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2019年02月12日
ビタミンE
ビタミンE
脂溶性ビタミンで、
抗酸化作用があり、
健康食品、サプリメントの効能に
『血管の若返り』に
が、よくありますが、
まず不足することのない栄養素!
テレビ番組でよくある、血管には『なになに』、便秘には『なになに』と特集をして、翌日にはスーパーには品切れになっている。
単品だけでは、健康になれない理屈は、わかっているのに!
ついつい騙される、テレビを鵜呑みにしてしまう
栄養学をきちんと習っていれば、騙されません!
女子栄養大学出版部 『食品80キロカロリーガイドブック』をオススメします。
定価1,620円で、1点80キロカロリー相当の食品が実物大の写真で載っていて、総論を読んでいただければ、栄養学の大まかが理解できます。
脂溶性ビタミンで、
抗酸化作用があり、
健康食品、サプリメントの効能に
『血管の若返り』に
が、よくありますが、
まず不足することのない栄養素!
テレビ番組でよくある、血管には『なになに』、便秘には『なになに』と特集をして、翌日にはスーパーには品切れになっている。
単品だけでは、健康になれない理屈は、わかっているのに!
ついつい騙される、テレビを鵜呑みにしてしまう
栄養学をきちんと習っていれば、騙されません!
女子栄養大学出版部 『食品80キロカロリーガイドブック』をオススメします。
定価1,620円で、1点80キロカロリー相当の食品が実物大の写真で載っていて、総論を読んでいただければ、栄養学の大まかが理解できます。
2019年02月11日
子どもの歯が折れたら
子どもの歯が折れたら
慌てず適切に対処を
子どもが何かの拍子に転んで歯をぶつけると、折れたり、抜けてしまったりすることがある。
親はつい慌ててしまうが、いくつかのポイントを押さえておけば、落ち着いて対処することができる。
レオーネキッズデンタルクリニック(東京都荒川区)の荻原栄和院長に、子どもの歯が折れた場合の対処法や注意点、予防策について聞いた。
対処法を知れば、いざというときも安心
▽ポイントは三つ
荻原院長によると、子どもの歯の外傷は、年代によって三つに分けられるという。
最初は1〜1歳半のつかまり立ちをして歩き始める時期。
次いで、活動性が増す3〜5歳ごろ。
そして、体育の授業や部活動のある小学校高学年以降だ。
5歳頃までは顎の骨が柔らかく、何かにぶつけると、歯が抜けたり埋まってしまったりするケースが多いという。
押さえておきたい対処法のポイントは三つ。
第一に、折れた歯は乾燥を防ぐため、洗わずにすぐに牛乳の中に入れる。
「元に戻せるかどうかは、歯の根の周りにある歯根膜の保存状態に大きく左右されるので、
洗浄は歯科医師に任せてください」と荻原院長。
幼稚園や保育所、学校によっては、歯の保存液が常備されている所もあるという。
牛乳や保存液が無い場合は、コンタクトレンズの保存液や水道水などで保存する方法もある。
第二に、転んだときに頭を打っていることがあるので、
嘔吐(おうと)があれば小児科や脳外科への受診を優先する。
第三に、歯科医院への受診は60分以内が望ましい。
ただし、「元に戻せるのは、原則として永久歯です。乳歯の場合は、後の永久歯に影響が及ぶのと、5歳以降は上顎が発達する時期なので、そのままにすることが大半です」と荻原院長は説明する。
▽生活環境の見直しを
歯の外傷を予防するために、荻原院長は「子どもが転ばないよう、生活環境を見直してほしい」と訴える。例えば、高さの違うダイニングテーブルとこたつを一緒に置くなど、子どもの目線が散漫になるような家具の配置は避ける。
食事中は椅子の上に立たせない、
外に出る際は、サンダルではなくきちんとした靴を履かせ、
未就学児であれば手をつなぐなどの配慮もしたい。
「生活の中で、子どもが転ばない工夫がどれだけできるかで、歯の外傷をかなり防げるはずです」
荻原院長は緊急時に備え、日本小児歯科学会のホームページを参考に、小児歯科治療の専門医や認定医がいる歯科医院を、普段からかかりつけにしておくことを勧めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/01/30 06:00)
慌てず適切に対処を
子どもが何かの拍子に転んで歯をぶつけると、折れたり、抜けてしまったりすることがある。
親はつい慌ててしまうが、いくつかのポイントを押さえておけば、落ち着いて対処することができる。
レオーネキッズデンタルクリニック(東京都荒川区)の荻原栄和院長に、子どもの歯が折れた場合の対処法や注意点、予防策について聞いた。
対処法を知れば、いざというときも安心
▽ポイントは三つ
荻原院長によると、子どもの歯の外傷は、年代によって三つに分けられるという。
最初は1〜1歳半のつかまり立ちをして歩き始める時期。
次いで、活動性が増す3〜5歳ごろ。
そして、体育の授業や部活動のある小学校高学年以降だ。
5歳頃までは顎の骨が柔らかく、何かにぶつけると、歯が抜けたり埋まってしまったりするケースが多いという。
押さえておきたい対処法のポイントは三つ。
第一に、折れた歯は乾燥を防ぐため、洗わずにすぐに牛乳の中に入れる。
「元に戻せるかどうかは、歯の根の周りにある歯根膜の保存状態に大きく左右されるので、
洗浄は歯科医師に任せてください」と荻原院長。
幼稚園や保育所、学校によっては、歯の保存液が常備されている所もあるという。
牛乳や保存液が無い場合は、コンタクトレンズの保存液や水道水などで保存する方法もある。
第二に、転んだときに頭を打っていることがあるので、
嘔吐(おうと)があれば小児科や脳外科への受診を優先する。
第三に、歯科医院への受診は60分以内が望ましい。
ただし、「元に戻せるのは、原則として永久歯です。乳歯の場合は、後の永久歯に影響が及ぶのと、5歳以降は上顎が発達する時期なので、そのままにすることが大半です」と荻原院長は説明する。
▽生活環境の見直しを
歯の外傷を予防するために、荻原院長は「子どもが転ばないよう、生活環境を見直してほしい」と訴える。例えば、高さの違うダイニングテーブルとこたつを一緒に置くなど、子どもの目線が散漫になるような家具の配置は避ける。
食事中は椅子の上に立たせない、
外に出る際は、サンダルではなくきちんとした靴を履かせ、
未就学児であれば手をつなぐなどの配慮もしたい。
「生活の中で、子どもが転ばない工夫がどれだけできるかで、歯の外傷をかなり防げるはずです」
荻原院長は緊急時に備え、日本小児歯科学会のホームページを参考に、小児歯科治療の専門医や認定医がいる歯科医院を、普段からかかりつけにしておくことを勧めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/01/30 06:00)
2019年02月10日
風疹抗体検査促進、39〜46歳男性から〔読売新聞〕
風疹抗体検査促進、39〜46歳男性から〔読売新聞〕
2019年01月29日 17:25
厚生労働省は、風疹対策で新たに定期接種の対象とする『39〜56歳の男性』のうち、
2019年度は39〜46歳に対し、
免疫の有無を調べる抗体検査を受けるよう積極的に促すことを決めた。
対象者には市町村から抗体検査の受診券を送る。
風疹が成人男性を中心に流行していることを受け、
厚労省は昨年12月、39〜56歳の男性約1610万人について、
予防接種法に基づく定期接種の対象にする対策を打ち出した。
予防接種を公的に受ける機会がなく、抗体の保有率が他の年代より低い世代だ。
21年度末までの約3年間、抗体検査とワクチン接種の費用を原則無料にする。
19年度は、患者数が特に多い1972年4月2日〜79年4月1日生まれの人について積極的に検査を促す。
検査で免疫が十分でないことがわかれば、ワクチンを接種する。
ただし、47〜56歳でも希望すれば、無料で検査を受けられる。(2019年1月29日 読売新聞)
現在、風疹は前例届け出が必要になっています。
子供の症状は、比較わかりやすいですが、成人の場合、症状に乏しく、慣れた皮膚科の先生でも診断に困ることがあります。
最近は咽頭ぬぐい液のPCR法にて、ウイルス遺伝子を増幅して判定するキットが出てきています。
血液検査で、風疹IgM抗体を調べることができますが、発症後3日以上たたないと、上昇していないことが多く、2週間後にもう1回採血して、前回と比べて風疹IgM値が上昇して、風疹だったと判明しても、すでに拡散してしまっているので、意味がありません。
会社は学級閉鎖がありません。また、通勤の閉鎖された交通機関の中で撒き散らすこともあります。
感染力はインフルエンザの数倍です。
風しんに対する免疫が不十分な妊娠20週頃までの妊婦が風しんウイルスに感染すると、先天性風しん症候群(白内障、難聴、心奇形など)の子どもが生まれてくる可能性が高くなります。
社会全体で、風疹ワクチン接種がさけばれている所以です!
2019年01月29日 17:25
厚生労働省は、風疹対策で新たに定期接種の対象とする『39〜56歳の男性』のうち、
2019年度は39〜46歳に対し、
免疫の有無を調べる抗体検査を受けるよう積極的に促すことを決めた。
対象者には市町村から抗体検査の受診券を送る。
風疹が成人男性を中心に流行していることを受け、
厚労省は昨年12月、39〜56歳の男性約1610万人について、
予防接種法に基づく定期接種の対象にする対策を打ち出した。
予防接種を公的に受ける機会がなく、抗体の保有率が他の年代より低い世代だ。
21年度末までの約3年間、抗体検査とワクチン接種の費用を原則無料にする。
19年度は、患者数が特に多い1972年4月2日〜79年4月1日生まれの人について積極的に検査を促す。
検査で免疫が十分でないことがわかれば、ワクチンを接種する。
ただし、47〜56歳でも希望すれば、無料で検査を受けられる。(2019年1月29日 読売新聞)
現在、風疹は前例届け出が必要になっています。
子供の症状は、比較わかりやすいですが、成人の場合、症状に乏しく、慣れた皮膚科の先生でも診断に困ることがあります。
最近は咽頭ぬぐい液のPCR法にて、ウイルス遺伝子を増幅して判定するキットが出てきています。
血液検査で、風疹IgM抗体を調べることができますが、発症後3日以上たたないと、上昇していないことが多く、2週間後にもう1回採血して、前回と比べて風疹IgM値が上昇して、風疹だったと判明しても、すでに拡散してしまっているので、意味がありません。
会社は学級閉鎖がありません。また、通勤の閉鎖された交通機関の中で撒き散らすこともあります。
感染力はインフルエンザの数倍です。
風しんに対する免疫が不十分な妊娠20週頃までの妊婦が風しんウイルスに感染すると、先天性風しん症候群(白内障、難聴、心奇形など)の子どもが生まれてくる可能性が高くなります。
社会全体で、風疹ワクチン接種がさけばれている所以です!
