いつか君と愛を語ろう

陽子が帰宅するのを待っていたかのように、電話のベルが鳴った。
慌てて受話器を取ると、乾いた、ややぶっきら棒な女性の声が流れてきた。
杉原綾子、陽子が所属しているボランティア団体の先輩だった。

「あの時は、ほんとうに有難うございました」
「何が？」

凌太の高校受験の時のことです」
「何だったった？」


杉原は、裏表がなく思ったことはズバリと意見する。曲がったことが嫌いで、要領よく立ち回ろうとする人へは容赦がない。誠実で実直であるがゆえに、ともすれば融通の利かない面もある。
煙たがる仲間も多いが、陽子は好きだった。


「凌太の高校入学の時、お祝いと一緒にお手紙を頂いたでしょう」
「ああ、そんなこともあったね」

「凌太も私も、あの時の杉原さんの言葉にどれだけ勇気を頂いたことか」
「よけいなこと書いたかなって、ちょっとの間、気にしたこともあったけど」
「とんでもないです」


その時の手紙には、
『人間万事塞翁が馬と言います。きっといつか、あの時の挫折があったからこそ・・・と思える時がきっときます。諦めることなく、今の状況を受け入れ、精一杯頑張ってください。人生はまだまだ、これからです・・・・』と書かれていた。


「あの手紙を頂いて、凌太、吹っ切れたみたいでした。お陰様で、高校が合っていたようで、充実した三年間を過ごすことができました」

「それは良かったね、大学は？」
「ええ、希望してた大学へ行ってます」

「そう、ひと安心だね。じゃあ今は二人だけの生活？」
「ええ、杉原さんは如何ですか？」


その団体では、一応70歳を目安に引退される方が多かった。杉原も誕生日を最後に活動を終えた。その後、息子夫婦と同居することになり神奈川へ引っ越した。


「来週法事があって、そっちに帰るから、良かったら会えないかと思って」
「まあ、嬉しい。何時いらっしゃるんですか？・・・」


To be continued


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【今日の一冊】
『考えすぎて動けない人のための「すぐやる！」技術』　久米信行著

なんだか堂々巡りしている時って、ありませんか？
迷ったら、開いてみて下さい。
きっと霧が晴れます。初心に戻してくれますよ・・・。
目の届くところに置いておいて欲しい本です
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【伝言板】
物まね芸人、コロッケさんの母の教え　『あ・お・い・く・ま・』をご紹介！
あ・・・焦るな
お・・・怒るな
い・・・威張るな
く・・・腐るな
ま・・・負けるな
どう？良く出来ていますよね。壁にでも貼っておこうかな〜。

「美味いッ、凌太、これ、すげー美味いわ」
「そっかー」

「この前の、きのこづくしも美味かったけどコレもいける」
「ありがと、ソテーしただけだけどさ」

「シンプルイズベストですね〜。で、どうやって作るの？」
「豚肉をざっと炒めて、一旦皿に取るだろ。で、薄切りにしたエリンギをさっと炒めたところに、キムチを加えて更に炒める。ある程度火が通ったら、豚肉を戻し入れてざっと混ぜ合わせて終了」

「味付けは？」
「ウェイパァーっていう中華料理の万能スープの素をいれて、塩コショウと仕上げに醤油を垂らすだけ。キムチからも出汁でるからな」

「へ〜、それにこのスープもいい！」
「ああ、それもウェイパァーをベースにして、ちょこっと醤油垂らしてるだけ」

「ふ〜ん、この溶き卵と細切りの葱がいいよな」
「まあな」


凝ったものは作らないが、10分もあれば出来る凌太の料理は評判がいい。
ソテーするだけの料理が殆んどだったが、火の通し加減が上手く、素材の味が活きている。


「そういえば凌太、去年自動車の免許取っただろ」
「ああ」

「あれ、岡山へ合宿行ったんだよな」
「ああそうだけど、何？合宿で取りたい奴でもいるの？」

「バイト先の先輩と話してたら、たまたま免許の話になって。凌太の合宿のこと話したら、紹介してくれないかって頼まれちゃてさ」
「紹介って、合宿先？」

「うん」
「岡山でいいの？」
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「なんか、広島と山口も行ってみたいらしくてさ、丁度いいらしいんだ」
「いいよ、確か紹介者割引みたいなのもあったと思うから、後でな」
「ありがと、助かるわ。いつも親切に教えてくれる人でさ〜」


