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2019年09月05日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <16 若い店員>
若い店員
朝食をしてから近所の商店街で買い物をした。いつもの魚屋の店員が「奥さ〜ん、いいの入ってるよ〜。」と声をかけた。梨央は満面の笑みでその店員の方へ行った。その店員は梨央と同い年ぐらいの奴だ。魚の品定めがうるさい梨央はこの店の上客だった。
俺はこの店員にいい感情を持っていなかった。梨央が親しげにするのが不満だった。ところがそういう不満を梨央に言うことができなかった。素直に嫉妬心を打ち明けることができなかった。この男の前ではことさら自分の存在が目立つようにふるまった。この店員の前で梨央の荷物を持ったリ、時々は腰に手をかけたりした。
それとなく梨央にスーパーで買い物をしたらどうかと言ってみるが、「あそこは鮮度が違うし安いのよ。」と言ってきなかった。それ以上文句を言うのも大人げなくて我慢していた。実際魚がうまかった。
ある日、三宮で信号待ちをしていると「あれ?奥さん梨央さんですよね。」と声をかけられた。例の魚屋の店員だった。梨央の名前で呼び留められてムッとした。しかも、その店員に「ちょっとお茶どうですか?」と誘われた。なんだこいつと思いながら一緒に喫茶店に入った。
古いコーヒー店だ。「ここええ店でしょ。コーヒーうまくておばはん怖いんですわ。」といった。なるほど店主と思しきいかついおばはんが注文を取りに来た。「あれ、お友達?いつも主人がお世話になってます。ゆっくりしてくださいね。コーヒーホット2つ」と注文もしないのに勝手に注文を取っていってしまった。
「びっくりしはったでしょ。でもちょっと言うといたほうがいいかな?と思ったんで。」とその男は話し出した。「奥さん、ちょっと目立つんですわ。こけしみたいな顔してあのボイ〜ンは反則やわ。そんで近所のアホンダラに目つけられてるんですわ。」といわれてぞっとなった。
それにしても人の女房をつかまえて「こけしみたいでボイ〜ンは失礼だろう。」と思いながら吹き出してしまった。
「眼をつけられってるってどいうことなんだ。」
「わるさされるかもしれんっていうことです。」
「わるさって?」
「痴漢っていうか婦女暴行っていうか」
「なんでそんな奴が普通にそこらに居るんだ?」
「常習ですよ。最近出所したんですわ。親がうちらの近所やから、帰るとこ他にないし。この間うちにあいさつに来た時にうちで奥さん見かけてるんですわ。それから、しょっちゅう来よるから、ちょっと危ないなと思うんですわ。俺が目つけてる女やって感じにしてるから大丈夫やとは思うけど。保証はできんし。うちの嫁さん怖いしね。」といった。
「君が眼をつけてるってどういう意味だ?」
「お宅めんどくさい人やね。俺は昔ちょっとやんちゃやったんですわ。家はその筋です。そやからあいつ俺に頭が上がりませんねん。俺が眼つけてることにしたらあいつら手出されへんからね。」「それは申し訳なかった。ありがとう。」
尻から嫌な感じがぞわっと湧いてきた。「で、どうしたらいいんだ?」と聞くとあっさり「引っ越しが一番確か。」といわれた。「君、なんで家内の名前を知ってるんだ?」と聞くと「お宅、リオリオ言いすぎなんですわ。あんまり人前で嫁さんの名前呼ぶのんよくないですよ。」と注意された。「教えてくれてありがとう。このお礼は絶対します。ちょっと時間をください。」と言って別れた。
急いで家に帰って梨央に買い物は遠くのショッピングセンターまで行くように言った。梨央は話を聞くと車以外では外出をやめるといった。とにかく早く引っ越しをすることにした。
続く
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朝食をしてから近所の商店街で買い物をした。いつもの魚屋の店員が「奥さ〜ん、いいの入ってるよ〜。」と声をかけた。梨央は満面の笑みでその店員の方へ行った。その店員は梨央と同い年ぐらいの奴だ。魚の品定めがうるさい梨央はこの店の上客だった。
俺はこの店員にいい感情を持っていなかった。梨央が親しげにするのが不満だった。ところがそういう不満を梨央に言うことができなかった。素直に嫉妬心を打ち明けることができなかった。この男の前ではことさら自分の存在が目立つようにふるまった。この店員の前で梨央の荷物を持ったリ、時々は腰に手をかけたりした。
それとなく梨央にスーパーで買い物をしたらどうかと言ってみるが、「あそこは鮮度が違うし安いのよ。」と言ってきなかった。それ以上文句を言うのも大人げなくて我慢していた。実際魚がうまかった。
ある日、三宮で信号待ちをしていると「あれ?奥さん梨央さんですよね。」と声をかけられた。例の魚屋の店員だった。梨央の名前で呼び留められてムッとした。しかも、その店員に「ちょっとお茶どうですか?」と誘われた。なんだこいつと思いながら一緒に喫茶店に入った。
古いコーヒー店だ。「ここええ店でしょ。コーヒーうまくておばはん怖いんですわ。」といった。なるほど店主と思しきいかついおばはんが注文を取りに来た。「あれ、お友達?いつも主人がお世話になってます。ゆっくりしてくださいね。コーヒーホット2つ」と注文もしないのに勝手に注文を取っていってしまった。
「びっくりしはったでしょ。でもちょっと言うといたほうがいいかな?と思ったんで。」とその男は話し出した。「奥さん、ちょっと目立つんですわ。こけしみたいな顔してあのボイ〜ンは反則やわ。そんで近所のアホンダラに目つけられてるんですわ。」といわれてぞっとなった。
それにしても人の女房をつかまえて「こけしみたいでボイ〜ンは失礼だろう。」と思いながら吹き出してしまった。
「眼をつけられってるってどいうことなんだ。」
「わるさされるかもしれんっていうことです。」
「わるさって?」
「痴漢っていうか婦女暴行っていうか」
「なんでそんな奴が普通にそこらに居るんだ?」
「常習ですよ。最近出所したんですわ。親がうちらの近所やから、帰るとこ他にないし。この間うちにあいさつに来た時にうちで奥さん見かけてるんですわ。それから、しょっちゅう来よるから、ちょっと危ないなと思うんですわ。俺が目つけてる女やって感じにしてるから大丈夫やとは思うけど。保証はできんし。うちの嫁さん怖いしね。」といった。
「君が眼をつけてるってどういう意味だ?」
「お宅めんどくさい人やね。俺は昔ちょっとやんちゃやったんですわ。家はその筋です。そやからあいつ俺に頭が上がりませんねん。俺が眼つけてることにしたらあいつら手出されへんからね。」「それは申し訳なかった。ありがとう。」
尻から嫌な感じがぞわっと湧いてきた。「で、どうしたらいいんだ?」と聞くとあっさり「引っ越しが一番確か。」といわれた。「君、なんで家内の名前を知ってるんだ?」と聞くと「お宅、リオリオ言いすぎなんですわ。あんまり人前で嫁さんの名前呼ぶのんよくないですよ。」と注意された。「教えてくれてありがとう。このお礼は絶対します。ちょっと時間をください。」と言って別れた。
急いで家に帰って梨央に買い物は遠くのショッピングセンターまで行くように言った。梨央は話を聞くと車以外では外出をやめるといった。とにかく早く引っ越しをすることにした。
続く
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