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2019年02月02日
『ゾフルーザは本当に夢の薬?』 抗インフルエンザ薬の使い方
抗インフルエンザ薬について科学的にわかりやすく書いてあります!インフルエンザについてもよくわかります!
健康な成人はインフルエンザにかかっても、2−3日、高熱、倦怠感、頭痛、関節雨痛が苦しめられますが、1週間もすれば治ります。
抗インフルエンザ薬は、発熱後48時間以内に服用すれば、症状が1日早く治まるというメリットはあります。
発症して5日間、かつ、解熱後まる2日経過すれば、登校しても良いという『学校法』に準拠して、職場でも休職が必須です。
抗菌剤でも問題になっていますが、耐性ウイルスの出現が10%弱ある『ゾフルーザ』
増殖したインフルエンザウイルスが、細胞から出芽する際に、膜を合成させないようにする、タミフルに代表されるノイラミニダーゼが効かない時の切り札として温存すべきと、下記の記事では紹介されています。
私も賛成です。
『ゾフルーザは本当に夢の薬?』
抗インフルエンザ薬の使い方
2019/1/24 岡 秀昭(埼玉医科大学総合医療センター)
『そもそも、インフルエンザと臨床診断した場合に抗インフルエンザ薬を全例に処方すべきなのでしょうか?』
私は、特に健康な成人において、抗インフルエンザ薬は必須ではないと考えています。
なぜならば、抗インフルエンザ薬の効果は極めて限定的である一方で、
一定確率で副作用のリスクがあり、
確実にコストが余計にかかるからです。
米国感染症学会のガイドラインでも、低いエビデンスレベルと推奨度で条件付きで考慮するとなっています1)。
健常者への抗インフルエンザ薬の効果としては、
48時間以内に投与された場合、
プラセボと比較し、わずかに解熱など症状の改善が早まるとのエビデンスがあります2)。
しかし、合併症を防いだり、死亡率を下げたりという効果報告は結果が割れており、
十分に証明されていません。
効果はあるとしてもごく僅かで、特に合併症のリスクが少ない患者ではほとんど差がないと考えてよいでしょう。
また、一定数で吐き気、下痢、呼吸困難など副作用が認められます3)。
少しでも早く症状が改善することに価値を感じる先生もおられるかもしれませんが、
合併症や死亡のリスクの少ない患者層に一律に抗インフルエンザ薬を処方してしまえば、
医療費の高騰や耐性ウイルスを増やす懸念もあります。
つまり、健常者への抗インフルエンザ薬を一律処方することはリスクとベネフィットのバランスが悪いと私は考えています。
ただ、ここには価値観の問題も関わりますので、
患者にメリットとデメリットを説明した上で処方するかを決めるのが現実的でしょう。
もし処方するならば発症後48時間以内(できればもっと早く)に、というのが原則であり、
早期の投与が症状短縮により有効です。
一方でリスク因子を有する患者(表1)は、積極的に抗インフルエンザ薬を処方すべきです。
リスクのある患者では、発症後48時間を超えていても、処方を検討してもよいでしょう。
表1 抗インフルエンザ薬の積極的な投与が推奨される合併症のハイリスク患者(米国感染症学会ガイドラインを基に作成)
・『5歳未満の小児(特に2歳未満)』
・『65歳以上の成人』
・『喘息を含む慢性気道疾患、心血管疾患(高血圧は除く)、腎疾患、肝疾患、糖尿病を含む代謝疾患、てんかんを含む神経疾患』
・『免疫抑制薬服用者やHIV感染者』
・『妊婦や出産後』
・アスピリンを使用中のライ症候群リスクがある人
・BMI 40kg/m2以上の肥満者
・『高齢者施設に居住する人』
抗インフルエンザ薬を処方する場合、迅速検査の結果は必須ではありません。
抗インフルエンザ薬の恩恵は投与が早い方が大きいため、翌日に再診させて再検査する必要もありません。
もし先生が臨床症状からインフルエンザを強く疑い、抗インフルエンザ薬を処方すると判断しているならば、薬を処方して自宅静養を指示すべきです。
翌日の再診再検査は、患者さんもつらく、コストもかかり、周囲への感染拡大のリスクにもなるため、良いことはあまりないのです。
抗インフルエンザ薬は何を処方すべきか?
現在承認されている抗インフルエンザ薬には4つの系統、7つの薬剤があります。
3つの系統とは、
ウイルスの脱核を阻害するM2蛋白阻害薬(アマンタジン((商品名シンメトレル他))はA型インフルエンザにしか効果がない上、既に耐性ウイルスが多くを占めているため、原則使用しません。また、ポリメラーゼ阻害薬としてファビピラビル((アビガン))が承認されていますが、催奇形性があるため、国が使用を判断したときのみに投与が認められており、日常診療で使うことはありません)、
ウイルスで複製された遺伝子が細胞外へ出るための酵素を阻害するノイラミニダーゼ阻害薬、
ウイルスのRNA合成を阻害するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬とポリメラーゼ阻害薬です。
現在、インフルエンザ治療に用いる薬剤の中心はA型B型のいずれにも有効なノイラミニダーゼ阻害薬が中心なっています。
米国感染症学会のガイドラインでもノイラミニダーゼ阻害薬を単剤で使用することが推奨されています1)。
我が国では、ノイラミニダーゼ阻害薬として、
内服薬のオセルタミビル(タミフル他)、
吸入薬のザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、
点滴薬のペラミビル(ラピアクタ)の4剤が承認されています。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
最も広く使われているオセルタミビルは一時期、投与後の異常行動や飛び降りが問題になりましたが、
その因果関係は否定的と判断されており、
今シーズンからは10歳代への投与差し控えも撤回されました。
そのため、安全性が最も明瞭で評価されている薬剤ということになります。
さらに臨床試験も最も豊富であり、2018年6月からはジェネリックも登場しており、最も安価です。
ラニナミビルは1回吸入で治療が完結する便利な薬剤ですが、
海外では臨床試験でオセルタミビルに対する非劣性が証明できず、発売されていません3)。
またオセルタミビルに比べ発熱期間が長いことも報告されるなど
効果がオセルタミビルに対して低いと考えられます。
また、吸入薬は局所投与となるため、
重篤なインフルエンザ、喘息のような気道過敏性がある患者や吸入困難な患者への投与は制限されてしまいます。
ただし、オセルタミビル耐性ウイルスには効果があります。
ザナミビルもオセルタミビル耐性ウイルスには効果があり、ウイルス耐性も起きにくいですが、吸入薬であることなどから、あまり我が国では用いられていません。
ペラミビルは点滴薬であり、
重症例や内服吸入ができない症例に使える薬剤と期待していますが、
そのエビデンスが乏しいところが問題です。
重症例では経管チューブからオセルタミビルを投与する方が良いかもしれません。
またオセルタミビル耐性ウイルスには交差耐性を有するため、こちらにも注意が必要です4)。
以上から、オセルタミビルが最もエビデンスが豊富であり、安全性、コストをトータルに考えると、現時点では私は原則としてオセルタミビルを第一選択薬として推奨します。
『ゾフルーザ』はメディアでは大きく扱われているが…
では、昨年発売されたバロキサビル(ゾフルーザ)はどうでしょう?
バロキサビルは1回服用するだけでよい便利な新規抗インフルエンザ薬であり、マスコミ報道では「患者の97%が要求する」とのデータも提示されていました。
ただ、その患者さんのニーズが新薬の利益だけでなく、
不利益も理解した上でなければ、
それは科学に基づいた医療ではなく、
単なるマーケティングの成功にすぎません。
科学的に見ると、
重症化リスクの低い患者への投与では、オセルタミビル投与時と比較して臨床的な改善効果は非劣性でした5)。
つまり、薬の効き具合では引き分けなのです。
ウイルスの減少スピードはバロキサビルの方が速かったというデータから、
1回の投与で完結することと合わせてバロキサビルを勧める医師もいるようですが、
あくまで重要なのは治験時の1次エンドポイントである臨床効果の改善なのです。
仮に1歩譲って、副評価項目のウイルスの抑制が高いことを評価するとしても、
薬価が高いことや、
まだ長期使用の副作用の懸念があること、
1日1回投与で半減期が長いため、
副作用出現の際に重症化したり治癒が遅れることが懸念されます。
実際に筆者はバロキサビルによると思われる遷延した薬疹を既に経験しています。
また、治験時に『9.7%の薬剤耐性ウイルスが出現』していることにも注視しなくてはなりません5)。
この薬剤に対してウイルスが急速に耐性化する懸念があるのです。
バロキサビルの利点は、1回投与で完結できるだけではありません。
オセルタミビルのようなノイミラミニダーゼ阻害剤に耐性となったウイルスや、
人類に脅威となる高病原性の新型ウイルス出現の際の治療薬としても使用できる可能性があるにもかかわらず、
「1回投与で便利なため患者が希望する」という理由だけでその切り札を失ってもよいのでしょうか?
