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2021年01月14日
人文科学から始める技術文の翻訳7
2.4 時制
技術文は、製品の技術的な内容が意識されているため、詳細な時間の説明よりも、「AをするとBになる」といった操作の説明の方が多い。時制で言えば、現在形の使用頻度が高いのも当然である。
(62)メーターの揺れが最大許容範囲を超えたら、ディスクを交換しなければならない。
(63)If the meter deflects in excess of the maximum allowable limit, the disc must be relaced.
但し、操作の流れの中では完了形が使用される。
(64)新しいプロジェクトを判定するのに必要な情報は、ほとんどすべて収集し終えた。
(65)They have collected almost all information necessary to evaluate a new project.
(66)車両駐車は多くの工場や配送センターなどで深刻な問題になっている。
(67)Parking has become a serious problem at many industrial plants and distribution centers.
(64)と(65)は、動作の完了を表している。つまり、ある動作が現時点で完了していることが説明されている。一方、(66)と(67)は、動作の後の結果を表している。
完了形にはさらに経験(68)、(69)や状態の継続(70)、(71)に関する用法がある。
(68)過去にも同じ問題を経験している。
(69)They have experienced the same problem in the past.
(70)石油は電力回路に使用される標準的作動油である。
(71)Petroleum oils have been the standard hydraulic fluid used in power circuit.
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
技術文は、製品の技術的な内容が意識されているため、詳細な時間の説明よりも、「AをするとBになる」といった操作の説明の方が多い。時制で言えば、現在形の使用頻度が高いのも当然である。
(62)メーターの揺れが最大許容範囲を超えたら、ディスクを交換しなければならない。
(63)If the meter deflects in excess of the maximum allowable limit, the disc must be relaced.
但し、操作の流れの中では完了形が使用される。
(64)新しいプロジェクトを判定するのに必要な情報は、ほとんどすべて収集し終えた。
(65)They have collected almost all information necessary to evaluate a new project.
(66)車両駐車は多くの工場や配送センターなどで深刻な問題になっている。
(67)Parking has become a serious problem at many industrial plants and distribution centers.
(64)と(65)は、動作の完了を表している。つまり、ある動作が現時点で完了していることが説明されている。一方、(66)と(67)は、動作の後の結果を表している。
完了形にはさらに経験(68)、(69)や状態の継続(70)、(71)に関する用法がある。
(68)過去にも同じ問題を経験している。
(69)They have experienced the same problem in the past.
(70)石油は電力回路に使用される標準的作動油である。
(71)Petroleum oils have been the standard hydraulic fluid used in power circuit.
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
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人文科学から始める技術文の翻訳6
また、準否定詞や意味上の否定詞をまとめた間接的な否定詞の構文もある。前者には、seldam、rarely、hardlyなどがあり、後者には、only、rather than、free fromなどがある。まず準否定詞の例を見てみよう。
(36)仕様書の書き手は、自分のことを滅多にライターだと思わない。
(37)The specification writer seldom considers himself a “writer.” (ピリオドの位置に注意すること。)(技術英語構文辞典)
(38)こうした状況はまれにしか起きない。
(39)Such condition will rarely arise.
(40)時間が殆どない。
(41)There is hardly any time.
(42)その計算はコンピュータなしには難しいだろう。
(43)The calculations would be very difficult without a computer.
(44)特種なアプリケーションソフトに必要でない限り、そのコマンドを使用しないこと。
(45)Don’t use the command unless it is necessary for a particular application software.
(46)全ての角は、特に指定されない限り面取りすることにする。
(47)All corners shall be chamfered unless otherwise specified.
「unless otherwise+過去分詞」は「特に〜されない限り」という慣用表現である。例えば、unless otherwise required「特に要求されない限り」、unless otherwise noted「特に銘記されない限り」、unless otherwise instructed「特に指示されない限り」などが挙げられる。
次に、意味上の否定詞を見てみよう。
(48)水はインパルスホイールの一部分にしか接触していない。
(49)Water is in contact with only a portion of an impulse wheel.(技術英語構文辞典)
ここでin contact withは状態を表し、「接触する」という行為や動作の場合には、contact withを用いる。(5)
(50)表面には酸化物のような膜がないこと。
(51)The surface is free from films such as oxides.
(52)私たちはレーザーではなく、LEDを使用している。
(53)We also use LEDs rather than lasers.
