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2020年05月23日
「免疫パスポート」_新型コロナ(COVID-19)の抗体検査ってどうなの?」
「免疫パスポート」_新型コロナ(COVID-19)の抗体検査ってどうなの?」
友達:「自分が他人にウイルスをうつさない」という確証が欲しい。
抗体があることが分かれば、安心して職場に行けるし、
家族に感染を広げるリスクも抑えられる。
「そのためなら2万円ぐらい出してもいい」。
私:「残念ながら、今の抗体検査にお金を掛ける価値はない」
(1)現在、日本国内で出回っている抗体検査は、
指先から採取した血液を用いる簡易的なイムノクロマト法が大半であり、
偽陽性(本当は抗体を持っていないのに陽性と出てしまう)が出る。
(2)仮に抗体を持っていたとしても再感染しないとは限らない。
(3)抗体があればウイルスに対して耐性を持つかもしれないが、
それがいつまで続くか分からない。
「知らずに感染者だった」という淡い期待
ネットで「抗体検査」と検索すると、
おびただしい数の広告が出てきます。
価格は1万円から数万円ほどで、
中には「当院の検査は感度95.7%、
特異度96.7%です」などと
精度の高さを誇るクリニックも出てくる始末です
(その根拠は明らかにされていません)。
ただ、偽陽性が避けられない検査では、
自分に抗体があるかどうかを知りたいという
ニーズに応えることができません。
それでも人々の不安心理をあおって、
抗体検査を売り込もうとする
“悪徳クリニック”が後を絶ちません。
こうしたクリニックをうさんくさいと思いつつも、
抗体検査を受けたい人が一定数いるのは、
あわよくば自分も感染者だったという「幸運」を
期待しているからではないでしょうか。
新型コロナウイルスは感染しても8割は
無症状もしくは軽症と言われています。
厚生労働省によると、
5月20日までにPCR検査で陽性と診断された人は
1万6385人です。
ただ、日本は他国に比べてPCRの検査数が極端に少なく、
米ニューヨーク州で実施された抗体検査では、
確定された感染者数よりも抗体検査で陽性だった人の割合が
10倍以上でした。
4月下旬、欧州や米国などで「免疫パスポート」構想が
盛り上がりました。
抗体を持つ人には移動の自由を与え、
仕事にも復帰してもらう。
一刻も早く経済活動を復活させたい政治家としては、
ワラにもすがりたいのでしょう。
しかし、世界保健機関(WHO)はすぐさま火消しに走りました。
テドロス事務局長は4月24日の定例会見で、
「抗体検査に陽性だったとしても再度感染しない
という証拠はない」と明言しました。
ただ、WHOは抗体検査に意味がないと
切り捨てたわけではありません。
25日には「我々はCOVID-19にかかった
ほぼ全員に抗体ができ、
一定の防御になると予想している」
とも補足説明しました。
流行が始まったばかりの新型コロナウイルス
(SARS-CoV-2)については、
一度感染した人が再び感染しないことを保証する
だけの科学的な根拠がまだ十分ではない、
というのがWHOの真意です。
一度獲得した免疫がいつまで保持されるか、
これについてもまだデータが出そろっていない
というだけです。
はしか(麻疹)やおたふく(耳下腺炎・ムンプス)
などと同様に、
新型コロナも一度免疫が付けば生涯かからない
病気になる可能性も残されています。
こうした課題に関する研究は世界中の科学者が
ものすごいスピードで進めているので、
いずれ解決すると期待しています。
確実に感染歴を判別する製品も続々登場
抗体検査についても刻一刻と状況が変わってきています。
スイスRoche社が特異度99.8%以上、
感度100%を保証する抗体検査製品を開発し、
米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可(EUA)を得ました。
米Ortho Clinical Diagnostics社は特異度が100%
の抗体検査製品を開発し、
こちらもFDAからEUAを得ています。
医師や看護師が採血する必要があるため、
キットに血をごく少量たらすだけのイムノクロマト法
に比べると簡便さで劣ります。
マスクの着用や手洗いの敢行は続けるとしても、
抗体さえあればウイルスが体内に入ってきても
増殖を抑えることができます。
その結果、自分が周囲の人にウイルスをまき散らす
リスクを大幅に減らせます。
抗体検査は、
今後実用化されるワクチンを補完する役割も担います。
