2011年09月26日
脚衣と短い上衣の組み合わせ (14世紀半ばから15世紀まで) カラー版世界服飾史 プールポワンとホーズ、ショース
出典
カラー版世界服飾史
株式会社美術出版社
ISBN 4-568-40042-2 C3070
U章 中世
44ページ
14世紀半ばから15世紀まで
脚衣と短い上衣の組み合わせ
14世紀半ばに男の衣服に大きな変化が起きた.11世紀末以来ブリオーであれコットであれ男の衣服の丈は長かったが,1340-50年頃に男の衣服の丈が短くなった.《U-21前出》.長い服と短い服は以降しばらく男の服装に共存するが,現代の男性服に連なる上衣と脚衣の組み合わせがここに誕生したということもできる.女性の長い衣装に対し,上位と脚衣の組み合わせを男性服の特徴とする,以後の歴史に長く見られる構図の始まりである.
この短い衣服は当初コタルディと呼ばれた.「大胆なコット」cote hardieという言い方が短縮したことばである.ただしこの語は女の衣装もさし《U-21前出》,13世紀から15世紀まで男性服にも女性服にも広く用いられたことばである.男のコタルディは15世紀にはプールポワンpourpointと呼ばれ定着するが,このことばは「刺し子にする」poindreという語の派生語だから,鎧の下に着たいわゆるキルティングの服にこれが由来することがわかる.遺品《U-22前出》は本来の様子をとどめた初期のプールポワンで,《U-29》は肩から胸にかけて詰め物をし,腰のあたりで身体に密着した衣服のシルエットをよく伝えている.15世紀にはいっそうの詰め物をされ,丈も極端に短くなり,「体の前でも後でも恥ずべき部分をこれみよがしにする」と聖職者の非難を買うことになる《U-30》.同じ衣服はさらにジャクJaqueと呼ばれることがあるから複雑である.農民に対するあだ名ジャックに由来するから,もともと農民に多く着られた服であるということか.このことばの派生語であるjaquetteは英語でジャケットjacketと綴られ,イングランドでも同じ衣服が流行している.
脚衣のいわばタイツはフランス語でショース,英語でホーズと呼ぶ.脚の形に合わせて裁断したウール仕立てで,エギュイエットという紐でプールポワンに結びつけて着用する.この紐には色などに少なからぬ種類があったようで,種々買い揃えるのは若者の楽しみの一つだったらしい(『結婚十五の歓び』).先の尖った男の靴はプーレーヌといい,1460-70年頃に長さは頂点に達し,馬の毛などの詰め物を鯨の髭で支え60-70pに及んだらしい《U-30》.同じ頃,女性の間では円錐形の高い帽子が流行っている.服飾史ではエナンという呼名で知られているが,もともとこのことばは侮蔑語で,しかも世紀前半に流行った角型帽coiffure a cornesに対して使われた語であった.16世紀のある作家の間違いで,帽子の名称として今日に至っている.
《U-21前出》
『ギョーム・ド・マショー作品集』写本挿絵,[輪舞] 1350年頃
Bibliotheque Nationale de France : Ms.fr.1586 f.151
《U-22前出》
[シャルル・ド・ブロアのコタルディ] 1364年前半
Musee Historique des Tissus, Lyon
《U-29》《U-30》
《U-29》
[シャルル5世に聖書を献じるジャン・ド・ヴォドゥタル] 1371年
Musee Meermanno Westreenianum , Den Haag
《U-30》
[ルノー・ド・モントーバン]挿絵,[婚礼] 1460年頃
Bibliotheque Arsenal, Paris : Ms.Ars.5073 f.117v
注:
タイツ
ホーズhose(英)
ショースchaussures(仏)
増補新装 カラー版世界服飾史 単行本 – 2010/3/24
深井 晃子 (著), 古賀 令子 (著), 石上 美紀 (著), 徳井 淑子 (著), 周防 珠実 (著), & 6 その他
カラー版世界服飾史
株式会社美術出版社
ISBN 4-568-40042-2 C3070
U章 中世
44ページ
14世紀半ばから15世紀まで
脚衣と短い上衣の組み合わせ
14世紀半ばに男の衣服に大きな変化が起きた.11世紀末以来ブリオーであれコットであれ男の衣服の丈は長かったが,1340-50年頃に男の衣服の丈が短くなった.《U-21前出》.長い服と短い服は以降しばらく男の服装に共存するが,現代の男性服に連なる上衣と脚衣の組み合わせがここに誕生したということもできる.女性の長い衣装に対し,上位と脚衣の組み合わせを男性服の特徴とする,以後の歴史に長く見られる構図の始まりである.
この短い衣服は当初コタルディと呼ばれた.「大胆なコット」cote hardieという言い方が短縮したことばである.ただしこの語は女の衣装もさし《U-21前出》,13世紀から15世紀まで男性服にも女性服にも広く用いられたことばである.男のコタルディは15世紀にはプールポワンpourpointと呼ばれ定着するが,このことばは「刺し子にする」poindreという語の派生語だから,鎧の下に着たいわゆるキルティングの服にこれが由来することがわかる.遺品《U-22前出》は本来の様子をとどめた初期のプールポワンで,《U-29》は肩から胸にかけて詰め物をし,腰のあたりで身体に密着した衣服のシルエットをよく伝えている.15世紀にはいっそうの詰め物をされ,丈も極端に短くなり,「体の前でも後でも恥ずべき部分をこれみよがしにする」と聖職者の非難を買うことになる《U-30》.同じ衣服はさらにジャクJaqueと呼ばれることがあるから複雑である.農民に対するあだ名ジャックに由来するから,もともと農民に多く着られた服であるということか.このことばの派生語であるjaquetteは英語でジャケットjacketと綴られ,イングランドでも同じ衣服が流行している.
脚衣のいわばタイツはフランス語でショース,英語でホーズと呼ぶ.脚の形に合わせて裁断したウール仕立てで,エギュイエットという紐でプールポワンに結びつけて着用する.この紐には色などに少なからぬ種類があったようで,種々買い揃えるのは若者の楽しみの一つだったらしい(『結婚十五の歓び』).先の尖った男の靴はプーレーヌといい,1460-70年頃に長さは頂点に達し,馬の毛などの詰め物を鯨の髭で支え60-70pに及んだらしい《U-30》.同じ頃,女性の間では円錐形の高い帽子が流行っている.服飾史ではエナンという呼名で知られているが,もともとこのことばは侮蔑語で,しかも世紀前半に流行った角型帽coiffure a cornesに対して使われた語であった.16世紀のある作家の間違いで,帽子の名称として今日に至っている.
《U-21前出》
『ギョーム・ド・マショー作品集』写本挿絵,[輪舞] 1350年頃
Bibliotheque Nationale de France : Ms.fr.1586 f.151
《U-22前出》
[シャルル・ド・ブロアのコタルディ] 1364年前半
Musee Historique des Tissus, Lyon
《U-29》《U-30》
《U-29》
[シャルル5世に聖書を献じるジャン・ド・ヴォドゥタル] 1371年
Musee Meermanno Westreenianum , Den Haag
《U-30》
[ルノー・ド・モントーバン]挿絵,[婚礼] 1460年頃
Bibliotheque Arsenal, Paris : Ms.Ars.5073 f.117v
注:
タイツ
ホーズhose(英)
ショースchaussures(仏)
増補新装 カラー版世界服飾史 単行本 – 2010/3/24
深井 晃子 (著), 古賀 令子 (著), 石上 美紀 (著), 徳井 淑子 (著), 周防 珠実 (著), & 6 その他
posted by hosiery at 14:57| ストッキングとガーターの起源についての資料