否定構文の最後は、技術文で頻繁に使用される慣用表現を見ていこう。頻度の高いものが参考になる。(5)
(54)入力信号が弱すぎてノイズの音を無視できない。
(55)The incoming signal is too weak to override the noise.(技術英語構文辞典)
本動詞の主語とto不定詞の主語が意味上一致している。
(56)鮮鋭度の実際の差は小さ過ぎて、人間の目には見えない。
(57)The actual difference in sharpness is too small for the human eye to see.
本動詞の主語とto不定詞の主語が一致していない場合には、too〜to doの間にfor〜を入れるとよい。ここでは、for the human eyeがそれである。(5)
(58)これらの回路は過渡速度を制限するだけでなく、切り替え速度も遅くする。
(59)These circuits not only limit transients but also slow switching speed.
(60)いかにプロセスが複雑であろうと、これは正しい。
(61)This is true no matter how complicated the process is.
「no matter+ how/what/which/where/whose/whether」などの関係詞を伴い、「いかに_であろうと」、「何が_であろと」「どれが_であろうと」「どこが_であろうと」「誰の_であろうと」「_であろうと_であろうと」という慣用表現の意味になる)
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
(36)仕様書の書き手は、自分のことを滅多にライターだと思わない。
(37)The specification writer seldom considers himself a “writer.” (ピリオドの位置に注意すること。)(技術英語構文辞典)
(38)こうした状況はまれにしか起きない。
(39)Such condition will rarely arise.
(40)時間が殆どない。
(41)There is hardly any time.
(42)その計算はコンピュータなしには難しいだろう。
(43)The calculations would be very difficult without a computer.
(44)特種なアプリケーションソフトに必要でない限り、そのコマンドを使用しないこと。
(45)Don’t use the command unless it is necessary for a particular application software.
(46)全ての角は、特に指定されない限り面取りすることにする。
(47)All corners shall be chamfered unless otherwise specified.
「unless otherwise+過去分詞」は「特に〜されない限り」という慣用表現である。例えば、unless otherwise required「特に要求されない限り」、unless otherwise noted「特に銘記されない限り」、unless otherwise instructed「特に指示されない限り」などが挙げられる。
次に、意味上の否定詞を見てみよう。
(48)水はインパルスホイールの一部分にしか接触していない。
(49)Water is in contact with only a portion of an impulse wheel.(技術英語構文辞典)
ここでin contact withは状態を表し、「接触する」という行為や動作の場合には、contact withを用いる。(5)
(50)表面には酸化物のような膜がないこと。
(51)The surface is free from films such as oxides.
(52)私たちはレーザーではなく、LEDを使用している。
(53)We also use LEDs rather than lasers.
否定構文の最後は、技術文で頻繁に使用される慣用表現を見ていこう。頻度の高いものが参考になる。(5)
(54)入力信号が弱すぎてノイズの音を無視できない。
(55)The incoming signal is too weak to override the noise.(技術英語構文辞典)
本動詞の主語とto不定詞の主語が意味上一致している。
(56)鮮鋭度の実際の差は小さ過ぎて、人間の目には見えない。
(57)The actual difference in sharpness is too small for the human eye to see.
本動詞の主語とto不定詞の主語が一致していない場合には、too〜to doの間にfor〜を入れるとよい。ここでは、for the human eyeがそれである。(5)
(58)これらの回路は過渡速度を制限するだけでなく、切り替え速度も遅くする。
(59)These circuits not only limit transients but also slow switching speed.
(60)いかにプロセスが複雑であろうと、これは正しい。
(61)This is true no matter how complicated the process is.
「no matter+ how/what/which/where/whose/whether」などの関係詞を伴い、「いかに_であろうと」、「何が_であろと」「どれが_であろうと」「どこが_であろうと」「誰の_であろうと」「_であろうと_であろうと」という慣用表現の意味になる)
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳5
2.3 否定構文
否定構文は日本語と英語で形が異なる。例えば、日本語の否定詞(非、否、不、無)は述語の後ろに来るが、英語は、主語であれ目的語であれ、否定詞が名詞の前に来ることが多い。(5) 訳出も交えて、否定詞の文中での位置取りについて見ていこう。
まず、名詞の前に来る場合を考える。(22)と(24)の場合、主語と目的語の前に否定詞が付いている。これは完全否定と理解する。
(21)アナログ・ネットワーク全体に対して、同じサービスをすることはできない。
(22)No equivalent service is possible over analog networks.(技術英語構文辞典)
(23)ワイヤーフレームには表面に関する情報が含まれていない。
(24)Wire frames contain no information about the surface.
