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2019年10月20日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <60 死因>
死因
俺は、風羽田がボーイ時代に通信教育で簿記2級を取っていることに好感を持った。夜の仕事をしながら通信教育を受けるのは大変だろうと普通に想像がついた。恵美の婿にいいんじゃないかと思った。ただし、少なくとも3年は様子を見なければならない、とも思った。義父が「真、ペアブロッサムに入れんかな?意外に合うんじゃないか?」
「はい、すぐに施設長に言ってみましょう。面倒見のいい人ですから裕也君のためになると思いますよ。裕也君、いいんだな。最初は厳しいよ。介護職は資格なしでできないが補助的な立場でも交代勤務になる。それに給与も年齢不相応なものになる。そこが我慢できるかどうかだ。知人とはいうが親戚とは言わない。特別扱いなしだ。」というと義父が「世間は厳しいぞ。浜野専務はまだ優しい方だ。実績を認めてもらえるように頑張れるか?」と最後は親戚の叔父さんになっていた。
義母が「浜野専務はね、強面だけど優しいの。きちんと働けば絶対認めてくれる。」といった。どうもこの人は俺をちょっと舐めてる。家の中の俺の姿を知られているからかと思った。
「裕也君、ご家族には何も言うな。ご家族から闇金にしれたらまずい。」とくぎを刺した。
「闇金に恵美の存在は知られてるか?」
「知られてないと思います。」
「そうか。中野の部屋の契約は誰の名前だ?」
「恵美さんの名前です。」
「わかった、すぐ解約する。恵美はしばらく外出させない。わかったね。呼び出し禁止だ。」
一通りの話が終わってペアブロッサムの名前の話になった。「梨の花、梨花よ。おばあちゃんの名前。おじいちゃん、ここに二人で入居しようとしてたの。それで恋女房の名前を付けたのよ。」と義母が言った。
「へえ。じゃ梨央ならペアセンターだ。」というと義父が「君もなんか施設を作るのか?」といった。恥ずかしくなって赤面してしまった。
お婆ちゃんも本当におじいちゃんが好きだったみたいで、いっつも二人でなんかくすくす笑ってたわよね。お婆ちゃん、あれでおじいちゃんのこと可愛くて仕方なかったのよ。おじいちゃんってかわいい人だったわよね。」
「会社じゃ怖かったらしい。それが婆さんにかかると可愛くなるんだ。不思議なもんだよ。なにしろ、婆さんが亡くなったらさっさと自分も逝ってしまうんだからな。」と義父が笑った。
「お爺さんなんで亡くなられたんですか?」と聞くと義父も義母も一瞬とまどったような顔をした。「ああ、卒中だ。婆さんの49日が終わった翌日に卒中で亡くなった。」と答えた。
俺はおじいさんがおばあさんの後を追って自殺したのではないかと思った。それでも、義父夫婦は、それを不幸だとは思っていないようだった。俺は自分の憶測に奇妙な落ち着きを感じた。甘くて優しい気持ちになった。
夕食になると梨央も真也を連れてやってきた。義父も義母も梨央の顔色を見て安心したようだった。
続く
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俺は、風羽田がボーイ時代に通信教育で簿記2級を取っていることに好感を持った。夜の仕事をしながら通信教育を受けるのは大変だろうと普通に想像がついた。恵美の婿にいいんじゃないかと思った。ただし、少なくとも3年は様子を見なければならない、とも思った。義父が「真、ペアブロッサムに入れんかな?意外に合うんじゃないか?」
「はい、すぐに施設長に言ってみましょう。面倒見のいい人ですから裕也君のためになると思いますよ。裕也君、いいんだな。最初は厳しいよ。介護職は資格なしでできないが補助的な立場でも交代勤務になる。それに給与も年齢不相応なものになる。そこが我慢できるかどうかだ。知人とはいうが親戚とは言わない。特別扱いなしだ。」というと義父が「世間は厳しいぞ。浜野専務はまだ優しい方だ。実績を認めてもらえるように頑張れるか?」と最後は親戚の叔父さんになっていた。
義母が「浜野専務はね、強面だけど優しいの。きちんと働けば絶対認めてくれる。」といった。どうもこの人は俺をちょっと舐めてる。家の中の俺の姿を知られているからかと思った。
「裕也君、ご家族には何も言うな。ご家族から闇金にしれたらまずい。」とくぎを刺した。
「闇金に恵美の存在は知られてるか?」
「知られてないと思います。」
「そうか。中野の部屋の契約は誰の名前だ?」
「恵美さんの名前です。」
「わかった、すぐ解約する。恵美はしばらく外出させない。わかったね。呼び出し禁止だ。」
一通りの話が終わってペアブロッサムの名前の話になった。「梨の花、梨花よ。おばあちゃんの名前。おじいちゃん、ここに二人で入居しようとしてたの。それで恋女房の名前を付けたのよ。」と義母が言った。
「へえ。じゃ梨央ならペアセンターだ。」というと義父が「君もなんか施設を作るのか?」といった。恥ずかしくなって赤面してしまった。
お婆ちゃんも本当におじいちゃんが好きだったみたいで、いっつも二人でなんかくすくす笑ってたわよね。お婆ちゃん、あれでおじいちゃんのこと可愛くて仕方なかったのよ。おじいちゃんってかわいい人だったわよね。」
「会社じゃ怖かったらしい。それが婆さんにかかると可愛くなるんだ。不思議なもんだよ。なにしろ、婆さんが亡くなったらさっさと自分も逝ってしまうんだからな。」と義父が笑った。
「お爺さんなんで亡くなられたんですか?」と聞くと義父も義母も一瞬とまどったような顔をした。「ああ、卒中だ。婆さんの49日が終わった翌日に卒中で亡くなった。」と答えた。
俺はおじいさんがおばあさんの後を追って自殺したのではないかと思った。それでも、義父夫婦は、それを不幸だとは思っていないようだった。俺は自分の憶測に奇妙な落ち着きを感じた。甘くて優しい気持ちになった。
夕食になると梨央も真也を連れてやってきた。義父も義母も梨央の顔色を見て安心したようだった。
続く
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