2022年08月04日
令和4年度概算要求
令和4年度の概算要求が防衛省から公開されました。
引用元: https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/image/r04.jpg
内容をちらっと見ましたが、マルチドメイン対応、無人機の活用・無人機への対処、ISR能力の強化、持続性・強靭性の強化といったところで、まぁ普通の内容です。
その中で、ちょっと目についたものを挙げていきます。
SM-6高いですねぇ
マイクロドローンの欠点として比較的低出力なHPMでも行動不能になります。意外とドローンがゲームチェンジャーになり得ない要因の一つです。
これは既に話が出ていたMQ-4C トライトンなんでしょう。
これはペルシャ湾派遣で話が出ていたスキャンイーグル艦載版なのか、それともファイア・スカウトなのか、後者ならレンタルにしても安すぎる気もします。
そして一番気になったのがこれ、、
これは以前から公開されていたのですが、携行SAMの発展型を基地防空に使うという話です。これは文書中でも明らかになっているように、超低高度を飛翔する巡航ミサイルが主な目標になります。
引用元: https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/rev_suishin/r02/pdf/03-0008.pdf
この文章を素直に読むと、このミサイルはLOAL(発射後ロックオン)が出来るよと言っているように思えます。一般的にMANPADS(携帯式防空ミサイルシステム)は人間が背負える範囲の重量(発射重量で大体、20kg以下)という制約から、能力が非常に制約されています。そしてそれは旧東側製品において顕著になります。
浅学ながら、自分はLOALが出来るMANPADSを知りません。もし、この誘導弾がLOAL機能を備えるのであれば非常に画期的と言えます。
【LOAL出来るの】
LOALが出来ると何が良いかというと、
@見通し線外射撃が出来る(直接目標を見なくても発射可能)
A同時多目標に対応出来る(事前にロックオンする必要が無いためリアクションタイムが短くて済む)
B射程が延びる(直接目標を見る必要が無いため、最もエネルギー損失が少ない航法で飛翔することが可能になる。弾道飛翔等)
というように対巡航ミサイルには非常に都合が良いことになります。ただ、LOALで撃つためには光ファイバージャイロのような慣性航法に必要な装置を備える必要があります。果たしてそれを小さな筐体におさめられるのか。
【超低高度目標の困難性】
また、LOALで巡航ミサイルを撃つ場合は、ミサイルは高い高度から低高度を飛翔する巡航ミサイルを狙うことになります。つまり、上から下を見下ろす格好になるわけです。これは赤外線誘導ミサイルにとっては非常に難題です。高空のように背景が青空(しかも冷たいので目標とのコントラストがはっきり出る)の時と比べて地上の赤外線のバックグラウンドノイズは半端じゃありません。地上と非常に小さなホットスポットを見分けて相手を狙わなければなりません。これはある意味レーダーのクラッター対策よりも遥かに難題です。
【小さな弾頭と信管】
さらに言うと、相手が対巡航ミサイルの場合、有人機と違って相手を確実にkillしなくてはなりません(有人機なら任務の継続を断念させて引き帰させればよい=mission kill)。MANPADSは上記の制約により弾頭重量が小さくなりがちです。また、近接信管も備えていません(指向性弾頭は備えている)。高い誘導精度をもって相手に直撃し、且つ小さな弾頭で確実にkillしなくてはなりません。
いずれにしても、MANPADSベースで巡航ミサイルを狙うのは大変だと思います。
このミサイルは注視したいと思います。
引用元: https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/image/r04.jpg
内容をちらっと見ましたが、マルチドメイン対応、無人機の活用・無人機への対処、ISR能力の強化、持続性・強靭性の強化といったところで、まぁ普通の内容です。
その中で、ちょっと目についたものを挙げていきます。
標準型ミサイルSM−6の取得(207億円)
航空機や巡航ミサイルによる攻撃からの防護を目的としてイージス艦(「まや」型護衛艦)に搭載する長距離艦対空ミサイルであるSM−6を取得
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
SM-6高いですねぇ
高出力マイクロ波(HPM(※))照射技術の実証(86億円)
(P28参照)
※ HPM:高出力マイクロ波(High Power Microwave)
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
マイクロドローンの欠点として比較的低出力なHPMでも行動不能になります。意外とドローンがゲームチェンジャーになり得ない要因の一つです。
滞空型UAV(※)の試験的運用 (50億円)
海上自衛隊における各種任務への適合性、有人機等との連携要領及び省人化/省力化に寄与する導入のあり方を検証するため試験的運用を実施
※ UAV:無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle)
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
これは既に話が出ていたMQ-4C トライトンなんでしょう。
艦載型UAV(小型)に関する研究(性能試験)(6億円)艦上運用可能なUAVの、海自艦艇に対する艦載適合性及び操作性を確認するため、民間企業が用意した器材を用いて性能試験を実施
