2018年05月04日
AIが「行政のトップ」になると、どうなるのか?
さて、今回は「AIと行政の関係」についてです。
4月の多摩市長選挙で異彩を放っていた「AI市長候補」こと松田みちひとさんを、ご存知ですか?
何の前触れも無く選挙戦に登場した松田さんは、市職員の優遇問題や少子高齢化、投票率の低下など様々な課題を抱えた多摩市政へのAIの導入を提唱した。
「AI市長によるチャット相談」「仮想通貨TAMAコインの発行」といった斬新な政策を掲げ、特徴的なポスターなども含めてSNSで注目を集めました。
「しがらみのない光明正大な市政」を謳い出馬した松田さんですが、健闘むなしく落選した。
インパクトが先行していた感もある「AI市長候補」ですが、松田さんはいったい何を目指して立候補したのか?
選挙結果を受けた今後の展望も含め、松田さんに伺った。
・「顔も見せずに失礼だ」とお怒りになるお年寄りの方もいた
記者:「AI市長」というプロジェクトを立ち上げたきっかけは?
松田みちひとさん(以下、松田):元々はインドのGenic.aiというAIの会社(2016年アメリカ合衆国大統領選挙において、ドナルド・トランプ大統領の勝利を予測したとされるAI「MoglA」の開発元)の社長や仲間内で「AIであれば政治家のほとんどの仕事が簡単に出来るのではないか?」という議論をしていました。
そのような中で、私の出身地である多摩市の市長選挙が「無投票選挙」になりそうだと聞いて、「AIを全面的に打ち出した選挙キャンペーン」をやる事になりました。
記者:「AI市長」の旗を掲げて選挙を戦った感想は?
松田:AIは政策立案能力や分析・判断能力に優れています。
ところが政治家の仕事を優秀にこなせたとしても、政治の世界で有名な「握手の数しか票は増えない」「握手3人で1票」が出来ないのです。
肝心の政治家になる為の選挙活動が苦手であると言えるかもしれません。
また、多摩市は高齢者が多く「AI・ロボットによる政治」が受け入れられなかった点も苦しかったです。
実際、ポスターを目にして「顔も見せずに失礼だ」とお怒りになるお年寄りの方もいました。
多摩市議会はいわゆる「オール与党」状態で、ほとんどの市議が「現職市長の3選」を望み誰も市長選に立ちませんでした。
組織票を持たない私としては、投票率を上げる事で無党派層を取り込みたいと考えました。
一般的に選挙は投票率が低いと組織票を多く持つ候補が有利とされているからです。
しかし、そこは力が及びませんでした。
記者:市政や国政にAIを導入すると、どのような効果がある?
松田:行政でも民間企業でも、年度途中で予算が不足しないように少し多めに予算を取っておくのが普通です。
結果として、年度末に余ってしまった予算を使い切る為に無駄遣いが行われます。
AIであれば、予測能力が高い為、精緻な予算編成が可能となり「少し多めに」予算申請する必要が無くなるので、減税する事が可能になります。
また、聖徳太子は一度に10人の話を理解したと言いますが、AIであれば一度に1000万人や1億人の話を聞く事が可能です。
つまり、国民の代弁者としての国会議員や地方議員の数を大幅に減らす事が出来ると考えます。
国民が望めば、議会制民主主義を終わりにして、直接民主主義に移行する事も可能になるのではないでしょうか。
直接民主主義は衆愚政治に陥る危険があるとされますが、インターネットが普及した現代においては議員よりも津田大介さんや山本一郎さんのようなSNSなどで情報発信している人たちがすでに有権者の代弁者としての役割を果たしているので、何ら問題ないと思います。
記者:そう聞くと選挙に負けてしまったのが残念に思えてきます。
松田:実は前述のインドの会社(Genic.ai)は、私が99.99%の確率で落選する事を事前に予想していました。
現職は2期8年間の公務を通じて、日々有権者と触れ合っており、言わば8年間かけて選挙活動してきたようなものであり、わずか1週間の選挙活動で現職の支持率を上回るのはとても難しいと思いました。
記者:当選していた場合、まず何を行う予定でしたか?