To be continued


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【今日の一冊】
母の大好きなジェーン・エアです
一度は取り上げておかなくちゃ！
頑固で孤高の魂をもつ二人、ジェーンとロチェスター。
運命的に出会い、激しい恋に落ちる
最近は、こういうタイプの方、少なくなりました。
　
【伝言板】
きょうは、サッカーの試合を父とＴＶ観戦。ＵＰ遅れました。
19:00〜のFIFAワールドカップ　アジア3次予選、日本×ウズベキスタン戦。
21:30〜ポルトガルで行われているアルガルベ杯、なでしこ五輪イヤー初戦のLIVE。
男子は1対０、残念ながら完敗でしたね。女子は辛くも逆転勝ち・・・ガンバレ日本
そうそう、焼き鳥の美味しいお店を開拓しました。また今度いきましょう。

舜は凌太と違い、屈託なく内面をオープンにする。
一見すると対照的にみえる二人だが、本質はかなり似通っていた。
特に、家族に対して屈折した思いを抱えていることが、お互いを惹きあわせたのかもしれない。

「俺んちは、離婚したからさ。さっぱりしたらしいよ。あの人たちも決着がつくまでは、大変だったみたいだしね」
「ああ、だろうな。分かるよ」

「分かる、けど・・・ってことだもんな」
「まぁ」


舜の両親は、彼が高校に入学した年に別居し、最近離婚が成立した。親の不仲を目の当たりにするのは、やりきれない思いがあった。普段はうるさいだけの姉たちだったが、この時ばかりは、それをを分かち合える兄妹がいたことに感謝した。


「お互い大変だけどさ、頑張ってるよな〜」
「なんだよ急に」
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「だって考えてもみろよ、親のイザコザが原因でグレる奴、結構いたことない？」
「まあな」

「だろ？」
「なのに俺たちみたいにグレもせず、そこそこ頑張っちゃってる訳じゃない？」

「ハハ」
「だろ、だろ？」

舜は急におどけて見せた。話題を切り替えるためのパフォーマンスだ。
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「ところで、最近健二と会った？」
案の定、舜は話を変えてきた。
「そう言えば、会ってないな」

「知ってる？アイツの学部内のTOEIC平均」
「具体的には聞いてないけど、かなり高いんだろ？」

「830点以上はあるらしいよ」
「マジで？まぁ〜な、あるかもな」

「全国でも有名な虎の穴の一つだからな」
「ああ確かに」


健二の学部では、授業の殆んどが英語で行われる。学部生の半数以上を、外国人留学生と帰国子女が占めている。当然ながら英語のレベルは半端ではない。


「しかし、大変だろうな〜」
「まあな、でも健二は外資系に進みたがってたから、今のうちに鍛えられていいんじゃない。それにアイツは中学から上がって来てるからベースはあるしな、それほど大変でもないんじゃない」
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「そうだけどさぁ、で、凌太はどうなのよ」
「俺はまだハッキリしてないんだよね。舜はロースクールへ進むんだろ」
「一応、希望してはいるけど、ってとこ」


To be continued


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【今日の一冊】　
『千年紀のベスト100作品を選ぶ』　丸谷才一・三浦雅士・鹿島茂 著
父のお薦めです
１００１年から２０００年までの、千年間における、
世界の芸術作品ベスト１００を選出したものです。
ほぼ納得だそうです(笑)