2019年02月09日
ゾフルーザが欲しい!救急現場は大変!
救急現場は大変!
主訴「ゾフルーザが欲しい」
2019/1/31 薬師寺 泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)
インフルエンザが日本全国に蔓延しており、年末年始から救急外来においても多くの患者さんを見かけるようになりました。
「家で寝ていてもいいのだけれどインフルエンザかどうか心配で受診した」という人に対しては、正直、家で寝ていればいいのにと思っています。
個人的にもそうしますし……。
そして今年は「主訴:インフルエンザかどうか心配」に加えて、
「主訴:ゾフルーザが欲しい」という人が増えているように思います。
ゾフルーザとは、ご存じ抗インフルエンザウイルス薬のバロキサビルの商品名です。
おなじみのタミフル(一般名オセルタミビル)に代表されるノイラミニダーゼ阻害薬は、複製されたウイルスの遺伝子が細胞から離散するのを防ぐのに対し、バロキサビルはウイルスの転写を阻害しますので、増殖そのものを防ぐという点で非常に注目を浴びています。
そして、1回の内服で済むという点も人気のポイントでしょう。
昨年3月の発売以降、一気にトップシェアに上り詰めています。なんと、2018年度のゾフルーザの国内売上高は約130億円を見込んでいるようです。すごいぜゾフルーザ。
ゾフルーザのエビデンス
すごいぜと言っておいて、僕個人はこの薬剤に今のところそこまでの愛着を持っていませんし、自分がインフルエンザに罹患しても飲みたいと思っていません。なにせエビデンスが乏しすぎます。
ゾフルーザ=バロキサビルの研究としては、第3相試験であるCAPSTONE-1 trialが挙げられます。
日本と米国において、2016年12月から2017年3月までにインフルエンザ様症状を呈した12〜64歳を対象とした研究で、バロキサビル、オセルタミビル、プラセボを2:2:1で割り付けた二重盲検ランダム化対照試験(RCT)です(未成年はバロキサビルとプラセボを2:1に割り付け)。
日本からの患者が80%弱で、日本人にとってありがたいエビデンスとなり得るわけですが、年齢層が限定的な点は注意が必要です。
また、入院を要するような重症例、抗菌薬治療が必要な感染合併例やハイリスク集団※は除外されている点も注意を要します。
※ハイリスク集団:妊婦や出産後2週以内の女性、施設入所者、喘息を含む慢性呼吸器疾患患者、神経疾患患者、心疾患患者、血液疾患患者、内分泌疾患患者(糖尿病を含む)、腎疾患患者、肝疾患患者、代謝疾患患者、免疫不全患者、BMI≧40、体重40kg以下、入院を要する疾患を合併
肝心の解析結果です。バロキサビルはプラセボと比較して中央値で26.5時間早く(53.7時間 vs. 80.2時間)症状を緩和するというものでした。
オセルタミビルとは有意差がありませんでした。
また解熱までの時間はバロキサビルとプラセボを比較すると、24.5時間 vs. 42.0時間で、こちらも半日以上短くなっています(何もせんでも2日以内に解熱するとも言えますが)。
また通常の健康状態に戻るまでの時間は129.2時間vs.168.8時間と、バロキサビル群で短くなっていますが有意差はなかったようです。
これだけ見ると、効果ありと思いたいところなのですが、患者の9.7%に変異型のウイルスが見つかっております。
最近も実際の患者から耐性ウイルスが見つかったということで話題になっておりました(関連記事)。
変異ウイルスは活性エンドヌクレアーゼ部位の特定のアミノ酸置換を起こしており、バロキサビル感受性が11〜57倍低下しているとされます。
そしてCAPSTONE-1試験において、
5日目のウイルス検出率は
変異のないウイルスのバロキサビル群患者で7%、
変異のあるバロキサビル群患者で91%、
プラセボ群患者で31%でした。
つまり、変異型のウイルスに感染した状態でバロキサビルを服用すると、何もしなかった(プラセボを服用した)人以上にウイルスが高率に残存するのです。
テレビでは「ウイルスの排出が抑えられるから周囲への感染もしなくなる」というような言説が流れていたようですが、どうなっているんでしょうか。
ていうか、ウイルス排出期間が抑えられたとして、本当に周囲への感染抑止効果はあるのでしょうか? はなはだ疑問です。
ゾフルーザのその後
ともあれ、これらのエビデンスと、テレビで流れているゾフルーザ無敵説との間には、個人的にはギャップを感じています。
僕としては研修医にも、「処方するなと言わないけれども、現状のエビデンスを踏まえた上で、よく患者と話した上で処方しなくてはならないと伝えています。
オセルタミビルに比べると格段に高いですし、体重が80kgを超えていれば倍額になります。
これもよくよく考えたいところ。お金を払って有症状期間を延長させるなどということになったら目も当てられません。費用対効果もよく考えて治療法を選択できるようにお話ししたいものです。
実際に、救急外来には何人もの「主訴:ゾフルーザが欲しい」という人が訪れています。
本当に重症な人の対応をしつつも、毎回エビデンスや有害事象、耐性株などの話をするのは、心が折れそうになります。
患者さんの希望というのはそれなりの圧力があるものですし、目の前の患者さんの説明に時間を取ると、次に待っている患者さんもストレスです。
どうしてこうもゾフルーザを欲しがる人が世の中に溢れたのでしょうか。
以前、「主訴:ラピアクタを打ってほしい」という人が増えた時期がありました。
そのときのことを考えても、やはりこれは塩野義製薬のプロモーションの賜物と言えるのではないでしょうか。
さすがです。
もはやステルスとはいえない露骨なマーケティングが功を奏しているとしか思えません。
あまり言うとただの嫌味みたいになってしまうのでこの辺で。ゴルゴ13を派遣されてしまうかもしれません。
すでにタミフルなど、既存のノイラミニダーゼ阻害薬に耐性をもつウイルスも登場していることを考えると、ゾフルーザでなくてはならないという局面も出てくるかもしれません。
せっかくの素晴らしい薬剤ですから、安易に耐性化を助長するような使用法を吹聴するのではなく、息の長い治療薬として活躍できるようにしてほしいというのが個人的な願いです。
主訴「ゾフルーザが欲しい」
2019/1/31 薬師寺 泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)
インフルエンザが日本全国に蔓延しており、年末年始から救急外来においても多くの患者さんを見かけるようになりました。
「家で寝ていてもいいのだけれどインフルエンザかどうか心配で受診した」という人に対しては、正直、家で寝ていればいいのにと思っています。
個人的にもそうしますし……。
そして今年は「主訴:インフルエンザかどうか心配」に加えて、
「主訴:ゾフルーザが欲しい」という人が増えているように思います。
ゾフルーザとは、ご存じ抗インフルエンザウイルス薬のバロキサビルの商品名です。
おなじみのタミフル(一般名オセルタミビル)に代表されるノイラミニダーゼ阻害薬は、複製されたウイルスの遺伝子が細胞から離散するのを防ぐのに対し、バロキサビルはウイルスの転写を阻害しますので、増殖そのものを防ぐという点で非常に注目を浴びています。
そして、1回の内服で済むという点も人気のポイントでしょう。
昨年3月の発売以降、一気にトップシェアに上り詰めています。なんと、2018年度のゾフルーザの国内売上高は約130億円を見込んでいるようです。すごいぜゾフルーザ。
ゾフルーザのエビデンス
すごいぜと言っておいて、僕個人はこの薬剤に今のところそこまでの愛着を持っていませんし、自分がインフルエンザに罹患しても飲みたいと思っていません。なにせエビデンスが乏しすぎます。
ゾフルーザ=バロキサビルの研究としては、第3相試験であるCAPSTONE-1 trialが挙げられます。
日本と米国において、2016年12月から2017年3月までにインフルエンザ様症状を呈した12〜64歳を対象とした研究で、バロキサビル、オセルタミビル、プラセボを2:2:1で割り付けた二重盲検ランダム化対照試験(RCT)です(未成年はバロキサビルとプラセボを2:1に割り付け)。
日本からの患者が80%弱で、日本人にとってありがたいエビデンスとなり得るわけですが、年齢層が限定的な点は注意が必要です。
また、入院を要するような重症例、抗菌薬治療が必要な感染合併例やハイリスク集団※は除外されている点も注意を要します。
※ハイリスク集団:妊婦や出産後2週以内の女性、施設入所者、喘息を含む慢性呼吸器疾患患者、神経疾患患者、心疾患患者、血液疾患患者、内分泌疾患患者(糖尿病を含む)、腎疾患患者、肝疾患患者、代謝疾患患者、免疫不全患者、BMI≧40、体重40kg以下、入院を要する疾患を合併
肝心の解析結果です。バロキサビルはプラセボと比較して中央値で26.5時間早く(53.7時間 vs. 80.2時間)症状を緩和するというものでした。
オセルタミビルとは有意差がありませんでした。
また解熱までの時間はバロキサビルとプラセボを比較すると、24.5時間 vs. 42.0時間で、こちらも半日以上短くなっています(何もせんでも2日以内に解熱するとも言えますが)。
また通常の健康状態に戻るまでの時間は129.2時間vs.168.8時間と、バロキサビル群で短くなっていますが有意差はなかったようです。
これだけ見ると、効果ありと思いたいところなのですが、患者の9.7%に変異型のウイルスが見つかっております。
最近も実際の患者から耐性ウイルスが見つかったということで話題になっておりました(関連記事)。
変異ウイルスは活性エンドヌクレアーゼ部位の特定のアミノ酸置換を起こしており、バロキサビル感受性が11〜57倍低下しているとされます。
そしてCAPSTONE-1試験において、
5日目のウイルス検出率は
変異のないウイルスのバロキサビル群患者で7%、
変異のあるバロキサビル群患者で91%、
プラセボ群患者で31%でした。
つまり、変異型のウイルスに感染した状態でバロキサビルを服用すると、何もしなかった(プラセボを服用した)人以上にウイルスが高率に残存するのです。
テレビでは「ウイルスの排出が抑えられるから周囲への感染もしなくなる」というような言説が流れていたようですが、どうなっているんでしょうか。
ていうか、ウイルス排出期間が抑えられたとして、本当に周囲への感染抑止効果はあるのでしょうか? はなはだ疑問です。
ゾフルーザのその後
ともあれ、これらのエビデンスと、テレビで流れているゾフルーザ無敵説との間には、個人的にはギャップを感じています。
僕としては研修医にも、「処方するなと言わないけれども、現状のエビデンスを踏まえた上で、よく患者と話した上で処方しなくてはならないと伝えています。
オセルタミビルに比べると格段に高いですし、体重が80kgを超えていれば倍額になります。
これもよくよく考えたいところ。お金を払って有症状期間を延長させるなどということになったら目も当てられません。費用対効果もよく考えて治療法を選択できるようにお話ししたいものです。
実際に、救急外来には何人もの「主訴:ゾフルーザが欲しい」という人が訪れています。
本当に重症な人の対応をしつつも、毎回エビデンスや有害事象、耐性株などの話をするのは、心が折れそうになります。
患者さんの希望というのはそれなりの圧力があるものですし、目の前の患者さんの説明に時間を取ると、次に待っている患者さんもストレスです。
どうしてこうもゾフルーザを欲しがる人が世の中に溢れたのでしょうか。
以前、「主訴:ラピアクタを打ってほしい」という人が増えた時期がありました。
そのときのことを考えても、やはりこれは塩野義製薬のプロモーションの賜物と言えるのではないでしょうか。
さすがです。
もはやステルスとはいえない露骨なマーケティングが功を奏しているとしか思えません。
あまり言うとただの嫌味みたいになってしまうのでこの辺で。ゴルゴ13を派遣されてしまうかもしれません。
すでにタミフルなど、既存のノイラミニダーゼ阻害薬に耐性をもつウイルスも登場していることを考えると、ゾフルーザでなくてはならないという局面も出てくるかもしれません。
せっかくの素晴らしい薬剤ですから、安易に耐性化を助長するような使用法を吹聴するのではなく、息の長い治療薬として活躍できるようにしてほしいというのが個人的な願いです。
2019年02月08日
アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病;AD)に承認されている薬は効かない、却って悪化させるかもしれないーもっと多くの結果が待たれる!
アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病;AD)に承認されている薬は効かない、却って悪化させるかもしれないーもっと多くの結果が待たれる!
軽度アルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬(アリセプトに代表される、後発品としてドネペジル)のベネフィット 提供元:ケアネット 公開日:2019/01/29
アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI-AD)および軽度のアルツハイマー型認知症(ADdem)に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)の認知機能アウトカムについて、米国・セントルイス・ワシントン大学のJee-Young Han氏らが検討を行った。Alzheimer Disease and Associated Disorders誌オンライン版2019年1月10日号の報告。
対象は、MCI-AD(臨床認知症評価法[CDR]:0または0.5)もしくは軽度ADdem(CDR:0.5または1)と臨床的に診断された『2,242例』。
患者データは、National Alzheimer's Coordinating Center(NACC)の統一データセット(Uniform Data Set)より抽出した。CDR合計スコアおよび神経心理学的パフォーマンスの年次変化は、一般化線形混合モデルを用いて算出した。
ChEIを使用する患者間で、使用開始前後の勾配を比較した。
また、ChEI使用患者と非使用患者のスコア変化の比較も行った。
主な結果は以下のとおり。
・ChEI使用患者の割合は、
MCI-AD群944例中34%、
ADdem群1,298例中72%であった。
・MCI-AD群、ADdem群ともに、
認知機能低下はChEI『使用開始後』に、
より大きかった。
たとえば、MCI-AD患者のCDR合計スコアは、
ChEI開始前の0.03ポイント/年から、
開始後の0.61ポイント/年に変化した
(p<0.0001)。
・MCI-AD群、ADdem群ともに、
ChEI使用患者では、
非使用患者『よりも早く認知機能低下』が認められた。
たとえば、MCI-AD患者のCDR合計スコアは、
ChEI使用患者で『0.61』ポイント/年、
非使用患者で『0.24』ポイント/年であった(p<0.0001)。
著者らは「本研究は、ChEI使用がMCI-ADおよび軽度ADdemの認知機能を、『改善しない可能性がある』ことを示唆している」としている。(鷹野敦夫)
原著論文はこちら
Han JY, et al. Alzheimer Dis Assoc Disord. 2019 Jan 10. [Epub ahead of print]
軽度アルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬(アリセプトに代表される、後発品としてドネペジル)のベネフィット 提供元:ケアネット 公開日:2019/01/29
アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI-AD)および軽度のアルツハイマー型認知症(ADdem)に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)の認知機能アウトカムについて、米国・セントルイス・ワシントン大学のJee-Young Han氏らが検討を行った。Alzheimer Disease and Associated Disorders誌オンライン版2019年1月10日号の報告。
対象は、MCI-AD(臨床認知症評価法[CDR]:0または0.5)もしくは軽度ADdem(CDR:0.5または1)と臨床的に診断された『2,242例』。
患者データは、National Alzheimer's Coordinating Center(NACC)の統一データセット(Uniform Data Set)より抽出した。CDR合計スコアおよび神経心理学的パフォーマンスの年次変化は、一般化線形混合モデルを用いて算出した。
ChEIを使用する患者間で、使用開始前後の勾配を比較した。
また、ChEI使用患者と非使用患者のスコア変化の比較も行った。
主な結果は以下のとおり。
・ChEI使用患者の割合は、
MCI-AD群944例中34%、
ADdem群1,298例中72%であった。
・MCI-AD群、ADdem群ともに、
認知機能低下はChEI『使用開始後』に、
より大きかった。
たとえば、MCI-AD患者のCDR合計スコアは、
ChEI開始前の0.03ポイント/年から、
開始後の0.61ポイント/年に変化した
(p<0.0001)。
・MCI-AD群、ADdem群ともに、
ChEI使用患者では、
非使用患者『よりも早く認知機能低下』が認められた。
たとえば、MCI-AD患者のCDR合計スコアは、
ChEI使用患者で『0.61』ポイント/年、
非使用患者で『0.24』ポイント/年であった(p<0.0001)。
著者らは「本研究は、ChEI使用がMCI-ADおよび軽度ADdemの認知機能を、『改善しない可能性がある』ことを示唆している」としている。(鷹野敦夫)
原著論文はこちら
Han JY, et al. Alzheimer Dis Assoc Disord. 2019 Jan 10. [Epub ahead of print]
2019年02月07日
最新2016年推計値
最新2016年推計値
新たにがんと登録された患者さんの数は
人口10万あたり 男性917人、女性657人
男性では胃がん、女性では乳がんでした。
早期発見、早期治療!がなによりです。
信頼できるかかりつけ医を持つか、検診、人間ドックを積極的に利用してください
肝臓、腎臓、膵臓は沈黙の臓器なので、症状が出たときには、
慢性疾患に移行していることが多く、
悪性疾患でも手遅れになっていることが圧倒的です。
消化管、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸もガンで症状が出たときは、手の施しようがなくなっているケースが多いので、40歳前後で男性ならば、胃カメラ、大腸カメラを受けてください。
女性ならば、40歳前後で、子宮頸がん、乳がん検診を受けてください!
新たにがんと登録された患者さんの数は
人口10万あたり 男性917人、女性657人
男性では胃がん、女性では乳がんでした。
早期発見、早期治療!がなによりです。
信頼できるかかりつけ医を持つか、検診、人間ドックを積極的に利用してください
肝臓、腎臓、膵臓は沈黙の臓器なので、症状が出たときには、
慢性疾患に移行していることが多く、
悪性疾患でも手遅れになっていることが圧倒的です。
消化管、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸もガンで症状が出たときは、手の施しようがなくなっているケースが多いので、40歳前後で男性ならば、胃カメラ、大腸カメラを受けてください。
女性ならば、40歳前後で、子宮頸がん、乳がん検診を受けてください!
2019年02月06日
日本人の脳卒中生涯リスク:4人に1人が脳卒中になる
脳卒中は予防可能な疾病である!
日本人の脳卒中生涯リスク:4人に1人が脳卒中になる
(解説:有馬 久富 氏)
提供元:臨床研究適正評価教育機構 公開日:2019/01/25 企画協力 J-CLEAR
有馬 久富( ありま ひさとみ ) 氏
福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 教授
地域別の脳卒中生涯リスク、東アジアで39%/NEJM(2019/01/07掲載)
Global Burden of Disease(GBD)研究2016より、全世界における脳卒中の生涯リスクがNEJM誌に報告された1)。
その結果、25歳以降に脳卒中を発症するリスクは25%であった。
日本における脳卒中の生涯リスクは全世界よりも少し低い23%であり、約4人に1人が脳卒中に罹患する計算になる。
また、日本では1990〜2016年までの間に生涯リスクが3%減少していた。
一方、東アジアで脳卒中の生涯リスクが最も高いのは中国(39%)であり、約2.5人に1人が罹患する計算になる。さらに中国では、1990〜2016年までの間に生涯リスクが9%も増加していた。中国において高血圧の未治療者や、降圧目標を達成できていない者が多いこと2,3)が、高い脳卒中生涯リスクの一因かもしれない。
脳卒中は予防可能な疾病である。
INTERSTROKE研究では、管理可能な危険因子をすべてコントロールすることにより、現在起こっている脳卒中の約90%を予防できる可能性が示されている4,5)。
国民全体の生活習慣を改善するポピュレーション予防戦略と高血圧・糖尿病などに適切な医療を提供するハイリスク予防戦略を組み合わせて、脳卒中の生涯リスクを今後さらに低下させてゆくことが可能となるであろう。
参考文献はこちら
1)GBD 2016 Lifetime Risk of Stroke Collaborators. N Engl J Med. 2018;379:2429-2437.
2)Lu J, et al. Lancet. 2017;390:2549-2558.
3)中国における高血圧管理の現状から学ぶべきこと
4)O'Donnell MJ,et al. Lancet. 2016;388:761-775.
5)INTERSTROKE研究:脳卒中はどこまで予防できるか?