松田:市役所内に保存してあるデータのうち、個人情報などを除いてすべて公開する事を予定していました。
また、それらのデータをAIに読み込ませて分析を開始する予定でした。
また、AIとは直接関係ないのかも知れませんが、多摩市ではここ数年で7件の職員による内部通報があり、市は調査中であることを理由にそれらを議会にも市民にも報告していませんでした。
通報案件の大部分に副市長が関与しているとされている事から、公約の通り副市長にお辞め頂く事を考えていました。
通報内容そのものよりも、それを公開しない体質が問題だと考えています。
・「顔」ではなく「政策」で選んでもらえるような仕掛けを
記者:選挙期間中ネットユーザーからは、どのような反応があった?
松田:ネガティブな反応としては、「流行のAIと言えば当選出来ると思っているようだ」「AIでは政治が出来るはずがない、インチキだ」「AIと言いながら人間が介在するなら今までと何ら変わりない」「AIなら忖度しないというが、AIなら学習して忖度をするようになるだろう」「AI推しという事以外何も分からない選挙ポスター」「隠し事はしないと言いながら、顔を隠している」といった意見があった。
ポジティブなものとしては、「面白い」「AIなら今の政治家よりは高いレベルの仕事をやってくれそう」「いずれこのような時代が来る」「手塚治虫の『火の鳥』の未来編を思い出しますね」といった意見をいただいた。
山本一郎さんがYahooニュースに投稿した「多摩市長選、『AI市長候補』を標榜する松田道人氏の『ファイルローグ問題』でやらかした過去を振り返る」という記事は最初は「やめてー」と思いましたが、特に隠している内容ではなかったので過去を有権者の方に説明をするきっかけとなり結果的には良かったです。
記者:今後理解を得ていくために、どのようなアプローチが考えられる?
松田:少しずつでも信頼を獲得していくしか方法は無いと思います。
一方で、有権者全員が満足するようなやり方は存在しないので、AI市長に懐疑的ではない層や不信感を持たない層を中心に政策を訴えていくような活動をしていきたいと考えます。
さらに、「声を掛けてもらった事がある」「握手した事がある」「お祭りやイベントに来てくれた」「自分が作った陶芸を褒めてくれた」「息子の卒業式で訓示をしてくれた」という理由で現職に投票した層に対しては、顔ではなく政策で候補者を選ばざるを得なくなるような選挙の仕掛けを考えていきます。
今の多摩市政は、「お年寄り世代」と「子育て世代」などにグループを分け、特定の世代が抱える問題を解決する政策を立てていますが、新しいカテゴリー分類を見つけるのが得意なAIであれば、世代を問わない共通課題(例えば「貧困」など)を抱える新しいグループやカテゴリーを見つけ、そこに対して最適な政策を提言する事が出来ます。
記者:この他、AI市長を生み出す為に予定している具体的な行動は?
松田:大部分の有権者が、「会った事がある人」「握手をしたことがある人」に投票する傾向がある中で、どのような選挙活動をするかについては大きな課題だと考えています。
地方選挙への出馬を準備している方々から、AIを使いたいとの相談も受けており、年内に少なくとも2〜3件の選挙協力をする予定です。
早ければ、6月の選挙を予定しております。
以上、AI市長誕生を目指す松田さんへのインタビューでした。
「政治は人間が行うもの」といった前提が根強い為、AIの導入は決して簡単なものではありませんが、適切な予算配分による減税効果や直接民主制への移行といった内容は興味を惹かれました。
組織票を多く持つ方が有利とされている日本の選挙システムへの対抗策として「顔ではなく政策で候補者を選ばざるを得なくなるような仕掛け」の考案を行うというのもかなり気になるところです。
ひょっとすると、そう遠くない未来にどこかの市町村にてAI市長が誕生するのかも知れません。
※色々な情報は、こちらからどうぞ⇩
4月の多摩市長選挙で異彩を放っていた「AI市長候補」こと松田みちひとさんを、ご存知ですか?
