2017年04月08日
クーロン黒沢「デジタル・スーパースター列伝」
『プロレススーパースター列伝』をもじったタイトルってけっこうあるな。
はい、ご存知クーロン黒沢。
コンピュータ、アジア関連の書籍でサブカルっ子にはお馴染み。web連載の記事も多いし、キンドルストアで発売中の電子出版雑誌『SiX SAMANA』も注目を集めている。
改めて最近また読んでいるのはこの記事で興味を持ったから↓
https://nihonzine.com/kowloon-kurosawa-inoue/
隠遁願望のある私には本当に衝撃的でね。惜しくもその後亡くなってしまったけど。
ということでまた読みはじめたんだけど、今回のこの本が凄かった。
『さわやかインターネット ネットの達人』というやたらプレミアの付いている本に繋がるような本(私は『さわやか〜』は未読)らしい。
内容はパソコン、ネットの世界でのアングラなスーパースターたちの話。
とはいえ、ミスターPBXのように『ハッカージャパン』誌などで連載を持っていたような人は他におらず、あとは一般人でありながら自宅で自分の帝国を築いている人達。
さすがに続かないのか、後半は秋葉原などのディープスポット紹介や『性生活報告』誌なんかの話も入っている。
すっごいテキトウにまとめるとデジタルに寄ったゴミ屋敷の住人の言い分みたいなものでもあったりするんだけど、気持ちがわかるものもあって心惹かれる。
スティーブ・ジョブスの活動が電話のタダ掛け機からはじまったのは有名だけど、同じくそれをきっかけに電話にはまりまくったミスターPBXをはじめ、合法だった時期から地下に潜った現在まで蒐集の手を緩めないペド男爵、広大な敷地に建つ家をアナログシンセ(初期のものは本当に巨大)をはじめデカイものばかり集める
物置にしていまう人物、「ファイル共有→ダウンロード→ディスクに焼く」をひたすら毎日1万6千枚以上続けながらも内容に関してはほぼ把握できていないダウンロード伯爵、逆にほとんど働かずにタダでネットやゲームをし懸賞応募で生きるニート、ブログの有名人とネット上だけで愛を育んだせいでいろんなことに巻き込まれる婚活女......物凄いメンツで驚くばかりなんだけど身に覚えがないではない。
初めての携帯電話の興奮も、エロ本や動画の収集も、デカいアナログ製品への偏愛も、ファイル共有や自分でCDを焼いた時に得たデータ保存の安心感も、無作為に生きるニートの快楽も、SNS以前のブログでの出会いも、全部解る。
というかオタクでサブカルっ子(あー、ロマン優光の本読んでから、こういうこと書くときにイチイチ気になる......)なら収集癖も大体においてくっ付いてくるし、アナログからデジタルに、一気にパソコンやインターネットが一般化した世代には、コレがすでにあった今の若い世代と違った大きな驚きがあった。
サイズはビデオやテープより小さく、容量は大きくなって収集はキリが無くなった。
私は19歳のときに持っているCDが2千枚を超え「じっくり気に入ったのは何度も聴いてたら、全部聴き返すのは死ぬまでかかっても無理だ」と思ってから、何度かの引越しや金欠もありほとんど売り払ってしまって、今は全く所有欲が無くなってしまったが、そこを突っ走り続けている人の話はなんだかとても心地よい。
しかし驚くのは、こうやって書くとほぼ狂った廃人のような人たちなのに、キチンと職を持って働きながら寝る間を惜しんでこういう行動をやっていたり、相続した遺産をふんだんに使ってやっていたりする事だ。
そして恐ろしい事に最近の様子も↓などで確認できる事だ。ちなみに下はダウンロード伯爵。全く変わっていない。この本から早6年、全く変わっていない。
http://sixsamana.com/2016/01/14/%E4%BC%AF%E7%88%B5ikebukuro-japan-360-legendary-room/
あらゆる意味で私は中途半端だな、と思うが、ここまでは無理。
アウトサイダーアートに近いんだろうな。
ちなみに映像版もあります。感想↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/657/0
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