オセルタミビル耐性ウイルスを過度に懸念するのも、理由にはなりません。
流行するウイルスの動向には注意が必要ですが、
国立感染症研究所からの情報では
2018シーズンのタミフル耐性ウイルスの検出は解析株では存在せず、まれなようです6)。
以上から筆者はバロキサビルを現時点で推奨しません。
一部の有名病院ではこのような理由から本薬剤の採用を見合わせているのです
(関連記事:亀田がゾフルーザの採用を見合わせた理由)。
日本感染症学会も、日本小児科学会も本薬剤の位置付けは不明確として積極的な推奨を見送っていることも留意すべきでしょう7)、8)。
新薬の利益、不利益を客観的に評価して慎重に処方する姿勢が大切ではないでしょうか。
なお、米国感染症学会では、今回のガイドライン策定後にゾフルーザが承認されたため、
今回のガイドラインでは推奨の有無については言及していません。
過去に発売後、副作用で消えた抗菌薬が幾つもあります。
また新薬の安易な処方が薬剤耐性(AMR)の原因の1つと指摘されています。
過去の歴史に反省なく、新薬であるゾフルーザがいきなり処方シェアを拡大するようならば、
この国のAMR対策が成功するのかはなはだ疑問です。
むしろ、今シーズンに抗インフルエンザ薬を使うならば、
ジェネリックが利用できるようになり、10歳代への使用も可能となった今こそ、オセルタミビルを選択すべきではないでしょうか。
※ なお、岡氏は塩野義製薬より、診療科への奨学寄付金を受けている。他の抗インフルエンザ薬の販売メーカーからの資金提供は受けていない。
【参考文献】
1)米国感染症学会「Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America」(2018)
2)Cochrane Database Syst Rev 2014;4:CD008965 PMID:24718923
3)Biota Reports Top-Line Data From Its Phase 2 "IGLOO" Trial of Laninamivir Octanoate(2014)
4)Takashita E,et al.Antivirai Res.2015;117:27-38.
5)Hayden FG,et al. N Engl J Med 2018;379:913-23.
6)国立感染症研究所 抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス
7)日本感染症学会ホームページ キャップ依存型エンドヌクレアーゼ阻害剤について
8)日本小児科学会ホームページ2018/2019シーズンのインフルエンザ治療
著者プロフィール
岡秀昭(埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科准教授)●おかひであき氏。
2000年日本大学卒。日本大学第一内科で研修後、横浜市立大学、神戸大学、東京高輪病院などを経て、2017年より現職。
健康な成人はインフルエンザにかかっても、2−3日、高熱、倦怠感、頭痛、関節雨痛が苦しめられますが、1週間もすれば治ります。
抗インフルエンザ薬は、発熱後48時間以内に服用すれば、症状が1日早く治まるというメリットはあります。
発症して5日間、かつ、解熱後まる2日経過すれば、登校しても良いという『学校法』に準拠して、職場でも休職が必須です。
抗菌剤でも問題になっていますが、耐性ウイルスの出現が10%弱ある『ゾフルーザ』
増殖したインフルエンザウイルスが、細胞から出芽する際に、膜を合成させないようにする、タミフルに代表されるノイラミニダーゼが効かない時の切り札として温存すべきと、下記の記事では紹介されています。
私も賛成です。
『ゾフルーザは本当に夢の薬?』
抗インフルエンザ薬の使い方
2019/1/24 岡 秀昭(埼玉医科大学総合医療センター)
『そもそも、インフルエンザと臨床診断した場合に抗インフルエンザ薬を全例に処方すべきなのでしょうか?』
私は、特に健康な成人において、抗インフルエンザ薬は必須ではないと考えています。
なぜならば、抗インフルエンザ薬の効果は極めて限定的である一方で、
一定確率で副作用のリスクがあり、
確実にコストが余計にかかるからです。
米国感染症学会のガイドラインでも、低いエビデンスレベルと推奨度で条件付きで考慮するとなっています1)。
健常者への抗インフルエンザ薬の効果としては、
48時間以内に投与された場合、
プラセボと比較し、わずかに解熱など症状の改善が早まるとのエビデンスがあります2)。
しかし、合併症を防いだり、死亡率を下げたりという効果報告は結果が割れており、
十分に証明されていません。
効果はあるとしてもごく僅かで、特に合併症のリスクが少ない患者ではほとんど差がないと考えてよいでしょう。
また、一定数で吐き気、下痢、呼吸困難など副作用が認められます3)。
少しでも早く症状が改善することに価値を感じる先生もおられるかもしれませんが、
合併症や死亡のリスクの少ない患者層に一律に抗インフルエンザ薬を処方してしまえば、
医療費の高騰や耐性ウイルスを増やす懸念もあります。
つまり、健常者への抗インフルエンザ薬を一律処方することはリスクとベネフィットのバランスが悪いと私は考えています。
ただ、ここには価値観の問題も関わりますので、
患者にメリットとデメリットを説明した上で処方するかを決めるのが現実的でしょう。
もし処方するならば発症後48時間以内(できればもっと早く)に、というのが原則であり、
早期の投与が症状短縮により有効です。
一方でリスク因子を有する患者(表1)は、積極的に抗インフルエンザ薬を処方すべきです。
リスクのある患者では、発症後48時間を超えていても、処方を検討してもよいでしょう。
表1 抗インフルエンザ薬の積極的な投与が推奨される合併症のハイリスク患者(米国感染症学会ガイドラインを基に作成)
・『5歳未満の小児(特に2歳未満)』
・『65歳以上の成人』
・『喘息を含む慢性気道疾患、心血管疾患(高血圧は除く)、腎疾患、肝疾患、糖尿病を含む代謝疾患、てんかんを含む神経疾患』
・『免疫抑制薬服用者やHIV感染者』
・『妊婦や出産後』
・アスピリンを使用中のライ症候群リスクがある人
・BMI 40kg/m2以上の肥満者
・『高齢者施設に居住する人』
抗インフルエンザ薬を処方する場合、迅速検査の結果は必須ではありません。
抗インフルエンザ薬の恩恵は投与が早い方が大きいため、翌日に再診させて再検査する必要もありません。
もし先生が臨床症状からインフルエンザを強く疑い、抗インフルエンザ薬を処方すると判断しているならば、薬を処方して自宅静養を指示すべきです。
翌日の再診再検査は、患者さんもつらく、コストもかかり、周囲への感染拡大のリスクにもなるため、良いことはあまりないのです。
抗インフルエンザ薬は何を処方すべきか?
現在承認されている抗インフルエンザ薬には4つの系統、7つの薬剤があります。
3つの系統とは、
ウイルスの脱核を阻害するM2蛋白阻害薬(アマンタジン((商品名シンメトレル他))はA型インフルエンザにしか効果がない上、既に耐性ウイルスが多くを占めているため、原則使用しません。また、ポリメラーゼ阻害薬としてファビピラビル((アビガン))が承認されていますが、催奇形性があるため、国が使用を判断したときのみに投与が認められており、日常診療で使うことはありません)、
ウイルスで複製された遺伝子が細胞外へ出るための酵素を阻害するノイラミニダーゼ阻害薬、
ウイルスのRNA合成を阻害するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬とポリメラーゼ阻害薬です。
現在、インフルエンザ治療に用いる薬剤の中心はA型B型のいずれにも有効なノイラミニダーゼ阻害薬が中心なっています。
米国感染症学会のガイドラインでもノイラミニダーゼ阻害薬を単剤で使用することが推奨されています1)。
我が国では、ノイラミニダーゼ阻害薬として、
内服薬のオセルタミビル(タミフル他)、
吸入薬のザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、
点滴薬のペラミビル(ラピアクタ)の4剤が承認されています。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
最も広く使われているオセルタミビルは一時期、投与後の異常行動や飛び降りが問題になりましたが、
その因果関係は否定的と判断されており、
今シーズンからは10歳代への投与差し控えも撤回されました。
そのため、安全性が最も明瞭で評価されている薬剤ということになります。
さらに臨床試験も最も豊富であり、2018年6月からはジェネリックも登場しており、最も安価です。
ラニナミビルは1回吸入で治療が完結する便利な薬剤ですが、
海外では臨床試験でオセルタミビルに対する非劣性が証明できず、発売されていません3)。
またオセルタミビルに比べ発熱期間が長いことも報告されるなど
効果がオセルタミビルに対して低いと考えられます。
また、吸入薬は局所投与となるため、
重篤なインフルエンザ、喘息のような気道過敏性がある患者や吸入困難な患者への投与は制限されてしまいます。
ただし、オセルタミビル耐性ウイルスには効果があります。
ザナミビルもオセルタミビル耐性ウイルスには効果があり、ウイルス耐性も起きにくいですが、吸入薬であることなどから、あまり我が国では用いられていません。
ペラミビルは点滴薬であり、
重症例や内服吸入ができない症例に使える薬剤と期待していますが、
そのエビデンスが乏しいところが問題です。
重症例では経管チューブからオセルタミビルを投与する方が良いかもしれません。
またオセルタミビル耐性ウイルスには交差耐性を有するため、こちらにも注意が必要です4)。
以上から、オセルタミビルが最もエビデンスが豊富であり、安全性、コストをトータルに考えると、現時点では私は原則としてオセルタミビルを第一選択薬として推奨します。
『ゾフルーザ』はメディアでは大きく扱われているが…
では、昨年発売されたバロキサビル(ゾフルーザ)はどうでしょう?