【伝言板】
もうすぐ父の誕生日ですね。
プレゼントどうする？
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連絡待ってます。

山口へ向かう新幹線の中、美樹は子どもの頃の記憶を手繰り寄せていた。
5年位前だろうか、ふと思い出した情景がある。

物心ついた頃には、妹と弟がいた美樹にとって、親子三人の記憶は殆んどない。
甦った記憶は驚くほど鮮明で、若き日の父と母は活き活きとしていた。
それは、良く晴れた日の宮島での光景だった。
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そこには、碧い海と厳島神社を背に、松の木の木陰に佇む三人の姿がある。
美樹は、当時お気に入りだった、ベージュのフリル付きワンピースを着ていた。髪にはリボンのヘアバンドをつけ、黒のエナメルの靴を履いていた。
ショルダーバックから財布を取り出そうとしている美樹に、背をかがめた父が優しく話しかけている。


「あの軍人さんにあげるの？」
「うん」


人の流れの切れ間から、アコーディオンを弾く傷痍軍人の姿が見える。茣蓙の上には、紳士用の靴箱ぐらいの大きさの募金箱が置かれていた。


「美樹、ちょっと父さんの話をきいてくれるか？」
「うん」
「あの軍人さん達は、戦争で怪我をして、不自由な身体になって大変だろうね。ただ、世の中には、あの人たちと同じように手や足を失いながらも、一生懸命生きている人がいるんだよ」
そう言って父は、残された機能を使い、仕事に従事する人たちの生き方を話し始めた。


「それに、あの人達の様子から見ると、きっと国からの保障費も出てるからね。父さんだったら、人の同情に訴えたりせず、自分の力で生きようとしている人を応援したいと思うよ」
「・・・」

「学校でカレンダーや絵葉書を購入する機会があるからね、その作品を買ってあげると、その人たちの収入になるんだよ。それを待ったらどうかな」
「・・・」
この時、美樹自身が何を感じたのかは思い出せない。


「美樹には、まだ分からないわよ。今は美樹の優しい気持ちに任せればいいんんじゃない？」
母は、微笑みながら父に向かってこう言うと、美樹に優しく語りかけた。
「いいよ、美樹があげたければあげればいいんだからね」


美樹は、いくらかのお金を握りしめ、募金箱に投じた。振り返ると、優しく娘の行方を見守っている二人の姿があった。それが、その記憶の最後である。


中学校で数学の教諭をしていた父は、娘から見ても理性的で穏やかな人柄だった。6，7歳の我が子にさえ、物事を諭して聞かせた。幼い日の思い出の中で、父が声を荒げていた記憶はまったくない。
そのかわり普段は優しい母が、父を激しくを責め立てているシーンが、断片的に残っている。
私達が寝付いてから夫婦喧嘩をしていたのだろう。子ども心に、慌てて床に戻った覚えがある。


これまで、両親の離婚の原因について、問い質したことはない。
父は、三年前に癌で亡くなり、今、母は危篤状況にある。ひょっとしたら真相は、もう分からないままになるかもしれなかった。
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お世話になったあの病院の先生に、感謝の気持ちを！！

ThanksDR（サンクスドクター）にてメッセージ募集中


それにしても、（なぜ知りたいと思わなかったのだろう・・・）父もそのことには触れなかったし、美樹も何故か聞いてはいけないような気がしていた。（なぜ、そう感じてきたんだろう・・・）小さな疑問が美樹の中で膨らみ始めていた。


To be continued


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【今日の一冊】
『悩める人々へ贈る言葉』　加藤諦三著
心の引き出しの中に入れておくと、
いつか役に立つと思います
さらっとお読みください。

【伝言板】
今日は父と買い物に行って来ました。
前から欲しかったお財布ゲット！
帰り道、地下街でhiroくんに会いましたよ。
可愛い彼女と一緒だったよ〜。

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「久しぶり」
「ほんと、お久しぶり！元気そうね」

「桜井さん、ますます綺麗になったわね」
「またまた〜廣瀬さんこそ！アレ、続けてる？」
「美容ローラーのこと？続けてるわよ。でも、今は違うタイプのものを使ってるのよ」