可算名詞の前に来るfewと不可算名詞の前に来るlittleについても同じことが言える。
(25)初めての仕事でコピーを正確に書けるライターは殆どいない。
(26)Few writers are capable of writing copy correctly the first time.
(27)それはほとんど光を出さない。
(28)It emits little light.
なお、(26)と(28)の修飾語がvery fewとvery littleになると、「限りなく殆ど皆無に近い」という意味になる。
上述の例が文章全体を否定するのに対して、部分否定の構文もある。例えば、not allやnot everyはものに対して用いられ、not alwaysはときやことに対して用いられる。(5)
(30)すべてのコンピュータが接続を必要とするわけではない。
(31)Not all computers require connections.
(32)すべてのコマンドをテストしたわけではない。
(33)Not every command was tested.
(34)英語のライティングではこのことが常に正しいわけではない。
(35)In English writing, this is not always true.
花村嘉英(2018)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
否定構文は日本語と英語で形が異なる。例えば、日本語の否定詞(非、否、不、無)は述語の後ろに来るが、英語は、主語であれ目的語であれ、否定詞が名詞の前に来ることが多い。(5) 訳出も交えて、否定詞の文中での位置取りについて見ていこう。
まず、名詞の前に来る場合を考える。(22)と(24)の場合、主語と目的語の前に否定詞が付いている。これは完全否定と理解する。
(21)アナログ・ネットワーク全体に対して、同じサービスをすることはできない。
(22)No equivalent service is possible over analog networks.(技術英語構文辞典)
(23)ワイヤーフレームには表面に関する情報が含まれていない。
(24)Wire frames contain no information about the surface.
可算名詞の前に来るfewと不可算名詞の前に来るlittleについても同じことが言える。
(25)初めての仕事でコピーを正確に書けるライターは殆どいない。
(26)Few writers are capable of writing copy correctly the first time.
(27)それはほとんど光を出さない。
(28)It emits little light.
なお、(26)と(28)の修飾語がvery fewとvery littleになると、「限りなく殆ど皆無に近い」という意味になる。
上述の例が文章全体を否定するのに対して、部分否定の構文もある。例えば、not allやnot everyはものに対して用いられ、not alwaysはときやことに対して用いられる。(5)
(30)すべてのコンピュータが接続を必要とするわけではない。
(31)Not all computers require connections.
(32)すべてのコマンドをテストしたわけではない。
(33)Not every command was tested.
(34)英語のライティングではこのことが常に正しいわけではない。
(35)In English writing, this is not always true.
花村嘉英(2018)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳4
2.2 態の扱い
日本語では主語のない文が存在するため、英訳の際に工夫が必要になる。英語は物を主語にして文を作るため、英語の場合、日本語の目的語を主語にして、動詞の態を変換させる。
(14)レバーを引くとケースの蓋が開く。
(15)When the lever is pulled, the casing cover is opened.
つまり、「レバーを引く」を「レバーが引かれる」と発想する。レバーが主語になり、動詞の態も日本語の能動態から英語の受動態に変わってくる。
ここで一つ注意するポイントがある。日本語は行為を表す場合、能動態で書かれ、状態を表す場合、受動態で書かれる。記述の内容が行為か状態かは、前後関係から判断する。
(16)カバーを開ける。(行為)
(17)カバーが開けられている。(状態)
(18)The cover is opened.
技術文の「__は・・する」を英訳する場合、自動詞を使用して訳すことができるが、「__を・・する」の場合は、受動態を使用すると言われる。
(19)抵抗を小さくすると、電流は高くなる。
(20)When resistance is decreased, current will increase.
しかし、何も全ての技術文を自動的にこの法則に当てはめなくてもよい。態を決定する際のポイントが他にもあるからである。例えば、行為者がわかっている場合には、英語も能動態の方が直接的で力強いようである。もちろん行為者がはっきりしない場合には、受動態を使用して説明する。さらに文脈を通して主語で態を調節することもできる。
表3 技術文の翻訳プロセス(態)
翻訳作業 入力文
説明 「レバーを引くとケースの蓋が開く。」
翻訳作業 第一段階
説明 英語は物を主語にして文を作るため、日本語の目的語を主語にして、動詞の態を変換させる。
翻訳作業 第2段階
説明 「レバーを引く」を「レバーが引かれる」と発想する。レバーが主語になり、動詞の態も日本語の能動態から英語の受動態に変わる。
花村嘉英(2018)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
日本語では主語のない文が存在するため、英訳の際に工夫が必要になる。英語は物を主語にして文を作るため、英語の場合、日本語の目的語を主語にして、動詞の態を変換させる。
(14)レバーを引くとケースの蓋が開く。
(15)When the lever is pulled, the casing cover is opened.