バロキサビルは1回服用するだけでよい便利な新規抗インフルエンザ薬であり、マスコミ報道では「患者の97%が要求する」とのデータも提示されていました。
ただ、その患者さんのニーズが新薬の利益だけでなく、
不利益も理解した上でなければ、
それは科学に基づいた医療ではなく、
単なるマーケティングの成功にすぎません。
科学的に見ると、
重症化リスクの低い患者への投与では、オセルタミビル投与時と比較して臨床的な改善効果は非劣性でした5)。
つまり、薬の効き具合では引き分けなのです。
ウイルスの減少スピードはバロキサビルの方が速かったというデータから、
1回の投与で完結することと合わせてバロキサビルを勧める医師もいるようですが、
あくまで重要なのは治験時の1次エンドポイントである臨床効果の改善なのです。
仮に1歩譲って、副評価項目のウイルスの抑制が高いことを評価するとしても、
薬価が高いことや、
まだ長期使用の副作用の懸念があること、
1日1回投与で半減期が長いため、
副作用出現の際に重症化したり治癒が遅れることが懸念されます。
実際に筆者はバロキサビルによると思われる遷延した薬疹を既に経験しています。
また、治験時に『9.7%の薬剤耐性ウイルスが出現』していることにも注視しなくてはなりません5)。
この薬剤に対してウイルスが急速に耐性化する懸念があるのです。
バロキサビルの利点は、1回投与で完結できるだけではありません。
オセルタミビルのようなノイミラミニダーゼ阻害剤に耐性となったウイルスや、
人類に脅威となる高病原性の新型ウイルス出現の際の治療薬としても使用できる可能性があるにもかかわらず、
「1回投与で便利なため患者が希望する」という理由だけでその切り札を失ってもよいのでしょうか?
オセルタミビル耐性ウイルスを過度に懸念するのも、理由にはなりません。
流行するウイルスの動向には注意が必要ですが、
国立感染症研究所からの情報では
2018シーズンのタミフル耐性ウイルスの検出は解析株では存在せず、まれなようです6)。
以上から筆者はバロキサビルを現時点で推奨しません。
一部の有名病院ではこのような理由から本薬剤の採用を見合わせているのです
(関連記事:亀田がゾフルーザの採用を見合わせた理由)。
日本感染症学会も、日本小児科学会も本薬剤の位置付けは不明確として積極的な推奨を見送っていることも留意すべきでしょう7)、8)。
新薬の利益、不利益を客観的に評価して慎重に処方する姿勢が大切ではないでしょうか。
なお、米国感染症学会では、今回のガイドライン策定後にゾフルーザが承認されたため、
今回のガイドラインでは推奨の有無については言及していません。
過去に発売後、副作用で消えた抗菌薬が幾つもあります。
また新薬の安易な処方が薬剤耐性(AMR)の原因の1つと指摘されています。
過去の歴史に反省なく、新薬であるゾフルーザがいきなり処方シェアを拡大するようならば、
この国のAMR対策が成功するのかはなはだ疑問です。
むしろ、今シーズンに抗インフルエンザ薬を使うならば、
ジェネリックが利用できるようになり、10歳代への使用も可能となった今こそ、オセルタミビルを選択すべきではないでしょうか。
※ なお、岡氏は塩野義製薬より、診療科への奨学寄付金を受けている。他の抗インフルエンザ薬の販売メーカーからの資金提供は受けていない。
【参考文献】
1)米国感染症学会「Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America」(2018)
2)Cochrane Database Syst Rev 2014;4:CD008965 PMID:24718923
3)Biota Reports Top-Line Data From Its Phase 2 "IGLOO" Trial of Laninamivir Octanoate(2014)
4)Takashita E,et al.Antivirai Res.2015;117:27-38.
5)Hayden FG,et al. N Engl J Med 2018;379:913-23.
6)国立感染症研究所 抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス
7)日本感染症学会ホームページ キャップ依存型エンドヌクレアーゼ阻害剤について
8)日本小児科学会ホームページ2018/2019シーズンのインフルエンザ治療
著者プロフィール
岡秀昭(埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科准教授)●おかひであき氏。
2000年日本大学卒。日本大学第一内科で研修後、横浜市立大学、神戸大学、東京高輪病院などを経て、2017年より現職。
2019年02月01日
少しぽっちゃりしている方が、健康で長生きできる!
BMIボディマスインデックス(体重割る身長m割る身長m)でいうと疾患にかかりにくいのは22、生命保険会社が出した一番長生きするのは23です。少しぽっちゃりしている方が、健康で長生きできる!ちなみに25以上が過体重、日本人の場合は28以上で肥満になります。
中年期からの体重減少、認知症による死亡と関連
提供元:ケアネット 公開日:2019/01/18
肥満が認知症に対して防御的であるという仮説を検証するために、英国London School of Hygiene and Tropical MedicineのAlexander N. Allen氏らは、中年および高年者の両方で、認知症による死亡と体重およびBMIとの関連を比較した。
その結果、『認知症による死亡が中年期より高年期のBMIと強い逆相関』を示し、また『中年期から高年期までのBMIや体重の減少と強い相関』を示した。
Age and Ageing誌オンライン版2019年1月9日号に掲載。
著者らは、1967〜70年のWhitehall研究における英国ロンドンの中央政府職員の中年男性1万9,019人と1997年の再調査で生存していた6,158人の参加者における前向き研究において、身長と体重を測定した。
40年間で320人の参加者が認知症により死亡し、Cox回帰を用いて、体重・BMIと40年間の認知症死亡との関連を調べた。
なお、体重とBMIは医療者が測定し、年齢、喫煙習慣、職業階層、婚姻状況で調整した。
主な結果は以下のとおり。
・中年期に測定された体重は認知症による死亡と弱い逆相関を示した(1kg当たりのハザード比[HR]:0.98、95%CI:0.97〜0.99)が、身長とBMIは関連していなかった。
・一方、高年期の体重は認知症による死亡と強い逆相関を示し(1kg当たりのHR:0.96、95%CI:0.95〜0.98)、BMIも同様(1kg/m2当たりのHR:0.92、95%CI:0.86〜0.97)であった。
・ベースラインから再調査までの30年間における体重減少は、認知症による死亡リスクの増加と関連し、30年間で1kg減少当たりの調整HRは1.04(95%CI:1.02〜1.08)であった。BMI減少との関連はより強く、1kg/m2減少当たりの調整HRは1.10(95%CI:1.03〜1.19)であった。
(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Allen AN, et al. Age Ageing. 2019 Jan 9. [Epub ahead of print]
中年期からの体重減少、認知症による死亡と関連
提供元:ケアネット 公開日:2019/01/18
肥満が認知症に対して防御的であるという仮説を検証するために、英国London School of Hygiene and Tropical MedicineのAlexander N. Allen氏らは、中年および高年者の両方で、認知症による死亡と体重およびBMIとの関連を比較した。
その結果、『認知症による死亡が中年期より高年期のBMIと強い逆相関』を示し、また『中年期から高年期までのBMIや体重の減少と強い相関』を示した。
Age and Ageing誌オンライン版2019年1月9日号に掲載。
著者らは、1967〜70年のWhitehall研究における英国ロンドンの中央政府職員の中年男性1万9,019人と1997年の再調査で生存していた6,158人の参加者における前向き研究において、身長と体重を測定した。
40年間で320人の参加者が認知症により死亡し、Cox回帰を用いて、体重・BMIと40年間の認知症死亡との関連を調べた。
なお、体重とBMIは医療者が測定し、年齢、喫煙習慣、職業階層、婚姻状況で調整した。
主な結果は以下のとおり。
・中年期に測定された体重は認知症による死亡と弱い逆相関を示した(1kg当たりのハザード比[HR]:0.98、95%CI:0.97〜0.99)が、身長とBMIは関連していなかった。
・一方、高年期の体重は認知症による死亡と強い逆相関を示し(1kg当たりのHR:0.96、95%CI:0.95〜0.98)、BMIも同様(1kg/m2当たりのHR:0.92、95%CI:0.86〜0.97)であった。