廣瀬由紀も役員仲間だった。

「仕事はどう？この前の懇親会でも、桜井さんのことが話題になって。適当に答えてはおいたけど、最近忙しそうだったから無理してないか心配してたのよ」
「ありがとう、確かにハードだけど、合ってるのかな、お陰様で楽しく仕事させてもらってる」

「そうなんだ。まぁ、その透明感のあるお肌からも分かるけど」
「さすが廣瀬さん、上手い！」

乗せ上手の由紀は、会って間もなく陽子のテンションを引き上げた。女は、幾つになろうと『綺麗だ』と言われるのは嬉しいものだ。そして、褒める時は具体的に。由紀の社交辞令は、そこを心得ているから、言葉に真実味を帯びる。

「ほんとだって、何かやってるでしょ？」
「やってますよ。以前、廣瀬さんが紹介してくれたローラーは続けてるもの。それに、この前、職場の先輩に誘われてエステに行ってみたのよ」
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「ああ、やっぱりね。違うと思った。それで何をしたの」
「お試しのリフトアップコースで、毛穴の掃除からハンドマッサージまでしてもらったわ」

「基本コースね」
「そう、私、敏感肌だから、いきなりハードなのは怖くて」

「今は肌に負担をかけず、高い効果をあげられるものもあるんでしょ？」
「そうらしいわ。いくつか紹介されたから、おいおい試してみようと思ってるの。お肌との相性があるらしいから、まずは自分に合う施術を見つけないとね」

「じゃあ、また結果、教えてね」
「OK、ところで廣瀬さんの新兵器は？」

「ああ、ローラーのバージョンアップ版よ」
「へぇーそんなのあるの」
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「うん、V字型になってるから、顎のラインを整えやすいし、二の腕や足にも使えて便利よ」
「なるほど、それでますます法令線が浅くなったんだ」

「法令線は、プラスアルファのケアをしてるんだ〜」
「えっ、そうなの？何？」
「あのね・・・」
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その日はランチを兼ね、旅行の計画を詰める筈だったが、本題をそっちのけで美容談議に花が咲いた。陽子にとって、仕事とはまったく関係ない友人との時間は貴重だ。子育ての悩みを共有し、気持ちの赴くままに話をする、女子ならではストレス解消法なのだ。


To be continued


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【今日の一冊】
『なぜかモテる男のほめる技術』　アダム徳永著　PHP文庫
より一層、輝いて下さい

【伝言板】
こちらは曇天の空です。
何してるのかな〜。
父が使っているシャンプーを紹介します
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見た目にも、ハリとコシが出たような気がしますよ。
君に合うかどうかは分からないけど、ものは試しですから一度使ってみては？

「ごめんなさいね、忙しいのに呼び出しちゃって。桜井さん、何時まで大丈夫？」
「大丈夫、時間は気にしないで、一応これも仕事のうちということで了解取ってきたから。それより、この前の親睦会はどうだった？」
「相変わらず盛り上がったわよ。最終的には15人の出席があったしね。食事も良かった」


加藤恵美は、かつて凌太が通っていた高校の役員仲間だった。気が利く上に情報通で、会えば何かしら感心させられる。今日は、陽子がお店に着くと同時に食事が運ばれてきた。恵美が先に着いて、オーダーを通してくれていたのだ。


「元気！元気！あっ、じゃない方も・・・河合さん、職場の定期健診で引っかかったらしくて、今度マンモグラフィーを受けに行くって言ってたわ」
「それ、乳がんの疑いってことだよね」
いつも家族を支えてくださる先生方へ