つまり、「レバーを引く」を「レバーが引かれる」と発想する。レバーが主語になり、動詞の態も日本語の能動態から英語の受動態に変わってくる。
ここで一つ注意するポイントがある。日本語は行為を表す場合、能動態で書かれ、状態を表す場合、受動態で書かれる。記述の内容が行為か状態かは、前後関係から判断する。
(16)カバーを開ける。(行為)
(17)カバーが開けられている。(状態)
(18)The cover is opened.
技術文の「__は・・する」を英訳する場合、自動詞を使用して訳すことができるが、「__を・・する」の場合は、受動態を使用すると言われる。
(19)抵抗を小さくすると、電流は高くなる。
(20)When resistance is decreased, current will increase.
しかし、何も全ての技術文を自動的にこの法則に当てはめなくてもよい。態を決定する際のポイントが他にもあるからである。例えば、行為者がわかっている場合には、英語も能動態の方が直接的で力強いようである。もちろん行為者がはっきりしない場合には、受動態を使用して説明する。さらに文脈を通して主語で態を調節することもできる。
表3 技術文の翻訳プロセス(態)
翻訳作業 入力文
説明 「レバーを引くとケースの蓋が開く。」
翻訳作業 第一段階
説明 英語は物を主語にして文を作るため、日本語の目的語を主語にして、動詞の態を変換させる。
翻訳作業 第2段階
説明 「レバーを引く」を「レバーが引かれる」と発想する。レバーが主語になり、動詞の態も日本語の能動態から英語の受動態に変わる。
花村嘉英(2018)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳3
日本語からそのまま英語の表現が思いつく場合もあるが、双方の発想の違いがつかめないと思い浮かばないこともある。日本語の「〜して〜する」という表現は、結果の表現と見なすこともできるし、何かの後にという意味にも取ることができる。
(3)ノブを右に回して設定温度を下げてください。
(4)カバーを外して電池を交換してください。
(3)は、ノブを回した結果、設定温度が下がるとして、(5)のような結果を表すto不定詞の構文にする。また(4)は、カバーを外してから電池を外すという意味に取れる。そのため、(6)のようにandでつなげばよい。
(5)Rotate the knob clockwise to lower the set temperature. (技術英語構文辞典)
(6)Remove the cover and replace the battery.
関係代名詞を用いて結果を表す場合もある。これは前文を先行詞として取り、これが原因でその結果が関係代名詞により表現されるとする。
(7)カメラのシャッターボタンを押すと、スプリングがリングを動かして、ブレードを開く。
(7)の最後の部分が問題になる。それより前の部分は先行詞として主語となり、最後の部分が結果として表される。
(8)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring, which in turn opens the blade.(技術英語構文辞典)
(8)の後半部は、上述のto不定詞や分詞構文でも書くことができる。
(9)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring to open the blade.
(10)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring opening the blade.
(8)、(9)、(10)は、いずれも二つの因果関係を一つの文で記している。これらの二つの因果関係は、二つの文で表記することもできる。前文をThisで受けて、新規で文を作ればよい。
(11)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring. This opens the blade.
技術文は、因果関係の連鎖である。そのため、様々な書き方のテクニックを覚えるとよい。
(12)検出領域内の赤外線が増大すると、回路点130の電圧が増大し、逆に、赤外線が低下すると、回路点130の電圧が低下する。
「検出領域内の赤外線が増大すると」を「検出領域における赤外線の増加」として、「A increase of the infrared radiation in the sensing area」と考える。また、「赤外線が低下すると」は「赤外線の低下」として、「A decrease of the infrared radiation」とする。
(13)An increase of the infrared radiation in the sensing area increases the voltage at node 130. A decrease of the infrared radiation will decrease the voltage at node 130.(USP4,618,770)
結果の書き方についてそもそも日本語と英語で発想が異なる場合がある。こうした英語の表現について接続詞を見ながら考えてみよう。
接続詞のtherefore、accordingly、consequentlyはいずれも「従って」という意味である。形式的な表現であるが、特にthereforeは技術文でもよく見かける。接続の近さから言うと、therefore、accordingly、consequentlyの順で強から弱になる。但し、これらの表現は日本語と一対一にはならない。一対一にすると英語は書きすぎの感がある。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
(3)ノブを右に回して設定温度を下げてください。
(4)カバーを外して電池を交換してください。
(3)は、ノブを回した結果、設定温度が下がるとして、(5)のような結果を表すto不定詞の構文にする。また(4)は、カバーを外してから電池を外すという意味に取れる。そのため、(6)のようにandでつなげばよい。
(5)Rotate the knob clockwise to lower the set temperature. (技術英語構文辞典)
(6)Remove the cover and replace the battery.