・ベースラインから再調査までの30年間における体重減少は、認知症による死亡リスクの増加と関連し、30年間で1kg減少当たりの調整HRは1.04(95%CI:1.02〜1.08)であった。BMI減少との関連はより強く、1kg/m2減少当たりの調整HRは1.10(95%CI:1.03〜1.19)であった。
(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Allen AN, et al. Age Ageing. 2019 Jan 9. [Epub ahead of print]
2019年01月31日
定年後の準備ができなかった外科医の助言
定年後の準備ができなかった外科医の助言
2018年12月06日 06:15 メディカルトリビューン
私個人は、白内障と老眼で、2重に見えたり、ピントがなかなか合わせられず、眼精疲労も蓄積する一方、
また、ドライアイも出てきて、4年前にメスを起きました。
その後、脳血管障害を中心に診る病院に転職し、脳神経まで診れるようになり、総合診療科医としてオールマイティーとなりました。
高校大学時代、社会人になってからの友人、知人との交流は、専門バカにならないためにも必要で、いろいろ教えてもらうことが多いです。一社会人として、知らないといけないこと、知らないと損をすることが多いですが、学校で教わることはあまりありませんでした。
外科専門医の定年退職後についてのアドバイスは、医師だけには関わらず、他の職種の方にも共通点、普遍性があると重い、転載しました。
さて本題です。
わが国では、100歳以上の高齢者が7万人近くに上るなど、100歳まで生きることが現実的となった。
そのような中、心身ともに豊かな定年後を迎えるには、
『セカンドキャリア』を見据えた現役時代を過ごすことが重要である。
原宿リハビリテーション病院(東京都)病院長の四津良平氏は、慶應義塾大学での心臓血管外科医時代に低侵襲心臓外科手術(Minimally invasive cardiac surgery; MICS)の先駆者として名をはせた。
同氏は、手術に追われ、定年退職前にセカンドキャリアの準備ができなかった自身の経験を踏まえ、第80回日本臨床外科学会(11月22〜24日)で若手医師に助言した。
後のことは考えず、定年直前まで手術に没頭
四津氏は、MICSの術式開発や、その普及に尽力した(写真1)。
MICSはそれまでの傷跡が生々しく残る胸骨正中切開術とは異なり、わずかな傷跡しか残らないため(写真2)、患者に好まれ、定年ぎりぎりまで全国から患者が殺到。
そのため、同氏は定年後の準備を全くできずに定年の日を迎えたという。
セカンドキャリアについて考えた際、まず悩んだのが外科医を続けるか否かであった。
外科医を続けるには、「今までの集中力や体力が継続できなければ、心臓という人間の最も大切な臓器を扱う特性上、患者を死に至らせるかもしれない」と懸念する一方、「メスを置いて助手になり現場を支えることもできるが、それで満足できるのだろうか」と引退への迷いも生じた。
心臓血管外科医からリハビリテーション専門病院の院長に
そのような折、ゴルフ仲間で心臓外科医の先輩(佐賀大学名誉教授・伊藤翼氏)から、原宿リハビリテーション病院への誘いがあり、二つ返事で引き受けた。
同院は、急性期病院から紹介された術後の亜急性期患者のリハビリテーションを行う施設で、300床を超える病床全てがリハビリテーション専門となる世界最大規模の専門病院である。
患者は高齢者が多く、同院の役割は、術後の患者の日常生活動作(ADL)を改善させ自宅に帰すことで、患者の90%が自宅に退院している。
現在、四津氏は院長職の傍ら、心臓血管外科医としての経験を生かし、心臓手術を受けた患者のリハビリテーションにも携わっている(写真3)。
このような高齢患者を診ながら、同氏が思い浮かべるのは病(脳血管疾患)で倒れた自身の両親のことだ。
同氏は医師でありながら、両親には一度も聴診器を当てたことがなかった。
今となってはそれが悔やまれ、「せめて目の前の患者は良くなってほしい」と親孝行の思いで治療している。
将来を見据えて人脈を広げることが大切
一生懸命働いている医師ほど、現役時代に定年後のことを考える余裕はない。
医師は異業種との交流が少なく、心臓血管外科の分野だけにとどまるとそれはさらに限られる。
実際、原宿リハビリテーション病院の在籍医師の多くは四津氏の心臓血管外科医時代のつながりで構成されている。
セカンドキャリアの選択肢を広げる方策として、
同氏は「若いときから自分の診療科だけでなく、他科の医師も含めてできる限り多くの分野に人脈を広げること」
「留学や転勤、病気などのライフステージの転換期で長期的なキャリアを描き直すこと」を挙げ、現役世代に呼びかけた。(伊達俊介)
2018年12月06日 06:15 メディカルトリビューン
私個人は、白内障と老眼で、2重に見えたり、ピントがなかなか合わせられず、眼精疲労も蓄積する一方、
また、ドライアイも出てきて、4年前にメスを起きました。
その後、脳血管障害を中心に診る病院に転職し、脳神経まで診れるようになり、総合診療科医としてオールマイティーとなりました。
高校大学時代、社会人になってからの友人、知人との交流は、専門バカにならないためにも必要で、いろいろ教えてもらうことが多いです。一社会人として、知らないといけないこと、知らないと損をすることが多いですが、学校で教わることはあまりありませんでした。
外科専門医の定年退職後についてのアドバイスは、医師だけには関わらず、他の職種の方にも共通点、普遍性があると重い、転載しました。
さて本題です。
わが国では、100歳以上の高齢者が7万人近くに上るなど、100歳まで生きることが現実的となった。
そのような中、心身ともに豊かな定年後を迎えるには、
『セカンドキャリア』を見据えた現役時代を過ごすことが重要である。
原宿リハビリテーション病院(東京都)病院長の四津良平氏は、慶應義塾大学での心臓血管外科医時代に低侵襲心臓外科手術(Minimally invasive cardiac surgery; MICS)の先駆者として名をはせた。
同氏は、手術に追われ、定年退職前にセカンドキャリアの準備ができなかった自身の経験を踏まえ、第80回日本臨床外科学会(11月22〜24日)で若手医師に助言した。
後のことは考えず、定年直前まで手術に没頭
四津氏は、MICSの術式開発や、その普及に尽力した(写真1)。
MICSはそれまでの傷跡が生々しく残る胸骨正中切開術とは異なり、わずかな傷跡しか残らないため(写真2)、患者に好まれ、定年ぎりぎりまで全国から患者が殺到。
そのため、同氏は定年後の準備を全くできずに定年の日を迎えたという。
セカンドキャリアについて考えた際、まず悩んだのが外科医を続けるか否かであった。
外科医を続けるには、「今までの集中力や体力が継続できなければ、心臓という人間の最も大切な臓器を扱う特性上、患者を死に至らせるかもしれない」と懸念する一方、「メスを置いて助手になり現場を支えることもできるが、それで満足できるのだろうか」と引退への迷いも生じた。
心臓血管外科医からリハビリテーション専門病院の院長に
そのような折、ゴルフ仲間で心臓外科医の先輩(佐賀大学名誉教授・伊藤翼氏)から、原宿リハビリテーション病院への誘いがあり、二つ返事で引き受けた。
同院は、急性期病院から紹介された術後の亜急性期患者のリハビリテーションを行う施設で、300床を超える病床全てがリハビリテーション専門となる世界最大規模の専門病院である。
患者は高齢者が多く、同院の役割は、術後の患者の日常生活動作(ADL)を改善させ自宅に帰すことで、患者の90%が自宅に退院している。
現在、四津氏は院長職の傍ら、心臓血管外科医としての経験を生かし、心臓手術を受けた患者のリハビリテーションにも携わっている(写真3)。
このような高齢患者を診ながら、同氏が思い浮かべるのは病(脳血管疾患)で倒れた自身の両親のことだ。
同氏は医師でありながら、両親には一度も聴診器を当てたことがなかった。
今となってはそれが悔やまれ、「せめて目の前の患者は良くなってほしい」と親孝行の思いで治療している。
将来を見据えて人脈を広げることが大切
一生懸命働いている医師ほど、現役時代に定年後のことを考える余裕はない。
医師は異業種との交流が少なく、心臓血管外科の分野だけにとどまるとそれはさらに限られる。
実際、原宿リハビリテーション病院の在籍医師の多くは四津氏の心臓血管外科医時代のつながりで構成されている。
セカンドキャリアの選択肢を広げる方策として、
同氏は「若いときから自分の診療科だけでなく、他科の医師も含めてできる限り多くの分野に人脈を広げること」
「留学や転勤、病気などのライフステージの転換期で長期的なキャリアを描き直すこと」を挙げ、現役世代に呼びかけた。(伊達俊介)
2019年01月30日
若い女性、妊娠の可能性の高い女性に必需品、それは葉酸です!
