「えー アホ?」
「せいかーい」
皆さんお待たせしました。「潮が舞い子が舞い」10巻が刊行されました。これが最終巻となります。
名残惜しいですね。
冒頭のやりとりは、最終話のひとつ前、109話での会話です。
水木君が手に入れた中古自転車を乗り回していて、犀賀さんを拾うお話。
水木君と犀賀さんの関係については第1巻からずっと続いていたのですが、最終巻で一応の決着です。
地元での遭遇は、7巻でも似たようなシチュエーションがあり、そのときに水木の近所の高台に来ることを「登山」と呼ぶことにしようと犀賀は言ったのですが、そのことを水木君は忘れているみたいですね。
水木君のことが好きな犀賀さんは、自転車に二人乗りして送ってもらう途中で、勇気を出して水木の背中にある言葉を書きます。その言葉をクイズにして水木君に言わせる流れなのですが、彼の回答は「アホ?」でした。
ああ残念ですね。水木君は幼馴染の百々瀬さんが好きなので、犀賀さんの気持ちには応えらえないようです。
「せいかーい」って言う犀賀さんの笑顔が心を打ちます。本当に楽しくて笑ってるんじゃないんだけど。
その後のセリフ「水木はあほー」は本心ですね。
このシーンはもう少し続き、犀賀の想いと、それに対する水木の気持ちが伝えられます。
その時にはカメラは二人の後ろに廻っていて、二人の表情をとらえることはできません。
このマンガでは、とても大事な場面や、どんな表情を見せているのか単純には示せないときには、後ろ顔で見せたり、カメラを目いっぱい引いています。
読者の想像に委ねられているので、各自で頭に思い浮かべてください。
ちなみにここまでの記述は管理人の個人的な感想なので、異論は許しちゃいます。
ちなみに10巻で「意味ありげに後ろ姿で語る」カットは、例えば103話の羽坂副主任。
「水木くんも大人になったら 漬けものの良さわかりますよ」って言うところ。
位置的に後ろ姿になっていても不自然じゃないんだけど、あえて表情を描かないのは偶然ではない。
今回も50人近いキャラが文字通りの群像劇を見せてくれるわけですが、回を重ねるごとにキャラの複雑な人間性、というか、謎な部分が露見してきます。
ディックの小説じゃないんだけど、人間の中に「人間に擬態しているもの」が紛れ込んでいるような感覚にとらわれます。「私は人間です」と、わざわざノートに書き込む奴までいる。
現実崩壊感が始まる前に、永遠に続くと思われた高校2年の1学期は終幕です。
最終話は、百々瀬とバーグマンのエピソード。
授業を抜け出して砂浜で語らう二人。
「忘却されるなんでもない一日」と名付けられた「永遠に思い出される一日」
映画「フォーエバーフレンズ」(原題:Beaches)を想起させる、浜辺での女の子の友情。
阿部先生、長い間お疲れさまでした。素晴らしい時間と物語をありがとう。
潮が舞い子が舞い 10 (少年チャンピオン・コミックス) [ 阿部共実 ] 価格:693円 |
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