日本人の脳卒中生涯リスク:4人に1人が脳卒中になる
(解説:有馬 久富 氏)
提供元:臨床研究適正評価教育機構 公開日:2019/01/25 企画協力 J-CLEAR
有馬 久富( ありま ひさとみ ) 氏
福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 教授
地域別の脳卒中生涯リスク、東アジアで39%/NEJM(2019/01/07掲載)
Global Burden of Disease(GBD)研究2016より、全世界における脳卒中の生涯リスクがNEJM誌に報告された1)。
その結果、25歳以降に脳卒中を発症するリスクは25%であった。
日本における脳卒中の生涯リスクは全世界よりも少し低い23%であり、約4人に1人が脳卒中に罹患する計算になる。
また、日本では1990〜2016年までの間に生涯リスクが3%減少していた。
一方、東アジアで脳卒中の生涯リスクが最も高いのは中国(39%)であり、約2.5人に1人が罹患する計算になる。さらに中国では、1990〜2016年までの間に生涯リスクが9%も増加していた。中国において高血圧の未治療者や、降圧目標を達成できていない者が多いこと2,3)が、高い脳卒中生涯リスクの一因かもしれない。
脳卒中は予防可能な疾病である。
INTERSTROKE研究では、管理可能な危険因子をすべてコントロールすることにより、現在起こっている脳卒中の約90%を予防できる可能性が示されている4,5)。
国民全体の生活習慣を改善するポピュレーション予防戦略と高血圧・糖尿病などに適切な医療を提供するハイリスク予防戦略を組み合わせて、脳卒中の生涯リスクを今後さらに低下させてゆくことが可能となるであろう。
参考文献はこちら
1)GBD 2016 Lifetime Risk of Stroke Collaborators. N Engl J Med. 2018;379:2429-2437.
2)Lu J, et al. Lancet. 2017;390:2549-2558.
3)中国における高血圧管理の現状から学ぶべきこと
4)O'Donnell MJ,et al. Lancet. 2016;388:761-775.
5)INTERSTROKE研究:脳卒中はどこまで予防できるか?
2019年02月05日
脳梗塞の世界最新の総説
仲田和正先生は、2年で全科を、さらに半年麻酔科を研修されたのち、整形外科医として38年。現在西伊豆健育会病院病院長をされ、総合診療科医として活躍されています。
メディカルトリビューンの『脳梗塞の最新の総説』から転載。
専門的ですが、参考になると思います。
脳梗塞の世界最新の総説
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正 2019年01月22日 06:05
Lancet(2018; 392: 1247-1256)に脳梗塞の総説がありました。世界最新の総説です。
この数年、脳梗塞には驚くべき進歩がありました。
これを読んでつくづく1次医療機関で悠長に造影CTやMRIは撮るべきではないと思いました。
次の超重要ポイント6行だけ暗記してください。
「脳卒中患者来院したら即座に単純CT、脳出血否定。MRIで時間無駄にするな!
症状からNIHSS 6点以上は全例 (ラクナ梗塞も) 4.5時間以内血栓溶解考慮
Early CT signから中大脳動脈(MCA)梗塞疑ったらASPECTS 6点以上は4.5時間以内血栓溶解ASPECTS 低点数は血栓溶解で脳出血リスク高い
造影CT、CT perfusion行いMCA近位血栓は血管内治療(stent retrieval)効果大なので6時間以内開始。Door-to-balloon time 目標30分!」
「脳梗塞」総説最重要点は下記12点です。
脳MCA近位血栓は血栓溶解よりstent retrievalが圧倒的効果!!
脳梗塞患者を症状からNIHSSで評価、6点(中等症)以上は全例血栓溶解考慮(NIHSS;関連リンク1参照)
血栓溶解はアルテプラーゼ(tPA)を4.5時間以内に。tenecteplaseはより有効かも
血管内治療は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間、まれに24時間
血管内治療はstent retrievalが標準、変法でEmboTrap、吸引も
MRIのDWI変化と、症状1時間継続は不可逆性梗塞と強く関連
MCA梗塞はearly CT signでASPECTS計算、6点以上は血栓溶解(ASPECT;関連リンク2参照)
3次病院に予告・搬送、造影CT、CT perfusion準備、door-to-needle time 30分
回復の連鎖(chain of recovery)でdoor-to-needle timeを短縮せよ!
患者搬送にはMothership modelとDrip and ship modelがある
3次病院では造影CT、CT perfusionなどからstent retrieval決める
実験段階で音響血栓溶解、磁力促進血栓溶解、硫酸Mgの病院前使用など
1. 脳MCA近位血栓は血栓溶解よりstent retrievalが圧倒的効果!!
今まで当、西伊豆健育会病院では脳梗塞患者は発症誤4.5時間を過ぎていれば、
「もうtPAの適応がないから仕方がないね」と当院に入院させてアスピリンで経過を見ておりました。
ところがこれが許されなくなったのです。
MCA近位血栓なら6時間以内stent retrievalが有効だからです。
なお、オザグレルナトリウム(商品名カタクロット、キサンボン)やエダラボン(同ラジカット)は日本国内だけで使用されている薬剤です。このLancet総説では「1,000種以上の神経保護薬とされる薬剤は実験から実用には至らなかった」(1000 putative neuroprotective compounds have not been translated from the laboratory to humans.)の1行で片付けられています。
この数年、脳梗塞治療で大変大きなブレークスルー(breakthrough)がありました。
従来tPAによるMCA近位血栓の再開通率は高くありませんでした。
しかし2015〜16年、なんと6つの血管内治療(stent retrieval)のトライアルが圧倒的効果(overwhelming efficacy!)を示したのです。
血管内治療とはstent retrievalといってカテーテルを血栓に通しワイヤの網を広げて血栓を魚のように絡め取るものです。
当、西伊豆健育会病院に来る患者さんは漁師さんも多いですが、80歳過ぎても現役で網や釣りで魚を捕らえており毎日実に楽しそうです。趣味と仕事が一致しておりうらやましい人生です。海女さんも80歳過ぎて現役の方がいます。変形性膝関節症があっても海の中では無重力でどうってことはないので、かえって自由に動けるのです。アワビ1つで数千円もしますから海女さんは高給取りです。
なお血栓吸引(contact aspiration)はstent retrievalに勝るものではありませんが、安上がりなので現在ランダム化比較試験(RCT)が進行中(COMPASS trial)です。
脳梗塞治療結果は次の通りです。
・脳梗塞発症後4.5時間以内のtPAはオッズ比(OR)1.37で有効
・脳梗塞でtPA+stent retrievalはOR 2.49で有効!!!
・頸動脈内膜切除術は相対リスク比(RR)0.53〜0.77で有効
2.脳梗塞患者を症状からNIHSSで評価、6点以上は全例血栓溶解考慮
脳梗塞患者の25%が血栓溶解適応であり10〜12%が血管内治療適応です。
脳梗塞患者の症状を下記NIHSSでカウントして6点以上はほぼ全例、血栓溶解考慮です。
NIHSSは11機能42点(integer、整数)のスコアで次のようにスコア化します。
0〜5点:軽症(mild)
6〜15点: 中等症(moderate)
15点〜:重症(severe)
【NIHSS : National Institutes of Health Stroke Scale】
なお血栓溶解の禁忌は次の通りです。
・発症後4.5時間を超える場合
・非外傷性頭蓋内出血の既往
・胸部大動脈解離が強く疑われる
・CTやMRIで広範な早期虚血性変化の存在
3.血栓溶解はアルテプラーゼ(tPA)を4.5時間以内に。tenecteplaseはより有効かも
アルテプラーゼの対象は、全ての虚血性脳血管障害〔アテローム血栓性梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症、その他の原因確定・未確定の脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)を含む〕です。
血栓溶解の対象にラクナ梗塞も含まれていますから、1次病院で単純CTにより出血が確認できないからといってさらにMRIでラクナ梗塞などを確認することの意味がありません。時間の無駄です。
過去には脳梗塞にウロキナーゼ、streptokinaseが使用されましたが効果がないどころか脳出血が増え結局使われなくなりました。小生が研修医のころはよく使っていましたしシチコリン(商品名ニコリン)なんてのも点滴していました。オーベンに「これって効くんですか?」と聞いたら「さあー?」という返事でした。
一方、アルテプラーゼは脳梗塞に有効であることが確認され商業化されました。
NINDS tPA stroke trialではアルテプラーゼ0.9mg/kg静注はプラセボに比し3カ月後のアウトカムが良好で当初、発症から3時間以内の使用条件で許可されました。なお国内での用量は0.6mg/kg静注、上限60mgまでです。
ECASSU、ATLANTIS-B trialではアルテプラーゼが発症後6時間以内で投与され、投与が早いほど有効であり、発症後4.5時間でその効果は消失しました。4.5時間以後の投与は脳出血が増加し無効でした。これらのトライアルから投与は発症後4.5時間以内になりました。
しかしIST-3 trialと最近、1万例のシステマチックレビューとメタ解析では「3時間以内投与が望ましいが6時間以内投与も効果あり」としています。IST-3のサブ解析でleukoaraiosisがベースにある患者で血栓溶解はより有効としています。なお日本国内では発症から4.5時間たっていたらアルテプラーゼは禁忌です。
一方、前もって抗血小板薬が投与されているとアルテプラーゼ使用で脳出血リスクが高くなります。アルテプラーゼ投与90分以内のアスピリン静注のトライアルは脳出血が増加し途中で中止されました。ただしアルテプラーゼはMCA近位血管の閉塞では効果が不十分です。
なおtenecteplaseは国内で販売されていませんが、アルテプラーゼに比しフィブリン特異性が高く作用時間が長く再灌流率が高いとのことです(EXTEND-IA TNK trial、NEJM2018; 378: 1573-1582)。今後はアルテプラーゼからtenecteplaseに代わっていくのかもしれません。
4.血管内治療は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間以内、まれに24時間以内
血管内治療(stent retrieval)は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間以内、まれに24時間以内です。
発症2.5時間以内の血管内治療でなんと91%が機能的自立(functional independence)を果たしました(SWIFT-PRIME trial)!!しかし次の1時間で10%低下し、さらに以後1時間に20%ずつ低下していったというのです。時間との勝負なのです。
血管内治療までのスピードが鍵なのです! タクシーで高速道路を走り料金メーターがカシャカシャ上がって、気が気ではない自分を想像してください。
MCA梗塞で治療しないと「1分当たり190万のニューロン」が失われます。
これは「1分の遅延で1.8日の健康生活が失われる」ことなのだそうです。余分な検査を追加して遅延するごとにアウトカムは悪化します。
1次医療機関で、悠長に造影CTだのMRIなど撮っていてはなりません!!
