車いす議員わずか7人 障害者進出、限定的
地方議員
47都道府県議会と20政令市議会 総定数の0.2%
全国47都道府県議会と20政令市議会で、障害を持ち活動する地方議員について毎日新聞が調べたところ、車椅子利用者は7人、視覚障害者は1人と判明した。計67議会の総定数に占める割合は約0.2%にとどまる。障害者の議員数に関しては公的なデータがなく、他に内部障害のある議員などがいることも想定されるが、障害者の議会進出が極めて限定的となっている実態がうかがえる。
都道府県議会(総定数2687)と政令市議会(1183)の各議会事務局や議員に取材し、車椅子を利用する肢体不自由者らのほか、点字資料の提供や手話通訳の配置など議会が一定の対応をしている議員について12月1日現在で集計した。
視覚障害者は新潟市で全盲市議1人、聴覚障害者の議員はゼロ
車椅子の議員は兵庫、福岡両県で各1人、さいたま、静岡、名古屋、神戸、熊本の5市で各1人。このうち、兵庫、福岡両県議と静岡市議は、病気や高齢に伴って任期途中から車椅子を日常的に利用するようになった。視覚障害者は新潟市で全盲の市議1人が活動している。聴覚障害者の議員はいなかった。
これに対し、2017年版障害者白書によると、視覚や聴覚、肢体不自由などの身体障害者は国民の約3.1%。精神、知的を含めると約6.7%が何らかの障害があるとされ、障害者が人口に占める割合に対し、議会での割合は大きく下回っていると言える。
今月閉会した特別国会をみると、衆参両院(総定数707)で車椅子利用者や視覚、聴覚障害者はいないが、参院では川田龍平議員が薬害エイズの被害者として、身体障害に認定されるHIVの感染を公表している。
障害者議員、痛み分かる資質持つ
障害者の議会進出について、どう考えるか。全盲・全ろうの福島智・東京大先端科学技術研究センター教授(障害学、バリアフリー論)に聞いた。【聞き手・武本光政、山田麻未】
日本では、十数人に1人程度が障害者ということになる。この割合を考えると、国会にも地方議会にも障害を持つ議員は極めて少なく、障害者の社会進出の遅れを示す縮図だ。
政治家の資質とは、いかに国民の苦しみを想像できるかだと思う。障害を持っている人が挫折やつらさを経験していることは確かで、そのことは、政治家としてプラスに働くと私は考えている。何らかのハンディを持つ障害者議員は、痛みを抱える人の悔しさや悲しさが分かる蓋然(がいぜん)性が高いのではないか。
日本では高齢化が進み、体の不自由な人も増えている。政治家も高齢者の「当事者」が多いが、高齢になるほどタフでお金や権力があって、弱さに対する想像力が摩耗し、高齢者の立場になるのも難しいように感じる。
ハンディのある議員が活躍できる環境を整えることは、誰もがのびのびと暮らせる社会づくりにつながるのではないか。
福島智(ふくしま・さとし)教授
1962年神戸市生まれ。小学生で全盲となり、高校生の時に特発性難聴で聴覚も失う。母が両手の指の関節を点字の突起に見立てた「指点字」というコミュニケーション方法を考案し、よどみなく会話ができるようになった。
毎日新聞 2017年12月24日