何の前触れも無く選挙戦に登場した松田さんは、市職員の優遇問題や少子高齢化、投票率の低下など様々な課題を抱えた多摩市政へのAIの導入を提唱した。
「AI市長によるチャット相談」「仮想通貨TAMAコインの発行」といった斬新な政策を掲げ、特徴的なポスターなども含めてSNSで注目を集めました。
「しがらみのない光明正大な市政」を謳い出馬した松田さんですが、健闘むなしく落選した。
インパクトが先行していた感もある「AI市長候補」ですが、松田さんはいったい何を目指して立候補したのか?
選挙結果を受けた今後の展望も含め、松田さんに伺った。
・「顔も見せずに失礼だ」とお怒りになるお年寄りの方もいた
記者:「AI市長」というプロジェクトを立ち上げたきっかけは?
松田みちひとさん(以下、松田):元々はインドのGenic.aiというAIの会社(2016年アメリカ合衆国大統領選挙において、ドナルド・トランプ大統領の勝利を予測したとされるAI「MoglA」の開発元)の社長や仲間内で「AIであれば政治家のほとんどの仕事が簡単に出来るのではないか?」という議論をしていました。
そのような中で、私の出身地である多摩市の市長選挙が「無投票選挙」になりそうだと聞いて、「AIを全面的に打ち出した選挙キャンペーン」をやる事になりました。
記者:「AI市長」の旗を掲げて選挙を戦った感想は?
松田:AIは政策立案能力や分析・判断能力に優れています。
ところが政治家の仕事を優秀にこなせたとしても、政治の世界で有名な「握手の数しか票は増えない」「握手3人で1票」が出来ないのです。
肝心の政治家になる為の選挙活動が苦手であると言えるかもしれません。
また、多摩市は高齢者が多く「AI・ロボットによる政治」が受け入れられなかった点も苦しかったです。
実際、ポスターを目にして「顔も見せずに失礼だ」とお怒りになるお年寄りの方もいました。
多摩市議会はいわゆる「オール与党」状態で、ほとんどの市議が「現職市長の3選」を望み誰も市長選に立ちませんでした。
組織票を持たない私としては、投票率を上げる事で無党派層を取り込みたいと考えました。
一般的に選挙は投票率が低いと組織票を多く持つ候補が有利とされているからです。
しかし、そこは力が及びませんでした。
記者:市政や国政にAIを導入すると、どのような効果がある?
松田:行政でも民間企業でも、年度途中で予算が不足しないように少し多めに予算を取っておくのが普通です。
結果として、年度末に余ってしまった予算を使い切る為に無駄遣いが行われます。
AIであれば、予測能力が高い為、精緻な予算編成が可能となり「少し多めに」予算申請する必要が無くなるので、減税する事が可能になります。
また、聖徳太子は一度に10人の話を理解したと言いますが、AIであれば一度に1000万人や1億人の話を聞く事が可能です。
つまり、国民の代弁者としての国会議員や地方議員の数を大幅に減らす事が出来ると考えます。
国民が望めば、議会制民主主義を終わりにして、直接民主主義に移行する事も可能になるのではないでしょうか。
直接民主主義は衆愚政治に陥る危険があるとされますが、インターネットが普及した現代においては議員よりも津田大介さんや山本一郎さんのようなSNSなどで情報発信している人たちがすでに有権者の代弁者としての役割を果たしているので、何ら問題ないと思います。
記者:そう聞くと選挙に負けてしまったのが残念に思えてきます。
松田:実は前述のインドの会社(Genic.ai)は、私が99.99%の確率で落選する事を事前に予想していました。
現職は2期8年間の公務を通じて、日々有権者と触れ合っており、言わば8年間かけて選挙活動してきたようなものであり、わずか1週間の選挙活動で現職の支持率を上回るのはとても難しいと思いました。
記者:当選していた場合、まず何を行う予定でしたか?
