むーさんの負けてたまるか

その日は
落ち着かぬままでした
大事な試合
大きな取引
それなりに
経験して来ました
今回は母に施設の話を
するだけです
だのに何でしょうー
この違和感と緊張は
これから親を騙すことへの
罪悪感なんでしょうか

あたしは落ち着かぬまま
病院の駐車場に車を停め
母の元へ向かいました
母はいつもの席で
同僚さんたちと
笑顔の中にいました
それを見た瞬間
あたしは施設の話を
切り出しにくくなりました


人はタイミングを逸すると
何もかもチグハグになります
何だか人生の縮図のようです
母はこちらに気づき
手を振ります
相変わらず嫁君だけを
理解してる模様です
ハハハ (笑)です


あたしは母を窓際のテーブルに
移して話を始めました
「これからの事を話すね
まずね このリハビリ病院は
いつまでもいられないんだよ
出たあとはお家で一緒に
いたいんだけど
まだ準備ができてないんだよ
ごめんね
まだバビは一人で何でも
できる様になるまで
もう少し時間が掛かるから
（母は孫達に自分のことを
バビと呼ばせていました）
その練習を続けようね
場所が決まったら教えるね
みんな名古屋にいるから
いつでも飛んでこれるから
前とは違うからね」

母は半分わかってる様ですが
半分は分かっていません
うんうんと頷いてはいますが
チグハグな受け答えが多いのです


みんな名古屋に来ればいいのにね
最後に母はあたしに呟きました
そうだね！でもねバビちゃん
もうみんな名古屋にいるんだよ
大丈夫だよみんな一緒なんだよ

きっと母は寂しかったのでしょう
これが母の心の言葉だと
あたしは思いました
施設の話より違う話が母は多く
母には理解出来ていないし
理解したくなんてないのかも
しれません

少々拍子抜けした感もありますが
母へ施設の話をしました
これからも何度も話して
理解してもらおうと思います


母の心の中の言葉は
今のあたしには
多くを聞き取る事はできせん
でも何度でも試みます
笑顔で接し母の心の言葉を
しっかりと受け取ろうと
思います

ある方のアドバイス
「ホテルにいると思ってね」
これを毎回の〆の言葉に
しようと思います
何時か元気になり
一緒に暮らすこと
それを心から願いながらー








まだまだ続きます