2015年、2016年に6つのトライアル(MR CLEAN、ESCAPE、EXTEND-IA、REVASCAT、SWIFT-PRIME、THRACE)で脳前方血管系の大きな血管の血管内治療(endovascular therapy)、すなわちstent retrievalは圧倒的効果が確認され標準治療となりました。
どのトライアルも18歳以上で発症後12時間以内に行われ標準治療(血栓溶解)に比べ圧倒的効果を示しました。多くの患者は発症後6時間以内にstent retrievalが行われましたが、ESCAPE trialでは5.5〜12時間で行われた患者もあったとのことです。
DAWN trialではえりすぐりの患者(highly selected patient)で6〜24時間以内でも血管内治療が有効だったとしています。患者選択にはCT perfusionまたはMRI perfusionが必要です。
DEFFUSE-3 trialでは患者選択をCT perfusionかMRI perfusionで行い、発症後6〜16時間以内の血管内治療が有効でした。EXTEND、POSITIVE trialでは患者選択にperfusion -weightedかdiffusion weighted imagingを使用して発症後24時間までの患者を調べています。
まとめると「血管内治療は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間以内、まれに24時間以内、早ければ早いほど良い」というところでしょうか。
5.血管内治療はstent retrievalが標準、変法でEmboTrap、吸引も
血管内治療は過去5年、もっぱらstent retrievalが行われてきました。関連リンクの動画のようなものです。カテを血管内に挿入して血栓を貫きワイヤの網を開いて絡め取ります。
ASTER trialでは血栓吸引(contact aspiration)が行われましたが再開通率はstent retrievalを超えませんでした。しかし血栓吸引は安上がりなのでトライアル(COMPASS)が継続されています。
ARISE U trialはEmboTrap deviceの効果を確認しています。これはワイヤでできた網だけど少し形状が異なるものです。You Tubeで見てみましたが普通のstent retrievalと何が違うのかよく分かりませんでした。ウォシュレット(TOTO)とシャワートイレ(INAX)くらいの差でしょうか。
6.MRIのDWI変化と、症状1時間継続は不可逆性梗塞と強く関連
昔は24時間でTIAと脳梗塞を分けましたが、これはもはや時代遅れで時間で両者は区別できません。TIAは脳虚血の一番軽症のものです。
MRIでのDWI(diffusion weighted imaging)変化と症状1時間持続は、不可逆的梗塞と強く関連するそうです。
DWIで変化する領域はpenumbra(可逆的領域)でなくまさに脳梗塞のcore(不可逆的領域)に相当します。
脳梗塞の症状が1時間超えたらヤバいと思えばよさそうです。
7. MCA梗塞はearly CT signでASPECTS計算、6点以上は血栓溶解
では当、西伊豆健育会病院のような小病院で脳梗塞を疑ったときはどうするかというと次のような手順です。
来院したら即座に単純CTを撮り脳出血をまず否定します。症状からNIHSS 6点以上は血栓溶解を考慮します。
MRIは時間の無駄です。MRIのDWIにより脳梗塞発症数分で虚血性変化が分かりますが、撮像に時間がかかり過ぎます。「1分の遅延で1.8日の健康生活が失われる」のです。単純CTでの低濃度領域はDWIとよく関連します(不可逆的なcore)。
症状からMCA梗塞を疑ったら単純CTで early CT signを捜します。次のような所見です。
【Early CT sign】
・Hyperdense MCA sign : MCA内の血栓である高吸収構造の確認
・レンズ核の輪郭不鮮明化
・皮質・白質境界の不鮮明化
・島皮質の不鮮明化(insular ribbon sign)
・脳溝の消失
・脳実質の低信号化
MCAの梗塞面積の評価には下記のASPECTSのスコアを使います。CTの2つのスライスからMCAの10領域で梗塞域を10から引き算します。初期虚血性変化(early ischemic change)がどこにもなければ10点、全領域にあれば0点です。
このLancet総説にはスコア点数のはっきりした線引きは書かれていませんでした。調べてみるとこのスコア7点以下は3カ月後の機能予後不良です。ASPECTS 6点か7点以上で血栓溶解の適応とするようです。
【ASPECTS:Alberta Stroke Program Early CT Score、MD-Calc】
関連リンク6のASPECTSの絵でinsular ribbonの緑印が抜けていますが、シルビウス裂の奥の島皮質表面のことです。リボンはちょうちょうの形のことでなく帯のことです。Insular ribbon signは島皮質の皮質・白質境界の不鮮明化のことをいいます。
MCAのM1近位で閉塞すると穿通枝のレンズ核線条体動脈(LSA)がやられますから内包や放線冠が障害され強い半身麻痺が起こります。もしM2での閉塞ならLSAは障害されませんから半身麻痺は軽度です。
ですから「単純CTで基底核の変化がある場合はM1閉塞の可能性が高い」と思えばよいのかなと思いました。M1閉塞ならstent retrieval適応です。
なお基底核の中で尾状核は前大脳動脈(ACA)から出るHeubner(ホイブナー)反回動脈支配(A.comの手前で分枝)です。また視床は後大脳動脈(PCA)支配です。
8.3次医療機関に予告・搬送、造影CT、CT perfusion準備、door-to-needle time 30分
脳MCA近位血栓の有無は造影CTを撮らないと分かりません。MCA近位血栓は血栓溶解療法の再開通率が低く、血管内治療の方が成功率は高いのです。
この総説では、単純CTと造影CTの同時撮影を勧めていますが、当院のような小病院で造影CTは行うべきではないと思いました。というのは、脳外科医は造影CTからわれわれよりずっと多くの情報を得ています。すなわち、aortic archの蛇行、Willis動脈輪の状態、くも膜の側副血行、血栓の場所・サイズ・性状まで把握するというのです。側副血行の程度は健側と比較すれば分かります。というわけで、当院で「なんちゃって造影CT」は撮るべきでないと思いました。
だいたい小生、脳造影CTにaortic archまで含めるなんて考えてもみませんでした。
造影CTは撮らず症状からNIHSS 6点以上(血栓溶解適応)、単純CTでASPECTS 6点以上(血栓溶解適応)なら一刻も早くとっとと3次医療機関へ転送を行うのです。
3次医療機関に電話し造影CT、CT perfusionの準備をしてもらいます。3次病院到着から血管内治療開始までの時間(door-to-needle time)目標は30分以内です。
2011年、ヘルシンキ大学病院ではdoor-to-needle timeの中央値がなんと20分だったというのです。中央値20分ということは10分台も多いということです。努力次第で20分に短縮できるのです。米国の循環器センター1位のクリーブランドクリニックでは、 急性冠疾患に対しPCIは2015年に1万1,601例行いましたが、来院からPCIまでのdoor to balloon time は58分でした。
9.回復の連鎖(chain of recovery)でdoor-to-needle timeを短縮せよ!
ACLSの「救命の連鎖、chain of survival」と同様、脳梗塞のdoor-to-needle timeを短縮するため「回復の連鎖、chain of recovery」が必要だというのです。つまり消防署連絡→パラメディック→病院への継ぎ目のない(seamless)リレーが必要です。これには前もって脳梗塞患者搬送を予告しない限り時間短縮はできません。
10.患者搬送にはMothership modelとDrip and ship modelがある
血管内治療は第3次医療機関でしかできませんが血栓溶解は小病院でも可能です。この総説によると、患者搬送には次の2つの方法があるというのです。
@ Mothership model(母船モデル)
これは脳梗塞患者を一次脳卒中センターは飛ばして直接、3次医療機関に送り、そこで血栓溶解と血管内治療を行う方法です。
A Drip and ship model (血栓溶解しつつ搬送)
まず一次脳卒中センターへ送り血栓溶解を行いつつ3次医療機関へ送るというものです。
可能ならtelemedicine (画像相談)ができれば理想的です。
現在mothership modelとdrip and ship modelの2つを比較したトライアルが進行中だそうです。
なお米国では最近、Mobile stroke unitsといって、なんとCTと簡易検査ができる救急車があり画像診断と血栓溶解が車内で可能というのです。現在、mobile stroke unitを使用した場合と、病院へ直接搬送した場合の比較トライアルが行われています。医学の進歩は誠に日進月歩であるなあとつくづく感心しました。
11.3次病院では造影CT、CT perfusionなど行い血管内治療決める
3次病院でどのような検査をやるのかというと、以下のような検査があります。
【造影CT(CTA)】
単純CTと併せて撮影し近位血管閉塞が分かります。これからaortic archの蛇行、Willis動脈輪、くも膜の側副血行、血栓の場所・サイズ・性状を把握します。
【Multiphase CT angiography】
造影剤を注入して3つのphaseすなわちpeak arterial、peak venous、late venousを撮ることにより時間分解的評価(time-resolved assessment)が可能となります。CTAで患側と健側のくも膜血管を比較することにより脳の虚血域が分かりますし、multiphaseで血管充盈の遅延も分かります。
【CT perfusion(CT灌流画像)】
造影剤を急速静注しながらCT撮像し脳血流を定量的評価します。CT perfusionはヨード剤を使うため脳血流関門を通過せず毛細血管床の灌流を評価できます。一方、PETなどの核医学検査は関門を通過し脳実質に入ります。
CT perfusionで分かるのは以下のような項目です。
・脳血流量(CBF; cerebral blood flow)
・脳血液量(CBV; cerebral blood volume)
・平均通過時間(MTT; mean transit time)
・ピーク到達時間(TTP; time to peak)
CBV低下領域は最終梗塞巣、その周囲のCBF低下領域は可逆性領域とされますがCBFが正常の30%未満は不可逆的とみられます。
CT perfusionはCBFやその遅延が分かり、また脳梗塞とmimicsとの鑑別ができます。例えば脳梗塞では血液灌流が減少しますが、てんかん発作ではその50%で血流が増加するのだそうです。
また造影CTは大きな血管しか分かりませんがCT perfusionは毛細血管、細静脈(venule)まで分かります。これにより定量的に不可逆的損傷部位(core)と回復可能部位(ischemic penumbra)の領域が分かるのです。また単に血流が減少しているだけで機能正常な部位(benign oligaemia)も分かります。
【MRIのDWI】
これにより脳梗塞発症数分で虚血性変化が分かりますが撮像に時間がかかり過ぎます。単純CTでの低濃度領域はDWIとよく関連し不可逆的なischemic coreです。MRIは特に小梗塞、多発梗塞の発見に有用です。また特に脳の後方循環系梗塞はCTだと頭蓋骨のアーチファクトで分かりにくくMRIの方が分かりやすいのです。
【DWIとFLAIR(fluid-attenuated inversion recovery)のミスマッチ】
DWIとFLAIRのミスマッチから血栓溶解の患者選択を行うことができます。DWIで描出される領域は脳梗塞のcore (不可逆的領域)だからです。なおFLAIRは水の信号をなくし組織のT2の違いを際立たせた撮像です。脳脊髄液からの信号がないため脳表や脳室周囲のT2の延長する病変の検出が容易となります。T1とT2の影響を強く受けた画像です。
【Time of flight MR angiography(TOF)】
造影剤なしで脳動脈が分かります。
【Susceptibility-weighted imaging(SWI)】
組織の鉄による磁化率アーチファクトを利用して微細な出血が分かりT2*よりも鋭敏です。高い感度で脳内出血、単純CTで分からぬようなmicrobleedsが分かりamyloid angiopathyの存在を疑うことができ、血栓溶解後の脳内出血が高いことが予測できます。
【Contrast-enhanced dynamic MR angiography】
これは時間分解性評価(time-resolved assessment)が可能です。
【MR perfusion imaging 】
これはガドリニウムを使用してCT perfusionと同様の画像を得ます。
12. 実験段階で音響血栓溶解、磁力促進血栓溶解、硫酸Mgの病院前使用など
新たな治療として音響血栓溶解sonothrombolysisや、なんとiron nanoparticlesの磁力促進血栓溶解(magnetically enhanced thrombolysis)の研究が行われています。また血管内治療の前にpeptide NA-1(別名Tat-NR2B9c)の使用が評価中です(ESCAPE-NA1 trial)。
先に述べたように1,000種以上の神経保護薬は実験から実用に至りませんでした。(1000 putative neuroprotective compounds have not been translatedfrom the laboratory to humans.)。硫酸マグネシウム(Mg)の病院前使用は安全であり血管内治療でischaemic penumbraが救済できるかのトライアルが行われています。
なお高血糖、高血圧、低血圧、高体温はいずれも予後不良因子です。
「脳卒中患者来院したら即座に単純CT、脳出血否定。MRIで時間無駄にするな!