松田:市役所内に保存してあるデータのうち、個人情報などを除いてすべて公開する事を予定していました。
また、それらのデータをAIに読み込ませて分析を開始する予定でした。
また、AIとは直接関係ないのかも知れませんが、多摩市ではここ数年で7件の職員による内部通報があり、市は調査中であることを理由にそれらを議会にも市民にも報告していませんでした。
通報案件の大部分に副市長が関与しているとされている事から、公約の通り副市長にお辞め頂く事を考えていました。
通報内容そのものよりも、それを公開しない体質が問題だと考えています。
・「顔」ではなく「政策」で選んでもらえるような仕掛けを
記者:選挙期間中ネットユーザーからは、どのような反応があった?
松田:ネガティブな反応としては、「流行のAIと言えば当選出来ると思っているようだ」「AIでは政治が出来るはずがない、インチキだ」「AIと言いながら人間が介在するなら今までと何ら変わりない」「AIなら忖度しないというが、AIなら学習して忖度をするようになるだろう」「AI推しという事以外何も分からない選挙ポスター」「隠し事はしないと言いながら、顔を隠している」といった意見があった。
ポジティブなものとしては、「面白い」「AIなら今の政治家よりは高いレベルの仕事をやってくれそう」「いずれこのような時代が来る」「手塚治虫の『火の鳥』の未来編を思い出しますね」といった意見をいただいた。
山本一郎さんがYahooニュースに投稿した「多摩市長選、『AI市長候補』を標榜する松田道人氏の『ファイルローグ問題』でやらかした過去を振り返る」という記事は最初は「やめてー」と思いましたが、特に隠している内容ではなかったので過去を有権者の方に説明をするきっかけとなり結果的には良かったです。
記者:今後理解を得ていくために、どのようなアプローチが考えられる?
松田:少しずつでも信頼を獲得していくしか方法は無いと思います。
一方で、有権者全員が満足するようなやり方は存在しないので、AI市長に懐疑的ではない層や不信感を持たない層を中心に政策を訴えていくような活動をしていきたいと考えます。
さらに、「声を掛けてもらった事がある」「握手した事がある」「お祭りやイベントに来てくれた」「自分が作った陶芸を褒めてくれた」「息子の卒業式で訓示をしてくれた」という理由で現職に投票した層に対しては、顔ではなく政策で候補者を選ばざるを得なくなるような選挙の仕掛けを考えていきます。
今の多摩市政は、「お年寄り世代」と「子育て世代」などにグループを分け、特定の世代が抱える問題を解決する政策を立てていますが、新しいカテゴリー分類を見つけるのが得意なAIであれば、世代を問わない共通課題(例えば「貧困」など)を抱える新しいグループやカテゴリーを見つけ、そこに対して最適な政策を提言する事が出来ます。
記者:この他、AI市長を生み出す為に予定している具体的な行動は?
松田:大部分の有権者が、「会った事がある人」「握手をしたことがある人」に投票する傾向がある中で、どのような選挙活動をするかについては大きな課題だと考えています。
地方選挙への出馬を準備している方々から、AIを使いたいとの相談も受けており、年内に少なくとも2〜3件の選挙協力をする予定です。
早ければ、6月の選挙を予定しております。
以上、AI市長誕生を目指す松田さんへのインタビューでした。
「政治は人間が行うもの」といった前提が根強い為、AIの導入は決して簡単なものではありませんが、適切な予算配分による減税効果や直接民主制への移行といった内容は興味を惹かれました。
組織票を多く持つ方が有利とされている日本の選挙システムへの対抗策として「顔ではなく政策で候補者を選ばざるを得なくなるような仕掛け」の考案を行うというのもかなり気になるところです。
ひょっとすると、そう遠くない未来にどこかの市町村にてAI市長が誕生するのかも知れません。
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