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消費者契約法における契約の解除方法とは?

現在は消費者を保護するための法律がいくつか施行されています。例えば、悪徳商法から消費者を保護する法律としては「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」があり、訪問販売や通信販売などによる不当契約には「クーリングオフ」という救済方法が設けられています。ただ、特定商取引法は規定されている取引に対して効力を発揮するだけで、それ以外の取引には適用されないという欠点があります。

そこで、業者と消費者の間の情報の質や量、交渉力などの差から生じるトラブルを解決するために設立されたのが「消費者契約法」です。消費者契約法は以下の4つの観点から消費者の保護を図っています。
@事業者の説明義務
A消費者による意思表示の取消し
B不当な契約条項の無効化
C適格消費者団体制度の設立
@事業者の説明義務
情報の質や量、交渉力におけるトラブルでは、一番多いのが「業者が誤解を招くような説明をした」、または「説明が不十分だった」に端を発したものです。そこで、消費者契約法は事業者に以下の2つの義務を課しています(消費者契約法3条1項)。

・契約内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるように配慮する
・消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供する

なお、上記の2つの義務は努力目標のため、違反したからといって罰則があるわけではありません。ただし、いい加減な情報を提供すれば、消費者は契約の意思表示を取り消すことができます。

A消費者による意思表示の取消し
消費者契約法では、事業者による不適切な勧誘方法のために消費者が誤認・困惑して契約を締結した場合、消費者に自己の意思表示を取り消すことを認めています。そして、消費者が意思表示を取り消すと契約自体が無かったことになり、事業者に支払った金銭や資産の返還を請求することができます。

・民法第121条:取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

・民法第703条:法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

事業者の「不適切な勧誘方法」とは以下の行為を指します。
●不実告知による誤認(消費者契約法4条1項1号)
不実告知による誤認とは、業者が契約の「重要事項について事実と異なることを告げ」、それによって消費者が「告げられた内容が事実であるとの誤認」をすることです。

重要事項とは、消費者における契約締結の判断に影響を及ぼすと考えられる事項のことです。契約の目的物の質や使途、または契約の目的物の対価や取引条件などが該当します。

例えば、型落ち品のパソコンであるのに、事業者が『この商品は最新機種です』と説明すれば不実告知です。ただし、『操作しやすい』だとか、『非常にお得です』といった個人の認識によって差の出る説明は不実告知には該当しません。

●断定的判断の提供による誤認(消費者契約法4条1項2号)
断定的判断の提供による誤認とは、事業者が契約物の価値などに対し、「将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供」したことにより、消費者が「提供された断定的判断の内容が確実」と誤認したことです。

例えば、株式の取引で事業者が『この株式は値上がりが確実視されているから、すぐに買わないと損しますよ』と説明した場合が該当します。

●不利益事実の不告知による誤認(消費者契約法4条2項)
不利益事実の不告知による誤認とは、事業者が重要事項について「消費者の利益となる旨を告げ」、かつ当該重要事項について「当該消費者の不利益となる事実を故意に告げず」、これによって消費者が不利益となる事実が存在しないと誤認したことです(告知によって当該事実が存在しないと考えることが妥当なものに限定)。

例えば、宅地の販売において、事業者が隣接地に大型の工場が建設予定であることを知りながらそれを告げず、消費者に対して『周りは閑静な環境ですから、ゆったりした生活が送れます』と言って売り付けた場合に該当します。

●不退去による困惑(消費者契約法4条3項1号)
不退去による困惑とは、消費者から「退去すべき旨の意思を示した」にも関わらず、事業者がその場から退去せず、これによって消費者が困惑した場合のことです。不退去による困惑の代表的な例は訪問販売です。

「退去すべき旨の意思」は直接的に『帰ってください』と言わなくても、『出かけなければならない』などと時間的な余裕の無いことを伝えることや、『要りません』など契約を締結しないことを伝えることでも意思を示したと認められます。

●退去妨害による困惑(消費者契約法4条3項2号)
退去妨害による困惑とは、不退去による困惑とは逆に、消費者が「退去する旨の意思を示した」にも関わらず、その場から退去することを妨害されて困惑したことです。例としては、展示即売会などが挙げられます。

なお、意思表示の取消しは事業者からの直接勧誘だけではなく、第三者を介在した契約であっても、契約が第三者の不当な勧誘方法によるものであれば適用されます(消費者契約法5条1項2項)。

●取消権の行使
消費者による取消権の行使には以下の期間の制限があり(消費者契約法7条1項)、期間を過ぎると取消権が消滅します。
・「追認をすることができる時」から6ヶ月
・「契約締結の時」から5年

「追認をすることができる時」とは、「取消しの原因となっていた状況が消滅した時」とされています。例えば、消費者が誤認に気付いた時にはすでに誤認という状況が消滅したことになるため、その後6ヶ月が経てば取消しができなくなるということです。

B不当な契約条項の無効
契約においては業者と消費者では情報の質や量、交渉力に差があるのが事実です。つまり、契約の内容が不衡平になる可能性があります。その不衡平な契約の防止、是正をするため、消費者契約法では消費者に一方的に不利になるような契約条項(不当条項)を無効としています。

不当条項には以下のようなものがあります。
●事業者の損害賠償責任免除条項(消費者契約法8条1項)
契約内に事業者の損害賠償を免除する条項があると、消費者が損害を被っても救済を受けることができません。そこで、事業者の損害賠償責任の免除を定めた契約条項は無効としています。

ただし、瑕疵担保に基づく損害賠償責任を免除する条項の場合は例外があり、他の救済手段が予定されている場合は責任免除条項が有効になります(消費者契約法8条2項)。以下のような場合です。
・代替物の給付や修補が予定されている
・第三者が代わりに損害賠償責任を負う

●消費者の損害賠償額の予定条項等(消費者契約法9条)
消費者の一方的な都合による不履行によって業者に損害が発生する場合、あらかじめ消費者の負担額を定めておくことがあります。例えば、「キャンセル料」や「延滞料」です。

消費者に負担を求めること自体は不適正ではありませんが、契約書で予定された損害賠償額が不当に高額である場合は、適正額を超える部分が無効になります。例えば、「キャンセル料」の平均的な損害額を超える部分(消費者契約法9条1号)、「遅延損害金」の年14.6%の割合で計算した額を超える部分(消費者契約法9条2号)が無効になります。

●消費者の利益を一方的に害する条項(消費者契約法10条)
消費者の利益を一方的に害するような契約条項も無効になります。以下などの例があります。
・消費者の解除権や解約の申入れを制限する条項
・事業者の解除権や解約の申入れの要件のみを緩和する条項
・消費者の権利行使期間を制限する条項

C消費者団体訴訟制度
消費者団体訴訟制度とは、内閣総理大臣の認定を受けた団体(「適格消費者団体」(消費者契約法2条3項))が消費者に代わって、事業者の不当な行為の差止めなどを請求できる制度です(消費者契約法12条1項3項)。

「不当な行為の差止め」は現に行われた不当行為に限定されず、不当な行為を行う「恐れ」がある場合、停止や予防措置を請求できます。


消費者は知識が少ないこともあり、不当行為による損害を請求しても、業者から拒否されると諦める傾向があります。しかし、消費者が不当に損害を被ることはあってはならず、そのためにも消費者契約法に対する十分な認識が必要です。







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