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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年05月17日

知らないことだらけ。 「朝鮮大学校物語」 ヤンヨンヒ

東京に実在するこの大学は、

北朝鮮の幹部を養成する機関。

映画「かぞくのくに」、

「スープとイデオロギー」の監督である

著者は、実際に4年通った体験をもとに

物語化している。



文章もうまくストーリーも面白いが、

何より、記されている事実がすごい。

全寮制で基本外泊は禁止。

毎日、総括の時間があり反省をする。

足りない場合は、12年間総括というのが

あり、過去の自分を振り返り自省し、

その是非を教員に判断される。

ジーンズなど西洋かぶれはもってのほか。



圧巻は姉のいる北朝鮮に会いにいく場面。

盗聴は当たり前の中で、二人は涙ながらに

会話をかわす。

姉が妹の手を握りながら言う。

「勉強も恋愛も思いっきりするんやで。

ミヨンは私みたいになったらアカン。

組織や家族のためとかアホなこと言うたら

私が許さへん。後悔せんように生きなさい。

だからもう無理して来なくていい。

時間とお金使うなら他の国へ行きなさい。

どこで暮らそうが、国籍変えようが、

自由にしたらええ。

広い世界で生きなさい!」



主人公のミョンは、やがてアートや演劇に自由を

見出し自立していくのだが、いやー、

やはり、かの国はとんでもないことがよくわかる。

忘れられない場面がある。



姉のアパートのエレベーター。

隅に小さな椅子を置いて座っている中年の女。

左手に「偉大なるキム・イルソン主席のお言葉集」

を持ち、右手で行き先の階のボタンを押す。

ミヨンが挨拶すると、

「母なる祖国へようこそ。私たちは世界に羨む

ものが無いほど幸せに暮らしています」と

誇らしげに笑う。



世界を僕はほとんど知らない、という

ことがこの本を読むとよくわかる。

だから僕はこれからも本を読む。



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