症状からNIHSS 6点以上は全例 (ラクナ梗塞も)4.5時間以内血栓溶解考慮
Early CT signからMCA梗塞疑ったらASPECTS 6点以上は4.5時間以内血栓溶解、ASPECTS 低点数は血栓溶解で脳出血リスク高い
造影CT、CT perfusion行いMCA近位血栓はstent retrieval効果大なので6時間以内開始。Door-to-balloon time 目標30分!」
Lancet(2018; 392: 1247-1256)「脳梗塞」総説の最重要点12点の怒濤の反復です。
脳MCA近位血栓は血栓溶解よりstent retrievalが圧倒的効果!!
脳梗塞患者を症状からNIHSSで評価、6点(中等症)以上は全例血栓溶解考慮
血栓溶解はアルテプラーゼ(tPA)を4.5時間以内に。tenecteplaseはより有効かも
血管内治療は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間、まれに24時間
血管内治療はstent retrievalが標準、変法でEmboTrap、吸引も
MRIのDWI変化と、症状1時間継続は不可逆性梗塞と強く関連
MCA梗塞はearly CT signでASPECTS計算、6点以上は血栓溶解
3次病院に予告・搬送、造影CT、CT perfusion準備、door-to-needle time 30分
回復の連鎖(chain of recovery)でdoor-to-needle timeを短縮せよ!
患者搬送にはMothership modelとDrip and ship modelがある
3次病院では造影CT、CT perfusionなどからstent retrieval決める
実験段階で音響血栓溶解、磁力促進血栓溶解、硫酸Mgの病院前使用など
メディカルトリビューンの『脳梗塞の最新の総説』から転載。
専門的ですが、参考になると思います。
脳梗塞の世界最新の総説
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正 2019年01月22日 06:05
Lancet(2018; 392: 1247-1256)に脳梗塞の総説がありました。世界最新の総説です。
この数年、脳梗塞には驚くべき進歩がありました。
これを読んでつくづく1次医療機関で悠長に造影CTやMRIは撮るべきではないと思いました。
次の超重要ポイント6行だけ暗記してください。
「脳卒中患者来院したら即座に単純CT、脳出血否定。MRIで時間無駄にするな!
症状からNIHSS 6点以上は全例 (ラクナ梗塞も) 4.5時間以内血栓溶解考慮
Early CT signから中大脳動脈(MCA)梗塞疑ったらASPECTS 6点以上は4.5時間以内血栓溶解ASPECTS 低点数は血栓溶解で脳出血リスク高い
造影CT、CT perfusion行いMCA近位血栓は血管内治療(stent retrieval)効果大なので6時間以内開始。Door-to-balloon time 目標30分!」
「脳梗塞」総説最重要点は下記12点です。
脳MCA近位血栓は血栓溶解よりstent retrievalが圧倒的効果!!
脳梗塞患者を症状からNIHSSで評価、6点(中等症)以上は全例血栓溶解考慮(NIHSS;関連リンク1参照)
血栓溶解はアルテプラーゼ(tPA)を4.5時間以内に。tenecteplaseはより有効かも
血管内治療は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間、まれに24時間
血管内治療はstent retrievalが標準、変法でEmboTrap、吸引も
MRIのDWI変化と、症状1時間継続は不可逆性梗塞と強く関連
MCA梗塞はearly CT signでASPECTS計算、6点以上は血栓溶解(ASPECT;関連リンク2参照)
3次病院に予告・搬送、造影CT、CT perfusion準備、door-to-needle time 30分
回復の連鎖(chain of recovery)でdoor-to-needle timeを短縮せよ!
患者搬送にはMothership modelとDrip and ship modelがある
3次病院では造影CT、CT perfusionなどからstent retrieval決める
実験段階で音響血栓溶解、磁力促進血栓溶解、硫酸Mgの病院前使用など
1. 脳MCA近位血栓は血栓溶解よりstent retrievalが圧倒的効果!!
今まで当、西伊豆健育会病院では脳梗塞患者は発症誤4.5時間を過ぎていれば、
「もうtPAの適応がないから仕方がないね」と当院に入院させてアスピリンで経過を見ておりました。
ところがこれが許されなくなったのです。
MCA近位血栓なら6時間以内stent retrievalが有効だからです。
なお、オザグレルナトリウム(商品名カタクロット、キサンボン)やエダラボン(同ラジカット)は日本国内だけで使用されている薬剤です。このLancet総説では「1,000種以上の神経保護薬とされる薬剤は実験から実用には至らなかった」(1000 putative neuroprotective compounds have not been translated from the laboratory to humans.)の1行で片付けられています。
この数年、脳梗塞治療で大変大きなブレークスルー(breakthrough)がありました。
従来tPAによるMCA近位血栓の再開通率は高くありませんでした。
しかし2015〜16年、なんと6つの血管内治療(stent retrieval)のトライアルが圧倒的効果(overwhelming efficacy!)を示したのです。
血管内治療とはstent retrievalといってカテーテルを血栓に通しワイヤの網を広げて血栓を魚のように絡め取るものです。
当、西伊豆健育会病院に来る患者さんは漁師さんも多いですが、80歳過ぎても現役で網や釣りで魚を捕らえており毎日実に楽しそうです。趣味と仕事が一致しておりうらやましい人生です。海女さんも80歳過ぎて現役の方がいます。変形性膝関節症があっても海の中では無重力でどうってことはないので、かえって自由に動けるのです。アワビ1つで数千円もしますから海女さんは高給取りです。
なお血栓吸引(contact aspiration)はstent retrievalに勝るものではありませんが、安上がりなので現在ランダム化比較試験(RCT)が進行中(COMPASS trial)です。
脳梗塞治療結果は次の通りです。
・脳梗塞発症後4.5時間以内のtPAはオッズ比(OR)1.37で有効
・脳梗塞でtPA+stent retrievalはOR 2.49で有効!!!
・頸動脈内膜切除術は相対リスク比(RR)0.53〜0.77で有効
2.脳梗塞患者を症状からNIHSSで評価、6点以上は全例血栓溶解考慮
脳梗塞患者の25%が血栓溶解適応であり10〜12%が血管内治療適応です。
脳梗塞患者の症状を下記NIHSSでカウントして6点以上はほぼ全例、血栓溶解考慮です。
NIHSSは11機能42点(integer、整数)のスコアで次のようにスコア化します。
0〜5点:軽症(mild)
6〜15点: 中等症(moderate)
15点〜:重症(severe)
【NIHSS : National Institutes of Health Stroke Scale】
なお血栓溶解の禁忌は次の通りです。
・発症後4.5時間を超える場合
・非外傷性頭蓋内出血の既往
・胸部大動脈解離が強く疑われる
・CTやMRIで広範な早期虚血性変化の存在
3.血栓溶解はアルテプラーゼ(tPA)を4.5時間以内に。tenecteplaseはより有効かも
アルテプラーゼの対象は、全ての虚血性脳血管障害〔アテローム血栓性梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症、その他の原因確定・未確定の脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)を含む〕です。
血栓溶解の対象にラクナ梗塞も含まれていますから、1次病院で単純CTにより出血が確認できないからといってさらにMRIでラクナ梗塞などを確認することの意味がありません。時間の無駄です。
過去には脳梗塞にウロキナーゼ、streptokinaseが使用されましたが効果がないどころか脳出血が増え結局使われなくなりました。小生が研修医のころはよく使っていましたしシチコリン(商品名ニコリン)なんてのも点滴していました。オーベンに「これって効くんですか?」と聞いたら「さあー?」という返事でした。
一方、アルテプラーゼは脳梗塞に有効であることが確認され商業化されました。
NINDS tPA stroke trialではアルテプラーゼ0.9mg/kg静注はプラセボに比し3カ月後のアウトカムが良好で当初、発症から3時間以内の使用条件で許可されました。なお国内での用量は0.6mg/kg静注、上限60mgまでです。
ECASSU、ATLANTIS-B trialではアルテプラーゼが発症後6時間以内で投与され、投与が早いほど有効であり、発症後4.5時間でその効果は消失しました。4.5時間以後の投与は脳出血が増加し無効でした。これらのトライアルから投与は発症後4.5時間以内になりました。
しかしIST-3 trialと最近、1万例のシステマチックレビューとメタ解析では「3時間以内投与が望ましいが6時間以内投与も効果あり」としています。IST-3のサブ解析でleukoaraiosisがベースにある患者で血栓溶解はより有効としています。なお日本国内では発症から4.5時間たっていたらアルテプラーゼは禁忌です。
一方、前もって抗血小板薬が投与されているとアルテプラーゼ使用で脳出血リスクが高くなります。アルテプラーゼ投与90分以内のアスピリン静注のトライアルは脳出血が増加し途中で中止されました。ただしアルテプラーゼはMCA近位血管の閉塞では効果が不十分です。
なおtenecteplaseは国内で販売されていませんが、アルテプラーゼに比しフィブリン特異性が高く作用時間が長く再灌流率が高いとのことです(EXTEND-IA TNK trial、NEJM2018; 378: 1573-1582)。今後はアルテプラーゼからtenecteplaseに代わっていくのかもしれません。
4.血管内治療は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間以内、まれに24時間以内
血管内治療(stent retrieval)は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間以内、まれに24時間以内です。
発症2.5時間以内の血管内治療でなんと91%が機能的自立(functional independence)を果たしました(SWIFT-PRIME trial)!!しかし次の1時間で10%低下し、さらに以後1時間に20%ずつ低下していったというのです。時間との勝負なのです。
血管内治療までのスピードが鍵なのです! タクシーで高速道路を走り料金メーターがカシャカシャ上がって、気が気ではない自分を想像してください。
MCA梗塞で治療しないと「1分当たり190万のニューロン」が失われます。
これは「1分の遅延で1.8日の健康生活が失われる」ことなのだそうです。余分な検査を追加して遅延するごとにアウトカムは悪化します。
1次医療機関で、悠長に造影CTだのMRIなど撮っていてはなりません!!
