2016年05月03日
最近のアメリカの若者の実態。高校卒業すると『独立??』
二十歳前後は5割から6割が実家暮らし
まずは実家暮らし率の推移。要は親=世帯主の子供として実家に居住し、その世帯の構成員として生活している人の割合。18歳から24歳、大よそ成人した直
後において、もっとも古い収録データとなる1960年時点では、男性がすでに過半数の52.4%、女性は1/3強の34.9%が実家暮らしだった。
↑ アメリカ合衆国における実家住まい率(18-24歳、該当年齢人口比)
今データだけでは各世帯の内情まで推し量ることは難しいが、経済的に独立できない人が多分に含まれているであろうことは容易に想像できる。また今件値は
「世帯主の子供」と説明されていることから、いわゆる二世代住宅的な居住スタイルは対象外となるため、未婚であることが前提となる。上下を繰り返しながら
も実家住まい率が上昇していることは、この世代の未婚率が上昇していることをも表している。これは先行記事【アメリカ合衆国の初婚年齢推移などをグラフ化してみる】で示したように、1960年代以降で初婚年齢が上昇していることとも一致する。
直近の18-24歳における実家住まい率は男性で58.2%、女性でも51.8%。男性の方が実家住まい率は上で、1984年に付けた最大値61.7%には及ばないが、この数年は6割近くを行き来している。
また上昇の動向だが、大きな不景気(リセッション)時期に大きく値を上げる傾向があるようにも見えるが、事例がまだ少数のため、裏付けは難しい(景気が悪
化すると失業率の上昇や経済的困窮から一人暮らしが難しくなる、と考えれば道理は通る)。男性で最大値をつけた1984年を見ると、1980年から
1982年にかけて断続的にリセッションが発生しており、これが影響をもたらしたと考えると納得はできる。また直近の2007年から2009年における金
融危機も直近の上昇と連動しているようにも見える。
より年上の25-34歳ではさすがに実家住まい率は大きく減るが、その動向は18-24歳層とあまり変わらない。
↑ アメリカ合衆国における実家住まい率(25-34歳、該当年齢人口比)
直近の2015年では男性18.2%、女性12.1%。男性は2割近く、女性も1割強が、この世代で実家暮らしをしている計算になる。景況感的には
1980年代の不況時と比べて直近の金融危機の景気の悪さはさほど違いは無いように思えるのだが、特に女性の実家住まい率が過去と比べて大きく上昇してい
るのは、単に景気の良しあしだけでなく、結婚観の変化をはじめとした社会生活様式、文化の変化も影響しているのだろう。
大きく増える未結婚カップル住まい
大人の居住様式としてもう一つスポットライトをあてておきたいのが、未結婚の同棲カップルの存在。特に子供を有するカップル(夫婦)の結婚観の変化を垣間見ることができる。
↑ アメリカ合衆国における、18歳未満の子供が住んで居るか否か別・異性同士の未結婚カップル数推移(万組)
↑ (参考)アメリカ合衆国における、異性の者同士による同居人がいる世帯(万件)(-2006年)
2007年に大きく増加しているのは、金融危機ぼっ発による不況感によるもの……ではなく、調査統計方法に変更が生じているため。厳密には2006年まで
と2007年以降に連続性は無いが、それを念頭に入れておけば傾向を推し量るレベルでは問題は無い。さらにいえば2006年までは一部並行する形で、単純
に異性の者同士が同居人として存在する世帯数の推移も計上されているが、これには男女が互いにカップルであることを認識していない(何らかの事情で単に同
居しているのみ。重複集計されている2006年では、大よそ6%強)場合も多分にあるため、今件の話で用いる数値動向と連続性は無い。とはいえ傾向を推測
する手掛かりにはなる。
ともあれ、今件動向から分かる通り、未結婚だが同居しているカップルは増加の一途をたどっているし、そのカップルが子供を持つ事例も増えている。直近
2015年では832万組のカップルが未結婚ながらも同居しており、そのうち326万組はすでに子供を有している計算になる。1996年における286万
組・124万組と比べると3倍近くの差となる。もちろんこの短期間に総人口がそこまで増えているわけではないので、社会様式の変化が生じていることは容易
に想像ができる。
先行記事で言及している通り、日本同様アメリカでも平均初婚年齢は上昇し、結婚に対する価値観の変化が生じている。今件の「若年層における実家住まい率の
上昇」「未結婚ながらも同居している、さらには子供まで有していてもなお結婚しないカップルが増加している」事実もまた、アメリカにおける結婚観が変容を
見せている一端をうかがい知ることができる。
社会観、文化様式が大きく異なるためそのままトレースするのは無理があるが、社会様式の変化を知る上では、アメリカの動向は大いに参考になる。今後も逐次その傾向を追いかけていくことにしよう。
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