関係代名詞を用いて結果を表す場合もある。これは前文を先行詞として取り、これが原因でその結果が関係代名詞により表現されるとする。
(7)カメラのシャッターボタンを押すと、スプリングがリングを動かして、ブレードを開く。
(7)の最後の部分が問題になる。それより前の部分は先行詞として主語となり、最後の部分が結果として表される。
(8)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring, which in turn opens the blade.(技術英語構文辞典)
(8)の後半部は、上述のto不定詞や分詞構文でも書くことができる。
(9)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring to open the blade.
(10)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring opening the blade.
(8)、(9)、(10)は、いずれも二つの因果関係を一つの文で記している。これらの二つの因果関係は、二つの文で表記することもできる。前文をThisで受けて、新規で文を作ればよい。
(11)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring. This opens the blade.
技術文は、因果関係の連鎖である。そのため、様々な書き方のテクニックを覚えるとよい。
(12)検出領域内の赤外線が増大すると、回路点130の電圧が増大し、逆に、赤外線が低下すると、回路点130の電圧が低下する。
「検出領域内の赤外線が増大すると」を「検出領域における赤外線の増加」として、「A increase of the infrared radiation in the sensing area」と考える。また、「赤外線が低下すると」は「赤外線の低下」として、「A decrease of the infrared radiation」とする。
(13)An increase of the infrared radiation in the sensing area increases the voltage at node 130. A decrease of the infrared radiation will decrease the voltage at node 130.(USP4,618,770)
結果の書き方についてそもそも日本語と英語で発想が異なる場合がある。こうした英語の表現について接続詞を見ながら考えてみよう。
接続詞のtherefore、accordingly、consequentlyはいずれも「従って」という意味である。形式的な表現であるが、特にthereforeは技術文でもよく見かける。接続の近さから言うと、therefore、accordingly、consequentlyの順で強から弱になる。但し、これらの表現は日本語と一対一にはならない。一対一にすると英語は書きすぎの感がある。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳2
2 英語の技術文
2.1 因果関係
英語の技術文から見ていこう。ここでは英語の技術文のうち因果関係のある文章を取り上げる。一般的に技術文は、内容が因果関係からなっているといってもよい。原因と結果が一つの文に書けると、技術文らしい簡潔な英文になる。
富井(1996)には、そのための方法として無生物主語構文についての説明がある。この構文は英語では発達しているが、日本語にはあまり見られないという。書き方には二つのステップがある。初めに主語に含まれる原因を書き、次に述語の処理として結果を書いていく。
(1)電流が過度だと、ワイヤーは加熱する。
まず「電流が過度だと」は、「過度な電流」という原因を表す主語に英訳して、「名詞と自動詞」からなる構造を「名詞と自動詞から転じた名詞」に置き換える。次に、「ワイヤーは加熱する」という自動詞構文を「ワイヤーを加熱させる」という結果を表す英語の他動詞構文にする。
(2)Excess current causes a wire to overheat.(技術英語構文辞典)
これが因果関係を表す技術文の基本形である。
つまり、技術文の翻訳作業を2段階で考えていく。まず両言語の主語を調節する。日本語では節になるところを英語では句としてとらえ、逆に英語で句になるところを日本語では節としてとらえる。これが翻訳の第一のプロセスになる。
次に述部の処理が来る。述部が「他動詞+目的語」の場合、目的語を主語にして他動詞を自動詞にする。このクロスの処理が第二のプロセスである。その結果、「〜すると、〜は〜になる」という日本語の技術文の基本構文ができあがる。