2015年、2016年に6つのトライアル(MR CLEAN、ESCAPE、EXTEND-IA、REVASCAT、SWIFT-PRIME、THRACE)で脳前方血管系の大きな血管の血管内治療(endovascular therapy)、すなわちstent retrievalは圧倒的効果が確認され標準治療となりました。
どのトライアルも18歳以上で発症後12時間以内に行われ標準治療(血栓溶解)に比べ圧倒的効果を示しました。多くの患者は発症後6時間以内にstent retrievalが行われましたが、ESCAPE trialでは5.5〜12時間で行われた患者もあったとのことです。
DAWN trialではえりすぐりの患者(highly selected patient)で6〜24時間以内でも血管内治療が有効だったとしています。患者選択にはCT perfusionまたはMRI perfusionが必要です。
DEFFUSE-3 trialでは患者選択をCT perfusionかMRI perfusionで行い、発症後6〜16時間以内の血管内治療が有効でした。EXTEND、POSITIVE trialでは患者選択にperfusion -weightedかdiffusion weighted imagingを使用して発症後24時間までの患者を調べています。
まとめると「血管内治療は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間以内、まれに24時間以内、早ければ早いほど良い」というところでしょうか。
5.血管内治療はstent retrievalが標準、変法でEmboTrap、吸引も
血管内治療は過去5年、もっぱらstent retrievalが行われてきました。関連リンクの動画のようなものです。カテを血管内に挿入して血栓を貫きワイヤの網を開いて絡め取ります。
ASTER trialでは血栓吸引(contact aspiration)が行われましたが再開通率はstent retrievalを超えませんでした。しかし血栓吸引は安上がりなのでトライアル(COMPASS)が継続されています。
ARISE U trialはEmboTrap deviceの効果を確認しています。これはワイヤでできた網だけど少し形状が異なるものです。You Tubeで見てみましたが普通のstent retrievalと何が違うのかよく分かりませんでした。ウォシュレット(TOTO)とシャワートイレ(INAX)くらいの差でしょうか。
6.MRIのDWI変化と、症状1時間継続は不可逆性梗塞と強く関連
昔は24時間でTIAと脳梗塞を分けましたが、これはもはや時代遅れで時間で両者は区別できません。TIAは脳虚血の一番軽症のものです。
MRIでのDWI(diffusion weighted imaging)変化と症状1時間持続は、不可逆的梗塞と強く関連するそうです。
DWIで変化する領域はpenumbra(可逆的領域)でなくまさに脳梗塞のcore(不可逆的領域)に相当します。
脳梗塞の症状が1時間超えたらヤバいと思えばよさそうです。
7. MCA梗塞はearly CT signでASPECTS計算、6点以上は血栓溶解
では当、西伊豆健育会病院のような小病院で脳梗塞を疑ったときはどうするかというと次のような手順です。
来院したら即座に単純CTを撮り脳出血をまず否定します。症状からNIHSS 6点以上は血栓溶解を考慮します。
MRIは時間の無駄です。MRIのDWIにより脳梗塞発症数分で虚血性変化が分かりますが、撮像に時間がかかり過ぎます。「1分の遅延で1.8日の健康生活が失われる」のです。単純CTでの低濃度領域はDWIとよく関連します(不可逆的なcore)。
症状からMCA梗塞を疑ったら単純CTで early CT signを捜します。次のような所見です。
【Early CT sign】
・Hyperdense MCA sign : MCA内の血栓である高吸収構造の確認
・レンズ核の輪郭不鮮明化
・皮質・白質境界の不鮮明化
・島皮質の不鮮明化(insular ribbon sign)
・脳溝の消失
・脳実質の低信号化
MCAの梗塞面積の評価には下記のASPECTSのスコアを使います。CTの2つのスライスからMCAの10領域で梗塞域を10から引き算します。初期虚血性変化(early ischemic change)がどこにもなければ10点、全領域にあれば0点です。
このLancet総説にはスコア点数のはっきりした線引きは書かれていませんでした。調べてみるとこのスコア7点以下は3カ月後の機能予後不良です。ASPECTS 6点か7点以上で血栓溶解の適応とするようです。
【ASPECTS:Alberta Stroke Program Early CT Score、MD-Calc】
関連リンク6のASPECTSの絵でinsular ribbonの緑印が抜けていますが、シルビウス裂の奥の島皮質表面のことです。リボンはちょうちょうの形のことでなく帯のことです。Insular ribbon signは島皮質の皮質・白質境界の不鮮明化のことをいいます。
MCAのM1近位で閉塞すると穿通枝のレンズ核線条体動脈(LSA)がやられますから内包や放線冠が障害され強い半身麻痺が起こります。もしM2での閉塞ならLSAは障害されませんから半身麻痺は軽度です。
ですから「単純CTで基底核の変化がある場合はM1閉塞の可能性が高い」と思えばよいのかなと思いました。M1閉塞ならstent retrieval適応です。
なお基底核の中で尾状核は前大脳動脈(ACA)から出るHeubner(ホイブナー)反回動脈支配(A.comの手前で分枝)です。また視床は後大脳動脈(PCA)支配です。
8.3次医療機関に予告・搬送、造影CT、CT perfusion準備、door-to-needle time 30分
脳MCA近位血栓の有無は造影CTを撮らないと分かりません。MCA近位血栓は血栓溶解療法の再開通率が低く、血管内治療の方が成功率は高いのです。
この総説では、単純CTと造影CTの同時撮影を勧めていますが、当院のような小病院で造影CTは行うべきではないと思いました。というのは、脳外科医は造影CTからわれわれよりずっと多くの情報を得ています。すなわち、aortic archの蛇行、Willis動脈輪の状態、くも膜の側副血行、血栓の場所・サイズ・性状まで把握するというのです。側副血行の程度は健側と比較すれば分かります。というわけで、当院で「なんちゃって造影CT」は撮るべきでないと思いました。
だいたい小生、脳造影CTにaortic archまで含めるなんて考えてもみませんでした。
造影CTは撮らず症状からNIHSS 6点以上(血栓溶解適応)、単純CTでASPECTS 6点以上(血栓溶解適応)なら一刻も早くとっとと3次医療機関へ転送を行うのです。
3次医療機関に電話し造影CT、CT perfusionの準備をしてもらいます。3次病院到着から血管内治療開始までの時間(door-to-needle time)目標は30分以内です。
2011年、ヘルシンキ大学病院ではdoor-to-needle timeの中央値がなんと20分だったというのです。中央値20分ということは10分台も多いということです。努力次第で20分に短縮できるのです。米国の循環器センター1位のクリーブランドクリニックでは、 急性冠疾患に対しPCIは2015年に1万1,601例行いましたが、来院からPCIまでのdoor to balloon time は58分でした。
9.回復の連鎖(chain of recovery)でdoor-to-needle timeを短縮せよ!