ワクチンを接種しても、全員にちゃんと免疫が付くとは限りません。
抗体価が十分に上がらない人には、
再度ワクチンを接種すれば良いのです
(今でも予防接種の効果を確認するための抗体検査があります)。
今後の研究で、新型コロナウイルスは一定期間経つと
免疫が落ちてしまうことが判明するかもしれませんが、
定期的に抗体検査を実施していれば抗体価が
下がったことも分かるようになります。
免疫パスポートのメリットは医療従事者に限りません。
小売業や飲食業など不特定多数の人と接する職業の場合、
自社の従業員から感染が広がったという事態は
何としても避けたいはず。
もちろん、抗体検査を大規模に実施するには
膨大なコストと手間がかかります。
ただ、人々に安心感を与え、
経済を活性化するには何らかのきっかけが必須です。
日本政府は国民に一律10万円を支給する
特別定額給付金に12兆7344億円を投じましたが、
何度も使える手ではありません。
今後の出口戦略を考える上でも、
抗体検査の是非を検討する価値はあるはずです。
参考:免疫パスポート」という甘美なゴールを目指して
2020/05/22 坂田亮太郎=日経バイオテク
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/eye/202005/565654.html?n_cid=nbpnmo_mled_html-new-arrivals
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ワクチンと新型コロナウイルスと検疫
【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第5回から抜粋
公開日:2020/05/12 企画・制作 ケアネット
>COVID-19のワクチンは武漢での発生当初から
世界各国で盛んに研究開発が進み、
4月28日現在で90以上のワクチン候補が誕生し、
うちすでに6ワクチンはヒトに対する第I相試験に進んでいる。
古典的な弱毒化または不活化の手法は当然試されているが、
既知のコロナウイルスでさえ、
充分な効果のあるものが登場していない。
新興病原体に対するワクチン開発で近年主流になっているのが、
”遺伝子組み換え手法”で、
ヒトへの病原性がない他のウイルスに目的ウイルスの遺伝子を
組み込むことで特異抗原を産生させ、
そのまま“生”として、または不活化してワクチンとする。
2018年から続いているコンゴ民主共和国でのエボラ出血熱
アウトブレイクで濃厚接触者へのring vaccinationとして
行われているワクチンも遺伝子組み換え“生”ワクチン
(rVSV-ΔZEBOVワクチン)である。
2012年に登場したMERSコロナウイルスにはこの手法で
ワクチン開発が進められ、動物実験までは行われている。
COVID-19ワクチンの開発手法もこれを採用しているチームが多い。
そのほか、核酸ワクチンという手法もある。
ウイルス粒子ではなく、ヒトの免疫系が反応しうる
ウイルス抗原部分をコードしたウイルスゲノム(
RNAのまま、またはDNAに変換)を
ワクチンとして接種し、
ヒト細胞に取り込ませることで抗原を産生させ、
それに対する免疫応答を惹起させる。
コロナウイルスの持つタンパクのうち
特にヒト免疫が反応しやすいもの(サブユニットと呼ぶ)
だけを抽出してワクチン成分とする
サブユニットワクチンもある。
2003年に登場したSARSコロナウイルスに対しては
すでにサブユニットワクチンが開発済みであるが、
SARSが完全に封じ込められた影響もあり、
サルでの動物実験に留まりヒトでの治験実績はない。
これら以外にもワクチン開発技術には大小の異同があり、
それぞれのチームが研究開発のしのぎを削っている。
わずか4ヵ月あまり前に世界に登場した病原体に対して、
すでに90以上のチームがワクチン開発に着手している
ことには希望が持てるが、
しかし安全かつ効果のあるワクチンの開発は
決して容易なことではない。
COVID-19ワクチンへ希望は持ちつつも過剰な期待はせず、
感染拡大防止の努力を徹底した上で、
既存ワクチンの接種を遅れることなく
推し進めることこそが医療職の使命と言える。
講師紹介
守屋 章成 ( もりや あきなり ) 氏名古屋検疫所 中部空港検疫所支所 検疫衛生課
https://www.carenet.com/series/vaccine/cg002544_g005.html?utm_source=m15&utm_medium=email&utm_campaign=2020050605