表1 技術文の翻訳プロセス(因果)
翻訳作業 説明
入力文 日本語の技術文の基本構文「〜すると、〜は〜になる」になる。
第一段階 両言語の主語を調節する。日本語の節は英語で句とし、逆に英語の句は日本語で節とする。
第2段階 述部が「自動詞」の場合、結果を表す英語の他動詞構文にする。
述部が「他動詞+目的語」の場合、日本語の目的語を主語にして他動詞を自動詞にする。
こうした無生物主語構文を作る動詞には以下のものが挙げられる。
表2 表現内容 無生物主語を取る動詞の例
因果関係を表す allow, permit, lead to, result in, provide, enable
直接増減を表す increase, decrease, reduce, shorten, lower
変化を表す produce, change
以下で、技術文に見られる英日の発想の違いを処理するために、この2段階の方法を試していく。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
2.1 因果関係
英語の技術文から見ていこう。ここでは英語の技術文のうち因果関係のある文章を取り上げる。一般的に技術文は、内容が因果関係からなっているといってもよい。原因と結果が一つの文に書けると、技術文らしい簡潔な英文になる。
富井(1996)には、そのための方法として無生物主語構文についての説明がある。この構文は英語では発達しているが、日本語にはあまり見られないという。書き方には二つのステップがある。初めに主語に含まれる原因を書き、次に述語の処理として結果を書いていく。
(1)電流が過度だと、ワイヤーは加熱する。
まず「電流が過度だと」は、「過度な電流」という原因を表す主語に英訳して、「名詞と自動詞」からなる構造を「名詞と自動詞から転じた名詞」に置き換える。次に、「ワイヤーは加熱する」という自動詞構文を「ワイヤーを加熱させる」という結果を表す英語の他動詞構文にする。
(2)Excess current causes a wire to overheat.(技術英語構文辞典)
これが因果関係を表す技術文の基本形である。
つまり、技術文の翻訳作業を2段階で考えていく。まず両言語の主語を調節する。日本語では節になるところを英語では句としてとらえ、逆に英語で句になるところを日本語では節としてとらえる。これが翻訳の第一のプロセスになる。
次に述部の処理が来る。述部が「他動詞+目的語」の場合、目的語を主語にして他動詞を自動詞にする。このクロスの処理が第二のプロセスである。その結果、「〜すると、〜は〜になる」という日本語の技術文の基本構文ができあがる。
表1 技術文の翻訳プロセス(因果)
翻訳作業 説明
入力文 日本語の技術文の基本構文「〜すると、〜は〜になる」になる。
第一段階 両言語の主語を調節する。日本語の節は英語で句とし、逆に英語の句は日本語で節とする。
第2段階 述部が「自動詞」の場合、結果を表す英語の他動詞構文にする。
述部が「他動詞+目的語」の場合、日本語の目的語を主語にして他動詞を自動詞にする。
こうした無生物主語構文を作る動詞には以下のものが挙げられる。
表2 表現内容 無生物主語を取る動詞の例
因果関係を表す allow, permit, lead to, result in, provide, enable
直接増減を表す increase, decrease, reduce, shorten, lower
変化を表す produce, change
以下で、技術文に見られる英日の発想の違いを処理するために、この2段階の方法を試していく。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳1
1 はじめに
日本語教育の中でも技術文への関心が高まっている。この論文では、難しいテクニカルライティングではなく、人文の人が取り組むべき基礎的な内容を考察していく。
産業翻訳の対象は、ほとんどが技術文である。電気製品のマニュアルであれば、工場からの出荷に間に合うようにマニュアル作成に納期が設定されていて、作業にスピードが求められる。そのため限られた時間で大量のデータを訳さなければならない。また、技術文は構文にも表現にも独特の言い回しがあるため、翻訳ソフトに保存されている作業メモリーを参照しながら翻訳データを作成していく。自分流の美しい翻訳は不要である。
もともと技術系の翻訳者は分野の知識があるため、比較的スムーズに作業を進めることができる。通常技術者は、マシン語や技術英語を使用したテクニカルコミュニケーションでやり取りをする。一方、人文系の翻訳者は、文献に基づいたコミュニケーションを使用する。文系と理系でコミュニケーション論が異なるため、文から理へ調整する際に何らかの工夫が必要になる。この論文では、英日と独日の技術文を10年余り手掛けてきた実務経験を基にして、私なりの工夫を説明していく。
