2018年05月21日
世界で広がる「4Dプリント」の研究!
さて、今回は「4Dプリント」についてです。
2013年頃から、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究室などで開発が進められてきた4Dプリント技術。
3Dプリンタを用いて製造した印刷物が、何らかの外部からの刺激に反応し、時間経過で最終的な形へと変化する技術だ。
その4Dプリント技術の研究・開発が近年活発になってきている。
オランダ・デルフトのデルフト工科大学や、米国ペンシルバニア州にあるカーネギーメロン大学が昨年から立て続けに発表しているのが、3Dプリンタを使用して印刷されたフラットな印刷物が、熱の力で最終形態に組み立てられるというもの。
しかも、これらの4Dプリント技術には注目すべき共通点がある。
いったいこの二つの研究成果は、何が特別なのだろうか?
・熱で勝手に最終形態へと折れ曲がっていく印刷物
デルフト工科大学のアミール・ザドプル(Amir Zadpoor)教授率いる研究チームが開発したのは、熱に反応してあらかじめ決められた順番でパーツが折れ曲がり、最終形態へと変化する4Dプリント技術だ。
日本の折り紙にヒントを得たという。
研究チームは、素材の印刷と引き延ばしを同時に行う事で、それぞれのパーツが折れ曲がる時間をプログラミングする事に成功したという。
実験で再現されたのは、チューリップの花。
3Dプリンタで印刷されたフラットな素材がお湯に浸されると、内側の花びらから順番に中心に向けて折れていき、最終的には6枚の花びら全てでチューリップの花を形作る。
カーネギーメロン大学のモーフィング・マター研究室でも、同じく熱に反応してフラットな印刷物が自動的に組み立つ4Dプリント技術「Thermorph」が研究されている。
この技術は、FDM(熱溶解)方式3Dプリンタでは通常は欠陥としてみなされる、印刷物の冷却段階で生じる「反り」を上手く活用したもの。
研究室が開発したソフトウェアを用いると、印刷物の設計段階で自動的にプリント速度やパターンを計算し、最終形態をインプット出来るという。
実験で制作されたのは、バラ、ミニボート、ウサギなど。
動画では、フラットな状態で3Dプリンタから出てきたこれらの印刷物が、お湯に浸されると自然に曲がりだし、最終形態へと変化する様子が映し出されている。
Thermorphで印刷された物体は、お湯だけでなく、太陽光やヒートガンの熱でも反応する。
・手が出せないイメージの4Dプリント技術が身近な存在に
冒頭でも触れたように、これら2大学の研究成果である4Dプリント技術は世界初のものではない。
MITは2013年に、水に反応して形状を変えていく物体を3Dプリンタで印刷する事に成功している。
また、ジョージア工科大学やシンガポール工科デザイン大学、中国の西安交通大学出身の研究者チームでも、熱に反応して形作る4Dプリント技術を開発している。
では、なぜデルフト工科大学とカーネギーメロン大学が開発したこれらの4Dプリント技術は注目に値するのか。
それはどちらの研究でも、使用している素材やプリンタが手の届く範囲のものだからだ。
使用しているのは、通常数十万円で購入可能なデスクトップタイプの3Dプリンタ(デルフト工科大学では「Ultimaker 2 + Extended」、カーネギーメロン大学では「Makerbot Replicator 2X」)と市販のフィラメント。
広い範囲での実用化を前提としているのだ。
実際に、カーネギーメロン大学モーフィング・マター研究室のリーニン・ヤオ(Lining Yao)助教授は「We wanted to see how self-assembly could be made more democratic accessible to many users(セルフアセンブリーの技術が、どれほど多くのユーザーに浸透するか見てみたいと思った)」と、Thermorphの開発のきっかけを語っている。
・様々な分野で実用化が期待できる4Dプリント技術
これら2つの4Dプリント技術には、将来実用化を目指すプロダクトがある。
デルフト工科大学では、同研究チームで以前から研究してきた医療用インプラントの更なる改良を目指している。
腫瘍が出来た骨などの代わりに、折り紙スタイルの4Dプリント技術で作った、多孔性のある補綴(ほてつ)具をインプラントする。
その補綴具に細胞の成長を導くナノパターンを含ませる事で、失った骨の再成長を期待出来るという。
もう1つは、自動組み立て式家具の実用化だ。
同研究チームのメンバーは皆、IKEAの説明書の解読に嫌気が差しており、将来IKEAの家具が全てフラットになり、何もしなくても組み立てが完了する事を夢見ているという。
カーネギーメロン大学でも家具への実用化を検討中。
その他、ボート、人工衛星、緊急時のシェルターなどの製造が出来るよう、技術のスケールアップを目指し研究を進めている。
4Dプリント技術は、ただ立体を作り出す3Dプリント技術に比べ、応用できる範囲が広がるだろう。
家具、人工衛星、シェルターにしても、フラットな状態で製造・輸送・保管が出来る事は大きなメリット。
また、何を作るにも時間がかかる3Dプリンタだが、立体よりもフラットなものを印刷する方が時間の節約にもなるのは明らかだ。
その4Dプリント技術が、今回紹介した研究のように手の届く存在になれば、より多くの企業や個人が導入できるようになり、4Dプリント技術な発展も期待出来るだろう。
今後の、さらなる開発に注目したい。
※将来有望なIT関係は、こちらをご覧ください⇩
2013年頃から、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究室などで開発が進められてきた4Dプリント技術。
3Dプリンタを用いて製造した印刷物が、何らかの外部からの刺激に反応し、時間経過で最終的な形へと変化する技術だ。
その4Dプリント技術の研究・開発が近年活発になってきている。
オランダ・デルフトのデルフト工科大学や、米国ペンシルバニア州にあるカーネギーメロン大学が昨年から立て続けに発表しているのが、3Dプリンタを使用して印刷されたフラットな印刷物が、熱の力で最終形態に組み立てられるというもの。
しかも、これらの4Dプリント技術には注目すべき共通点がある。
いったいこの二つの研究成果は、何が特別なのだろうか?