2019年01月29日
抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究
抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究
提供元:ケアネット 公開日:2015/08/05
答:24ヶ月
これまで、アルツハイマー型認知症(AD)に関する研究は、
長期的な大規模研究が非常に少なく、既存試験は通常、対象者数わずか数百例程度で実施されている。
そのため、認知症機能評価別病期分類(FAST)により評価した、日常生活動作(ADL)の変化に関する詳細な調査はない。
順天堂大学の新井 平伊氏らは、現在進行中のADに対するドネペジル塩酸塩の長期大規模観察研究(J-GOLD試験)の中間結果を発表した。
著者らは「本研究は、日本におけるAD患者を対象とした最大規模の前向き研究であり、日常診療の実態を示す重要な研究である」としている。Psychogeriatrics誌オンライン版2015年6月26日号の報告。
本研究は、AD患者におけるドネペジル長期投与による疾患状態の変化と安全性を評価することを目的とした。
中間結果は、最大24ヵ月の収集されたデータより集計された。有効性は、FASTと認知機能検査(MMSEまたは改訂長谷川式簡易知能評価スケール)を用い評価した。
主な結果は以下のとおり。
・ドネペジル投与開始時(ベースライン)と比較してFASTステージが改善または維持されていた患者の割合は、
6ヵ月時点で91.1%、
12ヵ月時点で83.0%、
18ヵ月時点で79.5%、
24ヵ月時点で74.8%であった。
・24ヵ月時点でのFASTの改善や維持または増悪に影響を与える要因を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を実施した結果、
「認知症高齢者の日常生活における自立レベル」と「罹病期間」が同定された。
・認知機能は、ベースラインと比較して、
12週、6ヵ月時点で有意に改善し、
12、18ヵ月時点ではベースラインレベルを維持していたが、
24ヵ月時点では有意に低下していた。
(ケアネット 鷹野 敦夫)
原著論文
Arai H, et al. Psychogeriatrics. 2015 Jun 26.
提供元:ケアネット 公開日:2015/08/05
答:24ヶ月
これまで、アルツハイマー型認知症(AD)に関する研究は、
長期的な大規模研究が非常に少なく、既存試験は通常、対象者数わずか数百例程度で実施されている。
そのため、認知症機能評価別病期分類(FAST)により評価した、日常生活動作(ADL)の変化に関する詳細な調査はない。
順天堂大学の新井 平伊氏らは、現在進行中のADに対するドネペジル塩酸塩の長期大規模観察研究(J-GOLD試験)の中間結果を発表した。
著者らは「本研究は、日本におけるAD患者を対象とした最大規模の前向き研究であり、日常診療の実態を示す重要な研究である」としている。Psychogeriatrics誌オンライン版2015年6月26日号の報告。
本研究は、AD患者におけるドネペジル長期投与による疾患状態の変化と安全性を評価することを目的とした。
中間結果は、最大24ヵ月の収集されたデータより集計された。有効性は、FASTと認知機能検査(MMSEまたは改訂長谷川式簡易知能評価スケール)を用い評価した。
主な結果は以下のとおり。
・ドネペジル投与開始時(ベースライン)と比較してFASTステージが改善または維持されていた患者の割合は、
6ヵ月時点で91.1%、
12ヵ月時点で83.0%、
18ヵ月時点で79.5%、
24ヵ月時点で74.8%であった。
・24ヵ月時点でのFASTの改善や維持または増悪に影響を与える要因を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を実施した結果、
「認知症高齢者の日常生活における自立レベル」と「罹病期間」が同定された。
・認知機能は、ベースラインと比較して、
12週、6ヵ月時点で有意に改善し、
12、18ヵ月時点ではベースラインレベルを維持していたが、
24ヵ月時点では有意に低下していた。
(ケアネット 鷹野 敦夫)
原著論文
Arai H, et al. Psychogeriatrics. 2015 Jun 26.
2019年01月28日
「味覚障害の原因は鼻にある」は本当か?
めちゃイケでやってた、シンクロのノーズクリップで鼻をつまんで食べたものが何かを答えることが、超難問だった!
「味覚障害の原因は鼻にある」は本当か?
提供元:HealthDay News 公開日:2019/01/18
食事をしても味を感じないなどの味覚障害の原因は、必ずしも口の中にあるとは限らない―。
こんな研究結果を、米バージニア・コモンウェルス大学耳鼻咽喉科教授のEvan Reiter氏らが「International Forum of Allergy and Rhinology」2018年12月10日オンライン版に発表した。
全く味を感じない『味覚消失』などを訴える患者の多くは、味覚機能ではなく『嗅覚機能に問題』があることが分かった。
Reiter氏らは、1980〜2017年に、同大学ヘルスシステム味覚・嗅覚クリニックを受診した患者1,108人のうち、全く味を感じないなどの味覚障害やにおいを感じないなどの嗅覚障害を訴え、味覚や嗅覚の検査を受けた358人を対象に分析を行った。
その結果、
味覚と嗅覚の両方に異常があった患者295人では、
86.8%に嗅覚機能の異常がみられたのに対し、
味覚機能の異常が確認されたのは9.5%に過ぎない
ことが分かった。
一方、味覚異常のみを訴えた63人では、44.4%に嗅覚機能の異常がみられ、25.4%に味覚機能の異常が確認された。
Reiter氏は「この結果は、味覚の異常を訴える患者の多くは、味覚ではなく嗅覚機能に問題がある可能性が高いという仮説を裏付けるものだ」と述べている。
同氏は「食べ物を味わう味覚には、味覚と嗅覚という2つの感覚系がともに関与することはあまり知られていない。
今回の結果からも、味覚に異常を訴える患者の多くは、その原因が嗅覚の消失や異常にある場合が多いことを認識していないことが示された」と付け加えている。
Reiter氏によれば、「甘味、苦味、塩味、酸味」それぞれに反応する受容体は舌にあり、これらの味を感じるには味覚が重要な役割を果たすと考えられている。
しかし、食べ物の複雑な「風味」を感じるには、
味覚よりも嗅覚が大きく関与し、
鼻にある受容体が風味に反応することで味覚を補っているという。
なお、米国国民健康栄養調査(NHANES)によると、米国成人の10%以上が過去1年以内に食べ物の味を全く感じなくなった経験があると回答している。また、23%が生涯に1度はにおいを感じなくなった経験があるという。
2019年1月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay.
原著論文はこちら
Hunt JD, et al. Int Forum Allergy Rhinol. 2018 Dec 10. [Epub ahead of print]
「味覚障害の原因は鼻にある」は本当か?
提供元:HealthDay News 公開日:2019/01/18
食事をしても味を感じないなどの味覚障害の原因は、必ずしも口の中にあるとは限らない―。
こんな研究結果を、米バージニア・コモンウェルス大学耳鼻咽喉科教授のEvan Reiter氏らが「International Forum of Allergy and Rhinology」2018年12月10日オンライン版に発表した。
全く味を感じない『味覚消失』などを訴える患者の多くは、味覚機能ではなく『嗅覚機能に問題』があることが分かった。
Reiter氏らは、1980〜2017年に、同大学ヘルスシステム味覚・嗅覚クリニックを受診した患者1,108人のうち、全く味を感じないなどの味覚障害やにおいを感じないなどの嗅覚障害を訴え、味覚や嗅覚の検査を受けた358人を対象に分析を行った。
その結果、
味覚と嗅覚の両方に異常があった患者295人では、
86.8%に嗅覚機能の異常がみられたのに対し、
味覚機能の異常が確認されたのは9.5%に過ぎない
ことが分かった。
一方、味覚異常のみを訴えた63人では、44.4%に嗅覚機能の異常がみられ、25.4%に味覚機能の異常が確認された。
Reiter氏は「この結果は、味覚の異常を訴える患者の多くは、味覚ではなく嗅覚機能に問題がある可能性が高いという仮説を裏付けるものだ」と述べている。
同氏は「食べ物を味わう味覚には、味覚と嗅覚という2つの感覚系がともに関与することはあまり知られていない。
今回の結果からも、味覚に異常を訴える患者の多くは、その原因が嗅覚の消失や異常にある場合が多いことを認識していないことが示された」と付け加えている。
Reiter氏によれば、「甘味、苦味、塩味、酸味」それぞれに反応する受容体は舌にあり、これらの味を感じるには味覚が重要な役割を果たすと考えられている。
しかし、食べ物の複雑な「風味」を感じるには、
味覚よりも嗅覚が大きく関与し、
鼻にある受容体が風味に反応することで味覚を補っているという。
なお、米国国民健康栄養調査(NHANES)によると、米国成人の10%以上が過去1年以内に食べ物の味を全く感じなくなった経験があると回答している。また、23%が生涯に1度はにおいを感じなくなった経験があるという。
2019年1月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay.