ACLSの「救命の連鎖、chain of survival」と同様、脳梗塞のdoor-to-needle timeを短縮するため「回復の連鎖、chain of recovery」が必要だというのです。つまり消防署連絡→パラメディック→病院への継ぎ目のない(seamless)リレーが必要です。これには前もって脳梗塞患者搬送を予告しない限り時間短縮はできません。
10.患者搬送にはMothership modelとDrip and ship modelがある
血管内治療は第3次医療機関でしかできませんが血栓溶解は小病院でも可能です。この総説によると、患者搬送には次の2つの方法があるというのです。
@ Mothership model(母船モデル)
これは脳梗塞患者を一次脳卒中センターは飛ばして直接、3次医療機関に送り、そこで血栓溶解と血管内治療を行う方法です。
A Drip and ship model (血栓溶解しつつ搬送)
まず一次脳卒中センターへ送り血栓溶解を行いつつ3次医療機関へ送るというものです。
可能ならtelemedicine (画像相談)ができれば理想的です。
現在mothership modelとdrip and ship modelの2つを比較したトライアルが進行中だそうです。
なお米国では最近、Mobile stroke unitsといって、なんとCTと簡易検査ができる救急車があり画像診断と血栓溶解が車内で可能というのです。現在、mobile stroke unitを使用した場合と、病院へ直接搬送した場合の比較トライアルが行われています。医学の進歩は誠に日進月歩であるなあとつくづく感心しました。
11.3次病院では造影CT、CT perfusionなど行い血管内治療決める
3次病院でどのような検査をやるのかというと、以下のような検査があります。
【造影CT(CTA)】
単純CTと併せて撮影し近位血管閉塞が分かります。これからaortic archの蛇行、Willis動脈輪、くも膜の側副血行、血栓の場所・サイズ・性状を把握します。
【Multiphase CT angiography】
造影剤を注入して3つのphaseすなわちpeak arterial、peak venous、late venousを撮ることにより時間分解的評価(time-resolved assessment)が可能となります。CTAで患側と健側のくも膜血管を比較することにより脳の虚血域が分かりますし、multiphaseで血管充盈の遅延も分かります。
【CT perfusion(CT灌流画像)】
造影剤を急速静注しながらCT撮像し脳血流を定量的評価します。CT perfusionはヨード剤を使うため脳血流関門を通過せず毛細血管床の灌流を評価できます。一方、PETなどの核医学検査は関門を通過し脳実質に入ります。
CT perfusionで分かるのは以下のような項目です。
・脳血流量(CBF; cerebral blood flow)
・脳血液量(CBV; cerebral blood volume)
・平均通過時間(MTT; mean transit time)
・ピーク到達時間(TTP; time to peak)
CBV低下領域は最終梗塞巣、その周囲のCBF低下領域は可逆性領域とされますがCBFが正常の30%未満は不可逆的とみられます。
CT perfusionはCBFやその遅延が分かり、また脳梗塞とmimicsとの鑑別ができます。例えば脳梗塞では血液灌流が減少しますが、てんかん発作ではその50%で血流が増加するのだそうです。
また造影CTは大きな血管しか分かりませんがCT perfusionは毛細血管、細静脈(venule)まで分かります。これにより定量的に不可逆的損傷部位(core)と回復可能部位(ischemic penumbra)の領域が分かるのです。また単に血流が減少しているだけで機能正常な部位(benign oligaemia)も分かります。
【MRIのDWI】
これにより脳梗塞発症数分で虚血性変化が分かりますが撮像に時間がかかり過ぎます。単純CTでの低濃度領域はDWIとよく関連し不可逆的なischemic coreです。MRIは特に小梗塞、多発梗塞の発見に有用です。また特に脳の後方循環系梗塞はCTだと頭蓋骨のアーチファクトで分かりにくくMRIの方が分かりやすいのです。
【DWIとFLAIR(fluid-attenuated inversion recovery)のミスマッチ】
DWIとFLAIRのミスマッチから血栓溶解の患者選択を行うことができます。DWIで描出される領域は脳梗塞のcore (不可逆的領域)だからです。なおFLAIRは水の信号をなくし組織のT2の違いを際立たせた撮像です。脳脊髄液からの信号がないため脳表や脳室周囲のT2の延長する病変の検出が容易となります。T1とT2の影響を強く受けた画像です。
【Time of flight MR angiography(TOF)】
造影剤なしで脳動脈が分かります。
【Susceptibility-weighted imaging(SWI)】
組織の鉄による磁化率アーチファクトを利用して微細な出血が分かりT2*よりも鋭敏です。高い感度で脳内出血、単純CTで分からぬようなmicrobleedsが分かりamyloid angiopathyの存在を疑うことができ、血栓溶解後の脳内出血が高いことが予測できます。
【Contrast-enhanced dynamic MR angiography】
これは時間分解性評価(time-resolved assessment)が可能です。
【MR perfusion imaging 】
これはガドリニウムを使用してCT perfusionと同様の画像を得ます。
12. 実験段階で音響血栓溶解、磁力促進血栓溶解、硫酸Mgの病院前使用など
新たな治療として音響血栓溶解sonothrombolysisや、なんとiron nanoparticlesの磁力促進血栓溶解(magnetically enhanced thrombolysis)の研究が行われています。また血管内治療の前にpeptide NA-1(別名Tat-NR2B9c)の使用が評価中です(ESCAPE-NA1 trial)。
先に述べたように1,000種以上の神経保護薬は実験から実用に至りませんでした。(1000 putative neuroprotective compounds have not been translatedfrom the laboratory to humans.)。硫酸マグネシウム(Mg)の病院前使用は安全であり血管内治療でischaemic penumbraが救済できるかのトライアルが行われています。
なお高血糖、高血圧、低血圧、高体温はいずれも予後不良因子です。
「脳卒中患者来院したら即座に単純CT、脳出血否定。MRIで時間無駄にするな!
症状からNIHSS 6点以上は全例 (ラクナ梗塞も)4.5時間以内血栓溶解考慮
Early CT signからMCA梗塞疑ったらASPECTS 6点以上は4.5時間以内血栓溶解、ASPECTS 低点数は血栓溶解で脳出血リスク高い
造影CT、CT perfusion行いMCA近位血栓はstent retrieval効果大なので6時間以内開始。Door-to-balloon time 目標30分!」
Lancet(2018; 392: 1247-1256)「脳梗塞」総説の最重要点12点の怒濤の反復です。
脳MCA近位血栓は血栓溶解よりstent retrievalが圧倒的効果!!
脳梗塞患者を症状からNIHSSで評価、6点(中等症)以上は全例血栓溶解考慮
血栓溶解はアルテプラーゼ(tPA)を4.5時間以内に。tenecteplaseはより有効かも
血管内治療は可能なら6時間以内、どんなに遅れても12時間、まれに24時間
血管内治療はstent retrievalが標準、変法でEmboTrap、吸引も
MRIのDWI変化と、症状1時間継続は不可逆性梗塞と強く関連
MCA梗塞はearly CT signでASPECTS計算、6点以上は血栓溶解
3次病院に予告・搬送、造影CT、CT perfusion準備、door-to-needle time 30分
回復の連鎖(chain of recovery)でdoor-to-needle timeを短縮せよ!
患者搬送にはMothership modelとDrip and ship modelがある
3次病院では造影CT、CT perfusionなどからstent retrieval決める
実験段階で音響血栓溶解、磁力促進血栓溶解、硫酸Mgの病院前使用など
2019年02月04日
食事指導にも変化が!
最近、食事指導にも変化が!
調理できる人が減ってきているので、コンビニ、お惣菜コーナーを利用する人に具体的に指導しています
5大栄養素という言葉をご存知でしょうか?
ひとも動物なので、生きていくために、
動力源として炭水化物(糖質)、脂質を、
自分のからだを作り直す(新陳代謝)ためや酵素、ホルモンを作るために、たんぱく質や脂質、ミネラル(微量元素;鉄、銅、亜鉛、マグネシウムなどの金属)やビタミンを口から摂らないといけません。
食物繊維は野菜(葉っぱ、根っこ、豆、芋)、海藻、きのこや果物から多く摂取できます。
糖質、ビタミン、ミネラルが多いだけではなく、
食物繊維は余分な脂を吸着してくれる、
腸内細菌の栄養源になり、腸内細菌がビタミンB2、B6、B12、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、ビオチンなどを作り、ひとに供給してくれます。
また整腸作用があり、便秘を予防してくれます。
家庭で、自炊できるひとが減ってきている現代にとって、スーパーやコンビニのお惣菜コーナーを上手に利用した栄養指導が必要な時代になっています。
管理栄養士さんと相談しながら、また調理することが好きで、自分の体験を通して、患者さんに簡単に食物繊維やビタミン、ミネラルが摂れる、このスライドのような指導を心がています。
調理できる人が減ってきているので、コンビニ、お惣菜コーナーを利用する人に具体的に指導しています
5大栄養素という言葉をご存知でしょうか?
ひとも動物なので、生きていくために、
動力源として炭水化物(糖質)、脂質を、
自分のからだを作り直す(新陳代謝)ためや酵素、ホルモンを作るために、たんぱく質や脂質、ミネラル(微量元素;鉄、銅、亜鉛、マグネシウムなどの金属)やビタミンを口から摂らないといけません。
食物繊維は野菜(葉っぱ、根っこ、豆、芋)、海藻、きのこや果物から多く摂取できます。
糖質、ビタミン、ミネラルが多いだけではなく、
食物繊維は余分な脂を吸着してくれる、
腸内細菌の栄養源になり、腸内細菌がビタミンB2、B6、B12、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、ビオチンなどを作り、ひとに供給してくれます。
また整腸作用があり、便秘を予防してくれます。
家庭で、自炊できるひとが減ってきている現代にとって、スーパーやコンビニのお惣菜コーナーを上手に利用した栄養指導が必要な時代になっています。
管理栄養士さんと相談しながら、また調理することが好きで、自分の体験を通して、患者さんに簡単に食物繊維やビタミン、ミネラルが摂れる、このスライドのような指導を心がています。
2019年02月03日
脳の老化は足から!さあ、スキマ時間でロコトレを
脳の老化は足から!さあ、スキマ時間でロコトレを
『大腿骨頚部骨折』をご存知でしょうか?
80歳前後の方が、転倒、横倒しに倒れた場合、大腿骨頚部骨折となることが多い。
太ももの骨は股のつけ根で、45°内側に頚部という部分につながり骨頭と呼ばれる凸の部分が、骨盤の臼蓋と呼ばれる凹の部分にはまって股関節を作っています。
この頚部に無理がかかって折れてしまい、起立歩行するために、また、寝ていてからだをひねるだけで激痛がはしるので、手術が必要になります。
2足歩行ができなくなると、ヒトは急激に寿命に近づきます。
片方の大腿骨頚部骨折になると、約50%の人が、2年以内にもう片方の大腿骨頚部骨折をおこすことがわかっています。
家で簡単にできるロコトレは、スキマ時間で、できる運動です!
片足立ちは左右1分間ずつ、1日3回、
スクワットはゆっくり5回、1日3回、
何かにつかまって、運動してください。
脳の老化も予防できますので、できるだけ毎日運動してください!
『大腿骨頚部骨折』をご存知でしょうか?
80歳前後の方が、転倒、横倒しに倒れた場合、大腿骨頚部骨折となることが多い。
太ももの骨は股のつけ根で、45°内側に頚部という部分につながり骨頭と呼ばれる凸の部分が、骨盤の臼蓋と呼ばれる凹の部分にはまって股関節を作っています。
この頚部に無理がかかって折れてしまい、起立歩行するために、また、寝ていてからだをひねるだけで激痛がはしるので、手術が必要になります。
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片方の大腿骨頚部骨折になると、約50%の人が、2年以内にもう片方の大腿骨頚部骨折をおこすことがわかっています。
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片足立ちは左右1分間ずつ、1日3回、
スクワットはゆっくり5回、1日3回、
何かにつかまって、運動してください。
脳の老化も予防できますので、できるだけ毎日運動してください!