【先行研究】
現在、マクロの文学研究に取り組んでいる。例えば、森鴎外、魯迅、トーマス・マンのデータベースを作成しながら、言語分析と情報分析を並行して手がけている。これが先行研究の取り組みであり、詳細については日々の調節が必要である。翻訳については、作業単位が「言語と分野の専門知識」であるため、文芸、コンピュータ、特許、メディカルの分野で実績を作り、言語は英語、ドイツ語、中国語、日本語で調節している。
【本論の位置づけ】
人文からミクロとマクロを調節するための一つの試みである。以下では、日英、独日、中日の順に技術文が出てくる。人文の研究者も言語や文学の研究のみならず、比較と共生からなるLの分析ができるようにシナジーの研究に取り組むとよい。技術日本語が入力でそこから英文を考え、それを他言語に展開し、さらにそこから和訳を試みる。日本語技術文の学習法とその応用例は以下の通りである。
【技術文の研究の流れ】
@技術日本語→A技術英語→B技術ドイツ語または技術中国語→D技術日本語
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
日本語教育の中でも技術文への関心が高まっている。この論文では、難しいテクニカルライティングではなく、人文の人が取り組むべき基礎的な内容を考察していく。
産業翻訳の対象は、ほとんどが技術文である。電気製品のマニュアルであれば、工場からの出荷に間に合うようにマニュアル作成に納期が設定されていて、作業にスピードが求められる。そのため限られた時間で大量のデータを訳さなければならない。また、技術文は構文にも表現にも独特の言い回しがあるため、翻訳ソフトに保存されている作業メモリーを参照しながら翻訳データを作成していく。自分流の美しい翻訳は不要である。
もともと技術系の翻訳者は分野の知識があるため、比較的スムーズに作業を進めることができる。通常技術者は、マシン語や技術英語を使用したテクニカルコミュニケーションでやり取りをする。一方、人文系の翻訳者は、文献に基づいたコミュニケーションを使用する。文系と理系でコミュニケーション論が異なるため、文から理へ調整する際に何らかの工夫が必要になる。この論文では、英日と独日の技術文を10年余り手掛けてきた実務経験を基にして、私なりの工夫を説明していく。
【先行研究】
現在、マクロの文学研究に取り組んでいる。例えば、森鴎外、魯迅、トーマス・マンのデータベースを作成しながら、言語分析と情報分析を並行して手がけている。これが先行研究の取り組みであり、詳細については日々の調節が必要である。翻訳については、作業単位が「言語と分野の専門知識」であるため、文芸、コンピュータ、特許、メディカルの分野で実績を作り、言語は英語、ドイツ語、中国語、日本語で調節している。
【本論の位置づけ】
人文からミクロとマクロを調節するための一つの試みである。以下では、日英、独日、中日の順に技術文が出てくる。人文の研究者も言語や文学の研究のみならず、比較と共生からなるLの分析ができるようにシナジーの研究に取り組むとよい。技術日本語が入力でそこから英文を考え、それを他言語に展開し、さらにそこから和訳を試みる。日本語技術文の学習法とその応用例は以下の通りである。
【技術文の研究の流れ】
@技術日本語→A技術英語→B技術ドイツ語または技術中国語→D技術日本語
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
2021年01月06日
三浦綾子の「道ありき」で交絡を考える3
3 まとめ
周知のように、虚無の症状は、抑うつの傾向があり、気がふさぐとか滅入るから将来に対し絶望的で悲観的になるメンタルな特徴を有する。そのため、三浦綾子の「道ありき」のデータベースを分析する場合、恋しい思いに関連するデータを制御しながら分析レポートを作成すると面白い。交絡の分析に関心がある人は、試してもらいたい。
参考文献
中村好一 基礎から学ぶ楽しい保険統計 医学書院 2016
高城和義 パーソンズ 医療社会学の構想 岩波書店 2002
中村好一 基礎から学ぶ楽しい保険統計 医学書院 2016
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日语教学研究会上海分会論文集 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは−「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日语教学研究会上海分会論文集 2019
花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する−危機管理者としての作家について 中国日语教学研究会上海分会論文集 2020