応援メッセージを募集しています

ThanksDR（サンクスドクター）


「そうそう、マンモかなり痛いって話だし、怖いって言ってらした」
「痛いのは仕方ないにしても、不安でしょうね」
「そうそう、そんなこと言ってみえた」


恵美は、相槌に「そう」を重ね「そうそう」と言うのが口癖だった。早口の彼女にとって、それは話の区切りと次の話を切り出すための、間のような役割をしていた。


「ところで姪のことなんだけど」
「ええ」

「28歳って、どうなのかな？」
「そうね、婚活は人それぞれだから、年齢だけで判断するのは難しいけど。姪御さん自身がその気になってらっしゃるなら、一日でも早い方がいいことは間違いないわね」
結婚チャンステスト

「やっぱりそうだよね」


昨日の恵美の話では、姪が婚活を考えているので陽子に頼みたいということだった。ただ、その前に、一度詳しい内容を聞かせて欲しいというのだ。


「それに彼女、今は東京に住んでるけど、希望は、実家がある三重県近郊で相手を見つけたいって言ってるのよ」
「ああ、それはぜんぜん問題ないわよ。三重の支社にも頼んでおくけど、うちの場合、全国展開してるから、他府県の方との出会いも可能よ」

「そうそう、そうなんだよね。実は一応ネットで調べたりしたんだ。ただ実際のところはどうなのかな〜と思って」
「そこだよね、きっと」


『本当に出会えるんですか？』　婚活を始めてみたいと思いつつも、踏み切れない人たちの多くが持つ疑問だ。しかし、こればかりは、『やってみなければ分からない』と答えるしかない。


To be continued


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【今日の一冊】
東野圭吾著　『歪笑小説』
父が最近注文した本です。
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【伝言板】
今日もいい天気ですね〜
約束の、おすすめ本です
いくつかピックアップしてあるので、
明日以降、一冊ずつ紹介していきますね。

「陽子ちょっといい？」

廊下に出た陽子の背後から声がした。

「ええ、何？」

美樹が会社で『陽子』と呼んだことは、一度もない。
公私混同はしない。それが美樹のポリシーでもあり、陽子の希望でもあった。
廊下に出た美樹は、給湯室の方向へ足早に向かっていった。陽子は、ただその後を静かについて行った。美樹は、薄暗い給湯室の奥まで入ると、くるりと振り返り陽子を手招きした。

「母さんが倒れた」
「えっ！」

「今、圭吾からメールが入って」
「えっ、そんな・・・」

「共生病院に運ばれたらしいの」
「それで様子は？」

「詳しいことはまだ分からないけど、脳梗塞らしい」
「で、お願いがあるんだけど」
「ええ」


美樹の母親は、山口県に住んでいた。
彼女も、中学を卒業するまでは山口で育った。しかし、両親の別居を機に、父方の実家がある東京の高校へ進学したのだった。そして妹と弟は、母親のもと山口に残ったのである。


「今日はあがらせてもらうことにしたから、後のことは佐久間さんにお願いしておくけど、もしクレーム等が入った時は陽子にお願いしたいの」
「私は構わないけど、いいの？佐久間さんを差し置いて」

「それは気にしなくても大丈夫。彼女クレーム処理は苦手だし、実は前々から陽子に任せたがっていたのよ」
「そういうことなら・・・」

「じゃお願いね。もし判断に迷うようなことがあれば、いつでもいいから連絡して」
「分かった、それで山口までのチケットは取れたの？」

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「うん、18:05分発の のぞみが取れたから、それで行こうと思う」
「そう、じゃあ、もう時間ないわね」


美樹は、いつも通りテキパキと指示を出し駅へ向かった。
「さすがね。支社長、こういう時も動じない」
最古参のアドバイザー、清水京子だった。
しかし、陽子にだけは分かっていた。
美樹がどれほど複雑な思いを抱え、山口に向かったかを・・・。


