私達家族は、中古の物件をリフォームした家に住んでいた。
夫の”いかに少ない予算で満足できる家にするか”という
こだわりがつまった家。
木の家がいい。
無垢のフローリングじゃないとだめ。
開放的な家にしたいから、間仕切りとなる壁とドアは極限まで減
らす。
ロフトを作って、子供が遊べる空間を作る。
などなど。
夫は本も買って、ネットでも調べて勉強した。
家を建てるわけではなかったが、住宅展示場も行った。
建築家が建てた家の、内覧会にも行った。
内覧会に何回か行ったが、そのうちの一軒を夫がとても
気に入った。
私はその家があまり好きではなかった。
夫にそう伝えたが…。
夫はその建築家に設計を依頼した。
夫は一応、私にもどんな家がいいかを聞いてきた。
私が「収納がたくさんあるとうれしい。」とか一般的な
希望を言ってみた。すると3倍くらいの
「それは〇〇だからだめ。」
「それはスペース的に無理。」
「それはお金がかかるからだめ。」
という、私の希望が通らない理由が帰ってきた。
私は、”いろいろとあるんだなあ。
夫が頑張って、家について勉強してくれたんだし、
建築家もついてくれているんだし。ま、いっか。”
と思って、すべてを夫と建築家におまかせしていた。
出来上がった家は、木の香りがする素敵な家だった。
家に来てくれた人がみんなほめてくれる。
さすがは建築家。
見た目はとってもよかったのだ。
しかーし、住む人を選ぶ難易度の高い家だった。
部屋と部屋との間の壁がすべて取り払われている。
リビングと台所、二人の子供の居住スペース、全て
がワンフロア状態。
お客様をリビングに通すと、台所、子供達のベッドも丸見えで、
子供が寝ている様子も、着替えをするところも見えてしまう。
お客様が来るときは、その階の見えるところを全て片付けて
掃除をしないといけない。
お客様がいる間は、自分のお客様でなくても家族みんなが、
お客様と同じ空間にいないといけない。
人付き合いが好きで、体力があって、家の掃除と片付けを苦
も無くできる人なら、特に問題はないだろう。
でも私にとっては、難易度が高すぎた。
子供が思春期になっても、娘と息子の居住スペースは、間仕切
りなしの隣り合わせ。
やっぱりお客様からは丸見え状態。
子供達の着替えも同様。
私と子供
「やっぱり、個室はほしいよね。」
人ってないものねだりだから。
部屋に仕切りがあるようなリフォームにしていたら、
もっと広い部屋が良かったねって言ってたかもだけど。
子供の遊び場所となるロフト。
ロフトは壁から頑丈な板が突き出ている感じのつくり。
ひとつも囲いがない。
床から大人の身長より高い位置にあるので、落ちたら骨折確定。
ロフトにあがると、常に落っこちる恐怖と隣り合わせ。
私「なんでロフトに囲いがないの?落ちそうですごく怖いんだけど。」
夫「ロフトを囲うと圧迫感があって、部屋が狭く見えるよ。」
見た目?
安全より…?
ロフトの端っこに、囲われたスペースがあるにはあった。
家の構造上、ロフトの囲われたスペースは、天井が低い。
落ちる恐怖を感じながら、かがんで囲われたスペースに入る。
私も子供も、よくここの部分で頭を強打した。
一旦囲われたスペースに入っても、天井が低いのでしょっ
ちゅう頭をぶつける。
よくぶつける部分には、クッションシートを張った。
これでぶつけても、そんなに痛みは感じなかった。
だがやっぱり、ロフトに上がるとストレスを感じたのは
私だけではなかったようだ。
ロフトを希望した夫本人が、ロフトに上がったのは最初のこ
ろだけで、それ以降は全く上がらなかった。
子供達も、ロフトで遊んだのは数年だった。
我が家には用意された収納スペースというものはなかったので、
私はロフトを物置として使うようになった。
ロフトに上がるには、がっちりとした梯子を上らなくてはいけない。
両手を使わないといけないので、箱やカゴを持ってあがるのは難しい。
そうなると片手で持てるものや、下から直接ロフトに乗せられる重さ
のものに限られる。
あまりロフトに上がり降りをしたくないから、シーズンオフの衣類や
圧縮した羽毛布団をロフトの囲われたスペースにおくようになった。
軽くて持ち運びしやすくするために、私はゴミ袋にシーズンオフの衣類を
入れた。これなら片手でもって、梯子を上がることができる。
密閉できるから、防虫剤をいれたら虫に食われる心配もない。
衣替えの度に、私は衣類の入ったごみ袋をロフトに上げたり、下ろしたり。
夫と子供達にとって、衣類の入ったごみ袋を持った私の姿は見慣れたもの
になっていた。
このことが、DV夫から逃げる私にとって大きな意味をもつことになる。
2024年06月05日
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