花村嘉英 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える ファンブログ 2020
三浦綾子 道ありき(青春編2004、結婚編2003、信仰入門編2011)新潮文庫
いちばんやさしい医療統計 交絡因子とは?https://best-biostatistics.com/design/kouraku2.html
周知のように、虚無の症状は、抑うつの傾向があり、気がふさぐとか滅入るから将来に対し絶望的で悲観的になるメンタルな特徴を有する。そのため、三浦綾子の「道ありき」のデータベースを分析する場合、恋しい思いに関連するデータを制御しながら分析レポートを作成すると面白い。交絡の分析に関心がある人は、試してもらいたい。
参考文献
中村好一 基礎から学ぶ楽しい保険統計 医学書院 2016
高城和義 パーソンズ 医療社会学の構想 岩波書店 2002
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三浦綾子の「道ありき」で交絡を考える2
2 実例
例えば、病人には、病人役割として仕事を休む特権とか回復に努め専門医の意見に従う義務がある。綾子は、微熱が続き血痰もで、背中も痛み失禁の症状になり、カリエスの診断がでる。そして、何もする気がしない虚無に陥りうつ病を発症する。
回復するためには周囲の対応が必要である。ここでは、原因が結核で結果を虚無にする。カリエスやうつ病は、原因結果の一例になる。一方、恋しい思いはどうであろうか。隠れた因子として交絡因子になりうるであろうか。
1 恋しい人が提供する聖書の「伝道の書」が綾子の求道生活をまじめにし、順調に行けば回復に向かう。病人としての義務の意識が芽生え、正しい筋道を考えるため、1は成立する。
2 結核については恋愛よりも医者の協力が不可欠である。例えば、カリエスの場合は、恋しい思いではなく絶対安静が課せられる。そのため、2は不成立である。
3 カリエスであれば、恋しい思いが働いて、自分はやる気がなくなる。そんなことはない。病人の場合、周囲の励ましがあれば、やる気を見せるものである。従って、恋しい思いは、中間因子ではない。3は成立する。しかし、2が不成立のため、恋しい思いは、交絡因子になりえない。
例えば、病人には、病人役割として仕事を休む特権とか回復に努め専門医の意見に従う義務がある。綾子は、微熱が続き血痰もで、背中も痛み失禁の症状になり、カリエスの診断がでる。そして、何もする気がしない虚無に陥りうつ病を発症する。
回復するためには周囲の対応が必要である。ここでは、原因が結核で結果を虚無にする。カリエスやうつ病は、原因結果の一例になる。一方、恋しい思いはどうであろうか。隠れた因子として交絡因子になりうるであろうか。
1 恋しい人が提供する聖書の「伝道の書」が綾子の求道生活をまじめにし、順調に行けば回復に向かう。病人としての義務の意識が芽生え、正しい筋道を考えるため、1は成立する。
2 結核については恋愛よりも医者の協力が不可欠である。例えば、カリエスの場合は、恋しい思いではなく絶対安静が課せられる。そのため、2は不成立である。
3 カリエスであれば、恋しい思いが働いて、自分はやる気がなくなる。そんなことはない。病人の場合、周囲の励ましがあれば、やる気を見せるものである。従って、恋しい思いは、中間因子ではない。3は成立する。しかし、2が不成立のため、恋しい思いは、交絡因子になりえない。
三浦綾子の「道ありき」で交絡を考える1
1 交絡因子
観察する2つの因子と相互に関連していて、これらの因子間の観察結果に影響を及ぼす第3の因子のことを交絡因子(confounding factor, confounder)という。ある因子が交絡因子になるためには、以下の3つの条件が必要である。
1 アウトカムに影響を与える。交絡因子➩アウトカム
2 要因との関連がある。交絡因子⇔要因
3 要因とアウトカムの中間因子ではない。要因×➩中間因子×➩アウトカム
以上の3つが揃っていれば、因子は交絡因子になる。なお、交絡、交絡因子、交絡バイアスという用語を確認しておく。
花村嘉英(2020)「三浦綾子の『道ありき』で交絡を考える」より
観察する2つの因子と相互に関連していて、これらの因子間の観察結果に影響を及ぼす第3の因子のことを交絡因子(confounding factor, confounder)という。ある因子が交絡因子になるためには、以下の3つの条件が必要である。
1 アウトカムに影響を与える。交絡因子➩アウトカム
2 要因との関連がある。交絡因子⇔要因
3 要因とアウトカムの中間因子ではない。要因×➩中間因子×➩アウトカム
以上の3つが揃っていれば、因子は交絡因子になる。なお、交絡、交絡因子、交絡バイアスという用語を確認しておく。
花村嘉英(2020)「三浦綾子の『道ありき』で交絡を考える」より