原著論文はこちら
Hunt JD, et al. Int Forum Allergy Rhinol. 2018 Dec 10. [Epub ahead of print]
2019年01月27日
加糖も良くないし、人工甘味料も良くないことがわかっています!
加糖も良くないし、人工甘味料も良くないことがわかっています!
水、麦茶をお勧めします!
『加糖飲料の摂取量が多いほど慢性腎臓病リスク増』
提供元:HealthDay News 公開日:2019/01/17 CareNet
加糖飲料の摂取量が多いほど慢性腎臓病(CKD)の発症リスクが上昇する可能性があることが、米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のCasey Rebholz氏らの研究で明らかになった。詳細は「Clinical Journal of the American Society of Nephrology」2018年12月27日オンライン版に発表された。
この研究は、Jackson Heart Studyに参加した
米ミシシッピ州在住の黒人男女3,003人(平均年齢54歳、女性64%)を対象としたもの。
試験開始時(2000〜2004年)に、食物摂取頻度調査票を用いて実施した調査から飲料の摂取量を評価し、2009〜2013年まで前向きに追跡した(最長14年フォロー)。
中央値で8年間の追跡期間中に、
185人(6%)がCKDを発症した。
解析の結果、炭酸飲料や糖分を添加した果汁飲料、水の摂取量が最も多い群では、これらの摂取量が最も少ない群と比べて、CKDリスクが61%高かった。
水の摂取量がCKDリスク上昇と関連した結果について、Rebholz氏らは「フレーバーや糖分を添加した水が含まれていた可能性がある」と指摘している。
しかし、今回の研究は、加糖飲料の摂取量とCKD発症との間に関連が示されたに過ぎない。
Rebholz氏は「幅広い種類の飲料の選択肢が健康に及ぼす影響に関する包括的な情報が欠けている。
特に、CKDリスクと関連する飲料の種類や摂取方法に関する情報については限られている」と述べている。
同誌の付随論評で、米オヨラ大学のHolly Kramer氏とDavid Shoham氏は
「今回の結果は公衆衛生に影響を与えるものだ」
と評している。
米国の一部の都市では、加糖飲料への課税対策により、これらの飲料の消費量が減少したが、こうした取り組みに批判的な声も聞こえた。
この点について、両氏は「こうした批判は、1960年代に米公衆衛生局長官が喫煙の危険性に関する最初の報告を発表した後に巻き起こった抵抗運動と比較できる。
当時、喫煙は医学上や公衆衛生に関わる問題とは受け止められていなかった」と指摘している。
さらに、別の付随論評では、CKD患者であるDuane Sunwold氏が、腎不全を改善するために食事や飲酒の摂取習慣を是正したと述懐している。
シェフである同氏は、加糖飲料の摂取量を減らしたいと思っている腎不全患者に対し、アドバイスを行っているという。
[2018年12月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay.
原著論文はこちら
Rebholz CM, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2019 Jan 7. [Epub ahead of print]
水、麦茶をお勧めします!
『加糖飲料の摂取量が多いほど慢性腎臓病リスク増』
提供元:HealthDay News 公開日:2019/01/17 CareNet
加糖飲料の摂取量が多いほど慢性腎臓病(CKD)の発症リスクが上昇する可能性があることが、米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のCasey Rebholz氏らの研究で明らかになった。詳細は「Clinical Journal of the American Society of Nephrology」2018年12月27日オンライン版に発表された。
この研究は、Jackson Heart Studyに参加した
米ミシシッピ州在住の黒人男女3,003人(平均年齢54歳、女性64%)を対象としたもの。
試験開始時(2000〜2004年)に、食物摂取頻度調査票を用いて実施した調査から飲料の摂取量を評価し、2009〜2013年まで前向きに追跡した(最長14年フォロー)。
中央値で8年間の追跡期間中に、
185人(6%)がCKDを発症した。
解析の結果、炭酸飲料や糖分を添加した果汁飲料、水の摂取量が最も多い群では、これらの摂取量が最も少ない群と比べて、CKDリスクが61%高かった。
水の摂取量がCKDリスク上昇と関連した結果について、Rebholz氏らは「フレーバーや糖分を添加した水が含まれていた可能性がある」と指摘している。
しかし、今回の研究は、加糖飲料の摂取量とCKD発症との間に関連が示されたに過ぎない。
Rebholz氏は「幅広い種類の飲料の選択肢が健康に及ぼす影響に関する包括的な情報が欠けている。
特に、CKDリスクと関連する飲料の種類や摂取方法に関する情報については限られている」と述べている。
同誌の付随論評で、米オヨラ大学のHolly Kramer氏とDavid Shoham氏は
「今回の結果は公衆衛生に影響を与えるものだ」
と評している。
米国の一部の都市では、加糖飲料への課税対策により、これらの飲料の消費量が減少したが、こうした取り組みに批判的な声も聞こえた。
この点について、両氏は「こうした批判は、1960年代に米公衆衛生局長官が喫煙の危険性に関する最初の報告を発表した後に巻き起こった抵抗運動と比較できる。
当時、喫煙は医学上や公衆衛生に関わる問題とは受け止められていなかった」と指摘している。
さらに、別の付随論評では、CKD患者であるDuane Sunwold氏が、腎不全を改善するために食事や飲酒の摂取習慣を是正したと述懐している。
シェフである同氏は、加糖飲料の摂取量を減らしたいと思っている腎不全患者に対し、アドバイスを行っているという。
[2018年12月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay.
原著論文はこちら
Rebholz CM, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2019 Jan 7. [Epub ahead of print]
加糖飲料の飲み過ぎでCKD(慢性腎臓病)リスク上昇
嗜好品、飲み物として、お砂糖の入ったものは、からだによくないようです!