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
これはペルシャ湾派遣で話が出ていたスキャンイーグル艦載版なのか、それともファイア・スカウトなのか、後者ならレンタルにしても安すぎる気もします。
そして一番気になったのがこれ、、
基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾の開発(26億円)
同時多目標対処能力を向上し、コスト低減を図った空自の基地防空用地対空誘導弾(改)及び機動展開能力に優れ、低空目標への対処能力の向上を図った陸自の新近距離地対空誘導弾を、ファミリー化により効率的に開発
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
これは以前から公開されていたのですが、携行SAMの発展型を基地防空に使うという話です。これは文書中でも明らかになっているように、超低高度を飛翔する巡航ミサイルが主な目標になります。
引用元: https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/rev_suishin/r02/pdf/03-0008.pdf
本事業を実施することにより、誘導弾が予想命中点に飛しょうする環境下において、複雑背景下から小型・低熱源目標を抽出するための画像処理技術の確立が見込まれる。これらの成果については、試作及び技術試験により検証し、これらの検証結果が得られた場合には、我が国の技術力の強化に資することが見込まれる。これらは自衛隊のニーズに合致した高度な防衛装備品を創製するため重要な成果であり、最終的に政策目標である我が国自身の防衛体制の強化につながるものであることから、本事業に着手することは妥当であると判断する。
引用元: https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/rev_suishin/r02/pdf/03-0008.pdf
この文章を素直に読むと、このミサイルはLOAL(発射後ロックオン)が出来るよと言っているように思えます。一般的にMANPADS(携帯式防空ミサイルシステム)は人間が背負える範囲の重量(発射重量で大体、20kg以下)という制約から、能力が非常に制約されています。そしてそれは旧東側製品において顕著になります。
浅学ながら、自分はLOALが出来るMANPADSを知りません。もし、この誘導弾がLOAL機能を備えるのであれば非常に画期的と言えます。
【LOAL出来るの】
LOALが出来ると何が良いかというと、
@見通し線外射撃が出来る(直接目標を見なくても発射可能)
A同時多目標に対応出来る(事前にロックオンする必要が無いためリアクションタイムが短くて済む)
B射程が延びる(直接目標を見る必要が無いため、最もエネルギー損失が少ない航法で飛翔することが可能になる。弾道飛翔等)
というように対巡航ミサイルには非常に都合が良いことになります。ただ、LOALで撃つためには光ファイバージャイロのような慣性航法に必要な装置を備える必要があります。果たしてそれを小さな筐体におさめられるのか。
【超低高度目標の困難性】
また、LOALで巡航ミサイルを撃つ場合は、ミサイルは高い高度から低高度を飛翔する巡航ミサイルを狙うことになります。つまり、上から下を見下ろす格好になるわけです。これは赤外線誘導ミサイルにとっては非常に難題です。高空のように背景が青空(しかも冷たいので目標とのコントラストがはっきり出る)の時と比べて地上の赤外線のバックグラウンドノイズは半端じゃありません。地上と非常に小さなホットスポットを見分けて相手を狙わなければなりません。これはある意味レーダーのクラッター対策よりも遥かに難題です。
【小さな弾頭と信管】
さらに言うと、相手が対巡航ミサイルの場合、有人機と違って相手を確実にkillしなくてはなりません(有人機なら任務の継続を断念させて引き帰させればよい=mission kill)。MANPADSは上記の制約により弾頭重量が小さくなりがちです。また、近接信管も備えていません(指向性弾頭は備えている)。高い誘導精度をもって相手に直撃し、且つ小さな弾頭で確実にkillしなくてはなりません。
いずれにしても、MANPADSベースで巡航ミサイルを狙うのは大変だと思います。
このミサイルは注視したいと思います。
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深く静かに潜航、、、次の防衛大綱にからむ計画立案があって、、、なのですかね
K新SSMは日経で開発中止の記事でましたが、、継続ですね 螺旋に飛行しながら突入するイラストが印象的です
コメントありがとうございます。"12式地対艦誘導弾・能力向上型の開発"ですが、潜水艦用VLSの件も含めてかなり以前から深く静かに始まっていたのでしょう。全くの別物にも関わらず、12式の名称を引き継いだのも非常に狡猾と言えます(全くの新規新規開発ではなく、発展型という位置づけ)。
あとKの新SSMも実は注目です。様々なタイプが構想され、Kはこれにかなり入れ込んでいた(社運を賭けていた)という話があります。
keenedge様のサイトは"Missiles & Arms"の頃から拝見させていただいています
(ハムスターのASMシリーズのミサイル談義楽しかった 復活していただけると♡)
今年度で気になったのは"12式地対艦誘導弾・能力向上型の開発"でした
これまでの12式から形状が全く変わって、小型JASSM?22式と名付けてもよいような形?
しかも開発中なのに千発調達するのはこれ?
よほど開発中に凄い性能を示して入れ込んだ方々がおられたのかと想像してしまいます