2023年05月17日
読み応えずっしり 「君が異端だった頃」 島田雅彦
作家の自伝的小説に外れなし。
と僕は思っている。
元手がかかっているぶん、
読み応えがあるのだ。
’
島田さんのこの本もそうだった。
孤独な少年期、青春の煩悩、
文豪たちとの交流や女性遍歴などを
赤裸々に描いている。
’
なかでも中上健次との交流は壮絶だ。
中上はあるときから、いじめのように
島田に絡んでいく。
著者は中上のことをこう記す。
’
「文学者は誰しも多かれ少なかれ自己愛の
塊で、肥大化した承認願望を抱えているものだが、
(中略)大抵の人は被害妄想に縮こまっており、
自分教の布教にまでは至らない。
ところが、中上ときたら、創造の神は自分を
贔屓にしていると信じて疑わないし、自分が
メインで過去の文豪は前菜に過ぎないとまで
思いあがることができた」
’
島田を殴ると豪語し、酒場を練り歩く中上。
けれど他のものが同じことを口にすると、
「島田を殴るのはオレで、ほかのやつには
絶対に殴らせない」と叫ぶ。
’
酒場で誰彼となく絡む中上の様子を眺め、
東大教授だった西部邁は、
「小説家は誰もがあんな風にノイローゼなの?」
と島田に尋ねたそうだ。
’
けれど中上が亡くなったとき、著者は
「これでようやくあの男の抑圧から解放されるのだと、
君は考えようとしたが、何一つ恩返しできなかった
負い目と置いてけぼりを食った寂しさのほうが
大きかった。
中上のいない世界はどれだけ虚しく、退屈かを
想像すると、いたたまれなかった」と書く。
’
いやー文学者の屈折、自己顕示欲は凄いね。
これを知っただけでも読む価値十分でした。
ちなみに、第71回読売文学賞小説賞大賞受賞作です。
と僕は思っている。
元手がかかっているぶん、
読み応えがあるのだ。
’
島田さんのこの本もそうだった。
孤独な少年期、青春の煩悩、
文豪たちとの交流や女性遍歴などを
赤裸々に描いている。
’
なかでも中上健次との交流は壮絶だ。
中上はあるときから、いじめのように
島田に絡んでいく。
著者は中上のことをこう記す。
’
「文学者は誰しも多かれ少なかれ自己愛の
塊で、肥大化した承認願望を抱えているものだが、
(中略)大抵の人は被害妄想に縮こまっており、
自分教の布教にまでは至らない。
ところが、中上ときたら、創造の神は自分を
贔屓にしていると信じて疑わないし、自分が
メインで過去の文豪は前菜に過ぎないとまで
思いあがることができた」
’
島田を殴ると豪語し、酒場を練り歩く中上。
けれど他のものが同じことを口にすると、
「島田を殴るのはオレで、ほかのやつには
絶対に殴らせない」と叫ぶ。
’
酒場で誰彼となく絡む中上の様子を眺め、
東大教授だった西部邁は、
「小説家は誰もがあんな風にノイローゼなの?」
と島田に尋ねたそうだ。
’
けれど中上が亡くなったとき、著者は
「これでようやくあの男の抑圧から解放されるのだと、
君は考えようとしたが、何一つ恩返しできなかった
負い目と置いてけぼりを食った寂しさのほうが
大きかった。
中上のいない世界はどれだけ虚しく、退屈かを
想像すると、いたたまれなかった」と書く。
’
いやー文学者の屈折、自己顕示欲は凄いね。
これを知っただけでも読む価値十分でした。
ちなみに、第71回読売文学賞小説賞大賞受賞作です。
君が異端だった頃 (集英社文庫(日本)) [ 島田 雅彦 ] 価格:836円 |
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