https://nautil.us/issue/98/mind/that-is-not-how-your-brain-works人間の脳は、刺激を伝達させる役割を持つ ニューロンという細胞でできたネットワークで、多くのニューロンは複数の機能に関わっています。例えば、 前帯状皮質と呼ばれる領域のニューロンが関与する脳の機能は、記憶、感情、意思決定、痛み、道徳的判断、想像力、注意、共感など多岐に渡ります。
ほかにも、「見る能力」に密接に関連している 一次視覚野と呼ばれる領域は、視覚だけでなく「聴覚」や「触覚」などの刺激にも反応することが分かっています。実際、通常の視力を有した人に数日間目隠しをして点字を読む生活をしてもらうと、一次視覚野のニューロンは触覚の処理に専念するようになるそうです。
かつて脳科学の分野で主流だった 骨相学という理論では、「脳は特定の働きを持つピースが集まってできるパズルのようなもの」と考えられていました。この考えの中で最も有名なのが、「人間の脳は3つの層から成る」という発想を元にした「 三位一体脳説」です。この仮説は、人間の脳には本能をつかさどる「は虫類的脳」、感情をつかさどる「哺乳類的脳」、人間特有の論理的・倫理的思考をつかさどる「人間的脳」の3層に分かれていると主張していましたが、 神経科学や 分子遺伝学の発達によりこの考えは否定されています。
三位一体脳説が信じられていた背景には、脳を詳細にスキャンするのには多額の研究費用がかかるということが原因としてあったとバレット氏は説明します。三位一体脳説は脳を検査する最良の器具が普通の顕微鏡であった20世紀半ばに誕生したもの。その後さまざまな機械が発明されましたが、十分なスキャンは行われませんでした。多くの研究では一部の脳活動しかスキャンされず、脳の他の重要な機能を有している微弱な脳波は見逃される傾向にありました。
さらに、哲学者 ルネ・デカルトが提唱した 実体二元論も影響していると考えられます。心と体が分離しているというこの考えはうつ病などを理解する際などに広く用いられましたが、神経科学者が心と体の両方に作用するニューロンを発見したことにより、この考えも説得力が失われています。
バレット氏は「古い科学的信念があらゆる証拠によって否定されてもなお擁護されることがあるため、予測と実験、修正によって機能する科学でより正確に物事を考えることが重要だ」と述べています。
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