千秋楽の放送を終え帰宅して原稿用紙に向かいましたが、結びの照ノ富士と御嶽海の一番を振り返るとあまりにも腹が立って、「今はやめよう」と決めました。私は照ノ富士を責めるつもりは毛頭もありません。結びの一番も弱い大関に対し全力で立ち向かい、見事な相撲を見せました。尊敬に値する優勝です。
初日の負け方を見て休場を勧めたぐらいです。私は自分の見る目のなさを恥じると同時に、あらためて照ノ富士の横綱としての自覚を称賛するものです。「今回の優勝は今までの優勝よりうれしい」の一言に苦労がしのばれています。この優勝は照ノ富士を一段と強く立派な横綱へ成長させることでしょう。心からおめでとうと申し上げる。
それから、横綱を最後まで追走した佐田の海と隆の勝もよく頑張りました。ご苦労さまでした。大栄翔の殊勲賞も当然です。技能賞は該当者はいなかったようですが、若隆景の土俵際の回り込みの巧みさ、出し投げ、おっつけ、どれも技能賞ものと思っているが、期待が大きかっただけに9勝は物足りなかったのでしょう。しかし、後半戦からの巻き返しは見事なものでした。
今場所は他にも豊昇龍の勝ち越しや霧馬山の10勝、琴ノ若の3大関撃破、宇良の奇想天外な相撲は抜群に面白い。宇良の途中休場は残念だったが、彼だって三賞ものである。それから、若元春も力をつけてきた。体は細いが、堂々たる左四つの相撲はひと昔前の力士をほうふつさせるものがある。ベテラン玉鷲も老いてますます元気いっぱい。9勝は立派の一言。あと3年は保証できる。
こうして振り返ると、今場所は全く不毛の場所ではないのである。若手も育ってきているし、物言いのつく熱戦も多かった。そのせっかくの場所をメチャクチャにしたのは何を隠そう3大関である。この3人はひどかった。「カラスの鳴かぬ日は…」と場所中に私は述べている。8日目までに3人で13敗もしている。優勝争いどころではなかったのである。
貴景勝が千秋楽にやっと勝ち越しを決めて全員負け越しは逃れたといっても、何の名誉にもならない。私はむしろ全員負け越しの記録を達成してほしかったぐらいだが、決して本心ではない。何とか立ち直ってもらいたいが、どうも彼らに反省の色や決意が見えないのが残念である。下手すると今年中に大関はいなくなるかもしれない。むしろ、今のままの大関はいない方がましだ。
昔の人は言っています。「家貧しくして孝子顕る」。かなり若手力士も強くなってきている。必ず、救世主が現れるだろう。千代の富士の出現も北の湖と輪島が末期を迎えようとしたときに突如として頭角を見せ始めている。そのうち、朝乃山も戻ってくるだろう。そもそも、朝乃山の出場停止が長すぎたのだ。
どうもまだ言いたいことが残っている。照ノ富士と御嶽海のつまらん取組を作った審判部を協会が黙認したのは納得がいかない。相撲ファンを甘く見ていると、そのうちそっぽを向かれますよ。まだ言いたいことはたくさんあるが、気力も尽きました。
実は一身上のことなので言えませんでしたが、場所前に実弟と長年の友人を2人同時に亡くしてしまいました。2人とも心臓が原因でした。この仕事が来年ごろには終わるから、ふるさとの旭川でのんびりゴルフでもしようと楽しみにしていたのに、これで予定が狂いました。ショックで今場所は休みも考えましたが、友人たちに家に閉じこもってはいけないと励まされ、何とか頑張れましたが疲れました。
千秋楽の原稿を休み、皆さま方には大変心配をかけ、申し訳ありませんでした。伏しておわびします。また名古屋場所で会えるといいですね。失礼します。(元横綱)
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