To be continued


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【伝言板】
「お帰りなさ〜い」　と言ってみたけど、見てくれてるかな？
今日は、CD・DVD・ゲームのお得サイトをお知らせ〜
掘り出し物が見つかるかも！ただし 夜更かしは、ほどほどにね

明日は、お奨め図書をアップするつもりです

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「お飲物は先になさいますか？」
「ああそうして」


夫の信二と外食するのは久しぶりであった。
凌太がいる頃は、毎週のように食べに出たものだ。当時は、凌太の胃袋に合わせて焼肉が中心だったが、二人になってからはご無沙汰だ。
かわりに、フレンチか和食を楽しむことが多くなった。


「君の方の仕事はどうなの？」
「三年経ったしね。慣れても来たから、何かと楽にはなったかな」

「美樹さんは相変わらずなんだろう？」
「ええ、仕事に夢中。きっとあの仕事が天職なのね、羨ましいほどイキイキしてるもの。とても私と同い年とは思えないわ」

「天職って言えば、君もそうなんじゃないの。随分楽しそうじゃないか」
「そんなことないわよ。確かに今の仕事に就いて、充実してるけど」


日常的に会話が交わされていたら、わざわざ外でする話でもないのだろう。
美樹の仕事が、土日休みではないこともあって、一日中、一緒に過ごす機会もなくなった。
しかも、信二は若い頃から夕食を家で取ることが殆んどなかったため、必然的に話の内容も限られていた。


「それより、あなたの方はその後どうなの？」
「ああ、実はそのことなんだけど」

「ええ」
「今すぐ結論を出さなくてもいいんだけど、まず選択肢としては２つ、きっぱり辞めるか契約社員として残るかということなんだ」

「契約社員っていうのは？」
「とりあえず一度は解雇の形になるけど、年度ごとの契約という形で残れるんだ。当然給料は大幅減だし、ボーナスも期待できない」

「それで、あなたはどうしたいと思ってるの」
「正直、まだ決めかねてる。この歳じゃ再就職も大変だし、他へ移ったとしても、今ほど収入は見込めないだろうしな」

「うん・・・」
「凌太の学費もあるし生活の方、大丈夫か」


陽子は、信二の口から出る夫らしい言葉に驚いていた。さすがの信二も、不安なのだろう。


「学資保険を掛けてたから、学費のことは心配ないわ。彼の生活費と留学費用も、FXの利益分を充てれば何とかなるし、凌太もバイトを始めたようだから」
「そうか、じゃあ頼むな」

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「ええ、それにしても、ここの野菜、相変わらず美味しいわね」
「ああ、ちょっと食べられないよな」
「ほんと」


その店の野菜は、オーナーの両親が丹精込めて育てた、有機野菜を出していた。自然食ブームで、有機野菜を使ったお店は多くなったが、採れたての食材の美味しさは、また格別だった。

To be continued





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【伝言板】
『凜子の部屋』のチョイスはどうでしたか？
yuriちゃんがケーキを頼んでみたらしいけど、美味しかったって。
冷凍の状態で届くから味を損なわずに　↓　そのまま保存もできて便利みたいですよ

「いつもお綺麗だけど、今日の友香さんツヤツヤ、ピカピカしてるわ」
「ありがと」


アドバイザーの林 友香子は５５歳、独身。ショートボブのモダンな髪型が、大人の色香漂う彼女を、より一層引き立てている。いわゆるクールビューティー路線だ。
リッツスキンリバイバルEX


「美しさの秘訣は何？」
「私、休みの日は、メンテと決めてるのよね」

「メンテ？ああ、肌のお手入れのこと？」
「そう、顔も身体もね。午前中はエステに行ってお肌を磨き、午後はマッサージで身体を解すの。だって私たちは、お客様相手の仕事でしょ、手入れするのはプロとして当たり前じゃない？」
ＴＢＣの集中シェイプ


「はぁ、流石ですねぇ。私も行ってみようかな」
「そうよ、桜井さんは色も白いし、手入れしたらもっと透明感が出ると思うわよ。私の行きつけのお店で良かったら、一緒に行かない？」