加糖飲料の飲み過ぎでCKD(慢性腎臓病)リスク上昇
2019年02月07日 06:15
さまざまな飲料の摂取と『腎疾患リスク』との関連性を明らかにする研究の結果が示された。
米・Johns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのCasey Rebholz氏らが実施した研究によると、
コーラなどの炭酸飲料や砂糖などの糖分を加えた果汁飲料、さらに水を飲む量が多い人は、慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高いことが明らかになったという。詳細はClin J Am Soc Nephrol(2019 ;14:49-56)に掲載された。
炭酸飲料+加糖した果汁飲料+水の摂取増でリスク1.6倍
Rebholz氏によると、これまでさまざまな種類の飲料が腎疾患に与える影響については、包括的な情報がなかった。
そこで同氏らは、Jackson Heart Studyに参加した腎機能が正常な米国の黒人の男女3,003例を対象に、複数の飲料の摂取とCKDリスクの関連について検討した。
この研究では、研究開始時(2000〜04年)に実施された食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた食事調査のデータに基づき飲料の摂取状況を調べ、2009〜13年(最高13年)まで追跡した。
その結果、中央値で8年の追跡期間中に185例(『6%』)がCKDを発症した。
ロジスティック回帰モデルを用いてカロリー摂取量や年齢、性、教育レベル、BMI、喫煙状況、身体活動状況、高血圧、糖尿病、脂質値、心血管疾患の罹患歴、ベースライン時の推算糸球体濾過量(eGFR)に関する条件を調整して解析した結果、
炭酸飲料と加糖された果汁飲料、水の摂取量が多い人ではCKDリスクが有意に上昇していた。
これらの摂取量が最高三分位の群では、最低三分位の群に比べてCKDリスクが61%高かった(オッズ比1.61、95%CI 1.07〜2.41)。
「水」にはフレーバー付きや加糖された飲料水が含まれる可能性も
なお今回の研究では、CKDリスクの上昇に関与していた飲料に水が含まれていた。
Rebholz氏らは、この事実に驚きを示し「研究参加者はフレーバーや糖分が添加された水なども"水"として報告していた可能性がある」と推測している。
ただ、Jackson Heart Studyでは摂取したボトル入り飲料水の具体的なブランド名や種類に関する情報は収集していなかった。
米・Loyola University ChicagoのHolly Kramer氏らは、同誌の付随論評(2019 ;14:4-6)で、米国の一部の地域では加糖飲料への課税が導入されたものの、ほとんどの自治体が加糖飲料の消費量を削減する取り組みをしていないと指摘。
「喫煙による健康への影響に関する米国公衆衛生総監報告書が発表された1960年代にも、喫煙は社会的選択であり、医学的あるいは社会的な健康上の問題とはならないとの考えから禁煙に対し文化的な抵抗が見られた」と振り返り、現在の加糖飲料への課税に対する抵抗も同様の種類のものであると述べている
(岬りり子)
加糖飲料の飲み過ぎでCKD(慢性腎臓病)リスク上昇
2019年02月07日 06:15
さまざまな飲料の摂取と『腎疾患リスク』との関連性を明らかにする研究の結果が示された。
米・Johns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのCasey Rebholz氏らが実施した研究によると、
コーラなどの炭酸飲料や砂糖などの糖分を加えた果汁飲料、さらに水を飲む量が多い人は、慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高いことが明らかになったという。詳細はClin J Am Soc Nephrol(2019 ;14:49-56)に掲載された。
炭酸飲料+加糖した果汁飲料+水の摂取増でリスク1.6倍
Rebholz氏によると、これまでさまざまな種類の飲料が腎疾患に与える影響については、包括的な情報がなかった。
そこで同氏らは、Jackson Heart Studyに参加した腎機能が正常な米国の黒人の男女3,003例を対象に、複数の飲料の摂取とCKDリスクの関連について検討した。
この研究では、研究開始時(2000〜04年)に実施された食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた食事調査のデータに基づき飲料の摂取状況を調べ、2009〜13年(最高13年)まで追跡した。
その結果、中央値で8年の追跡期間中に185例(『6%』)がCKDを発症した。
ロジスティック回帰モデルを用いてカロリー摂取量や年齢、性、教育レベル、BMI、喫煙状況、身体活動状況、高血圧、糖尿病、脂質値、心血管疾患の罹患歴、ベースライン時の推算糸球体濾過量(eGFR)に関する条件を調整して解析した結果、
これらの摂取量が最高三分位の群では、最低三分位の群に比べてCKDリスクが61%高かった(オッズ比1.61、95%CI 1.07〜2.41)。
「水」にはフレーバー付きや加糖された飲料水が含まれる可能性も
なお今回の研究では、CKDリスクの上昇に関与していた飲料に水が含まれていた。
Rebholz氏らは、この事実に驚きを示し「研究参加者はフレーバーや糖分が添加された水なども"水"として報告していた可能性がある」と推測している。
ただ、Jackson Heart Studyでは摂取したボトル入り飲料水の具体的なブランド名や種類に関する情報は収集していなかった。
米・Loyola University ChicagoのHolly Kramer氏らは、同誌の付随論評(2019 ;14:4-6)で、米国の一部の地域では加糖飲料への課税が導入されたものの、ほとんどの自治体が加糖飲料の消費量を削減する取り組みをしていないと指摘。
「喫煙による健康への影響に関する米国公衆衛生総監報告書が発表された1960年代にも、喫煙は社会的選択であり、医学的あるいは社会的な健康上の問題とはならないとの考えから禁煙に対し文化的な抵抗が見られた」と振り返り、現在の加糖飲料への課税に対する抵抗も同様の種類のものであると述べている
(岬りり子)
2019年01月26日
野菜ジュース、果物ジュースは薦めません できるだけ、皮付きで食べてください。
野菜ジュース、果物ジュースは薦めません
できるだけ、皮付きで食べてください。
量が取れるように、煮炊きしたもの、お惣菜をお薦めします!
第24回 野菜不足の患者さんにひと言
公開日:2018/12/19 企画・制作 ケアネット
■外来NGワード
「もっと野菜を食べるようにしないと!」(あいまいな食事指導)
「1日に野菜を350g以上食べるようにしなさい!」(わかりにくい食事療法を提示)
「野菜ジュースを飲むようにしなさい!」(野菜の代わりになると勘違い)
■解説
野菜にはビタミン・ミネラルや食物繊維が豊富に含まれており、
国が推進する「健康日本21」では、
がんと生活習慣病の予防や健康づくりの観点から、
1日に350g以上摂ることが推奨されています1)。
しかし、「1日350g」と言ってもわかりにくいので、野菜70gを1皿とカウントして「1日に5皿以上摂ることを目指してください」と説明すると、理解が深まります。
また、手を使った方法で、
生野菜なら両手で軽く1杯、
温野菜なら片手で1杯が
1皿の目安となります。
漬物や汁物は1人前が0.5皿分、
野菜サラダ、ホウレン草のおひたし、きんぴらごぼうは1人前が1皿分となり、
野菜炒めなどの大皿料理、野菜たっぷりカレー、筑前煮などは1人前を2皿分とカウントできます。
平成29年度「国民健康・栄養調査2)」によると、
20歳以上で1日に野菜を350g以上食べている人の割合は30%程度です。
とくに、20〜30代の野菜摂取量が少ないことが問題となっています。
しかし、野菜を摂る習慣がない人に「1日5皿を食べましょう!」と理想を提示しても、そんなのは無理だと思われてしまいます。
そこで、以下のように説明してみてはいかがでしょうか。
■患者さんとの会話でロールプレイ
医師 普段、1日にどのくらい野菜を食べていますか?
患者 食べないといけないのはわかっているんですが、
なかなか毎食とはいかなくて…。
医師 そうですか。では、健康のためには1日に
どのくらいの野菜を食べればいいか知っていますか?
患者 いえ、知りません。
医師 ちょっと、手でおわんを作ってもらえますか。
患者 こうですか?
(両方の手のひらを上に向けて、おわんの形にする)
医師 生野菜なら両手で軽く1杯、
温野菜なら片手で1杯が、だいたい70gになるので、
これを野菜1皿分とします。
患者 はい。
医師 がんや糖尿病、生活習慣病などを予防するためには、
1日に野菜を350g、つまり5皿分摂ることが
推奨されています。
患者 えっ、そんなに食べないといけないんですか!?
(驚きの表情)
医師 それが最終目標になりますが、
今は1日に何皿ぐらい食べておられますか?
患者 そうですね…。2皿か、3皿くらいでしょうか。
医師 なるほど。気を付けておられますね。
それでは、野菜をもう1皿増やすためには、
どうしたらいいと思いますか?
患者 えーと…(野菜摂取のアイデアの話が続く)。
■医師へのお勧めの言葉
「野菜をもう1皿増やすとしたら、どうしたらいいと思いますか?」
参考文献
1)Nakamura S, et al. BMC Public Health. 2017;17:74.
2)厚生労働省 平成29年「国民健康・栄養調査」結果の概要
できるだけ、皮付きで食べてください。
量が取れるように、煮炊きしたもの、お惣菜をお薦めします!
第24回 野菜不足の患者さんにひと言
公開日:2018/12/19 企画・制作 ケアネット
■外来NGワード
「もっと野菜を食べるようにしないと!」(あいまいな食事指導)
「1日に野菜を350g以上食べるようにしなさい!」(わかりにくい食事療法を提示)
「野菜ジュースを飲むようにしなさい!」(野菜の代わりになると勘違い)
■解説
野菜にはビタミン・ミネラルや食物繊維が豊富に含まれており、
国が推進する「健康日本21」では、
がんと生活習慣病の予防や健康づくりの観点から、
1日に350g以上摂ることが推奨されています1)。
しかし、「1日350g」と言ってもわかりにくいので、野菜70gを1皿とカウントして「1日に5皿以上摂ることを目指してください」と説明すると、理解が深まります。
また、手を使った方法で、
生野菜なら両手で軽く1杯、
温野菜なら片手で1杯が
1皿の目安となります。
漬物や汁物は1人前が0.5皿分、
野菜サラダ、ホウレン草のおひたし、きんぴらごぼうは1人前が1皿分となり、
野菜炒めなどの大皿料理、野菜たっぷりカレー、筑前煮などは1人前を2皿分とカウントできます。
平成29年度「国民健康・栄養調査2)」によると、
20歳以上で1日に野菜を350g以上食べている人の割合は30%程度です。
とくに、20〜30代の野菜摂取量が少ないことが問題となっています。
しかし、野菜を摂る習慣がない人に「1日5皿を食べましょう!」と理想を提示しても、そんなのは無理だと思われてしまいます。
そこで、以下のように説明してみてはいかがでしょうか。
■患者さんとの会話でロールプレイ
医師 普段、1日にどのくらい野菜を食べていますか?