・熱で勝手に最終形態へと折れ曲がっていく印刷物
デルフト工科大学のアミール・ザドプル(Amir Zadpoor)教授率いる研究チームが開発したのは、熱に反応してあらかじめ決められた順番でパーツが折れ曲がり、最終形態へと変化する4Dプリント技術だ。
日本の折り紙にヒントを得たという。
研究チームは、素材の印刷と引き延ばしを同時に行う事で、それぞれのパーツが折れ曲がる時間をプログラミングする事に成功したという。
実験で再現されたのは、チューリップの花。
3Dプリンタで印刷されたフラットな素材がお湯に浸されると、内側の花びらから順番に中心に向けて折れていき、最終的には6枚の花びら全てでチューリップの花を形作る。
カーネギーメロン大学のモーフィング・マター研究室でも、同じく熱に反応してフラットな印刷物が自動的に組み立つ4Dプリント技術「Thermorph」が研究されている。
この技術は、FDM(熱溶解)方式3Dプリンタでは通常は欠陥としてみなされる、印刷物の冷却段階で生じる「反り」を上手く活用したもの。
研究室が開発したソフトウェアを用いると、印刷物の設計段階で自動的にプリント速度やパターンを計算し、最終形態をインプット出来るという。
実験で制作されたのは、バラ、ミニボート、ウサギなど。
動画では、フラットな状態で3Dプリンタから出てきたこれらの印刷物が、お湯に浸されると自然に曲がりだし、最終形態へと変化する様子が映し出されている。
Thermorphで印刷された物体は、お湯だけでなく、太陽光やヒートガンの熱でも反応する。
・手が出せないイメージの4Dプリント技術が身近な存在に
冒頭でも触れたように、これら2大学の研究成果である4Dプリント技術は世界初のものではない。
MITは2013年に、水に反応して形状を変えていく物体を3Dプリンタで印刷する事に成功している。
また、ジョージア工科大学やシンガポール工科デザイン大学、中国の西安交通大学出身の研究者チームでも、熱に反応して形作る4Dプリント技術を開発している。
では、なぜデルフト工科大学とカーネギーメロン大学が開発したこれらの4Dプリント技術は注目に値するのか。
それはどちらの研究でも、使用している素材やプリンタが手の届く範囲のものだからだ。
使用しているのは、通常数十万円で購入可能なデスクトップタイプの3Dプリンタ(デルフト工科大学では「Ultimaker 2 + Extended」、カーネギーメロン大学では「Makerbot Replicator 2X」)と市販のフィラメント。
広い範囲での実用化を前提としているのだ。
実際に、カーネギーメロン大学モーフィング・マター研究室のリーニン・ヤオ(Lining Yao)助教授は「We wanted to see how self-assembly could be made more democratic accessible to many users(セルフアセンブリーの技術が、どれほど多くのユーザーに浸透するか見てみたいと思った)」と、Thermorphの開発のきっかけを語っている。
・様々な分野で実用化が期待できる4Dプリント技術
これら2つの4Dプリント技術には、将来実用化を目指すプロダクトがある。
デルフト工科大学では、同研究チームで以前から研究してきた医療用インプラントの更なる改良を目指している。
腫瘍が出来た骨などの代わりに、折り紙スタイルの4Dプリント技術で作った、多孔性のある補綴(ほてつ)具をインプラントする。
その補綴具に細胞の成長を導くナノパターンを含ませる事で、失った骨の再成長を期待出来るという。
もう1つは、自動組み立て式家具の実用化だ。
同研究チームのメンバーは皆、IKEAの説明書の解読に嫌気が差しており、将来IKEAの家具が全てフラットになり、何もしなくても組み立てが完了する事を夢見ているという。
カーネギーメロン大学でも家具への実用化を検討中。
その他、ボート、人工衛星、緊急時のシェルターなどの製造が出来るよう、技術のスケールアップを目指し研究を進めている。
4Dプリント技術は、ただ立体を作り出す3Dプリント技術に比べ、応用できる範囲が広がるだろう。
家具、人工衛星、シェルターにしても、フラットな状態で製造・輸送・保管が出来る事は大きなメリット。
また、何を作るにも時間がかかる3Dプリンタだが、立体よりもフラットなものを印刷する方が時間の節約にもなるのは明らかだ。
その4Dプリント技術が、今回紹介した研究のように手の届く存在になれば、より多くの企業や個人が導入できるようになり、4Dプリント技術な発展も期待出来るだろう。
今後の、さらなる開発に注目したい。
※将来有望なIT関係は、こちらをご覧ください⇩
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