいケツしてる」が口ぐせ。どこの国の男とも変わらない食事風景。
妻といえばヴァンサンにはガブリエル(シャルロット・ゲンズブール)がいて、子供ジョセフを抱える。家にいるとやっぱり文句を言われる。
フレッドは独身で昼間から情事にふける。悲惨なのはジョルジュで、いつも強い口調で非難する妻ナタリー(エマニエル・セニエ)にはお手上げで「家に帰りたくない」と嘆く。こういうのを見ていると、日本の男と変わらない。
この映画の主役はガブリエルで、不動産業に勤めている。いわゆる町の不動産屋といったとろ。ヴァンサンとの夫婦仲も悪くはないが、なぜか心が他の男を求めているようだ。
レコード売り場でヘッドホーンをつけてCDに耳を傾けていると、横に男(ジョニー・デップ)が立って同じCDの曲をヘッドホーンで聴き始める。イギリスのバンド、Radioheadの「Creep」という曲で演奏の佳境と思われるところで、お互いに顔を見つめ頷く。
やがて男はCDを手にとってガブリエルにそれを見せて去っていく。しばらく音楽を聴いていたガブリエルが突然男を追う。人ごみに見失ったが別のレコード棚で目を合わせる。ガブリエルは微笑むがそれ以上は進めない。
このcreepとうのは、オートマ車の踏んでいたブレーキを外すと自然に動き出す現象だが、他方で感情などが知らず知らずのうちに入り込むという意味もある。そう、ガブリエルはそんな感情に支配されていた。このシーンは伏線でラスト・シーンにつながる。
男探しを何度かトライするもなかなか一線を越えられない。夫のヴァンサンはというと、ガブリエルが子供を連れてバカンスに出かけたのを幸いに長く続いている恋人との逢瀬を楽しむ。ガブリエルもなんとなくその気配を感じているが……。どこにでもある日常が切り取られ心の琴線が波打つ。
ガブリエルは、アパートの案内依頼電話を受ける。アパートの前で待っていると、やってきたのはCD売り場の男(ジョニー・デップ)だった。三人も乗れば一杯になるエレベータが上昇する。
会話はほんの二言三言。「英語喋れる?」「ウィ」と男。エレベーターはどこまで行くんだろう。二人にクリープ現象が起きたのか、やがて熱いキス。めでたしめでたし。人生は続くよ。どこまでも……
追って、この映画の中で最後まで気づかなかった人がいた。それはヴァンサンの母親だ。レストランの俯瞰アングルから通常のアングルに移動するが、そこにヴァンサンの両親が食事をする場面がある。歳を重ねた夫婦は言葉を必要としない。それは以心伝心すべてを分かり合えた男と女の姿。
華麗な雰囲気の中の女性が、後で調べてみるとあのアヌーク・エーメだった。その映像を見ながらこういう人ならいいなあと憧れの気持ちにもなった。出演当時72歳のアヌーク・エーメの色香も衰えていなかった。
それではレコード店での「Creep」をどうぞ!
監督
イヴァン・アタル1965年1月イスラエル、テルアビブ生まれ。共演のシャルロット・ゲンズブールは妻。
キャスト
シャルロット・ゲンズブール1971年7月イギリス、ロンドン生まれ。監督のイヴァンは、夫役で共演。
アラン・シャバ1958年11月フランス生まれ。
エマニエル・セニエ1966年6月フランス、パリ生まれ。
アラン・コーエン1958年1月生まれ。
ジョニー・デップ1963年6月ケンタッキー州オーウェンズボロ生まれ。
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