その中には真っ白な子猫がいた。
しかし、その猫はただの猫ではなかった………
▼総評から述べると(ノベルだけに)、「人生にXXは必要なのだろうか?」は間違いなく傑作だ
…ただし、「ある層にとっては」…と頭につくかもしれない。
本作が「面白いけど万人向けじゃないよね」と評価されることは容易に想像できる。
決してハッピーエンドではないし、ホラーを含むグロテスクで、プレイヤーを裏切るシーンも多い
▼…というのもこれ、一昔前に「葉鍵系」と呼ばれたジャンル、いわゆる泣きゲーなんだよね(作者がどういうつもりで作ったは別として、間違いなくカテゴライズされるだろう)。
葉鍵系はちょっとばかし感動を狙いまくってるので「感動を強制している」と人を選ぶわけだが、それでも私はあえて、本作を万人におすすめしたい
…
▼理由は「人生にXXは必要なのだろうか?」の作りこみが群を抜いているというシンプルなものだ
序盤、一山超えたらオープニングムービーが流れる。
今風の、歌って踊るアニメーションだ。
だが楽曲やボーカルはガーネットクロウのような懐メロ…
このミスマッチが実に面白い。リピートするくらい気に入っている
ゲーム画面のような演出が入ったり、
いわゆる「テレビアニメ風」とは一線を画す。
そしてストーリーの核心に触れる伏線がこの時点で張られていたことに、後々気づく
▼次にストーリー構成の上手さ
同じ学校の女子である新田に片思いしている主人公が、ある日、猫を助けるところから始まる
次の日、猫は新田そっくりの女性に変貌していた…
「クピドの悪戯」などにもある王道だが……それらの作品と違うのは、出会いの時点で結末が決まっており、主人公はそこに向かって歩かされているに過ぎないという事実だ
そして泣きゲーお約束の、徐々に崩れていく日常…
終盤、ヒロインである猫や新田の正体、真意が明かされるが、
単なる雑談にまぎれて張られていた細かな伏線や、
真相を知って初めて理解できる新田の奇妙な行動に、プレイヤーは度肝を抜かれる
▼グラフィック演出も実にユニークだ
葉鍵系といえば?という質問に多くの鍵っ子(言葉が古すぎる)は「ヒロインが謎の奇病で死ぬ」と答えるだろうが、本作も例外ではなく、ヒロインは消滅の危機を迎える
しかし演出が実に見事で、全くチープではない。
弱っていくヒロイン…
美少女だった姿が、徐々に○○になっていくからだ。
全く同じ○○○なのに、まるで異なる。
このような演出は、まさに漫画でもアニメでもない、「ゲーム」でしかできない。
裸になった彼女に「私、キタナイ?」と言われるシーンでは、憐憫の気持ちと庇護欲が強烈に湧いた。
本作は主人公とヒロインにネーミングするゲームなのだが、私はこの瞬間、初めて、自分の名前をつけた主人公と一体化した
▼そしてテーマにもなっている「人生」
これについては、本作に於ける「人生」は恋愛……
ではなく、「人との向き合い方」だと解釈した
主人公は新田と親密になるにつれ「人間性が豊かになった」と自称するも、
終盤、あることで仲違いした彼女に「本気で人と向き合ったこと、ある?」と激怒されてしまう
このシーンの虚無感は途轍もなかった
このゲームが(主人公の)人生を描いたなら、
その中で受けた強い感情を(プレイヤーの)私が受けた時点で、
作品として成功といえるのではないか
評価A+
80点
ネタバレを防いだこともあり、
私にしてはレビューでも感想でも感情の吐露でもないような説明を長々書いたが、
優良作品であることはご理解いただけたと思う。
葉鍵系が嫌いな人にも、ぜひプレイしてもらいたい
▼月イチ恒例、「1年前の良作プレイバック」
今月は2021年10月にレビューした良作を振り返ります。
今回のおすすめは……
ソフィのメガネ
BLに該当すると思うのだが、こんなに可愛らしいBLは初めてだね。
男の子同士がキャッキャウフフすることに、これほど嫌味がないとは…
廃墟を舞台にしながらも、優しい雰囲気漂う良作。
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