「ええ、じゃあお願いしようかな」
「確か体験コースがあったと思うけど、ちょっと待ってね調べてみるわ・・・」
そう言って、友香子は携帯を取り出した。


働き始めて実感したことだが、優秀な人ほど仕事が早い。
さらに言えば、仕事のみならず、プライベートで遊びに行くしろ、お付き合いにしろ、スピーディーに計画を立て実行する。
仕事人として、必ず身に付けたい習慣だ。

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To be continued


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【伝言板】
おすすめのサイトを、カテゴリー『凜子の部屋』のなかに入れておきました。
探したいときは、そこを開いてみてね。
必要に応じて、随時、追加、変更して行く予定です。リクエストがあればお知らせください。

今のところ貼り付けただけですが、
レイアウト等、徐々に手直しして行きたいと思っていますよ〜♪
気長に見守ってやって下さいまし（笑）

それから、この前、使わない服やバッグがあるって言ってたので紹介しておきます。
部屋が片付いて、たとえ僅かでもお小遣いになれば、一石二鳥！・・・だよね？
　　　　　　　　　　　　　　↓本・DVDもOKだよ！
あなたの大切なゴルフクラブを高く売るなら「ネットオフ・ゴルフ」

「すげぇ雨だな、凌太どうする？バス使う？」

「きっと混んでるよな、俺は歩いてもいいけど」
「ああ俺も。どうせたいした距離じゃないしな」

「ついでにコンビニ寄ってかないか？」
「ああ、なんか喰うもん欲しいしな」


凌太のマンションは、大学から徒歩7~8分の距離にあった。
午前中は晴れていたのに、午後になると雲行きが怪しくなり、あっと言う間に大粒の雨が落ちてきた。


「そういえば留学先どうなった？舜はヨーロッパ圏を狙ってたんだよな？」
「ああ、姉貴たちもあっちだったし、知り合いもいるらしいし。その分何かと便利だって聞いたからな。凌太はどうすんの?」

「やっぱりアメリカかな。従妹がシアトルにいるから多少は心強いし」
「シアトルって言えば、マリナーズ。マリナーズといえばイチローと大魔神ってか」
「ははっ」





「でもマジ、もし会えたらサインもらって来てくれよ」
「気が早っ」

スカイプオンライン英会話【アイビーエル】


「ところで凌太、母さんに言ったんだろ？あのこと」
「ああ」

「で、なんて？」
「なんも」

「なんも？」
「なんもっていうか、戸惑ってたみたいだったけど、特に反論もせず『分かった』って」

「へえ、凌太の母さんてスゴイな」
「何が？どこがスゴイの？」

「だって凌太の言い分、黙って受け入れたんだろ？」
「いやー、どうかな。受け入れたかどうかはビミョー」

「俺の母さんだったら大変なことになってるわ、つーか反撃されるの分かってるから、最初から言わんけど」
「言い返された方が、いいってこともあるさ」

「まぁな、けど機関銃どころの騒ぎじゃないんだぜ。バズーカ砲で返されてみ、たいがい嫌になるっしょ」
「はは」


凌太が早瀬　舜に出会ったのは、大学受験のために参加した予備校の夏期講座だった。
受験大学別の対策講座であったため、クラスの仲間の多くはイコール、ライバルでもあった。
そうしたなか、凌太と峻は高校も違ったが、お互い初めて話をした時から波長が合い、気づけば何でも話せる間柄になっていた。


To be continued


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【伝言板】
昨日ドラッグストアを見つけたので紹介します。この前の、うがい薬を紹介した時のサイトと、併せて利用すると便利かも　　　　　　　　　　　　　　　↓
世界洋蘭展ブルーリボン賞受賞の生産者が育てた胡蝶蘭


それから君の好きな日本酒、いかが？
賞も取ってるんだって。