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2024年12月13日

587.鋼鉄幻想記クロムウルフ

鋼鉄幻想記クロムウルフ-2024_11_12-06-13-09.png

 おはようございます。あるへです。
 本日はこちら「鋼鉄幻想記クロムウルフ」のレビューです。

 おでこに角を持つ種族ユニコニアンと、普通の人間である帝国人。二つの種族が歴史的遺恨から憎み合い、種の生存をかけて殺し合っている世界です。んー……つい最近、見たことあるぞ?
 そしてネタバレになりますが、敵を圧倒して一番になりたい派と、お互い手を取り合って共存したい派で分裂して内乱状態になり、その隙をついて隣国が宣戦布告……あれー、やっぱりみたことある、トカゲの国かな……。

 なんてね、世界観の設定上、前回遊んだクロステイルズとよく似たというかもう同じストーリーが繰り返されるんですが、今回の制作チームはいつものExe-CreateでもHit-Pointでもなく、Rideonでもなく、Magitecという知らない会社でした。ちなみに販売はKemcoなので立派なKemcoゲーです。

 いやね、めっちゃ尖ったゲームでしたね。見た目からしてこれガラケーか?と思うほどめちゃくちゃ古臭い印象を受けました。あえてそうしているというよりは、そんな時代の開発ツールを使ったゲームで、昔懐かしいSFCゲームのような匂いがぷんぷんするんですよね。
 キャラデザイン、ドットのクオリティ、UIのぎこちなさ、ゲームバランスやレベルデザイン、どれをとっても古臭さが付いて回り、それが逆に新鮮ですらある。
 なんなら会話やストーリーの展開ですら平成の風を感じ、今の時代じゃまず無理だと思われるような表現が平然と出てくるあたり非常に尖った作品だなと感じさせられました。

 ストーリーはかなり面白かったですね。一本道には違いないですが、サイドミッションなんかも現在の状況に則し、以前の伏線を回収するような作り込みで、適当にその辺の雑魚を二、三匹狩ってこいだなんていうお遣いではありません。それに加え、本作にはクリア後に強くてニューゲームの概念があるので(試してはいないけど、おそらくいくつかのサイドミッションは時限っぽい)、初見一周目でサクサク進んできたようなプレイではなかなか歯が立たない強敵なんかも居て作り込みの気合を感じました(一周でコンプは可能)

 作り込みの気合といえば、それはストーリーにもしっかりと染み込んでいて、いや思わず「それはどうなの?」と嘆くような展開もあるにはあるんですが、基本的には理屈と論理がしっかり整理されていて、思っていた以上に引き込み魅せる力のあるストーリーで、普通に楽しかったです。
 やっぱりね、ここよね。
 主要人物それぞれに濃ゆいバックボーンがあり、それをエピソードとしてちゃんと見せてくれ、かつ全員が全員人生観を備えた知性を持っているので、本作のストーリーがしっかりオリジナリティのある骨太な作品に仕上がっているし、ライターの確かな腕を実感できました。そんな中で「は? いやいやいやwww」っていう部分もあるんですけどね(二度目)
 とりあえずクロステイルズのぽわぽわストーリーがへそで茶を湧かすレベルでリアリティがありました。

 ただ許せない部分もあります。
 それはレベルデザイン。つまりダンジョンの構造です。
 非常にエンカウント率が高く、それだけなら全然許容範囲なんですけど、これが複雑かつ面倒な作りのダンジョンと合わさると鬼畜の一言に尽きます。
 どんなふうに鬼畜かというと、まずとにかく歩かせる作りなこと。マップの端から端までぐるっと回り込ませたり、いったんこっちから隣のマップへ移って、向こうをぐるっと回って、再びこのマップへ戻ってくるなど、とにかく歩数を稼ぎ、何度もエンカウントするよう仕向けたマップの作りに悪意を感じます。

 次に、ギミックが非常に嫌らしいこと。流れる床で一方通行の道を作り、戻って来るには大回りしなければならなかったり、で、そんな時に限ってミニマップの範囲の外に分岐点があったりして、容易にどちらの道が正解か判別が付けられなかったり。
 あるいはワープギミックがそこらじゅうにあってしょっぱな入り口に四つのワープがあって、一つに入ってみたらその先でまた四つのワープがあって、とか、ゲロ吐くかと思いました。
 ようやく正解に辿り着いてスイッチを切り替えたら、同じ道を戻って最初に見えていた扉の前に戻るなど、ギミックを見破ったとしても必ず長い道を何往復もしなければならない作りになっています。
「えーっと、だからぁ、まずあっちへ行ってスイッチを押してからこっちへ戻ってきて……、いやあれ、右と左どっち行けばいいんだっけ」なんて考えてる時にエンカウントするのが一番頭に来ますよね(笑)

 古臭いものの、一周回ってストーリーはかなり魅力的で先が気になるものなので、意外とモチベは高いのですが、あらゆるダンジョンがもう迷宮も迷宮なので脳内マップを描くのが苦手な人とかは発狂するかもしれないとガチで思いました。

 今の時代じゃ絶対に使用しないであろう単語や表現、展開が出てきたり(女性を性的対象とみなして揶揄したり、主人公が無抵抗な民間人を射殺する描写があったり、極めつけは原爆を連想させる兵器を自分たちの手で敵に使用したり)、古臭いドットクオリティやかつての悪習の残るダンジョン構造だったりが絡み合って、非常にオールドスクールなJRPGを遊んでいる感覚に陥りました(方眼紙に手書きでマップを描いて繋がりなどを書き加えていったら、もっとレトロ感感じられるかも 笑)。
 これらのレトロ感はもはや狙って演出できるものではないので、やはりそれらが許されていた時代に作られたんだと思います。

 一つのゲームになるべく時間を使わせようとしたり、ストーリー展開の大胆さやその結果からメタ読みでサイドミッションなどに不可逆性を感じたり(あのミッションはたぶん今の段階では受けられないだろうな的な。)といった要素から、言い方は悪いですがExe-CreateやHit-Point製ゲームのような「量産」感がなく、Magitec社によるガチの一本としての気概を感じました。
 なんか、昔懐かしいスーファミのパッケがあって、裏面にメーカー希望小売価格5800円(税抜き)とか書いてあって、中古ショップで980円のラベル付けられて販売されててもおかしくないなっていう作品感、B級ゲーム感、レトロ感、懐かしさがあったんですよね。

 人にお勧めできるようなものではありませんが、プレイして満足感は残りました。
 Kemcoゲーカウントダウンは残り13本でございます。

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