怖い本をお探しなら
オンライン書店ビーケーワン



東北地方のある温泉宿での話。

大学のときの友達とスキーに行ったときのこと
卒業してから久々にみんなで会うイベントだったので
参加人数11人という大所帯になってしまいました。

このためスキー場近辺ではホテルが予約できず
少し離れた温泉街の旅館に泊まることになりました。

その旅館では大所帯に気をつかってくれたのか
二十畳くらいの宴会場を用意してくれていました。

その宴会場は入口を開けると
スリッパを脱ぐ三畳くらいの細長いスペースがあり
右手に二十畳の部屋、奥に洗面所とトイレがある
という造りでした。

1日目の夜。布団を敷いてもらってから部屋で宴会。
12時ごろみんな床につきました。

深夜の2時ごろ目の覚めた私は、誰もいない温泉に
入ってやろうと布団を這い出しました。

まずトイレにいってからと思い、
奥のトイレまで行きドアを開けようとすると
先客がいたらしく中からガチッと閉められて

「コンコン」

とノックが返ってきました。

一瞬ギクッとしましたが

「他にも起きてた人がおった」

程度に思い、ふと見るとスリッパがなかったので

「この寒いのに裸足でここまで来たんかい」

と、入口のところからスリッパを持ってきて

「スリッパ置いとくよ。あたしゃこれから温泉に入ってくるけん」

と声をかけ、部屋の外のトイレによってから温泉に行き
1人の温泉を堪能したあと、また床に就きました。

開けて2日目。

またもや行った朝湯から戻ってくると

「一体いつまでトイレ入ってんだよ」

と怒っている友達がいます。

「どうしたの？」

「誰かがトイレに入ったまんま出てこない」

ところが人数を数えてみると11人揃ってます。

「誰も入ってないじゃん」

「だってトイレの前にスリッパが置いてある」

行ってみると確かにスリッパが置いてあります。
私が深夜に置いたままの状態で･･･。

「昨日ってか夜中の2時ごろ誰かトイレ入った？」

聞いてみると、
そんな時間にはトイレどころか
起きていた者すらいませんでした。

そのトイレは部屋の奥にあるので私達以外に
使える人はいないはずですが、
確かに私はドアを閉められてノックの音を聞いています。

「じゃぁ、昨日のあれは誰だったんだ？」

と聞きたかったのですが、
その日もこの部屋に1泊することになっていたので
みんな気味悪がると思い聞くに聞けませんでした。

結局トイレの中にいたのは誰だったのでしょう。