2018年07月17日
かぐや姫 / 淫蠍のクレリック
かつての古き時代。男があった。立身出世に囚われた男は宦官となり、政の世界へと片足を踏み入れる。男は一人の側室に仕えた。側室の字は恵。美しいが慎ましくどこか儚い女だった。
側室が帝から受ける寵愛が即ち男の権力。恵は閨でも控えめな女であった故、男は秘薬を入手した。籠絡の蠍。蠍の毒は人を淫蕩へと堕落させる。次の閨で帝に使うように進言したのだ。
毒を使い始めた途端、帝は足繁く通い側室は位を上げた。男は喜んだ。自らも権力を手にしていったからだ。だがある日、女は死んだ。死因は薬物の過剰摂取。男はようやく気付く。
蠍の毒を服用していたのは女だったのだ。女が何を考え自ら毒を呷っていたのかはとんと分からぬ。ただいつも窓辺で寄る辺なく佇んでいた女の美しくも憂いた横顔だけが、胸に残った。
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