患者 食べないといけないのはわかっているんですが、
なかなか毎食とはいかなくて…。
医師 そうですか。では、健康のためには1日に
どのくらいの野菜を食べればいいか知っていますか?
患者 いえ、知りません。
医師 ちょっと、手でおわんを作ってもらえますか。
患者 こうですか?
(両方の手のひらを上に向けて、おわんの形にする)
医師 生野菜なら両手で軽く1杯、
温野菜なら片手で1杯が、だいたい70gになるので、
これを野菜1皿分とします。
患者 はい。
医師 がんや糖尿病、生活習慣病などを予防するためには、
1日に野菜を350g、つまり5皿分摂ることが
推奨されています。
患者 えっ、そんなに食べないといけないんですか!?
(驚きの表情)
医師 それが最終目標になりますが、
今は1日に何皿ぐらい食べておられますか?
患者 そうですね…。2皿か、3皿くらいでしょうか。
医師 なるほど。気を付けておられますね。
それでは、野菜をもう1皿増やすためには、
どうしたらいいと思いますか?
患者 えーと…(野菜摂取のアイデアの話が続く)。
■医師へのお勧めの言葉
「野菜をもう1皿増やすとしたら、どうしたらいいと思いますか?」
参考文献
1)Nakamura S, et al. BMC Public Health. 2017;17:74.
2)厚生労働省 平成29年「国民健康・栄養調査」結果の概要
2019年01月25日
半年間のウォーキングで脳が若返る?
半年間のウォーキングで脳が若返る?
記憶力や思考力が低下した55歳以上の男女が運動を6カ月間続けたところ、目前の状況を把握し、物事を整理して考えて行動する「実行機能」が特に向上!
記憶力や思考力に衰えを感じたら、ウォーキングなどの適度な運動を半年間ほど続けると脳が若返るかもしれない−。
こんな研究結果を、米デューク大学医学部教授のJames Blumenthal氏らが「Neurology」12月19日オンライン版に発表した。
記憶力や思考力が低下した55歳以上の男女が運動を6カ月間続けたところ、目前の状況を把握し、物事を整理して考えて行動する「実行機能」が特に向上することが分かった。
この研究は、客観的な検査で記憶力や思考力に低下がみられた55歳以上の男女160人を対象としたもの。
参加者にはアルツハイマー病などの認知症はみられなかったが、実年齢の平均は65歳だったにもかかわらず、実行機能の成績は90歳代の前半に相当していた。
また、参加者は高血圧などの心血管リスク因子を有していた。
研究では、参加者を
(1)適度な有酸素運動を行う群、
(2)高血圧予防の食事療法であるDASH食を行う群、
(3)運動に加えてDASH食を行う群、
(4)健康指導のみを受ける群
−の4つの群にランダムに割り付けて6カ月間観察した。
※DASH食;果物や野菜、精製されていない玄米や全粒粉などの穀物、不飽和脂肪が豊富で、塩分と糖分、肉類、飽和脂肪の多い乳製品を控える高血圧患者向けの食事
運動では、10分間のウォーミングアップに加えて、35分間のウォーキングまたはジョギング、自転車こぎ運動などの有酸素運動を週3回行ってもらった。
また、食生活の改善には、DASH食を行ってもらった。
Blumenthal氏によると、運動も食事も高齢者が取り組みやすい内容だという。
その結果、運動を行った2つの群では6カ月後の実行機能が向上したのに対し、健康指導のみを受けた群では、実行機能は低下し続けたことが分かった。
こうした運動による効果は、運動とDASH食を併用した群で最も高かった。
一方、DASH食のみを行った群では、6カ月後の実行機能に有意な変化はみられなかった。
この結果について、専門家らは、一般的に考えられている「健康的な生活習慣は脳の老化を防止する」という説を裏付けるものだとしている。
その一人で米アルツハイマー病協会のKeith Fargo氏は「今回の研究に参加した人は高齢で、既に認知機能の低下がみられ、心血管リスク因子もある人だった」と指摘した上で、「運動を始めるのに遅すぎることはない」と述べている。
また、同氏は「ランダム化比較試験で運動による認知機能への効果が示されたことは意義深い」と付け加えている。
Blumenthal氏は、運動や食生活の改善が認知機能に好影響をもたらした理由は明らかではないが、
「今回の結果では、運動による体力向上とテストの成績の間には関連がみられたほか、血圧などの心血管リスク因子を改善しても成績は向上した」と説明している。
ただ、同氏は「運動や食生活の改善が認知症予防につながるかどうかは明らかになっていない」と強調し、これらの有効性を検証する大規模な研究を行う必要があるとしている。
また、Fargo氏は、運動することで血流が改善し、脳への酸素供給量が増えたことが認知機能の改善につながっているのではとの見方を示している。
同氏によれば、同協会は今後、運動と食生活、社会参加、パズルやクロスワードなどの知的活動の組み合わせが、認知機能にどのような影響を及ぼすのかを検証する研究を実施する予定だという。
(HealthDay News 2018年12月20日) https://consumer.healthday.com/…/just-6-months-of-walking-m… Copyright 2019 HealthDay.
記憶力や思考力が低下した55歳以上の男女が運動を6カ月間続けたところ、目前の状況を把握し、物事を整理して考えて行動する「実行機能」が特に向上!
記憶力や思考力に衰えを感じたら、ウォーキングなどの適度な運動を半年間ほど続けると脳が若返るかもしれない−。
こんな研究結果を、米デューク大学医学部教授のJames Blumenthal氏らが「Neurology」12月19日オンライン版に発表した。
記憶力や思考力が低下した55歳以上の男女が運動を6カ月間続けたところ、目前の状況を把握し、物事を整理して考えて行動する「実行機能」が特に向上することが分かった。
この研究は、客観的な検査で記憶力や思考力に低下がみられた55歳以上の男女160人を対象としたもの。
参加者にはアルツハイマー病などの認知症はみられなかったが、実年齢の平均は65歳だったにもかかわらず、実行機能の成績は90歳代の前半に相当していた。
また、参加者は高血圧などの心血管リスク因子を有していた。
研究では、参加者を
(1)適度な有酸素運動を行う群、
(2)高血圧予防の食事療法であるDASH食を行う群、
(3)運動に加えてDASH食を行う群、
(4)健康指導のみを受ける群
−の4つの群にランダムに割り付けて6カ月間観察した。
※DASH食;果物や野菜、精製されていない玄米や全粒粉などの穀物、不飽和脂肪が豊富で、塩分と糖分、肉類、飽和脂肪の多い乳製品を控える高血圧患者向けの食事
運動では、10分間のウォーミングアップに加えて、35分間のウォーキングまたはジョギング、自転車こぎ運動などの有酸素運動を週3回行ってもらった。
また、食生活の改善には、DASH食を行ってもらった。
Blumenthal氏によると、運動も食事も高齢者が取り組みやすい内容だという。
その結果、運動を行った2つの群では6カ月後の実行機能が向上したのに対し、健康指導のみを受けた群では、実行機能は低下し続けたことが分かった。
こうした運動による効果は、運動とDASH食を併用した群で最も高かった。
一方、DASH食のみを行った群では、6カ月後の実行機能に有意な変化はみられなかった。
この結果について、専門家らは、一般的に考えられている「健康的な生活習慣は脳の老化を防止する」という説を裏付けるものだとしている。
その一人で米アルツハイマー病協会のKeith Fargo氏は「今回の研究に参加した人は高齢で、既に認知機能の低下がみられ、心血管リスク因子もある人だった」と指摘した上で、「運動を始めるのに遅すぎることはない」と述べている。
また、同氏は「ランダム化比較試験で運動による認知機能への効果が示されたことは意義深い」と付け加えている。
Blumenthal氏は、運動や食生活の改善が認知機能に好影響をもたらした理由は明らかではないが、
「今回の結果では、運動による体力向上とテストの成績の間には関連がみられたほか、血圧などの心血管リスク因子を改善しても成績は向上した」と説明している。
ただ、同氏は「運動や食生活の改善が認知症予防につながるかどうかは明らかになっていない」と強調し、これらの有効性を検証する大規模な研究を行う必要があるとしている。
また、Fargo氏は、運動することで血流が改善し、脳への酸素供給量が増えたことが認知機能の改善につながっているのではとの見方を示している。
同氏によれば、同協会は今後、運動と食生活、社会参加、パズルやクロスワードなどの知的活動の組み合わせが、認知機能にどのような影響を及ぼすのかを検証する研究を実施する予定だという。
(HealthDay News 2018年12月20日) https://consumer.healthday.com/…/just-6-months-of-walking-m… Copyright 2019 HealthDay.